『松山競輪開設74周年記念(GIII)レポート』 初日編

配信日:3月7日

 令和6年能登半島地震復興支援競輪・開設74周年松山記念「金亀杯争覇戦(GIII)」が、3月7日に始まった。好天の下で行われた初日は、北井佑季の強烈な先行に乗った深谷知広がメインの特選レースを勝利。一次予選は実力者がほぼ順当に勝ち上がっていき、地元からは松本貴治、佐々木豪、橋本強がファンの後押しも受けて1着で一次予選をクリアした。8日は準決進出を懸けた二次予選がメインとなる。
 記念シリーズは週末に多数のイベントが用意されているほか、開催中の毎日、レース展望会、先着300名様に松山名物(8日はひと切れ一六タルト)、先着100名様に3連単車券プレゼントが予定されています。松山競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<1R>

鈴木竜士選手
鈴木竜士選手
 地元の真鍋智寛が当日欠場となり、オープニングレースは8名によって行われた。後ろ攻めとなった吉田茂生が赤板過ぎに誘導員を降ろして先頭に立つと、当日欠場により目標を失った田尾駿介が中部勢を追いかけていき末木浩二の外で止まって併走する形に。山中秀将が打鐘過ぎに叩いて出ると、田尾が今度はその3番手に追い上げる流れとなり、外にコースを作れた末木が打鐘過ぎ3コーナーから一気のカマシを敢行する。番手を回った鈴木竜士(写真)が余裕を持って追走しながら車間を空けて援護して、直線できっちり抜け出して人気に応えた。
 「(真鍋の)欠場は気にしていなかった。前を走るのは末木さんなので、末木さんの好きに走ってもらおうと。末木さんも脚を使わずに出られて2人で決まるだけかなと。うまく回していたし最後、(末木が)余裕ないと思ったら踏み直されて、やっと抜けた感じです。すごく強かった。練習は1日も休まずやっていた。計画的にというか、追い込みながらきました。昨日(前検日)より今日(初日)の方が体が軽かったし、明日(2日目)はもう少し軽くなると思う」
 復調を実感している末木浩二は迷いなき仕掛けで別線完封に成功。鈴木の援護もあったが、ゴール前でも力強く踏み直して2着に入線した。
 「真鍋君が欠場して徹底先行がいなくなったし、落ち着いて行けるところからいく作戦でした。脚は道中で回せている感覚があった。松山は初めて走ったけど、くせを感じなかった。奈良記念のあともしっかりと練習できて上積みあると感じているし、自信を持って走れている。体を回復させて明日も集中して走りたい」


<2R>

 徳永哲人、伊原克彦の順番で切った上を磯島成介が打鐘手前で叩いて先頭に躍り出る。人気を背負った河端朋之は後方7番手まで車を下げて反撃のチャンスを窺う。5番手の位置で先に車間を空けてタイミングを図っていた徳永が最終2コーナー手前からまくり発進。いい勢いで前団へと迫ったが車間を空けて待ち構えていた和田圭が最終2センターで強烈ブロック。返す刀で直線で抜け出して白星スタートを決めた。
 「(磯島の番手は今回が初めてで)なんか独特でしたね。ほかの北日本の選手は1回スピードを上げて、(相手が)きたのに合わせて踏む感じなんですけど。ホームも大丈夫かなっていう感じで。まくられそうだなって思っていたら後ろ(伊原)が離れていたので。脚はあるんでしょうね。自分がちょっと下手でした。もうワンテンポ待っても良かったのかな。でも河端さんもきていたし。最低限、2人でやれることはやれたので。シューズのサンを換えて、それに合わせてハンドルを下げたんですけど。新山のアドバイスなんですけどね。ちょっといいのかわからなかったのでもう少し調整してみます」
 後方7番手からのまくりを狙った河端朋之は、前団のあおりを受けて外々を回される苦しい展開に。直線で鋭く詰め寄るも4分の1車輪差の2着となった。
 「緩めばカマシも考えていたんですけど、(磯島が)結構踏んでいったので構えました。(車間の)詰め方的には出切れると思ったんですけど、和田君のブロックでセンターのところであおりを受けてだいぶ遠回りをしてしまったので。最後も徳永さんとからみそうになって力が抜けてしまいましたね。甘かったです」


