『高知競輪開設60周年記念(GIII)レポート』 最終日編
 
配信日:4月6日


 4月3日から開催されていた高知競輪開設60周年記念「よさこい賞争覇戦(G3)」が6日に全日程を終了した。
 北日本両者vs中国勢の真っ向勝負と思われた決勝戦だったが、優勝を手にしたのは中村浩士だった。競り合った芦澤大輔に大きく内にキメられると、そのまま単騎の松尾淳後位にスイッチ。最終4角から内に切れ込み直線で鮮やかに突き抜けた。

決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると最内枠の鈴木謙太郎がスタートを決めて飯野祐太が続く。以下は中村浩士―白戸淳太郎、芦澤大輔、守谷陽介―吉永和生―富弥昭―松尾淳の隊列となるが、一周回を過ぎると芦澤が飯野の後位へ追い上げて中村と競りとなる。赤板過ぎに踏み上げた守谷が、打鐘過ぎに鈴木を押さえ込んで主導権を奪い、前後のラインが入れ替わるが、飯野後位の競り合いは続く。2センターで芦澤が中村を大きくインに押し込めると、中村、芦澤は勢い余って福島コンビの前に出てしまい、中村は松尾の後位5番手に切り替える。一方、守谷はホームから全開でスパートし、鈴木は6番手に置かれて最終バックは一本棒。鈴木は前との車間を詰めながら3角からまくり上げ、2センターからは松尾も仕掛けるが伸び切れない。直線に入り、外を踏み込む富を牽制しつつ、番手の吉永が守谷を抜きに掛かる。この時に空いた吉永と守谷の中コースを中村が鋭く割って抜け出し、一昨年の松戸以来となる通算2度目の記念Vを飾った。


中村浩士選手
中村浩士選手
 初手から競り合いとなった中村浩士だったが、頭の中は思いのほか、クールだった。打鐘の2センターで芦澤大輔に大きく締めこまれると、瞬時に松尾淳後位にスイッチ。松尾が最終2センターからまくると上手くスピードをもらいつつ最終4角から空いた内を見逃さず直線で前の中国勢をまとめて抜き去り、08年8月の松戸以来の記念制覇を決めた。
 「芦澤君がレース前からかなり入れ込んでいるのはわかっていたけど、逆に僕は冷静にリラックスできていましたね。ガチガチにやり合うのではなく、当たってきた力を上手く推進力に変えるイメージ。ヨコの動きより前と呼吸を合わせる事に専念しようと思っていました。本当は北勢の後ろを追走できれば良かったけど、芦澤君にきつく当たられ、かなり前まで車が出てしまったので、割り切って松尾さんの後ろに切り替えました。松尾さんから良いスピードももらえたし、最後も冷静にコース取りができた。今日は他の選手がみんな気合みなぎっていた中、僕が一番リラックスできていたんじゃないかな? 上手く力が抜けていた事が勝因だと思います」
 今年の大一番と位置づけた地元開催の松戸ダービーでは初日に失格。地元ファンの声援に応えることはできなかっただけに、このタイトルにはなみなみならぬ感慨がある。
 「万全に仕上げていったダービーは良い結果を出せずに終わったけど、そこに向けて自分のピークを作れたことは自分の中でも良かったと思うし、今回も良い状態を維持したまま参加できました。今回はG3のタイトルを積み重ねることができたし、この次はG2、G1と積み重ねていきたい。最近は千葉勢も盛り上がってきているし、弟子の根田(空史)も頑張っているので、僕も負けずに頑張って行かなくてはですからね。その先にはきっと良い結果が待っているはずですから」

 中国ライン3番手から鋭く伸びた富弥昭も中村をしのぎきれず2着まで。
 「後ろがどうなっているのかは全くわかってなかったし、僕も中を割って後悔したくなかったので外に車を出してしまった。結果、浩士にビクトリーロードを作ってしまいましたね。守谷が本当に頑張ってくれたのに申し訳ない。勉強になりました」

 仕掛けどころを逃した鈴木謙太郎は懸命にまくるも3着まで。
 「勝負どころの打鐘4角で内から戻ってきた芦澤さんが邪魔になり踏み出せなかった。ホームでも行こうと思ったけど、守谷さんも合わせる気マンマンだったので躊躇してしまいました。そのあとも、どこで仕掛ければ良いのか最後までわからず…。失敗ですね」

 鈴木と共に人気を集めた飯野祐太も「あそこで芦澤さんと被ったら謙太郎も仕掛けられませんよね。任せた結果なので仕方ない」とうつむき加減。

 鈴木に合わせ中団から先まくりを打った松尾淳も車は進まず5着まで。
 「中村君がはまっているなんて全く知りませんでしたよ。てっきり鈴木君がいるもんだと思っていたから、引き出し役になるわけにも行かずなかなか踏み出せなかった。ダッシュの無い僕があそこまで仕掛けを遅らせたら勝てるわけありませんよね」

 先頭で果敢に風を切った守谷陽介は納得の表情でレースを振り返る。
 「まさか、鈴木君があそこまで来ないとは思っていなかったけど、落ち着いてレースはできたし、自分なりの組み立ては出来た。その上での結果なので悔いはありません。中国地区の若手もみんな見ていただろうし、気持ちが伝わるレースはできたと思います」

 芦澤大輔は終始反省しきり。
 「入れ込み過ぎて全く周囲が見えていませんでした。結局中村さんにもいなされてしまったし、そのうえ北日本の二人に迷惑をかけてしまいましたから。大舞台での経験不足! 完敗です。もっと『熱く冷静に』走れないとダメですね」


ゴール




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