『第57回オールスター競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:9月15日
 前橋競輪場で開催された「第57回オールスター競輪(G1)」は、15日に最終日が行われ5日間シリーズに幕を下ろした。ロングランの熾烈なシリーズを勝ち抜いたファイナルの9選手には、SS班4人をはじめ豪華なスターが集まり、舞台の前橋バンクは熱気を帯びた。第11レースで行われた決勝は、井上昌己の主導権。最終ホームで3番手確保した武田豊樹が、まくりで2度目となるオールスター制覇。12年の競輪祭以来となる通算5度目のG1優勝を遂げグランプリの出場権を獲得した。

猪俣康一選手・伊藤裕貴選手 トークショー
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岩崎良美 オータム LIVE
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小林恵美のGJKトークショー
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意気込みを語る決勝戦出走選手
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「中村アン&中野浩一」トークショー
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最終日で盛り上がるスタンド
最終日で盛り上がるスタンド
決勝戦 レース経過
 スタート争いとなるが、天田裕輝を退けて浅井康太が正攻法の位置を確保。天田は後方まで下げて、浅井―金子貴志、武田豊樹―神山雄一郎、井上昌己―岩津裕介、新田祐大、天田―平原康多で周回を重ねた。
 青板1角から天田が動きだす。2センターで前団に並んだ天田ラインには、単騎の新田、井上―岩津が切り替えて続く。赤板手前で天田が誘導をドカして先頭に立つと、その3番手が浅井と新田で取り合いとなるが、外の新田は引かされる。この動きを見ていた井上が2角立ち直りから一気にカマす。天田もペースを上げるが、井上が打鐘で叩いて先手を奪取。3番手には天田となるが踏み遅れて車間が空き、井上の仕掛けを追って上がってきていた武田―神山に割り込みを許す。好位を確保した武田は、2角を立ち直ってまくり発進。これに岩津が番手まくりで応戦し、両者で車体を合わせてのモガき合いとなったが、直線半ばで岩津をねじ伏せた武田が12年11月の競輪祭以来のG1制覇。2着にも岩津を交わして神山が続き茨栃勢でワンツー決着。一方、バック最後方からまくった新田と浅井はそれぞれ4、5着までが一杯だった。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰
表彰
<1R>
阿竹智史選手
阿竹智史選手
 同型不在のメンバー構成で阿竹智史(写真)の先行と思われた、オールスター最終日のオープニング。しかしながら、ふたを開けると赤板で前受けの柴崎俊光が猛然と突っ張って主導権。阿竹はあろうことか打鐘で最後方の9番手。それでも4コーナーから巻き返すと、最終2コーナーでは逃げた柴崎俊光をとらえてあとはひとり旅。
 「実質、自分の先行一車だと思ったし、早く押さえ過ぎても(重注)が付くし遅く(仕掛けて)行ったけど、まさか(柴崎が)突っ張るとは思ってませんでしたね。後ろにも迷惑掛けたし申し訳ない。そこまで踏んでなかったから9番手になってしまったけど。すぐに巻き返せたし、スピードは良かったと思います」
 好位をキープしていた合志正臣は、最終2コーナーから西川親幸を連れてまくり上げる。後続をちぎって前を行く阿竹に迫ることはできずに、最後は西川に交わされ3着。
 「阿竹君も押さえに来るのが遅かったし。柴崎君が突っ張るはで、想定していた展開と違ってきつかったですね。本当は阿竹君が早めに押さえて流したところを、自分が一気にカマしたいなと思ってた。うまく行きませんでしたね…。でも、あの距離しか踏んでないのに、タレているからあれでよかったのかな」