<3R>

大槻寛徳選手
大槻寛徳選手
 後ろ攻めから近藤翔馬が押さえて出たが、渡邉一成を警戒しながら岡崎智哉が打鐘で叩いて先頭に立つ。さらにその上を小池千啓が叩いて主導権取りに出たが、渡邉が俊敏に関東ラインにスイッチしていきながら3番手外併走からまくり発動。大槻寛徳(写真)は一瞬、踏み出しに遅れかけたが、最終3コーナーで付け直すと直線で鋭く抜け出した。
 「良い所で仕掛けてくれました。2コーナーで口が空いてしまった。油断じゃないけど、古性(優作)君が相手だったりすると入られてしまうから修正したい。踏み出しとかですね。付け直してからはいつもより余裕はないけど、差し込めたので。調子はすごく良い。乗っている感覚は110点をもっていたころに近い感覚です」
 経験値で優っている渡邉一成は想定外の初手の並びにも動じることなく冷静にレースを進める。そしてダッシュを生かした鋭い仕掛けで別線を圧倒してみせた。
 「いつも通り前が取れたら取って、順番がきたら仕掛けようと。あのメンバーで並びは想定外だったけど、切って切ってになるだろうと。岡崎君が内に見えて当たられる前に踏み込んだ。キツいところでいって小池君次第で3、4コーナーで踏み合うかと思ったけど、バックの向かいで踏み勝てた。抜かれたのは真後ろ(大槻)だし良いレースはできたと思う」


<4R>

園田匠選手
園田匠選手
 梁島邦友が赤板過ぎに押さえて出たが、橋本智昭が中川誠一郎の外でフタをする流れから打鐘で一気に叩いて主導権取りへ。地元の外田心斗は5番手へと追い上げてチャンスを窺う。後方7番手に置かれた中川誠一郎であったが巻き返しは早く、最終ホーム手前から車を外に持ち出すと一気に前団をのみこむ。3番手の大野悟郎は離れてしまったが、踏み出しに集中して付け切った番手の園田匠(写真)が直線で鋭く伸びてゴール線へ一番乗り。
 「誠一郎さんが力でねじ伏せてくれると思っていたので、千切れないようにだけ集中していました。悟郎さんが前を取ってくれましたし。ラインのおかげです。一回躊躇するかなって思ったんですけど、あれだけ加速していったので。なかなか(中川と)連係がなかったので、ドキドキしましたけど。ちょっと(レース間隔が)空いたので実戦で走ってどうかなって思ったんですけど。セッティングをいじってもう少し上積みできるように」
 2年前にF1で優勝して以来の当所参戦となった中川誠一郎。約1周以上の仕掛けながらも上がりタイムも良好で、11秒3のロングまくりで別線を封じて2着に入線。
 「動く子が多かったのでチャンスはくるかなって思っていました。(打鐘前に)意外と前が踏み合ってタイミング的にどうかなって思ったんですけど。外田君が行くのか引くのか半々だったので引きました。(そのあとは)意外と余裕があって、外に持ち出したら出られるかなっていう感じでした。(踏み出しは)スムーズに出ましたね。100(%で踏んだ)とかじゃないんですけど。(踏み出しから)意外とペースで行けて、最後までいいペースでいけたんじゃないかなって思います」


<5R>

 後ろ攻めとなった外枠の窓場千加頼が残り2周過ぎに切り、積極的な太田龍希ラインを受けて中団キープに成功する。正攻法の構えから下げた久田裕也は反撃のチャンスを逃してしまい7番手に構えることに。余裕を持って中団で車間を空けていた窓場が最終2コーナー手前から車を外に持ち出すと、番手の藤田勝也が離れるほどの加速で前団を鮮やかにのみ込んだ。
 「取れた位置からでどこでも何でも先行も含めて考えていた。後ろ攻めだったので、切って1つのライン出させてそこから久田君がどうするのかで対応しようと。久田君がカマしてこなかったので、ホームからは自分の踏み出しに集中していた。前回から期間が空いて、レース勘が不安だったけど、そこは大丈夫でしたし、脚力も上がっていた。良い練習ができていたので、練習の成果を出せた」
 後方7番手の位置に置かれるも、最終2コーナーからまくり上げていった久田裕也があおりを乗り越えて窓場の2着に入線した。
 「前受けなら誘導を残して引いて、切って切ってのところでカマシにいこうと考えていたんですけど。前回を引きずっているのかカマシにいけず、中団は窓場さんで仕掛けられず最悪の展開になってしまった。修正します。自転車の感じはよくてバンクも流れてくれた。明日は作戦、組み立てをしっかりしたい。前回はフレームを試してはまらなかったので全て元に戻した。道中から前回と違いました」


