『佐世保競輪開設71周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:12月26日

 佐世保競輪場で開催された今年最後の記念、開設71周年記念「九十九島賞争奪戦(GIII)」は、12月26日に最終日が行われた。主導権を握った深谷知広ラインの3番手から、和田健太郎が追い込んで優勝。一昨年10月の京王閣以来となる通算3度目のGIII制覇で苦しんだS級S班の21年を締めくくった。また、レインボーカップチャレンジファイナルでは、北井佑季がまくりで一発勝負を制した。北井を含めた梅田加津也、渡口勝也の上位3人がA級2班に特班した。

決勝戦 レース経過

 外枠の金子幸央、鈴木裕が飛び出し金子がSを取った。新山響平-金子が前を固め、その後ろに単騎の松岡健介が入る。中団は深谷知広-鈴木-和田健太郎の南関勢が占め、竹内翼-井上昌己-小川勇介の西日本勢は後方に待機。
 赤板前の3コーナーから竹内がゆっくりと踏み上げる。正攻法の新山は竹内を突っ張る構えを見せたが、赤板過ぎの1センターで車を下げた。竹内-井上-小川が前に出ると松岡もこれに続く。西日本勢を追っていた深谷は2コーナーから踏み込んでいて、ジャン前で竹内を押さえて先頭に立ち鈴木-和田で追走。竹内が4番手、新山は8番手となった。先行態勢に入った深谷はぐんぐんとペースを上げていき、最終ホームは一本棒のままで通過。2コーナーから竹内、新山がほぼ同時に仕掛けるが、竹内はまったく車が出ず、新山もびらんだ竹内のあおりを受けて不発。深谷-鈴木-和田の南関勢が完全に主導権を握ったが、南関勢にスイッチした井上が3コーナーからスパートする。4コーナーを回ると番手の鈴木が先頭に立つも伸びを欠き、中を割った和田、まくり上げてきた井上の伸びがいい。ゴール前は和田と井上の争いとなったが、和田がタイヤ差で1着。今年の最終戦で今年初Vをゲットした。


和田健太郎選手
和田健太郎選手

 昨年末のグランプリで輪界の頂点に立ってから1年。苦悩の1年間を戦い抜いた和田健太郎(写真)が、今年S級S班として挑む最後の戦いに勝利した。
 新山響平ラインがスタートを取って、南関勢は中団からの組み立てがかなった。竹内翼が切ると、すかさず深谷知広が叩いて出た。
 「(初手で)中団はそこまで考えていなくて、また深谷包囲網で前を取らされるだろうなと思っていた。新山君が前受けで、深谷君は先行しやすくなったと思う。すごい掛かりで、道中は口が空いてしまった」
 輪界屈指の機動力を誇る深谷がすんなりと駆けているのだから、別線の巻き返しは容易ではない。中団からまくりを狙った竹内翼は1車も出ずに外に浮き、新山もあおりを受けて不発。3コーナーから外を踏んだ井上昌己をけん制しながら鈴木裕が前に踏み込み、ライン3番手の和田は鈴木と深谷の中のコースを踏む。地元の執念で外を伸びた井上と、和田のゴールはほぼ同時だ。写真判定の末に、軍配は和田に上がった。19年10月京王閣以来、通算3度目の記念優勝。いつもと変わらず、ラインへの感謝を忘れない。
 「紙一重でしたね。キック(鈴木)は抜いたと思ったけど、井上さんも外を伸びていたので。でも、自分のいくコースをいって、後悔はなかった。突き抜けはデキ過ぎです。前2人が頑張ってくれたおかげ。優勝はデキ過ぎです」
 昨年のグランプリを制し、初のS班として臨んだ2021年。だが、実に5度の落車に見舞われ、本来の決め脚は鳴りを潜めた。それでも、試行錯誤をやめない先に見えた光が、今回の優勝につながった。
 「前回の伊東記念の3日目からバチッと良くなった。完調とはいかなくても、いいところまでは来られた。今回の3日目に、深谷君のギリギリのまくりに付いていけた。深谷君は本来はスプリンターですし、今日(決勝)のような競走はラインのためにしているんだと思う。3日目のようなまくりが彼の真骨頂。それに肉薄できたのが良かった」
 完全復活とは、まだまだいかない。それでも兆しは見えている。S班からは陥落したが、来年も大きなプレッシャーの中で戦うことに変わりはない。
 「これから先も苦しい戦いが続くと思っています。ここを勝ったからって、そんなに甘くない。これだけで喜んではいられないです。体調も完調とはいっていない。自分としては、まだまだかなり長い道のりだと思っています。本調子ではないなかで、今年はラインのみんなに助けてもらって良い着を取らせてもらっていた。逆に言えば、それだけラインのみんなに迷惑を掛けたと思っています。来年はそれを返していきたい」
 仲間たちへの大きな感謝を胸に、来年もまた一戦一戦を積み重ねていく。

