『松阪競輪開設65周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:5月11日
 松阪競輪場を舞台に開催された開設65周年記念「蒲生氏郷杯王座競輪(G3)」は11日に最終日を迎え、波乱のシリーズを勝ち抜いた9選手によって決勝が行われた。レースは吉本卓仁と松谷秀幸が、最終ホームでモガき合い。絶好のまくり展開が訪れた鈴木庸之が、初めての記念決勝にも舞い上がることなくチャンスをモノにして優勝。地元の柴崎淳は仕掛けられず7着に終わった。
決勝戦 レース経過
 号砲で柴崎淳、松谷秀幸、吉本卓仁と出るが松谷がスタートを制す。南関カルテットの松谷―白戸淳太郎―松坂英司―渡邉晴智が前受け、単騎の柴崎が続いて、吉本―渡部哲男、鈴木庸之―池田勇人の関東勢が後攻めの形で落ち着く。
 赤板手前から上昇した鈴木の動きに吉本も続く。松谷がすんなり引いて鈴木が誘導員後位に入るも、打鐘前に吉本が鈴木を叩いて主導権。単騎の柴崎も前に踏み込んで3番手へ追い上げる。6番手に下げた松谷だが、打鐘2センターから一気に仕掛けて前団に襲い掛かる。吉本も突っ張り松谷と激しくモガき合う。後方に下がった鈴木だが、前団のモガき合いを見て最終2コーナーからまくる。番手の池田が踏み出しで口が空くほどのスピードでまくり上げると前団をひと飲みし、3コーナー過ぎに出切る。あとは一人旅で着差以上の圧勝劇。記念初優参で初優勝を遂げた。最終バックで鈴木に切り替え追った渡邉が2着。鈴木に千切れた池田はなんとか3着まで。地元の柴崎が内に包まれ7着に終わった。


鈴木庸之選手
鈴木庸之選手
 地元の雄、浅井康太は2次予選の発走機につくことなく、アクシデントに見舞われ途中欠場。もうひとりのSS班、神山雄一郎も、準決進出がかなわず2次予選で敗退。波乱のシリーズを象徴するような、決勝の幕切れだった。
 先行態勢を取る吉本卓仁に6番手から巻き返した松谷秀幸が襲い掛かり、最終ホームでは両者の踏み合い。メンバー中ただひとり記念決勝の舞台を初めて踏んだ鈴木庸之(写真)だったが、気負いはなかった。外を通過した松谷の動向を落ち着いて見極めると、すぐにまくりの態勢を整えた。
 「松谷さんに4番手に入られたら意味がないし、もうあそこまで行ってくれたらと思っていました。(松谷が)合わせられても後ろに3車いるんで、(柴崎)淳がかぶっている間に自分が(まくって)いけばいいんで」
 最終2コーナーから踏み出すと、もつれた前団のあおりを物ともせずまくり一気。そこからは後続をちぎる圧勝劇で記念優勝を遂げた。
 「S級の初優勝も、初めて決勝に乗った時でした。決勝に乗っても獲れない人もいるんで、自分は運がいい。恵まれてますね」
 愛用していたメーカーのフレームが、使用できなくなったことで低迷に陥った。しかしながら、その悩みも新たな自転車との出会いが解消。前回の共同通信社杯から投入した2台目の愛車が、鈴木に幸運を運んできた。
 「1台目は大ギア用に作って、それもすぐに優勝ができた。このフレームは前回からですね、使い始めたのは。勝手に自転車が伸びていくし、初日に先行して思った通りのタイムが出た。やっとイメージ通りになった感じです」
 4月の川崎では諸橋愛が10年以上ぶりの記念V。同県の先輩たちに刺激を受けながら、ここまでたどり着いた。
 「諸橋さんとは一緒に練習をして、練習では俺が勝てるのに。競走だと違いますからね。ノリさん(藤原憲征)にはS級に上がった時に練習していれば、(記念優勝は)獲れるって。獲れないってことは練習が足りないってことだと言われた。そこまでいかないと練習をやっている意味がないって。だからよかった。これからはもっと警戒されるだろうけど、それでも勝っていかないといけない」
 他の8人を置き去りにする鮮烈な記念初V。手の内に入れた愛車とともに、鈴木はさらなる高みを目指す。

 神奈川トリオの4番手を固めた渡邉晴智は、吉本と松谷のモガき合いでもつれると俊敏に鈴木のまくりに反応。鈴木の加速力には置かれたものの、さすがの立ち回りで2着に入った。
 「(松谷が)行ってくれたんだけどね。白戸(淳太郎)もブロックをもらっていたし、そこからみんな内に行った。そしたらノブ(鈴木)が来たんで、自然と動いちゃった。でも口が空いて、追いつかないと思った」

 鈴木のダッシュに遅れた池田勇人は、渡邉に割り込まれるも懸命に踏んで3着は死守。
 「(最終)1センターもあおりでちょっと見ちゃった。ちょうどそこでノブに行かれた。それで(渡邉)晴智さんに入られちゃった。技術不足ですね…。ああいうレース展開も初めてだったし、まだまだ勉強することはある」

 先行の腹をくくった吉本ラインを追走した地元の柴崎淳は、松谷の反撃が思いのほか早かった様子。終始、内に包まれて、仕掛けのポイントを見失った。
 「ひとりは難しい。位置取りは良かったけど…。もう(松谷が)すぐに来ていた。しょうがないですね。(渡部)哲男さんがもっていった時に、自分が内に入っていければ…。そこでした」


ゴール
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