『熊本競輪開設71周年記念in久留米(GIII)レポート』 最終日編

配信日:10月10日

 久留米競輪場で開催された熊本競輪開設71周年記念「火の国杯争奪戦(GIII)」in久留米は、10月10日に最終日が行われた。決勝は前受けから別線を突っ張った北津留翼が先行策。番手の嘉永泰斗が、最終バック手前からまくりを打って優勝。記念初優出の23歳の嘉永が、地元の熊本記念を制した。

決勝戦 レース経過

 号砲で嘉永泰斗が飛び出して、北津留翼-嘉永-瓜生崇智の九州勢が前受け。中団に平原康多-諸橋愛-磯田旭の関東勢が入り、以下は松浦悠士-佐藤慎太郎、谷口遼平で周回を重ねる。
 青板バック手前から松浦が早くも上昇。松浦は3コーナーで北津留に並びかけてくるが、北津留は引かない。赤板経過と同時に北津留は突っ張って主導権を譲らない構え。誘導を切らした松浦は慌てず九州勢の後位に割り込み、平原は追い上げてきた佐藤まで入れて6番手で仕掛けるタイミングを窺う。一連の後続の動きを確認した北津留は打鐘3コーナーからペースアップ。平原の出方を警戒しつつ松浦が仕掛けたのは最終2コーナーからだった。これに合わせて嘉永が3コーナーで番手まくり。スピードが合ってしまった松浦は瓜生と併走する一方、松浦を追ってスパートの平原が大外を上がってくる。抜け出した嘉永の後位が瓜生と松浦でモツれたまま直線へ。車体をぶつけ合ってやり合う2人だったが、踏むコースがなく詰まった佐藤が接触してゴールを目前にして落車。松浦も落車し、平原も失速してしまう。結局、嘉永が先頭でゴールし、2着も瓜生で地元ワンツー。3着は平原で決着した。


嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手

 地元、熊本の若い2人の前を北津留翼が務めて、できあがった九州ライン。年齢だけでなく実績でも断然の北津留に委ねただけに、嘉永泰斗(写真)は初の記念ファイナルであっても答えを出せなければならない立場だった。
 「この並びになったからには、チャンスがある位置じゃなくて責任のある位置。(優勝を)獲らないといけない並び」
 自らに優勝のノルマを課した嘉永が、デビュー通算100勝というメモリアルで記念初制覇を飾った。
 「(通算100勝は)うれしいですね。北津留さんと瓜生(崇智)さんのおかげです。地元は2人しか勝ち上がれなかったけど、(優勝を)獲れて良かった。(北津留が)突っ張って誰も来ていなかったと思ったが、余裕がなくて(番手から出て)行ってしまった。2コーナー過ぎからも余裕がなくて、後ろの状況がわからなかった」
 こう振り返った嘉永だったが、結果的には抜群のタイミングで番手まくりを敢行。あと少しタイミングが遅れていたら、松浦悠士にかぶっていた可能性もあった。が、松浦は瓜生の横まで。輪界入りを決意するキッカケになった頼れる先輩が松浦を外に弾いて、嘉永はゴールに向かって踏むだけだった。
 「ゴール前で誰かが落車した音は聞こえたけど、必死に前に踏んだ。ゴールしてすぐは(優勝した)実感がわかなかったけど、だんだんとわいてきた。獲ったんだなと」
 平原康多、松浦、佐藤慎太郎のS級S班らのアクシデントを背中に、嘉永が先頭でゴールを駆け抜けた。
 「瓜生さんは中学生の時からの憧れで、瓜生さんを追って選手になって一緒に走れて良かった。去年は(地元記念を)走れず悔しかった。今年は呼ばれたので、決勝に乗っていい勝負がしたいと思っていた。練習してきて良かったです」
 今シリーズは一次予選のオープニングで、瓜生と連係してワンツー。瓜生に差されはしたものの、地元勢の流れをつくった。そして準決に続いて、シリーズ3度目のとなる瓜生とのワンツーで地元シリーズを結実させた。
 「初日は1レース1番車で緊張したけど、人気に応えられた。そこでいいスタートダッシュを決められたのが、ここにつながったのかなと。決勝には最低でも勝ち上がりたくて、勝ち上がれて優勝を獲れて言うことはない。今後はもっと練習して、自分が前を回って九州の先輩方に恩返ししたい」
 前回の共同通信社杯ではビッグ初勝利を遂げて、自信をつけて今シリーズを迎えた。16年4月の熊本地震でホームバンクの熊本競輪場も甚大な被害を受けた。その後は開催休止を余儀なくされたが、24年度に再開されることが決まった。
 「熊本が再開すれば、GI開催とかもあるだろうと思います。だから、それまでにGIでも戦える力をつけておきたい」
 まだ23歳。可能性を秘めた嘉永が、これからの熊本をリードしていく。

 嘉永が番手まくりを打ち、最終バックから瓜生崇智は、松浦と併走。松浦にあたり負けすることなく、直線で踏み勝って2着に入った。
 「強かったですし、北津留さんのおかげです。自分は最低限、3番手の役割が果たせたかなと。松浦さんが外にいて、コースがなかった。連日、3番手の難しさがあった。(熊本勢としては)これまで合志(正臣)さん、中川(誠一郎)さんのすごさを見てきたんで、新しい時代をつくっていきたい。来年は僕が優勝できるように」

 突っ張られた松浦が4番手に降りて、平原康多は6番手からの立て直しを強いられる。最終3コーナーからまくり追い込んだが、ゴール前で松浦との接触もあって3着まで。
 「(赤板2コーナーのところは)あれで(松浦の内に)行ってたら失格だと思った。そのあとは(6番手まで引くか)迷うところもあった。(まくった)松浦君が止まってたんで、その上を行ける感じがあったけど、嘉永君が伸びていた。(ゴール前の接触でバランスを崩したが)コケるよりはマシですね。ここで落車せずにいられたんで、悪い流れを断ち切れたかなと思います。上向いてきているんで、もうちょっと上積みして寬仁親王牌を迎えて戦えるように」

 北津留翼は、同地区の若い2人を連れてレースを支配。中川誠一郎と連係した準決での思いをぶつけるように、地元コンビに絶好の展開をメイクした。
 「自分が前を回らせてもらったんで、先行だけはって思ってました。松浦君を突っ張って、あとは目いっぱい踏んでと。本来なら(中川)誠一郎さんが乗らないといけないのに。自分だったんで。そこはしっかりとって思ってました」





次回のグレードレースは、前橋競輪GIII「ドームスーパーナイトレース」が10月14日~17日の日程で行われます。
寬仁親王牌直前の開催のため、トップクラスは少ないが、高松宮記念杯を制した宿口陽一をはじめ、柴崎淳、佐々木悠葵、吉澤純平ら強豪が参戦する予定です。また、ガールズケイリンが3R4日制で開催され、小林優香や久米詩らが出場予定です。
10月4日時点の出場予定選手データを分析した、前橋競輪GIII「ドームスーパーナイトレース」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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