『被災地支援競輪第59回オールスター競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:8月15日
 熊本地震被災地支援競輪・第59回オールスター競輪(G1)は8月15日、5日間に渡る熱戦に幕を下ろした。激戦を勝ち抜いた9名による決勝戦は村上義弘が先行。番手まくりの稲垣裕之を岩津裕介がゴール寸前で捕らえ、悲願のG1初制覇を果たした。

意気込みを語るファイナリスト
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「慶」スーパーイリュージョン
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山本リンダ 歌謡ショー
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山口幸二 トークショー
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決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると、北日本の2人が飛び出し誘導を追う。新田祐大―菅田壱道で前団に構え、3番手以降はけん制になるが村上義弘が北日本勢に追いついて、村上―稲垣裕之―岩津裕介、中村浩士、平原康多―武田豊樹―木暮安由で周回を重ねる。
 3番手の村上は青板手前から前との車間を空けて、青板で動き出した平原に合わせて出る。誘導を降ろした村上が、平原を制して先頭に立つ。村上に稲垣―岩津、単騎の中村まで追走。下げた平原は、新田を5番手に入れて、無理せず6番手に収まる。武田―木暮が続き、新田との連結を外した菅田が最後方で赤板を通過。
 後続を一本棒にして村上が、ペースを上げる。打鐘を迎えても別線は動けない。最終ホーム手前で5番手の新田が空けたインを平原がもぐり込む。稲垣は1コーナーから番手から発進。岩津、中村に新田を弾いた平原が続く。浮いた新田は後退し万事休す。2コーナーから平原がまくりを打って出るも、岩津の横まで至らずV争いは前の3車。4コーナーで中村が中割りを試みるが、岩津がこらえてゴール寸前で稲垣をとらえ優勝。2着に稲垣、中村は3着。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰式
表彰式
<1R>
松岡貴久選手
松岡貴久選手
 後ろ攻めから上昇した雨谷一樹が、合わせて中団から動いた藤木裕を制して赤板で先頭へ。藤木が4番手、松岡貴久(写真)は7番手で打鐘を通過。徐々にペースを上げていく雨谷に対し、松岡が4コーナーからアタック。雨谷も合わせるようにスパート。シャープにまくっていった松岡は前団をまとめて飲み込み、最終日にようやく白星。「やっと1着が取れました」とホッとした表情で振り返った。
 「今開催はタイミングが合わなかったですね。脚もあんまりよくなかったし、何かおかしかったです。今日も出が悪かったですけど、なんとか修正できました。2日間お客さんも、後ろ(に付いてくれた人)も裏切っていたのでよかったです」
 小岩大介がなんとか2着に続き九州ワンツーを決めた。
 「きつかったです。今日は(松岡)貴久に任せていたし、あとはあいつのタイミングで。貴久も1着取れているし、自分のタイミングでいけたんでしょ。本当はゴール前勝負したかったけど、駆けたときに離れて追いつくのに脚を使ってしまいました。もっと脚をつけんとダメですね」

<2R>
天田裕輝選手
天田裕輝選手
 後ろ攻めから早めに飛び出した天田裕輝(写真)を赤板で守澤太志が叩いて前に出る。8番手に置かれた柴崎淳が打鐘前からスパート。最終ホーム過ぎに守澤を捕らえて先頭に踊り出る。これに対し、俊敏に車を外に持ち出していた天田が2コーナーから好回転でまくって快勝した。
 「単騎の選手を連れて先行しようと思っていたんですけどね。守澤君が来て、突っ張るのはまだ早いと思って引いたんですが、柴崎君もすかさず巻き返してきましたね。感触はよかったし、体は動きました。これが最終日というのが残念ですけど、次につながると思います」
 地元の鈴木誠は池田良にからまれながらも懸命に天田を追って2着に流れ込んだ。
 「(池田が)降りてくるのは分かったし、何とかしのげました。天田君との(2車単の)オッズが3番人気ぐらいだったし、諦めないで追っていきました。お客さんもよろこんでくれたのでよかったです」

