『広島競輪開設63周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:12月22日
 広島競輪場を舞台に開催された開設63周年記念「ひろしまピースカップ(G3)」が、12月22日に最終日を迎えた。今年最後の記念開催となる今シリーズ。決勝は番手にハマった竹内雄作が2コーナーからまくると、最後は金子貴志が抜け出して優勝。6月別府以来となる今年2度目の記念制覇を遂げた。また9レースに行われたレインボーカップA級ファイナルは、中井俊亮を追った畑段嵐士が直線で追い込んで優勝。2着の久米康平、3着の西本直大の3人がS級2班に特別昇級を決めた。
決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると村上博幸が飛び出し、竹内雄作―金子貴志―村上の中近3車が前攻め。以下の隊列は早坂秀悟―渡邉一成―佐藤友和、近藤隆司―片寄雄己―岡村潤。
 近藤は青板の2コーナーから早めに上昇を始めて竹内に併せ込むと、竹内は下げて近藤が先頭に立つ。4番手に引いた竹内は早坂の上昇に合わせて踏むが、赤板過ぎに早坂が押えて出て先行態勢。早坂に渡邉―佐藤と続き、近藤との4番手併走の竹内が2コーナーから仕掛ける。早坂も合わせて両者の踏み合いで打鐘を通過。しかしながら、渡邉が遅れて、合わされた竹内は冷静に早坂後位に収まる。  早坂の先行で最終回。番手に入った竹内に金子―村上の追走。渡邉は5番手で、近藤は一本棒の7番手に置かれる。2コーナーから竹内が早めに早坂後位からまくって出て、金子―村上でバックを通過。渡邉は3コーナーからまくり上げる。竹内との車間を空けた金子が、渡邉をけん制して直線へ。直線半ばで竹内をとらえた金子が、迫り来る渡邉を半車輪凌いでV。2着に渡邉、大外を強襲した近藤が3着。


金子貴志選手
金子貴志選手
 15年最後の記念開催で笑ったのは激動の後期を過ごした金子貴志(写真)だった。9月のサマーナイトで落車し、恥骨と坐骨を骨折。「あの時は歩けなかった」と語るほどの大怪我に見舞われた。しかし、10月熊本記念で復帰を果たすと、直前の久留米F1を制覇。今シリーズの準決勝でも、自らの力でファイナル行きの切符を手に入れると、決勝は竹内雄作の番手から優勝を手にした。
 「雄作が仕上がっていたので、(作戦は)彼が優勝を狙えるタイミングで行ってくれればと思っていました。でも、無理矢理行ってくれたし、優勝は雄作のおかげです。最後は(渡邉)一成が見えて踏んだけど、キツくて。スピード的に差されたかと思いました」
 復活までの道のりは決して楽ではなかった。仲間に支えられて、ここまで来れたと金子は話す。
 「優勝できて嬉しいです。今年は怪我をしてからは苦しかったけど、ここまでいろんな人が支えてくれました。結果を出すことが恩返しになると思って。でも、9月の段階では、まさか記念を優勝するとは思わなかったですね。やっぱり練習はうそをつかない」
 この優勝を糧にして、16年での更なる活躍を誓う。
 「全日本(選抜競輪)までゆっくりしたいけど、1月にF1戦が連発であるので仕上げないと。来年は一人でも多く中部でグランプリに乗れるように。また、一戦一戦頑張るだけです」

 渡邉一成は自力に転じて2着に入るも、その表情に笑顔はない。
 「誰が見ても秀悟の突っ張りに付いていかないといけない。悪いことをしてしまいました。去年のこともあって、3コーナーでかぶる前に力を出し切ろうと思って。届かなかったですね。ゴール前でもあせってしまいました」

 最終バックで7番手となった近藤隆司だったが、抜群のスピードを見せて3着に入る。
 「打鐘で踏み合ったんで『よし』と思ったけど…。そこで仕掛ける勇気がなかったですね。そこからは渡邉君の追い上げを祈ってました。友和さんが内を行った分、僕は渡邉君を目掛けて。一瞬しか踏んでいません」

 金子を優勝に導いた竹内雄作だったが、自身の記念初優勝はまたもお預けに。
 「優勝は遠いですね。番手にハマってからは余裕があったけど、綺麗に踏めなかったし、最後は力任せになってしまいました。でも、調子が悪い中で決勝に乗れたんで、プラスに考えます」

 持ち味を発揮した早坂秀悟だったが、竹内に番手に入られてはきつかった。
 「そもそも番手に入ったのが竹内君なんで。流したら出てくるし、踏むしかなかったですね。一成さんも来ないと思ったし、どうしようもなかったです。悔しいですね」


ゴール
レインボーカップA級ファイナル レース経過

 最終日の第9レースに期末恒例の「レインボーカップ・A級ファイナル」が行われ、A級のトップナインがS級特別昇級(3着以内)を賭けて一発勝負で争われた。
 レースは赤板を過ぎても動きがなく、打鐘で本郷雄三が単騎で叩いて先頭へ。すると、最終ホームから中井俊亮が一気に反撃に出ると、本郷の後ろから橋本智昭も合わせて踏んで行く。さらに、バックでは久米康平も後方から迫って力勝負に。各車の攻防は3コーナーで久米がまくり切ると、その3番手に切り替えた畑段嵐士(写真)が直線で強襲。優勝を手にした。


畑段嵐士選手
畑段嵐士選手
 「展開が厳しかったので焦りましたね。西本(直大)さんが久米(康平)君に迫っているのが見えたので、西本さんを抜けば優勝かと思いました。これまで4回(特進に)失敗している人はいないと思うけど、勝ててよかったです」
 今年15回目の優勝でようやくS級に特進。最後の最後にA級最強の称号を手にし、また新たな挑戦へ旅立つ。
 「練習では以前より強くなっていて、結果も出たので自信になりました。今後は練習でのタイムをもっと上げていきたい。A級は脚で勝ってたけど、S級に上がってからは走ってみないと分からないけど、相手とか見たりして、どの戦法が1番いいか考えて、ラインで決まるように頑張ります」

 久米康平はゴール寸前で畑段に交わされ準優勝。
「弱い。悔しいです」と唇をかむ。「(ラインがある)北日本でも近畿でもいいからどちらの後ろと思ってました。両方前に行ってしまったけど、近畿の後ろになったので。予想通り近畿の順番が回ってきたし、1コーナーから理想の展開になった。バックで勢いをもらって、イメージ通りいったけど…。自分でやり切っての結果だから仕方ない。でも、やっぱり悔しいですね」。

 単騎勝負の西本直大は、久米康平を追う展開から3着に。ここまでがS級特進。
 「外を踏まされてキツかったですね。もっとモガき合う展開になると思ってたけど。最近は感じが良かったけど、今回も調子が良かったし踏んだ感触が良かったので。今後はS級に定着したいですね」

 橋本智昭はホームから合わせて主導権を握ったが、力負けの6着に。
 「今日は単騎の人を受けてから、カマシ狙いだったけど、初手であの並びでは早めには来ないですよね。ホームで中井君が見えたから踏んだけど、あの上を行かれては。力不足でした」

 唯一来期A級の本郷雄三は、思い切って先頭に出たが…。シンガリ負けに終わり特進ならず。
 「まさかあんな展開になるとは思わなかった。1回出て飛び付こうと思ってたけど。中途半端に終わってしまいました」


ゴール
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