 和田にタイヤ差で敗れた井上昌己は、悔しさを押し殺して語った。
 「惜しかったけど、届かなかった。悔しいね。深谷君が仕掛けるのは想定していたけど、あんなにいくとは思っていなかった。竹内君が無理やり仕掛けてくれて、コースを作ってくれたけど、ワンテンポ、踏むのを待った分、伸びなかった」

 深谷の番手の鈴木裕は、内、外を交わされ3着。
 「(深谷は)あそこから仕掛けるとは思っていなかった。深谷君がすごかった。外に振って戻って慌てて無理やり踏んだら出なかった。佐世保のあの位置は、進まないんですよね。車間を空ければ良かったです。あの辺が下手でした。内は締めながらじゃないと違う人が来るかもしれないけど、和田さんも付いていたし、コースを確保しないといけないしで、そこも難しかった。もう少しうまく仕事ができるようにしたいです」





レインボーカップチャレンジファイナル

北井佑季選手
北井佑季選手

 3車で結束した神奈川勢が、ラインの絆を示した。号砲と共に勢いよく梅田加津也が飛び出して、神奈川勢が前受けからレースを進める。渡口勝成、平山優太が切りに動くが、金田涼馬は突っ張って先行態勢へ。平山が打鐘過ぎから巻き返して金田を叩き切ると、北井佑季(写真)は、金田から福島勢後位にスイッチ。間髪入れずにまくりを放つと、平山の番手からタテに踏んだ窪木一茂を飲み込み1着でゴール線を駆け抜けた。
 「神奈川が3人並んで、金田君が前にいく強い気持ちでいってくれたおかげで、結果、梅田君とワンツーができた。金田君が主導権を取るのが一番ラインで決まると思っていました。金田君がいけるところまでいくと強い気持ちで赤板からモガいてくれて、後ろから(別線に)来られると思い、彼の気持ちに応えて、梅田君と決まるようにいかせてもらいました。養成所に入る前から師匠(高木隆弘)に朝から晩まで面倒を見てもらっていました。偉大な人なので、師匠に追いつけるように、これからもやっていきたい。(A級1、2班戦でも)まずは積極的なレースを繰り返して脚を付けて、結果が伴ってくるようになって、S級にいければ良いなと思います。お世話になっている師匠や、金田君の気持ちを背負って一走、一走、走っていきたいです」
 2位入線の窪木一茂はスタートの位置取りで内側追い抜きの失格。梅田加津也が2着に繰り上がったが、道中で北井との連結を外したことを悔やむ。
 「同期みんな脚があって、いろんな想定をしていたのに内、外を気にして離れたのは悔いが残る。金田君が体を張っていってくれた結果のワンツー。レース運びで課題も見つかったし、自力でも気を引き締めてやっていきたい。A級1、2班戦ではさらにタテ脚、ヨコ、さばきのレベルが上がるから練習を含めて気を引き締めていきたい」
 金田に突っ張られた渡口勝成は、米嶋恵介のアシストもあって神奈川勢後位に入り直す。梅田に続き、繰り上がりでの3着でA級1、2班戦への切符をつかんだ。
 「前々で勝負できた結果の3着。金田君が突っ張ると思っていなくて、米嶋さんが位置を取ってくれて助かった。米嶋さんのおかげです。神奈川の2段駆けはスピードが掛かっていて、かなわなかった。米嶋さんに申し訳なかった。A級1、2班戦になってもやることは変わらない。先行主体のレースでいきたい」



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また、12月28日にはガールズグランプリ2021が開催されます。児玉碧衣が4連覇を達成するのか。他の選手が女王の座を勝ち取るのか。こちらも目が離せません。
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