<3R>
吉澤純平選手
吉澤純平選手
 青板ホームから早めの動きだし。後ろ攻めの櫻井正孝、吉澤純平(写真)の順番で押さえると、打鐘前に川村晃司がカマして最終主導権。川村が軽快に逃げ、番手の松岡健介が車間を斬って援護して行く。最終ホームを通過し近畿勢に態勢有利かと思われたが、その3番手から吉澤がスパートすると力強くまくって1着を手にした。
 「今日は細切れだから初手で取れた位置からと思ってました。前に川村さんがいたので、遅らせて遅らせてと思いながら(前団を)斬りました。ワンテンポ(川村が)遅ければ突っ張って先行だったけど、早めにきたし、2車だから出させても中団は取れるかと思ったので。そこからは中団を取ったからには絶対にまくってやろうと思っていきました。次につながるレースができたのでよかった」
 朝倉佳弘がきっちりマークして2着を確保する。
 「これは川村さんの展開だなと思ったし、松岡さんも車間を空けてたので厳しいかと思った。だから内を行こうかなと思ったけど、吉澤君が強かったですね。信じて付いて行ってよかった。直近4か月で1着がないし、2着が8回くらいかな?ちょっとヤバいけど、1着は次の京王閣(F1)までとっておきます(笑)。マーク選手として今日は100点です」

<4R>
小埜正義選手
小埜正義選手
 細切れ戦らしく目まぐるしく先頭が入れ替わる中、赤板で高橋陽介が主導権。3番手をめぐり古性優作と山田英明が取り合うも、最終ホームで古性に軍配。古性はそのまま2コーナーからまくっていくが、神山雄一郎のけん制により失速。これで前2人のワンツーかと思われたが、松谷秀幸マークから内に斬り込んでいた小埜正義(写真)がコースを突いて1着をさらった。
 「うれしいですね。落ち着いて走れました。でも松谷が前々に踏んでくれたおかげ。最終ホームでもケツを上げて行ってくれてた。あいつが前に行こうという意識で行ってくれたから、内に入っていく良いスピードをもらえた。昨日も松谷は頑張ってくれましたし、今回は後輩が4日間がんばってくれました」
 軽快に駆けた高橋陽介は3着にも清々しい表情で話し始めた。
 「神山さんが付いてくれたのもあるけど、仕上げてきて1走目、2走目と良かったのに、昨日何もできなくてあまりにも悔しかったんで。作戦は先行って決めていたわけじゃないけど、(赤板)ホームで古性君が来て出したらダメだと思って。突っ張りきってからはペースでいけました。そこからは来ても神山さんが何とかしてくれるだろうと。仕事してくれる人に対して何か仕事はしようと思ってました。後ろに勝負権あるようにと。昨日以外は自信をもって走れました」

<5R>
稲毛健太選手
稲毛健太選手
 稲毛健太(写真)が赤板から2周先行。打鐘前の2コーナーで渡邉雄太が落車するアクシデントもあって、ペース駆けに持ち込む。そのまま軽快に飛ばして連勝を飾った。
 「渡邉君もけっこう踏んでくると思ったけど、そうなってもどこか空いて入れるだろうし、すかさず行けばいいだけですからね。落車は見えたので、あとは落ち着いてペースで踏みました。2走目から感じは良くなったんですが、もう少し修正すれば、もっと良くなると思います」
 打鐘で小川勇介に飛び付かれた坂口晃輔だが、最終ホームでキメて番手を死守。直線で粘る稲毛に鋭く詰め寄った。
 「稲毛君と連係した時はほとんど稲毛君が1着なんですよ。自分のタイミングで仕掛けてくれたし、本当に強かった。(小川に)飛び付かれたけど、そこは慌てずに一発でキメようと。ラインで決まって良かったです」

<6R>
郡司浩平選手
郡司浩平選手
 赤板で郡司浩平(写真)が押さえて先頭に立つと、1センターから腰を上げてペースアップ。打鐘で飯野祐太が反撃に出るが、郡司はこれを出させない。郡司が懸命に逃げていくなか、福島勢に続いた友定祐己が内に降り、和田健太郎のインをすくって番手を奪取した。援軍を失った郡司だったが、最後まで力強く踏んで逃げ切った。
 「今日は4車だし、後ろ攻めからしっかり切って早めでも仕掛けようと思ってました。飯野さんに出られるかと思ったけど、踏み上がっていったので。今回は決勝、最低でも準決勝が目標だったけど、昨日、今日と先行して今日は逃げ切れたのでよかった。次に繋がるレースができたと思う」
 友定祐己は軽快な身のこなしで番手を奪取。2着に流れ込んだ。
 「初手は中団を取ったラインの後ろにいようと思って。福島の後ろに決めてた訳では。あそこから飯野君が早めにいけば付いてけばいいし、ダメなら内をしゃくって位置を取りにいけばと思って。あまり選択肢がないなかで何とかやったと思う」
 「もうちょっと早めに仕掛ければよかった」と悔やむのは飯野祐太
 また、番手の山崎芳仁も終始外併走でなす術なく8着。1度も確定板に挙がることなくシリーズを終えた。
 「今回は流れが悪かったですね。体調は悪くないけど、車が出なかった。友定さんに先に降りられて、さらに(坂本)亮馬にも内から行かれて…。弱い。これが現状ですね」

