『豊橋競輪開場63周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:6月25日
 豊橋競輪場で行われている開場63周年記念「ちぎり賞争奪戦(G3)」は、最終日を迎えた。豊橋バンクで共に汗を流す先輩たちが準決で脱落するなか、地元でただひとり優出を果たした深谷知広だったが決勝は4着。若きエースが地元の牙城を守ることはできなかった。レースは稲垣裕之が主導権を握り、単騎で4番手を確保した阿竹智史が遅めのまくりで突き抜け記念初Vを遂げた。
決勝戦 レース経過
 けん制気味のスタートだったが、深谷知広、阿竹智史の順で誘導員を追うと、周回は深谷―小野俊之―阿竹―岡田征陽―山下渡―堀政美―稲垣裕之―荒木伸哉―高橋敦史の並び。
 青板の2センターから稲垣が上昇を始めるが、これを制して岡田も動く。その岡田に対しホームから深谷が内から抵抗する素振りを見せると、ここで誘導員が退避する。岡田が先頭に立ち、中団は内に深谷、外に稲垣で併走。打鐘過ぎに稲垣が叩いて主導権。単騎の阿竹がこのラインに乗り換え、深谷は8番手に置かれてしまう。5番手の岡田が波を作ると、深谷は内に差してしまい巻き返しが遅れる。バックから上がり10秒4と驚異のラップでまくったが、届かず4着に敗れる。勝ったのは阿竹だった。単独の4番手で脚をためると、2センターからまくり追い込み記念初優勝。2着には逃げた稲垣、阿竹のまくりを追う形となった岡田が3着に入線した。


阿竹智史選手
阿竹智史選手
 輪界に新たな歴史を刻んだ地元の深谷知広、賞金ランク第4位(6月24日現在)の岡田征陽。並みいる強豪たちを押さえて一番でゴール戦を駆け抜けた阿竹智史。ビクトリーランでは右手を挙げてポーズをつくったものの、記念Vの実感がなかなか沸いてこない。
 「うそみたい。ゴールしてからガッツポーズをしたけど、自分は抜かれているのかって。優勝したっていう気がしないし、実感がないですね」
 主導権を握った稲垣裕之ラインの4番手にスイッチ。最終ホームでは単騎が功を奏したかのように、他の選手と絡むことなく脚をためられた。
 「(単騎で)難しかったけど。いいとこに入れたし、読みも正解だった。一瞬、深谷君に入られそうになったけど、そこを乗り越えて誰にも絡まれなかった。それでも深谷君なんでね。深谷君がどこから来るのかと」
 深谷を警戒しながら慎重に前団との車間を切った阿竹が、落ち着いた仕掛け。後続を引き出すことなく最終2センターからのまくり追い込みでうれしい記念初優勝をつかんだ。
 「2コーナーで先に(まくって)行こうって思ったんですけど、まだ誰も来てなかったし。まくり追い込みで2センターくらいから踏んだ。踏んだ瞬間で自転車が出たし、外の岡田さんに行かれても3着くらいはあるかなって(笑)。まだ、記念って感じがしないし、なんか変な感じがします」
 狐につままれたような表情で振り返る阿竹だが、師匠への感謝の言葉は忘れない。
 「これで小倉(竜二)さんにいい報告ができます。同期がみんな頑張っているし、自分も上にいきたいっていう思いがある。来期の一発目は地元の記念なんで、そこでも頑張りたい」
 SS班の浅井康太をはじめとする同期のライバルに一歩近づいた阿竹が、今期を最高の形で締めくくった。

 打鐘の3コーナーで先行態勢を取った稲垣裕之は、深谷を8番手に置いて思惑通りペースに持ち込む。
 「深谷君を後方に置くことがセオリー中のセオリーなんで。今日は南関の2人が付いてくれたんで、先行ができました。先行以外の走りが3日間できて、後輩の走りにも力をもらいました」

 稲垣の番手を無風で回った荒木伸哉だが、経験不足を露呈。踏み込むタイミングを逸したまま、阿竹をけん制して5着に沈んだ。
 「もう誰も来なかったんで、逆にどっから踏んでいいのかわからなくて。結果として余裕がなかったですね。稲垣さんがあれだけ頑張っているんだから、僕もそれなりの結果を残さないといけないんだけど…」

 阿竹を追って3着だった岡田征陽は、例によってサバサバとしたもの。
 「前の稲垣さんが掛かってました。ああなると単騎が有利だし、自分としてはやった方。結構、振ったりしたら、自分も脚にきてた」

 「すべてが失敗です…」とは、地元で人気を背負った深谷知広の弁。
 「内に差してしまった。ああいうのも勉強です。まだレースが下手で、体の状態はいいんですけど」  最終2コーナーでインに差し込む致命的なロスが、最後まで大きく響いた。上がりタイム10秒4、次元の違う深谷でも4着が精いっぱいだった。


ゴール
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