<6R>

渡部哲男選手
渡部哲男選手
 初手で中団取りに成功した松本貴治が後ろ攻めから押さえて出た坂本周作を打鐘手前で叩いて出ると、正攻法の構えから手早く引いて態勢を整えていた谷口力也が一気の反撃に出る。3番手の紫原政文が離れてしまい、3番手の位置に入れた松本が最終2コーナーからまくって白星スタートを決めた。
 「あの並びがいいなって思っていたので。切るところで切って、仕掛けるところで仕掛けてと思っていたので良かったです。もっとスパンと行けると思ったんですけど、ちょっと力み過ぎた感じですね。初日は硬くなることが多いんですけど、そこを意識して仕掛けられたので良かったです」
 連係実績ある松本と呼吸を合わせて別線に付け入る隙を与えなかった渡部哲男(写真)が8の1車輪差まで迫り2着で一次予選を突破した。
 「(初手は)真ん中か前か、でも前を取らされるなっていうのはあったんですけど。松本君が勝ち上がるレースをするっていう気持ちが、ああいう流れになったんじゃないですかね。(紫原が降りてきて)そこで脚を使いましたね。3コーナーで内を気にしないといけない感じになったので、上野君はねじ込んでくるかもっていうのがあったので。松本君も流すポイントに入っていましたし、そこを凌ぐことを優先した感じです。(まずは初日を突破して)ほっとした部分はありますね」


<7R>

 車番を生かして初手で前中団を確保できた山口多聞が後藤悠、上田尭弥の順番で切った上を打鐘過ぎに叩いて果敢に攻める。3番手取りに成功した上田が踏み遅れて口が空いてしまうピッチでレースを支配すると、車間を空けて間合いを図っていた芦澤大輔が直線で鋭く差し込み別線攻略に成功した。
 「前以外、後ろ以外で中団のどちらかからのスタートが良かった。スタートけん制が入ったけど、想定通り皿屋(豊)君が前にいってくれて、上田君が押さえたところで一気にいくようなイメージでいた。若い選手はホームで緩めて皿屋君にカマされるが、山口君は2センターで踏み上げてバックの追い風を利用してスピード上げていたので強かった。踏み返しもはっきりしていて、ついていていっぱいになるような感じ。差したのはたまたま。彼が1着でもおかしくなかった。重い不安があったけど、1着を取れたし、長い距離を踏んだことで明日以降のスプリント勝負にも対応できると思う。ハンドルを変えたけど、1着だし良しとします」
 前回の西武園でF1シリーズながらS級戦で初めて決勝に勝ち上がった山口多聞が勢いそのままに一次予選を突破。持ち味の航続距離の長さを生かした仕掛けで存在感を示した。
 「スタートは中団の前か後ろが良かった。作戦で考えていた理想の並びになったのが良かったですね。緩めたらどこでもくるだろうとは思っていて、ホームで少しだけ流したけど、そのあと、踏み直して自分で上げれられたのは良かった。バックを通過したあとに3コーナーで影がまだ綺麗に並んでいる感じだったので、いけるところまで踏もうと思った。点数は上がってきているけど、細かい技術がまだ足りない」


<8R>

武藤龍生選手
武藤龍生選手
 スタートで横関裕樹が勢いよく飛び出して中部勢が正攻法に構える。1番車の瓜生崇智が横関を追い掛けて九州勢が中団確保に成功。後ろ攻めとなってしまった坂井洋が赤板過ぎに押さえて兼本将太を出させたが、下井竜が力ずくの巻き返しを狙って坂井は中団の内で被る形に。兼本が踏み込みながら大きく上へ上がったため、坂井はガラ空きとなった内へと切り込み主導権を奪い返す。高橋泰裕がはぐれてしまい2車となったことを確認していた番手の武藤龍生(写真)が、最大限の援護で応えながら直線で抜け出した。
 「後ろ攻めになってビックリしましたけど。内が空いていたので、切り込んでも面白いなって思っていたらその通りに走ってくれたので。自分としてはいい展開になりました。正直、(坂井は)どんな展開でも勝負できる脚力を持っているので、追走に集中していました。高橋さんがどうかなって思ったんですけど、後ろ見て2車かって。でも2車なりにできることをと思っていました。(新車に換えたばかりの)前回が凄く良かったので、物足りない感じはあるんですけど。もう少し乗り味が良くなるように微調整します」
 別線の隙を逃すことなく判断良く攻め切った坂井洋が包囲網を突破して2着に入線。しっかりと長い距離を踏み切って2日目以降に弾みをつけた。
 「中団か前かって考えていたんですけど、早かったので(後ろ攻めになったのは)仕方ないですね。(打鐘で)併走になったので(下井を)捌くか、でもまくりになってしまうので。初日なので長い距離いきたかったので。空いたので内からいきました。バック過ぎは軽かったんですけど。(今回から)もともとのギア(前51×後ろ13)に戻したんですけど、感覚が違うので。1着はとれていないですけど、ラインで決まったので悪くないと思います」


