井上がまくると同時に内から古田義明のブロックに遭い離れ気味に。それでも今年9勝を挙げる男の走りは違った。「苦しかったけど後ろに小野も付いてるし、あそこは絶対離れる訳にはいかんかった」。地元Vを目指して佐藤友和をまくり切った井上に追い付くと、そこから最後はグイッとひと伸び。久々だった立川から1カ月、早くも今年二度目の記念優勝を飾る。 「空気が読めんと言われたけど、僕も22、3の選手じゃない。次はいつ獲れるか分からんしね。交わしに行くときは抜けるかどうか分からんかったけど、よく抜けた。自分でもビックリです」 準決勝も苦しい展開でも諦めずに勝利をつかんだ。この躍進には訳がある。 「去年の中野カップ(久留米記念)が終わったくらいに小3の長男が『さいごまで諦めない』って書いた紙を持って写真に写ってた。それを見て自分も性根を入れて頑張らなってグッと来た。今回も何としても優勝と思ってたし、39歳最後のレースで勝てて良かった」 来月5日に不惑の40歳を迎えるベテランの快進撃は、まだまだ止まらない。
まくった井上昌己は惜しくも1/8輪差で地元記念優勝を逃した。 「併走以外は良い感じだったけどね。あとちょっとだったけど仕方ない。力不足です。でも3日間、ラインでワンツースリーができた点は満足してる。また来年頑張ります」
九州ラインの三番手を回った小野俊之も「ラインでワンツースリーだったので」と、まずは九州で上位独占の結果を喜んだ。 「優勝だけを狙うなら中を行っても良かったけど、今日はあえて外を踏んだ。昌己が優勝だったら一番だけど、それが競輪だから。今回は収穫があったし、問題ない。次の地元戦(西王座)で頑張ります」
細切れのレースで主導権を奪ったのは佐藤友和だった。井上のまくりに遭い8着に敗れたが、「押さえ先行は考えてなかったし、カマシかまくりかなって作戦でした。でも展開上、ああなってしまいましたね。やることをやってダメなら練習するだけ。中途半端なレースをするよりは良かったです」とサバサバした表情。
後方からまくり上げた石丸寛之だが届かず4着。「佐藤があんなにスンナリまくられるとは思わなかった。あいつ(井上)が強かった」と読みこそ外れたが、「今日が一番アタリは良かった」と復調に手ごたえをつかむ。
井上と三番手を争う形になった吉田敏洋は「前を取りたかったけど、(初手が)後ろになった時点で、ないなと思った。打鐘の4コーナーで友和の前まで行きたかったけど」と5着に敗れたレースを振り返った。