<7R>
山賀雅仁選手
山賀雅仁選手
 積極的な機動型がそろった一戦は地元の山賀雅仁(写真)が白星を手にした。レースは早めから動き竹内雄作と中井俊亮の主導権争いになるが、竹内が譲らず赤板で先制。しかし番手の笠松信幸が離れ、中井が番手にはまる。それでも笠松は再度追い上げ竹内にドッキングしたが、徐々に離れていく。打鐘で8番手から早坂秀悟が仕掛けるが、裸逃げになった竹内を捕らえきれず。そのまま竹内が押し切るかと思われたが、最終2コーナーからまくった山賀が粘る竹内を捕らえた。
 「早坂君が仕掛けてくれたおかげで届いた。運が良かっただけ。恵まれ一本です。伏見(俊昭)さんにくっ付いて行っただけで、自分から仕掛けられず悔しいです。勝てたのはうれしいですけど、人の仕掛けに乗って勝ったりしたものだし。今回はこれ以上ない仕上がりで勝負して、持てる力は存分に出し切りました。2勝できたのはよかった。でも、みんな強いし、これからもっと高めていきます」
 海老根恵太が山賀のまくりに食らいつき地元ワンツーで最終日を締めくくった。
 「山賀は強かったですね。作戦の通りになって。早坂が来る前に仕掛けられればもっと面白かったんですけど、まあ山賀に任せていたんで。あとで聞いたら行きたかったけど、きつくて行けなかったって言ってましたね」
 竹内雄作は一車になりながら逃げるも、末を欠き3着に終わる。
 「ああいう展開になってしまいましたけど、笠松さんも頑張ってくれましたし、ラインのおかげです。強いて言うなら残らなければダメでしたね。車間も空いてたし、もっとペースで行ってればよかったんですけど」

<8R>
深谷知広選手
深谷知広選手
 単騎の山本伸一が赤板前に一旦前に出て、他の選手の出方をうかがう。打鐘で菊地圭尚が山本を叩くと、この動きに乗った深谷知広(写真)がすかさずまくり発進。これで別線は万事休す。深谷が後続を千切る圧勝でファンの期待に応えた。
 「展開に恵まれました。ただ前が行ってくれただけだし、自分でレースを作れなかった。もうちょっと違う形を作りたかったんですけどね。今回は調子の持っていき方は間違っていなかったと思う。あとはシリーズを乗り切る体力をつけたいですね」
 山口富生は踏み出しでピタリと深谷に続いたが、最終バックから徐々に離されていく。最後に菊地圭尚に交わされたが、それでも3着に踏ん張った。
 「ああいう形になっても付いていけると思っていたんですけどね。我慢して3着でしたけど、2着には残りたかったです。深谷とか竹内(雄作)と連係するときは自分の中で今の調子の答え合わせと思っているので楽しみにしてたんですけどね。ファンには申しわけなかったです。徐々に状態は上がってきているし、次は決めたいですね」

<9R>
吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 吉田敏洋(写真)が準決の悔しさを晴らすべく、上手い立ち回りから力強いまくりで1着。最終日を勝利で締めた。レースは原田研太朗が後ろ攻めから上昇し、赤板前で先頭に立つと徐々にペースを上げていく。前受けした吉田は突っ張る素振りを見せ、上手く中団に収まる。原田が懸命に逃げるなか、山中秀将が8番手からスパート。山中は番手を上げていくと、小倉竜二がこれをブロック。スピードがやや鈍る。すると、隊列が短くなったところを、吉田が渾身のまくり。愛知ワンツーを決めた。
 「昨日出ればよかったんですけどね。今回は練習はできたんだけど、直前までやったらオーバーワークで。疲れが取れなかったですね」
 山中秀将はブロックを浴びたものの、粘り強く踏んで3着に入る。
 「内に差してしまい、石井さんに迷惑をかけてしまいました。でも小倉さんの所を乗り越えられたのでよかった。僕に中団を取られないように吉田さんの動きが上手かったですね。脚力はもちろんだけど、そういう所を僕は勉強していかないと。でも、今回はギリギリで選ばれて出られたけど、そのなかでここ(特別優秀)まで来れたのでよかった。収穫になったし、プラスで終われました」
 「踏み上がらなかった」と話すのはまくられ9着に沈んだ原田研太朗
 「小倉さんが付いてるし、仕事をしてくれるんで先行しようと思ってました。体は軽いんだけど、ホームでケツを上げる余裕がなかった。(小松島記念の最終日に)落車してから自分の体でない感じがする。ズレがありますね。まずは体を治さないと」
 石井秀治は呼吸が合わず、連結を外し8着。悔いが残る結果に。
 「山中君が内、外に差してたのでタイミングが取れなかった。9番手だったしね。33(バンク)だし、良いか悪いかのどちらかなので。今回は仕方ないかな。前回の青森で体調を崩して微熱と咳が出てしまって。それでもどうにかしないといけないんだけどね」

