『施設整備等協賛競輪in武雄(GIII)レポート』 最終日編

配信日:11月28日

 施設整備等協賛競輪in武雄「飛龍賞争奪戦」(GIII)は11月28日、4日間に渡る熱戦に幕を下ろした。最終12レースに行われた注目の決勝戦は、二段駆け態勢を敷いた熊本勢が先手を握る展開となったが、九州別線で戦った荒井崇博が6番手からひとまくり。地元バンクで5度目のGIII制覇を果たした。地元戦はやはり別格の強さだった。

決勝戦 レース経過

 号砲で坂本貴史がスッと前に出て正攻法。坂本-内藤宣彦の北日本勢が前を固め、その後ろは荒井崇博-五十嵐力の即席ライン。中団は上田尭弥-松岡辰泰-松岡貴久が占め、原田研太朗-高原仁志の徳島勢は後方に待機。
 赤板前の2センターから原田-高原が踏み上げて赤板で坂本に並びかけるが、坂本はこれを突っ張ると原田は五十嵐の後ろまで車を下げた。徳島勢に続いて車を外に持ち出していた上田は2コーナーを立ち直ったところでスパート。これに気づいた坂本も懸命に踏み込むが、上田-松岡辰が前に出ると3番手の松岡貴も坂本をキメて続き、熊本3車が主導権を握り最終ホームを通過。以下は坂本-内藤、荒井-五十嵐、原田-高原の隊形となるで続く。快調なペースで飛ばす上田に対し、4番手の坂本は動けないが、6番手の荒井が2コーナーを立ち直ったところからまくって出る。荒井が素晴らしいスピードで前団に迫ると、3コーナーで上田の番手から松岡辰が発進するが荒井のスピードがいい。ゴール前で荒井は松岡辰を抜き去って1着。当所では記念4Vの実績を誇る荒井が5回目のGIII優勝を飾った。2着は松岡辰、荒井マークの五十嵐が3着。

荒井崇博選手
荒井崇博選手

 号砲と共に勢いよく坂本貴史が飛び出す。高原仁志もS取りを狙ったが失敗して後方に下げる形に。正攻法に北日本ラインの坂本貴史-内藤宣彦、前中団に地元の荒井-五十嵐力。その後ろに上田尭弥-松岡辰泰-松岡貴久が陣を取り、原田研太朗-高原仁志の徳島コンビが8、9番手で周回を重ねる。
 原田研太朗が後ろ攻めから赤板で上昇を狙ったが、正攻法に構えていた坂本貴史が突っ張られて再び後方に。中団外まで追い上げていた上田尭弥が2コーナーの下りを使って一気のスパート。熊本ライン3番手の松岡貴史は遅れ気味となってしまったが、飛びつき気味に踏み込む坂本貴史を締め込みながら追走してライン3車で出切って残り一周。脚を使うことなく不気味に6番手で構えた地元の荒井崇博は2車身程度車間を空けてから最終2コーナーから反撃開始。車間を空けて上田尭弥をリードしていた松岡辰泰が番手から踏み込むも、荒井のスピードは衰えることなく最終4コーナーで肩を並べると直線で1/2車身交わしてゴール線を駆け抜けた。
 
