『岸和田競輪開設63周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:10月9日
 浪切バンクを舞台に岸和田競輪場で熱戦が繰り広げられてきた開設63周年記念「岸和田キング争覇戦(G3)」は、9日に最終日を迎えた。注目の決勝のレースでは、地元勢を連れて村上義弘が打鐘から主導権を握り流れを作った。展開は地元記念を狙う南修二に向いたが、渡邉一成が7番手からまくって今年3度目となるグレードレース制覇を成し遂げた。
決勝戦 レース経過
 スタートで各車飛び出すが、渡邉一成がいち早く誘導の後ろを奪った。初手の並びは渡邉ー伏見俊昭に外から大塚健一郎が競り込み、中団は村上義弘ー南修二ー前田拓也、岡田征陽ー宗景祐樹に梶應弘樹が付けて後ろ攻めとなる。
 動きがあったのは青板周回の4コーナーから。まずは岡田がゆっくりと上昇をはじめ、赤板で前を押さえる。さらに岡田が2センターで誘導を斬っていくと、渡邉は車を下げた。これを受けて、村上が前を叩きに出る。村上が先頭に立ち、狙い通り岡田が中団で、渡邉は7番手に。ジャンが入り、動きがないのを確認した村上は2センターから先行態勢に入る。スピードが一気に上がり、最終ホームを通過。さらに逃げまくる村上に対し、2コーナーから岡田がまくり発進。しかし、迫る岡田を、南が強烈なブロックで阻止した。関東勢は勢いが止まり、村上と南でマッチレースかと思われた。しかし、後方から猛然とまくってきた渡邉が直線で前団を一気にごぼう抜き。優勝をさらった。伏見は踏み遅れ、渡邉マークを奪った大塚が渡邉に迫る強烈な伸びで2着に入った。南は3着で地元優勝ならず。


渡邉一成選手
渡邉一成選手
 打鐘手前で出た村上義弘が渡邉一成(写真)の位置を確認しながら、徐々にペースを上げてそのまま主導権を握って出る。
 「流れではカマそうと思っていたけど、踏みっぱなしでした。村上さんもジャンから踏んでいたんで、きつかったんだと思う。余裕があったっていうより、後は岡田(征陽)さんだけでした」
 ハイペースで駆ける村上の流れを体感しながら、まくりの腹を固めた渡邉。警戒したのは4番手の岡田の仕掛け、渡邉がポイントをあげて、こう続ける。
 「岡田さんの仕掛けに合っちゃうと、自分も不発になってしまう。(岡田が)バックで行ったのが見えたんで、自分もすかさず踏みました。それからはまっすぐ走れれば大丈夫かなと。大塚(健一郎)さんが内に入ってくるのも見えたし、そこでもって来られなければと思っていた」
 最終3コーナーから踏み出し村上を射程圏に捕らえると大外を一気。一度は大塚に迫られたが、直線では再度加速して世界の脚を見せた。すべてをかけて臨んだロンドン五輪では不本意な成績に終わったが、競技から本業に復帰すると目覚しい活躍。応援してくれたファンの目に、進化したその姿を焼きつかせている。
 「もうオリンピックの疲れもないし、今回はオールスターを終わってからリフレッシュをさせてもらいました。オールスターと今回もしっかりレースができている。グランプリ(GP)に出るために競輪祭(11月29日から)をしっかり。今の力じゃ勝てないんで、もっと強くならないと、どっちみち賞金では(GP)乗れないと思っているんで。競輪祭に向けてやることもいっぱいある。いつもそうなんですけど、(勝っても)満足はしちゃいけない」
 五輪後の4場所で2度の記念V。GPを見据える渡邉は別次元の脚を披露しても、決しておごることはない。

 渡邉の後ろで伏見俊昭との競り合いを演じた大塚健一郎が、渡邉に食い下がる。最終バックで内の伏見を制すると、渡邉の踏み出しに懸命に付けて2着に流れ込んだ。
 「(初日の落車があったんで)治療して出直してきます。2(着)のために競ったんじゃないし。取り切って、(渡邉を)交わすため。優勝するためにやったんで。(最終2センターで)入っていった時に、(渡邉)一成はまだニュートラルに入れてた、やっぱり世界(レベル)ですよ」
 あくまで優勝にこだわる大塚は、いつものように静かに振り返る。

 逃げた村上の番手で地元の南修二は、願ってもない流れ。最終バック手前からまくった岡田は止めたが、渡邉、大塚に飲まれて3着がやっと。
 「自分の力不足。あれで岡田さんが止まって、あとはあおりができてくれたらと思っていたけど…。展開は理想的だった」

 打鐘から後続にカマシの隙を与えず果敢に風を切った村上義弘が、宣言通り近畿勢のチャンスメイク。しかしながら、地元勢に「岸和田キング」の称号が輝くことはなかった。
 「一成のカマシのスピードがすごいんで、前に出てからは多少焦りというか、そういうのがあった。自分の状態が完全ではないんで、レース運びとしては早め、早めになった。結果としては力不足で、地元の(南)修二と前田(拓也)さんに申し訳なかった。後続距離が後10メートル伸びていれば。その10メートルで違った結果が生まれたかもしれない」


ゴール
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