『小松島競輪開設71周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:7月4日

 リニューアルされた小松島競輪場で開催された開設71周年記念「阿波おどり杯争覇戦(GIII)」は、7月4日に最終日が行われた。3車の地元勢と別線になった町田太我、佐々木悠葵らの若い力の激突となった決勝は、太田竜馬がまくりで優勝。19年の完全V以来となる2度目の地元記念制覇で、通算5度目のGIII優勝を遂げた。

決勝戦 レース経過

 号砲で佐々木悠葵が出て前受け。佐々木-和田圭、中井太祐、山田庸平、町田太我-池田憲昭、太田竜馬-小川真太郎-小倉竜二で隊列は落ち着いた。
 青板3コーナーで太田が上昇を開始。並ばれた町田が車を下げると、太田は一旦5番手に入り、町田の動きを確認しつつ赤板で再び踏み込む。1コーナーで佐々木を押さえた太田が先頭に立つが、そこを町田が2コーナーからのカマシで襲う。打鐘で太田を叩いた佐々木の主導権に変わり、2人を出さした太田が3番手を確保する一方、立ち遅れた佐々木は7番手に置かれる。比較的スムーズに先手を奪った町田はグングンと飛ばしていき、最終ホームはややタテ長の一本棒で通過。町田が掛かっていて、佐々木や単騎の2人は苦しくなる一方、車間を詰めた太田は2コーナーから反撃に出る。2センターで太田が町田をまくり切り、池田のけん制を受けながら小川、小倉も懸命に続く。直線では地元3人の優勝争いとなり、押し切った太田がV。小川は伸びず、太田と小川の中コースを突いた小倉が2着に入って好配当の決着に。

太田竜馬選手
太田竜馬選手

 「(地元記念は)年々、緊張が増してくる。みんなの思い、地元記念の大切さがわかってきた」
 初めて地元記念を獲った19年は、GIIIのVラッシュ。地元を含めて高松、岐阜、佐世保と4度のGIII優勝を飾った。「あの時はまだよくわかってなくて、目の前の一戦、一戦を頑張ってるだけだった」。それから多くの時間が流れたわけではないが、中四国地区の盛り上がりとともに、太田竜馬(写真)が背負うもの大きくなっていった。
 「地元記念優勝は、体からしみ出るくらいうれしい。うれしさでいっぱいです」
 2度目の地元記念Vをこう振り返った太田。中四国勢が大挙5人も決勝に進んで、町田太我との別線を選択した。レースは赤板前から太田が町田にフタをする形で、両者の駆け引きが始まった。先に切って出た太田に、8番手で態勢を整えた町田がフルダッシュで襲い掛かる。太田は町田ラインを受けて3番手に入った。
 「(周回中は)どっちかというと後ろが良かったけど。あとは流れのなかで、その場の判断でと思ってた。そしたら町田君がめちゃめちゃいいスピードで来た。あんなスピードは自分も初めて。(飛び付くのも)キツくて、まくれないと思った」
 絶好の展開かに思われたが、真っ向勝負の町田がスピードに乗せて風を切る。車間がなかなか詰まらなかった太田のまくりの背中を押したのは、同県の先輩たちだった。
 「キツかったけど、(まくりに)行ったれと思った。それで自分が止まったら後ろの人たちに獲ってもらえればって。それで無理やり行った」
 逃げる町田を気迫でとらえ、あとは地元3人の勝負。3番手から中のコースを伸びた小倉竜二を1輪退けて、先頭でゴールを駆け抜けた。敢闘門に引き揚げた太田に「オマエの完封や。力勝負で獲って良かったな。もっと積極的にいったらSSになれるわ」と、小倉が称えた。
 「自力で獲った方が自信になる。いずれは(町田とラインを)組むことがあると思うけど、まだまだ人の後ろを付くっていうのは」
 ガツガツしていないのがいいところでもあり、先輩たちにとってはもどかしい部分でもある。太田の“覚醒”が徳島勢の今後の大きなキーとなるのは、自他ともに認識していることだろう。
 「(良くなっている)手応えは確実にある。ただ、まだかみ合ってないなかで獲れたんで、かみ合えばもっともっとイケる。難しいけど、負けパターンがないように。苦手なものをつくらないように、その作業の途中です」
 小倉に次ぐ徳島からのタイトルホルダー。その一番手に太田がいるのは間違いない。

 最終4コーナーで番手の小川真太郎が外に膨れると、小倉竜二は太田と小川の間を踏んで2着に伸びた。
 「直線まで待ってから踏み込もうと思ってた。あとは小川君が伸びてくれたら惰性をもらおうとしたら、太田君が強すぎた。小川君も付きバテしたのかと。太田君は気持ちも入ってた」

 番手でVチャンスが訪れた小川真太郎だったが、直線で伸びを欠いた。
 「太田のレースは完ぺき。付いたなかで一番強かった。勝負どころでスライスしてしまった。自分が一番弱かった」

 思惑通りの展開に持ち込みながら太田にまくられた町田太我は、新鋭らしいレースで存在感をアピールしたものの、悔しさあらわにする。
 「展開としては自分の理想の形だった。自分の力がなかっただけです。(太田が)すぐに来るんじゃないかとペースが乱れてしまった。自分が思ったように駆けられなかった」





次回のグレードレースは、福井競輪GIII「不死鳥杯」が7月8日~11日の日程で行われます。
S級S班の郡司浩平、守澤太志の2名を中心に、総合力のある地元勢の野原雅也、古性優作、神田紘輔、三谷竜生にも注目です。若手の山口拳矢、森田優弥にも目が離せません。
6月27日時点の出場予定選手データを分析した、福井競輪GIII「不死鳥杯」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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