<2R>
中村一将選手
中村一将選手
 中村一将(写真)が風を切り、G1を1着で締めくくった。レースは最終ホーム過ぎに中四国勢を叩き主導権を握ると、別線を完封しての逃走劇。後続の追撃も振り切って押し切った。
 「今日(最終日)は展開を見て仕掛けました。(オールスターは)消化不良の部分もありました。でも、もう少し対応力をつけるとか、課題も見つかったし、2走目の外併走からのカマシとか練習の成果が出たりとかいい部分もあった。これからも、毎レース、次につながる競走や、積極的な競走を心掛けて走っていきます」
 中村後位は、伊藤健詞と宗景祐樹の競り合いも、打鐘後に競り勝った伊藤が中村にしっかり続き2着。
 「久しぶりの競りでした。ワンランク、ツーランク上の脚があればもっと楽に競り勝てるのに…。去年もオールスターを走ったけど、一年たっても成長がないなって思って。年とか関係なく、自分が常に進化していかないといけないですね」

<3R>
岡田征陽選手
岡田征陽選手
 赤板の2コーナーから山降ろしで三谷竜生に襲い掛かった早坂秀悟との呼吸が合わずに、大槻寛徳が離れて北日本勢は散り散り。早坂が主導権を奪って、番手に入った三谷も消耗戦に脚を使い、埼京コンビのまくりごろ。最終ホーム手前からロングまくりの藤田竜矢を岡田征陽(写真)がズブリ。
 「もうすべて藤田君に任せていたので。自分はなにもしてませんよ(笑)。なかなかあのまくりは差せない? (自分は)余裕はありましたから。いい形で最終日を終えたから次につながると思います」
 2着の藤田竜矢は2度のシンガリ負けを喫した今シリーズだったが、1勝2着1回と見せ場も作った。
 「三谷君と早坂君が2人でもっと踏み合って欲しかったけど…。しかも三谷君が番手に入ったのがわかったし、自分としては相当きつかった。いいスピードだった? もう必死でしたよ。でも、まくり切れたし、徐々にだけど体とセッティングがかみ合ってきた。これからもっと楽しみですよ」

<4R>
小松崎大地選手
小松崎大地選手
 赤板過ぎに高久保雄介に押さえ込まれた小松崎大地(写真)だったが、坂本亮馬が連結を外して小松崎が高久保の番手に一度は収まる。離れた坂本が追い上げると、小松崎は迷うことなく踏んで出る。今度は単騎でカマした脇本雄太を受ける形になって、空いた車間を詰める勢いで番手まくり。前々へと攻める強い気持ちが好結果につながった。
 「脇本君が単騎だったり、こんな細切れはあんまりないですからね。みんな動けるし、それでも自分は前々に行って主導権を取るつもりでした。チャンスは何回もないし、それを逃さないように踏んでいた。それが結果、形となったんだと思う。今回のG1は勝負するつもりできたし、2次予選が悔やまれるけど。脚の状態は良かった」
 小松崎に続いた齋藤登志信が、後輩の成長を肌で感じ取って先を見据える。
 「高久保君を出させないように(小松崎が)踏んだ時点で、今日はもう大丈夫だなと思った。小松崎が前に出ようって気持ちがありましたからね。これから自分の季節になってくるんで、僕もこれを機に次もしっかりと」

<5R>
坂口晃輔選手
坂口晃輔選手
 見せ場さえ作れず不完全燃焼の4日目を教訓に北津留翼が奮起。高橋陽介の反撃を阻んで突っ張り先行策に出た。
 「不甲斐なかった昨日のぶんまでと思っていました。作戦通りに走れましたね。高橋さんを突っ張ったあと、少し流したら神山(拓弥)君が追い出しをかけるように車をはずしたのが見えた。それで軽く合わせる感じで踏んだから、もう一度仕掛けて来た高橋さんにも合わせやすかったと思う。最後はタレたけど、ラインで決められてよかった。今日は力は出し切れました」
 要所、要所で追走に脚を使った坂口晃輔(写真)だったが、北津留ラインの3番手から外を踏み出すと3車横一線のゴール勝負を制して1着。
 「道中で山内(卓也)さんにハグれてしまい、脚は使ってたんですけどね。最後は内を締めながら、成清(貴之)さんが自分のところで止まったのがわかってから直線に入って外を踏みました。でもまさかアタマまで届くとは(笑)。本当にうれしいですよ」