<9R>

 初手で中団取りに成功した和田真久留が後ろ攻めから上昇してきた渡口勝成の気配を察知すると、先に切って中四国ラインを受ける。後方に置かれてしまった稲毛健太は打鐘付近から早くも巻き返しに出ると、2センターで木村幸希を締め込みながら内へと切り込み、小玉拓真を掬って渡口の番手を奪い取る。人気を背負っていた和田は後方に立ち遅れてしまい、最終2コーナーから番手まくりに出た稲毛がゴールまで失速することなく力強く押し切った。
 「中団を取れるイメージがなかったのでスタートは前を取ろうと。渡口君が前からなら外からモガき合いになるので、それは避けたかった。(渡口ラインは)自力で並んでいたので(口が)空くだろうなって。無理なら外で回してと思っていた。(はまってからは)来られる前にいきたかった。ギヤをかえたりして軽かった。人の後ろ回りで点数を下げていただけなので」
 稲毛の番手を回っていた鷲田佳史は追走でいっぱいとなり、外に浮いた小玉を掬いながら後方からまくり上げた和田真久留が2着に突っ込んだ。
 「3分戦だったので単調なレースになるかと。自力の打ち合いかと思ったら稲毛さんがトリッキーで…。あれをやられると難しくなるし、見てしまった分、仕掛けが遅れた。自力が前で踏んでいて、休まるところがなくゴールまでずっと落ちない感じ。まくり切る脚がなかった。今日は展開もダメだったし不測の事態に対処できなかった」


<10R>

 受けて立つ地元の佐々木豪が正攻法に構えて周回を重ねる。後ろ攻めとなった木村皆斗が残り2周過ぎに誘導員を降ろして先頭に立ち、望月一成が打鐘付近から木村を叩いて主導権取りに出る。中団の木村が大きく車間を空けながら最終2コーナーからまくりを狙ったが思うように車が進まない。後方7番手で車間を空けてタイミングを図っていた佐々木がスピードの違いを示してまとめてのみ込んだ。
 「2つの自力選手が前々に踏んでいくと思ったので。スピードと展開次第で行けるようにと思っていました。ジャンで普通は緩めるので、カマシに行こうと思ったんですけど。木村君も車間を空けていましたし、望月君も踏んでいっていたので。でも(車間が)詰まるところはあると思っていたのでタイミングを見ていこうと思っていました。今日は(バンクコンディションが)重いんですけど、松山は3コーナーが特に重いので。2コーナーからいった方が決まりやすいと思ったので。地元はいつも凄く緊張して(良い)パフォーマンスを出せないことが多いんですけど、直前に最高の練習ができていたので、緊張することもなく走れました。ここ最近では一番いいと思います」
 佐々木の番手を回った濱田浩司は強烈な踏み出しに離れてしまい、後方から内へと切り込むもコースが塞がる。望月をリードしていた石毛克幸が外を張りながら抜け出して2着に強襲した。
 「望月君が積極的にいってくれたので。スタートも想定通りでしたし、いいペースでいってくれました。風があってきついと思ったんですけど。(木村と佐々木が)同時に飛んできたんですけど、(佐々木の)スピードが全然違って。でもなんとか対応して2着には入れたので。そんなに焦らず車間も空けられましたし。悪くないと思います」


<11R>

橋本強選手
橋本強選手
 スタートはやや牽制気味となったが犬伏湧也が誘導員を追いかけて正攻法に構える。後ろ攻めとなった櫻井祐太郎が犬伏の突っ張りを警戒しながら赤板過ぎに押さえて出たが、林敬宏が勢いよく叩き返して打鐘で先頭に踊りでる。大きく後方に立ち遅れた犬伏だが、車間を詰める勢いで打鐘過ぎ2センターから反撃を開始。最終バック手前で先頭に立つと、追走した地元の橋本強(写真)がゴール寸前で差し込んだ。
 「犬伏君の得意パターンで前を取って引いて行けるところからのカマシ。別線が脚を削り合ってくれたから展開が向いた。(犬伏は)気を使って踏み出しいってくれたと思う。付け切れば脚はたまっていたので、調子は問題ない。犬伏君の踏み直しはすごい。抜けないなと思いながらも目いっぱい踏み込んだ。愛媛勢がボロボロで最後、僕で締めて立て直そうと思って頑張った。平日なのにたくさんのお客さんでありがたい。上積みできることはないからケアをしてそなえたい」
 別線に猛抵抗されながらも慌てることなく巻き返した犬伏湧也。最終2コーナーまではうまく回しながら加速していき、最終バックからフルスパート。見事にライン3人で確定板を独占した。
 「前取って遅ければ突っ張りだったが、櫻井君も勢い良くきたので、いかせて追い風を利用していけたらいいのかなと。前に吸い込まれるのを利用するイメージだったが思ったよりも車間が空いていて足並みが合わない感じでいったのでそこは修正ですね。2コーナーぐらいまで回しながらいって、バックでもうちょっと踏み上げたかったですね。最後も強さんに抜かれたので。あの距離は押し切らないとダメ。日に日に良くなると思う。持ち味を出せたら良いかなって思う。セッティングは良い感じなので、あとは体を整えるのとレースの組み立てを意識していきたい」


