最終バックまで一本棒。後続の巻き返しもなく、稲垣裕之のかかりは車間を切る必要がないほどのものだった。「さすがですね。稲垣を目標にして良かった」。小嶋敬二、新田康仁に井上昌己と輪界を代表するスピードレーサーを相手に、神山雄一郎の通算94Vは余りにもあっさりと達成された。 「車間を切って張りながら踏めば(稲垣の真後ろに)戻れるかなと思ってたけど、稲垣は良いかかりだった。最後は後ろから抜かれそうになってしまったけど、本当に恵まれたって感じです」 次戦は今年のGI開幕戦となる競輪祭。「最近はないですね」と話す、最高のスタートで迎えられそうだ。 「運も良かったし、今年一発目の開催で良い成績が残せて最高です。これからも一戦、一戦頑張って、最後はGPに行けるようにしたい。競輪祭までちょっと間が空くので、一休みしてからまた頑張ります」
神山後位から外を懸命に踏んだ手島慶介だったが届かず2着に。「何も作戦は聞いてなかったけど、出来すぎです。感触は良いので、次の競輪祭でも頑張ります」と悔しさの中にも手応えをつかんで検車場をあとにした。
近畿勢唯一のファイナリストとなった稲垣裕之は最高の見せ場を作った。「逃げ切れるかなと思ったけど」と悔しさをにじませるが、ラインで上位独占の結果に表情も晴れやかだ。 「細切れでみんな先行したくないやろうなと思ってたし、展開も向きましたね。4コーナーから仕掛けようと思ってたし、次につながるレースができた。風が強かったし3着に入ったら十分。ラインで決められたのが一番です」
中団四番手は新田康仁が確保した。車間を切って、十分な態勢からまくりを仕掛けたが伸び切れなかった。 「できれば稲垣と小嶋さんでやり合わせるのが良かったけど、最低中団からと思ってた。脚も溜まってたし車間を詰める勢いで行ったけど、前も溜まってたみたい。一歩も出ずに、稲垣も食えなかった。もう少し何かしたかったけどね」
六番手からまくり追い込んだ小嶋敬二だが4着まで。一本棒の展開では、前があまりに遠かった。 「(打鐘で)稲垣が誘導を切らなかったので、どうしようもなかった。別線の動きをアテにしすぎたかな。楽だったけどなあ。でも競輪祭へは手応えをつかめました」
井上昌己の連勝は6でストップ。最終バックでは八番手に置かれる最悪の展開に、「面白くないレースにしてしまってすいません」と頭を下げる。 「四番手は小嶋さんって想定してたのに、新田さんが来たから迷ってしまった。もっとこだわれば良かったかな。中途半端だったし、申し訳ないことをしました」
和歌山記念連覇に王手をかけた山内卓也だったがチャンスはなく、「小嶋さんが2コーナーで行ってくれればね」とガックリ肩を落とした。