<10R>
浅井康太選手
浅井康太選手
 根田空史、三谷竜生の先行型が早い段階から主導権争いで激しく火花を散らす。青板周回のバックからハイピッチで駆ける根田に対し、4番手の三谷が打鐘過ぎの2センターから反撃に出る。その上を浅井康太(写真)が最終ホームからまくり一閃。シリーズ最終日にして、ようやく白星を挙げた。
 「若い2人が気持ちの入ったレースをして、地脚のレースという感じでしたね。僕は中団、中団で、もし8番手になったら早めのカマシを考えてました。三谷君の車の出具合を見て、ホームから仕掛けました。展開に恵まれましたね。G1の特別優秀は調子のいい選手も多いので、そこで勝てたのは大きい。今後につながるレースができました。この脚を維持して、これから自分が前でも番手を回っても、レースを見極めてしっかりやっていきます」
 近藤龍徳は浅井の快速まくりにしぶとく食い下がって2着。2車単の一番人気にきっちりと応えた。
 「浅井さんのおかげです。本当に強かったです。食らいついたという感じですね。離れてお客さんに迷惑をかけられないので必死でした。ただ付いていっただけですけどね」

<11R>
稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
中村浩士選手
中村浩士選手
 第59回オールスターは岩津裕介のG1初優勝で幕を閉じた。注目の決勝は後ろ攻めの平原康多が早めに押さえに行ったが、村上義弘が中団から合わせて気合の突っ張り先行。先輩の引き出しを受け、稲垣裕之が最終1センターから番手まくりでゴールを目指したが、その後ろから岩津が追い込んだ。
 「前が村上さんなんで臨機応変に走るっていう感じで、作戦は特に立ててなかったんで。でも、競走の雰囲気からして、そういうレースになるのかなと。青板くらいで自然と力が入ってました。昨日は止まった脚を無理矢理動かす感じだったけど、今日は昨日より感じは良かった。(ゴールしてから)歓声が『ワー』ってなっていて、ビジョンを見て自分が勝ってるのかなと。まさかこんなことがあるのかなっていう気持ちでした。デビューからここを見てやってきて、なかなかここに立てなかったけど、周りの人に恵まれてやっと勝つことができました」
 稲垣裕之(写真)は絶好のチャンスを逃し準優勝。またも悔し涙を流す。
 「僕も躊躇なく踏み込みましたし、ゴールまで全力を出し切ったので悔いはないです。これまでずっと村上さんの背中を見てきて、今日ほど大きく見えたことはない…。まだまだ自分の力のなさを実感しました。もっと強くなってきます」
 中村浩士(写真)は地元の意地を見せ表彰台入り。
 「チャンスはあったけど、自分の力不足というか、技術不足というか。(岩津を)思い切りしゃくったけど押し出してしまいました。(鈴木)誠さんのアドバイスをもらって(近畿の後ろに)徹底してこだわって腹を決めて走りました。村上さんのあの先行は後ろに付いていて男を感じたし、これが近畿の結束なんだと。南関も負けていられない。強い仲間と次の特別(競輪)で頑張りたい」
 平原康多は立て直してまくり出たが、敵の番手発進で力尽きた。
 「残り3周で突っ張られるとは思わなかった。詰まったところで行ったけど、番手まくりされては…。頑張った結果だけど悔しいですね。あそこから(村上が)行っても(番手の)稲垣さんはキツいと思ったけど。負けて悔しいけど、同期が優勝したそこはよろこびたい。富山(共同杯)もあるんで次頑張りたい」
 新田祐大は平原に内をすくわれ、見せ場なく終わる。
 「後ろを信頼していった結果、中団が取れた。そこでの気持ちの余裕があったつもりが、後ろが誰か見えてなかった。結果、内をすくわれてしまいました。あとは力を出すだけだと思ってたけど…。まだまだ甘い」
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