 19年4月武雄記念以来、16回目となるGIII制覇。九州別線で戦う以上、地元の意地がある荒井崇博(写真)にとっては決して負けられない戦いとなった。
 「ハラケン(原田)に獲られる分には、『まぁしょうがない、強かったけんね』って片付けられても、熊本勢には絶対に勝ちたかったけん」
 初手の位置取りからレース展開まで、荒井が思い描いていたイメージ通りによどみなく進んだ。
 「あの位置が欲しかったけん。あの位置しかなかとでしょ。ハラケンがインを切って熊本勢をださせれば、その外に追い上げてからまくってやろうと。でも坂本貴史が突っ張ったけんね。いい方、いい方って流れたね。理想を言えばもっと(上田の)ハコでもつれてくれればもっと良かったけどね。貴史と脚を削りあって4番手を取るよりもサラ脚で6番手の方がいいっしょ」
 上田尭弥の番手で車間を空けて待ち構えていた松岡辰泰。二段駆けも可能な若手の熊本勢にも怯むことなく、力いっぱいペダルを踏み込んだ。 
 「出たね(笑)。天才かって思った(笑)。あそこから仕掛けて二段駆けをされて9着でも自分もお客さんも納得するでしょ? ハラケンにその上をいかれたとしても仕方ないけんさ。でもすげー出たね(笑)」
 レース後に一緒に決勝のVTRを熊本勢と見ながら振り返る。敵同士で戦ったがレースが終われば九州地区のかわいい後輩に声をかけた。
 「俺のまくりが11秒4でお前(松岡辰泰)が11秒7やろ? もっとタイミング良くハコから出とったら俺は行けてなかったかもしれんけん。勝つなら並ばれちゃいかんよ? あそこで迷ったらいけんよ」 
 地元GIIIにはめっぽう強い荒井が、昨年と今年の開設記念ではまさかの二次予選敗退。今回は開設記念ではなかったが4月の『大楠賞争奪戦』の悔しさをしっかりと晴らして笑顔を見せる。
 「こうなったら初日が悔やまれるよね。どうせなら4連勝したかった。でもまぁ良かったね」
 今年でデビュー22年目。年齢も43歳とベテランの域に達しているが、脚力も闘志も決して衰えない。
 「(中川)誠一郎には負けたくないけん。(井上)昌己と誠一郎が強いうちは自分も落ちれんよね。もうちょっと頑張ろうかな。(500勝まで)あと24勝よね? カントダウンしときますわ(笑)」
 昨年は10勝に留まったが、今年はこれで24勝目と破竹の勢いで白星を量産中。ライバルの存在がこれからも突き動かす。

 準優勝の松岡辰泰は頼れる同県の上田に前を託し、先輩の松岡貴久が後ろをがっちりと固めてもらい挑んだ初めてのGIII決勝の舞台。ゴール寸前で逃してしまった悔しさは計り知れない。
 「情けないっすね…。ガルちゃん(上田)が勢いよくいってくれたし、いいスピードだった。荒井さんも来ていたけど、3コーナーで並べれば自分が内だしいけるかなって思ったんですけど…。荒井さんが強すぎましたね…。本当に悔しい。頑張ってくれたガルちゃんに申し訳ないです。判断ミスですね…。もう少し腹を括って出ていかないとダメでしたね。今日は悔しい気持ちの方が大きいです」

 3着には地元の荒井に前を託した五十嵐力が入線。今シリーズは手応えを感じながらも課題を掲げる。
 「相手も番手まくりだったのでどうかなって思いながら後ろで見ていましたけど、スピードが良かったですね。最後はちょっと難しい判断でした。センターでは余裕がありましたけど4コーナーは難しかった。うまい追い込み選手なら迷わず荒井さんの内へ行けているんでしょうけど、自分はやっぱりうまくないので外へいってしまいました。前が1着ですし、自分はしっかり2着に入りたかったですけど…。その辺ですよね。脚の感じは良くなってきていますけど、細かいところを磨いていかないと」





次回のグレードレースは、「松山競輪GIII 金亀杯争覇戦」が12月2日~5日の4日間に渡り開催されます。
今開催はS級S班から新田祐大、地元愛媛からは濱田浩司、渡部哲男、橋本強、佐々木豪、松本貴治、門田凌が出場予定です。
連覇に挑む松本貴治・当地記念3度目の制覇を目指す渡部哲男にS級S班の新田祐大が立ちはだかるのか。前走競輪祭出場メンバーにも注目です。
11月26日時点の出場予定選手データを分析した、「松山競輪GIII 金亀杯争覇戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。
プロスポーツ号外版(表)は"こちら"
プロスポーツ号外版(裏)は"こちら"