<6R>
吉本卓仁選手
吉本卓仁選手
 吉本卓仁(写真)が早めに動いて先行策。一旦は下げた稲毛健太が内を盛り返して吉本後位で粘る流れ。木暮安由のアタックに合わせて吉本が打鐘の4コーナーから踏み込むと、橋本強は稲毛をキメて番手を死守。木暮のまくりも橋本がブロックし不発にして、吉本が力強く逃げ切った。
 「(稲毛が)前を取った時に突っ張るのかなっていう思いもあったけどね。(稲毛が)粘ったのはわかったんで、このまま踏むと後ろが離れるかもしれないと思って、ギリギリのところで踏みました。後は木暮だけ警戒して。作戦通りでしたね」
 吉本ラインの3番手を選択した中村浩士は、流れ込んで3着に入線。吉本を評価する。
 「吉本君がすごいね。気持ちが伝わってくる先行でしたね」 

<7R>
桐山敬太郎選手
桐山敬太郎選手
 好調な川村晃司に、今年G1のタイトルを奪取し一皮むけた稲川翔が援護する近畿ラインが人気を集めたが別線の包囲網は厳しかった。赤板前から踏み上げる川村に対し、原田研太朗が意地の抵抗。打鐘前に叩き切ったが6番手にいた飯野祐太もすかさずスパート。それでも稲川の献身的な援護もあって川村は意地で飯野を突っ張り切るも、今度は自力に転じた渡邉一成が川村に襲い掛かり一気にまくり切る。そのまま押し切るかに、後方で脚を溜めていた桐山敬太郎(写真)が惰性を利用してまくり新田康仁と南関ワンツー。
 「2次予選は変に考えてしまって失敗したけど、その後はいつも通り頭で考えずに、体が動くままに任せて走れたから結果もついてきた。渡邉君の動きも見えていたし、うまく流れに乗れた。決勝には乗れなかったけど、この3勝は大きい。課題も見つかったし今後にもつながるいい流れを作れた開催になった」
 別線の激しい抵抗にあった川村晃司は、シンガリに沈んだ。
 「原田君は楽に叩いたつもりだし、飯野君が来るのも見えて合わせ切る自信はありました。ただ、渡邉君が(飯野の)上をまくってきた時にはもういっぱいだった。警戒されているのはわかったけど、自分のレースがしたかった。悔しいですね」

<8R>
小林大介選手
小林大介選手
 池田勇人が前に出ると、別線の抵抗も受けずそのままペースを握って逃げる。最終1センターから4番手をキープした藤木裕が襲い掛かるが、番手の小林大介(写真)は車間を斬って後続に対応。4コーナーでは後ろで落車のアクシデントあったが、小林が差し切った。
 「池田君が逃げてくれたおかげです。決勝を目指してきたってのはあるけど、最終日はしっかり1着で締めたいと思ってました」
 佐藤友和が6番手からまくり上げるも、前の落車を避けて3着がいっぱい。
 「先行したかったですね。仕掛けるタイミングは2周だったけど、池田君に惑わされました。あとは自分の中に自信がなかったですね」
 2次予選でバンクレコードを叩き出した中川誠一郎だが、仕掛けられず5着。
 「近畿の3番手から勝負しようと思っていたけど…。疲れていて、重かったですね」

<9R>
石井秀治選手
石井秀治選手
 2日連続で激突する竹内雄作と矢野昌彦で、33バンクでの主導権争いはヒートアップ。赤板前から両者での踏み合いは矢野に軍配が上がるも、竹内を合わせ切っていっぱい。脚を溜めた石井秀治(写真)が最終ホーム前から一気に巻き返すと、連日の動きが目を引いた望月裕一郎がピタリと続いて南関決着。最終日にようやく石井らしいスピード溢れるまくりを披露。うれしさのあまり、ガッツポーズまで飛び出した。
 「せっかくファンの方々に選んでもらったのに全然ダメだったので、最終日こそはと思って走りました。一番人気だったみたいなので、期待に応えられてうれしいですね。来年もまた選んでもらえるように、これからもっともっと1着を取れるように練習してきます」。
 石井の仕掛けに遅れるどころか、望月裕一郎がゴール前で迫っての2着。
 「落車明けの開催で正直不安はあったけど、脚に余裕があったし。初日から突っ込めていたので、(石井を)抜いてやろうと思ったけどね。あいつが強くて無理でした(笑)。でもまあピタって付いていけているし、自信になりますね。また、しっかり練習して、活躍できるように頑張ります」

