号砲直後はスタート牽制。各車が出しぶる中、真っ先に誘導員を追ったのは吉田敏洋だった。吉田、合志、坂本英一のトリオを正攻法に、松岡、市田の近畿プラス高木隆弘が中団四番手以下へ。森田、山崎、有坂の東北トリオが後攻めの形で、隊列は落ち着いた。 赤板前のバックで、まずは森田と松岡の攻防が始まった。中団へと上昇した森田に対し、松岡は七番手まで下がり、一本棒の形で各車が赤板を通過した。直後に森田がスパートを開始。打鐘前に吉田を叩くと、快調なペースで最終ホーム、1センターと風を切った。だが、バックを前にしてペースが緩み、間髪入れずに山崎が番手発進。山崎はグングンと加速し、2着以下に1車身の差を付けてゴールした。四番手へ切り替えた市田より先に、吉田はバックまくりを打ったが、山崎に見事に合わされ不発。有坂が山崎に食い下がり2着、有坂と吉田の間へ差し込んだ合志が3着へと入線した。
鮮やかな番手まくりで山崎が、3月熊本以来今年2度目の記念優勝を飾った。徹底先行・森田の番手回りとはいえ、松岡後位で脚力を温存できる市田や、好調な吉田らが相手。それでも、山崎は決めた。右横に並ぶまで反撃した吉田や、有坂、合志の強襲をも許さなかった。市田の4日制地元記念初制覇、6月からの4場所連続優勝をも阻み、引き締まった表情で山崎は優勝会見に応じた。 「森田君は行きたくてしょうがなかった。それで、(番手から)行っちゃいました。赤板からの攻防? もちろん、想定していた。近畿は突っ張るか、早めに押さえて仕掛けるか。森田君が逃げて、中団の市田さんが吉田さんに合わせて踏むだろうと。森田はかなり踏んでいて、残せる感じじゃなかった。(最終バックで)脚がイッパイだったけど、出て行った。勝てたけど、人の後は難しい。タイミングが難しかった。吉田君は良い勢いでまくってきて、合わせるのもなかなかね。頭を少しだけ(出した)…。調整不足で初日を迎えたけど、それはみんな一緒だったみたい。この後は乗り込んで、また頑張ります」 有坂は2着惜敗にも納得ずくといった表情で、「『先行する』と言ってくれた森田君のお陰。直前まではまくり勝負でも、という作戦だったのに。もちろん、山崎君も強かった。最後はひきずり回された感じ。合志も(体に)当たってきて危なかった。まあ、東北で決まって良かった」。 合志は最後の最後に、コースをこじ開けた。山崎と吉田のツバ競り合いが最終2センター過ぎまで続く中、有坂に体当たりして中割りに懸けた。最大限に闘志を立たせながらもレース後は「結果論だけど外を踏めば良かったかな。正直、内か外か迷った。吉田君がどこまで踏めるか読めず。仕方ない。次は地元戦が控えているし、今後も頑張ります」と、後悔を滲ませるコメントだった。 市田は勢いを示せなかった。特選、準決勝の2勝を含め、勝ち上がりは全て確定板行き。先のサマーナイトフェスティバルを制覇した威光を、僅かな判断の遅れで消してしまった。「前回(サマー)の稲垣(裕之)君といい、今回の松岡君といい、本当に良いレースをしてくれた。松岡君が『任せてくれ』と言ってくれた。作戦はなし。(最終ホーム四番手通過で)余裕はあったけどね。行けたと思うけどね。自分達(高木と)2人、見ているファンを思うと、とてつもなく悔しい。ちょっと残念。次の小田原(記念)までにはしっかりと調整して、また頑張ります」。松岡の健闘を称えながら、今後へ気持ちを切り替えた。