<12R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 号砲とともに深谷知広(写真)、古性優作、新山響平が飛び出して、それぞれの思惑が交錯する中で深谷がSを取る。古性が前中団を確保して、後ろ中団には嘉永泰斗が率いる九州勢が陣を取り、スタート争いに敗れた新山が後ろ攻めとなって周回を重ねる。残り2周を迎えても8番手の新山に動きはなく、6番手の嘉永泰斗が打鐘手前の2コーナーから叩き出る。気配を察知した北井が慌てて踏み込みながら嘉永の仕掛けを合わせ切る。冷静に前団の様子を見ていた新山が最終ホームから巻き返しを狙ったが、嘉永を合わせ切ってうまくペースをコントロールしていた北井が再びピッチを上げて出させない。最後の最後まで脚をためていた古性に絶好の展開が訪れたかに思われたが、踏み出しこそ良かったが最終2センターから思うように車が伸びていかない。最終4コーナーで外帯線を外しながら古性を張った深谷が直線で北井を差し切ってラインで上位独占を決めた。
 「信じらないくらい(北井が)強かったです。(スタートは)新山君だったら入れてもいいかなって思っていたんですけど、古性君の抵抗もありましたし前になりました。出られるかもって思ったら、盛り返しての繰り返しでした。一瞬、出られたのかなって車間が空いてしまったのでそこは修正点ですね。感じは悪くないと思います。(最終2センターから4コーナーは)外に差し込んでいかないと古性君に締め込まれてしまうので、そこは冷静に。(北井が)残ってくれてよかったです。強い前後の支えがあっての1着なので。本当に頼もしかったです。その中で自分も役割を果たしていけるように。練習はやってこれたので、疲れが抜けていってくれれば」
 嘉永、新山、古性と次々に反撃してくるラインをことごとく封じた北井佑季の強さは衝撃的だった。後ろに目がついてているかのような踏み込みで、巻き返してくるポイント、ポイントに合わせて何度も再加速。ゴール前の粘りも強靭で、豪華メンバーが集結した初日特選でも見事に別線完封に成功した。
 「僕のラインが一番長かったですし、後ろを信頼して思い切って、迷いなく行けたのが良かったと思います。前中団(を取れていたとしても)後ろの並びもありますし。(結果的に前受けとなって別線を)見ながらっていう感じでしたね。嘉永君がくるところしか目視できなかったんですけど、そのあとはくるであろうところで踏んでいった感じですね。深谷さんも和田さんも信頼できますし、自分の仕事をって。本当に後ろの援護があってのワンツースリーなので。ワンツースリーの中に自分も入れて良かったです。最終バックのイメージはもっと勢い良く踏み直したかったんですけど。深谷さんが頑張ってくれたおかげで残れました。僕の力だけじゃなくラインに助けられましたし、深谷さんが番手にいるっていうことが大きな存在になって、ラインで合わせ切れたと思います」
 打鐘で北井が突っ張ったところは3番手を回っていた和田健太郎にとっては難しい判断で、一番の勝負どころだったに違いない。内からの追走をあきらめて冷静に迂回して最終ホームでドッキング。最終2センターから4コーナーにかけてコースを狙った佐藤慎太郎にも隙を与えず3番手の仕事を全うした。
 「(打鐘で北井が突っ張ったところは)微妙だったので。ここで内抜きしてもなっていうのがあったので、迂回した方がいいと思って。たぶんどっちにしろ3着は変わらなかったですね。北井君がレースを作ってくれて、深谷君もなんとかしようと頑張ってくれて。自分は最後、慎太郎さんとの勝負になったので。当たられてお互いに着が悪くなるかなっていうのもありましたけど、その外にもいたので、持って行っても落車の危険性があると思ったので。余計なことはせずについていきました」