<10R>
稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
 後ろは同県の大塚健一郎。腹を固めた菅原晃は、相川永伍の巻き返しを赤板から突っ張って逃げる。大塚のブロックもあって、外に浮いた相川は出切れず後退。最終ホーム手前から反撃に出た稲垣裕之(写真)だったが、浮いた相川が戻ろうとしたところとタイミングが重なって踏み場を失い一度は失速。そこからこじ開けるように再度踏み上げて、執念のまくりで村上義弘とのワンツー。稲垣の気迫の走りにスタンドが沸いた。
 「(コースが塞がれても)あんな終わり方は、許されないんで。あそこは判断ミスですね。前橋だと外、外はきついっていう気持ちがあった。相川君が終わったと思ったところに踏み込んでしまった。調子は悪くないし、競輪祭でも戦える状態にある」
 「強いですね」とは、人気を背負っていただけに自力発進も辞さない構えで、最終2コーナーから踏み込みかけた村上義弘。汗をぬぐい、後輩の仕上がりを確認する。
 「(稲垣の)態勢が苦しくなって、自分で行こうと思った。稲垣は脚力的に上がっている。自分はまだまだ課題がある。周りが期待するよりも僕の脚がないから、後輩には変に責任を負わすことになる。その脚力を確認したかったから、(シャイニングスター賞では)先行で試したかった。これからもひとつ、ひとつを積み重ねて…」

<11R>
岩津裕介選手
岩津裕介選手
神山雄一郎選手
神山雄一郎選手
 打鐘過ぎに井上昌己が主導権を奪取。岩津裕介(写真)との2車のラインだっただけに、別線を3番手併走でもつれさせる思惑だったが武田豊樹があっさりその位置を奪取しては、さすがの井上もお手上げ。車間を詰めながらまくった武田に合わせて、岩津が井上マークから番手発進。最終3コーナーでは両者のサイドバイサイドとなったが、最後は武田に力でねじ伏せられた。井上の先行に感謝しながら岩津が、2車のラインでの苦しい胸の内をこう振り返る。
 「武田さんが後ろにいるのはわかっていた。(武田が)勢いをつけて来ているし、僕が振って止めると、みんな内に行くでしょう。だから、僕もある程度のスピードに合わせて踏んで行かないとって思った」
 武田の動きにしっかりと対応した神山雄一郎(写真)が、ゴール線でのハンドル投げで岩津を交わして準V。武田とのセットが原動力となっているだけに、武田に続いての2着には、スッキリとした顔で満足そうに口を開く。
 「今の持っている自分の100%を出せた。(1月の)平のレースで武田に離れてから、8カ月やってきたことが今回の結果だと思う。今回は抜群のデキだったし、体調も抜群。追走に関しても満点のレースだった。展開次第では自分がタイトルを狙える手応えもつかんだし。血の煮えたぎるようなメンバー構成で戦えて幸せですよ。次は武田にもうちょっと詰め寄れるように」
 単騎の新田祐大は、好位に追い上げた武田ラインに反応できず最終ホームで9番手。直線で大外を強襲するもすでに勝負は決していて4着。
 「今日は(優勝を)狙いすぎて、勝負どころで仕掛けなかった自分が悪い。武田さんの動きに乗って、すかさず行けばよかった。そこを見てしまった。今回はこういう結果だったけど、日々の動きは悪くなかったので次につなげていきたい」
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