『松阪競輪開設63周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:11月18日
 松阪競輪場を舞台に開催されていた開設63周年記念「蒲生氏郷杯王座(G3)」は18日に最終日を迎え、激戦を勝ち抜いた9選手による決勝の号砲が鳴らされた。レースは2車の中部勢が大ガマシを敢行。最終バックでは、別線を大きく引き離す波乱の展開。番手から追い込んだ山内卓也が、抜け出して通算2度目の記念制覇を遂げた。
決勝戦 レース経過
 号砲と同時に山内卓也が飛び出し、目標の永井清史を迎え入れる。永井―山内の中部コンビが前受け、中団は池田勇人―稲村好将の関東コンビに、藤木裕―萩原孝之、佐藤友和―成田和也の北日本コンビが後攻め、単騎の野田源一が最後方の形で隊列は落ち着く。
 赤板前の4コーナーから佐藤が上昇。藤木がこれを追っていくが、池田が藤木を強引に外に持っていきながら前に踏む。池田を押さえて打鐘で先頭に立った藤木が流すと、今度は後方に下げた永井が一気にカマす。永井は緩めることなくハイスピードで飛ばし、後続を引き離す。踏み遅れた藤木は大きく離された3番手で前の2人を必死に追うが、差は縮まらない。最終2コーナーからまくった佐藤は不発。佐藤に合わせて6番手から仕掛けた池田が中部コンビに迫るも、山内が番手絶好展開から鋭く追い込み、久々の記念優勝を飾った。まくり追い込みで激しく詰めよった池田は2着まで。逃げた永井が3着に残った。


山内卓也選手
山内卓也選手
 6番車が示すとおり近況は低迷していた永井清史だったが、そのポテンシャルは誰もが認めるところ。その永井が藤木裕、池田勇人、佐藤友和と並み居る機動型を置き去りにする大ガマシ。最終バックでは別線を引き離して、山内卓也(写真)にとってはこれ以上ない展開になった。
 「あれしかなかった」と、開口一番、山内が振り返る。
 初日特選で地元のエース浅井康太が、失格で脱落。準決では柴崎淳が敗退して、地元勢は全滅。地元地区の最後の砦として永井と2車で総力を結集した故の優勝だった。
 「地元地区で頑張らなきゃっていうのもあったけど、メンバー的にはきつかったんで。それに(10月の)一宮記念のこともあったんで」
 山内のホームバンクである一宮記念は、長塚智広に優勝をさらわれ涙を飲んだ。その思いもあっただけに、松阪とはいえ同じ中部地区での記念制覇は喜びもひとしおだろう。
 「永井ちゃんがよく行ってくれた。(最終)2コーナーを回って、後ろが離れているのもわかった。あとは永井ちゃん頑張れと思って。一宮記念の時も、今回もそうだったけど、連日池田君に食われている。(離れていても)どのくらいのスピードで、まくり追い込んで来るのかもわからなかった」
 まくりで池田が一歩また一歩と詰め寄るが、山内が直線で渾身の追い込み。1車身半とセーフティリードを保ったところが、ゴールだった。
 「あんな展開はないし、早いかなとは思ったけど。踏んでいった。結果的に2車っていうのも大きかったかもしれない。このメンバーで優勝できたのはよかった」
 07年の和歌山以来となる2度目の記念V。地元地区の牙城を守った山内と永井を、敢闘門で暖かく迎えた中部の人の輪が印象的だった。

 周回中は前受けを選択した永井清史は、打鐘で8番手まで下げての立て直し。胸のすくようなカマシでグングンと加速。自らも3着に粘り込んで、苦しそうに汗をぬぐう。
 「細切れだったし、自分が最後に仕掛けられればと思っていた。藤木君がニュートラルに入れようとしてたし、そこを自分が流したらすぐに最終バックで来られちゃうんで。踏んでいった。調子が上がっているんで、競輪祭を走りたかった」と、11月28日からの競輪祭の出場権のない永井が、最後は少しさみしそうに締めくくった。

 6番手の池田勇人は車間の詰まらない藤木の動きを見極め、最終バックからまくり上げる。が、時すでに遅く準Vまで。
 「余裕はあったんですけどね。永井さんが行っちゃう感じだったし、あとは藤木さんに追ってもらってと思っていた。そしたら藤木さんがいっぱいそうだった。1コーナー過ぎくらいですかね、そこら辺で。もうちょっと早く自分で行っていれば、面白かったかもしれない」

 池田、藤木がほぼ同時に上昇した打鐘前の動きが、佐藤友和にとっては大きな誤算。結果的に8番手大きく取り残されて万事休す。
 「藤木君が切ったところを池田君が順番で来ると思ってたら…。一緒に来たから。しっかりとあそこは位置を取らないといけない。そこを反省しないと」

 単騎の野田源一は想定通りの5番手だったが、藤木が車間を詰められなかったのが思惑違い。
 「藤木君はあれで誰かが来たら、先に仕掛けると思ったし。それに乗って直線勝負だと。後ろから(まくってきた)音がしてたけど、自分で踏むのをちゅうちょしてしまった。難しい判断でした」


ゴール
↑ページTOPへ