『第60回オールスター競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:8月15日

 スターたちの夢の競演。いわき平競輪場を舞台に開催された「第60回オールスター競輪(GI)」は、15日に最終日が行われた。地元から3人が勝ち上がった決勝は、中部勢が主導権を握ったが番手の竹内雄作が青板のバック過ぎに落車するアクシデント。最終2コーナーからまくった新田祐大に続いた渡邉一成が、インを突いて直線の攻防を制し、昨年2月の全日本選抜以来、2度目のGI制覇を地元で遂げた。優勝賞金4400万円(副賞含む)を手にした渡邉は、福島勢から新田に次いで「KEIRINグランプリ2017(GP)」の出場権を獲得した。また、第6レースは周回数の誤表示で、競技規則第73条により競走が不成立になった。

決勝戦出場選手紹介
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八代亜紀 スペシャルライブ
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決勝戦 レース経過

 号砲と同時に新田祐大が勢い良く飛び出してスタートを取った。初手は新田-渡邉一成-山崎芳仁、脇本雄太、原田研太朗、深谷知広-竹内雄作-浅井康太-坂口晃輔の順で並ぶ。
 周回が進み、青板周回の2角から深谷が勢いよく上昇していき、バック過ぎに先頭に立った。このとき、竹内が深谷の後輪に接触し、バランスを崩して落車。すると、浅井が追い上げて替わって番手回りになる。下げた新田はすんなり中団4番手に入り、落車のあおりを受けた脇本、原田は切り替えられず、それぞれ7番手と最後尾に置かれた。赤板を通過して打鐘を迎えたが後ろからの反撃はなく、深谷は3角からペースを上げていき、最終ホームでトップギアに入れた。深谷が懸命に逃げる一方、脇本が最初に反撃するが、車は1車進んだだけ。今度は2角から新田がスパートすると、こちらはスピードが違った。新田は一瞬にして中部勢を飲み込むと、渡邉と2人でセーフティーリード。地元両者のマッチレースは、新田が4角で車を外に振ったときに渡邉は内のコースを踏み、ゴール寸前で交わして優勝を手にした。山崎は踏み出しで離れ、深谷の番手から浅井が追い込んで3着に入る。

決勝戦出場選手紹介
八代亜紀 スペシャルライブ
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<1R>

菅田壱道選手
菅田壱道選手
 小埜正義を突っ張った鈴木竜士が先行態勢を取る。菅田壱道(写真)は抜かりなく3番手をキープ。そのまま鈴木が駆けるかに思われたが、伊藤成紀の巻き返しが早くカマシ気味に出て主導権を握る。しかしながら、渡部哲男は付け切れず、番手に鈴木が入る。菅田は最終1センターで高原仁志を内からどかして、鈴木後位を奪取。菅田がまくった鈴木を追い込んで抜け出した。
 「(離れた渡部)哲男さんが降りてきたんで、そこで勝負かと思ったけど、流れのなかで内に差し込んでしまった。たまたま内が空いたんで、(鈴木の)番手になりました。感じも良かったし、ここに向けて仕上げてきたんですけど初日がすべてでした」  カマした伊藤の番手に入った鈴木竜士は、最終2コーナーからまくって出た。
 「駆けようと思ったんですけど、(伊藤が)全然見えなかったです。とりあえず最終日はバックを取って終わりたかったんで、(別線が)来ても、来なくても行こうと。体はそんなに悪くなかった。自分もしっかり仕上げてきたんですけど、みんな仕上げてきているんで、そのレベルがまだですね」

<2R>

佐藤友和選手
佐藤友和選手
 突っ張り気味に踏んだ吉田敏洋を打鐘で叩いて、池田勇人が先行策に出た。埼玉勢を受けた吉田は3番手を確保。最終2コーナーから仕掛けたが、山田義彦のけん制もあって出切れない。すると、戦況を見極めていた5番手の佐藤友和(写真)が、3コーナーからまくり追い込みで突き抜けた。
 「最終日は後ろに下がらないで組み立てようと。結果、中団か確保できたし、1着につながったと思います。でも、踏み出した感触はそんなに良くはなかったですね。1着を取るっていう部分ではよかったですけど」
 永澤剛がきっちり続き、北日本でワンツー決着。
 「吉田さんが脚をそんなに使わないで3番手だったけど、出切れなかったですね。付いていけてよかった。(佐藤は)先輩なので、内にいったら失礼ですしね」
 逃げた池田勇人は、失速して7着に終わった。
 「車番も悪かったし、(周回中の)位置取りが悪いのはしょうがない。(打鐘で)吉田さんが突っ張るかもしれないけど、ギリギリを攻めていかないと。3走目に(先行して)刺激が入ったので。(並びは)僕が前の方がいいかなと。あとは、山田に仕事をしてもらうつもりで駆けました。(掛かりは)まだまだですね。点数が下がってしまったし、一回原点に戻します」

<3R>

山賀雅仁選手
山賀雅仁選手
 稲毛健太が取鳥雄吾を叩いて打鐘を迎える。一本棒で最終ホームを通過。3番手の取鳥が2コーナーで仕掛けるが、西岡正一のブロックを受けて失速。5番手の近藤隆司は3コーナーから外を踏むが、あおりで外に膨らむ。山賀雅仁(写真)は、中の空いたコースを自ら踏み上げて突き抜けた。
 「近藤君が外を踏んだので、自分の踏むコースができた。ラインのおかげです。(シリーズを通しての感じは)見ての通りですよ。良くないと見る人は良くないのだろうし、いいと言う人はいいのではないですか」
 後続の援護もあって逃げた稲毛健太が、2着に粘り込んだ。
 「踏む距離が長かったですね。(前回から)中20日も空いたのでレース勘がまだまだでした。細切れで自分たちが2車のラインで、内容的には自信がつきました」

<4R>

根田空史選手
根田空史選手
 赤板手前で誘導を降ろして先頭に立った横山尚則の先行態勢。根田空史は茨城コンビを追わずに、7番手でタイミングを取って2コーナーから山降ろし一気。別線に飛び付かれることなくラインの3車で出切る。最終バックを通過しても後続は一本棒。逃げる根田が別線をクギ付けにして、番手の田中晴基が楽に追い込んだ。
 「(根田)空史はジャンで全開ですからね。それでもバックで踏み直してましたからすごいですよ。自分は空史が先行態勢に入って、(別線を)絶対に止めるって気持ちだったけど。空史が強すぎた」
 「今シリーズ、一番の掛かりだった。すごく良かった」と、振り返った根田空史(写真)。根田“らしい”豪快な逃走劇で、ラインを上位独占に導いた。
 「とりあえず出切らないと始まらないんで。後ろに(田中)晴基先輩が付いていますから。そのまま横山君に付いて行ったら距離が長いんで、自分の距離を測って、うまくテンポをつかんで行けました。でも、ここは直線が長い、400バンクだけど、500のつもりで踏まないと」

<5R>

岩津裕介選手
岩津裕介選手
 中団から合わせて踏んだ小松崎大地が、吉田拓矢を突っ張って逃げる。結局、吉田は後方に車を下げた。割り込まれることなく中団を確保した阿竹智史は最終2コーナーからアタック。佐藤慎太郎のブロックも乗り越えて前団を飲み込む。最後は続いた岩津裕介(写真)が差し切った。
 「(別線が)中団取りみたいになったら突っ張りも考えていました。阿竹君がうまく対応してくれましたね。(今シリーズは)流れに乗り切れなかった。でも、足りないところもわかったので、次につなげていきたい」
 最終2コーナーまくりで阿竹智史は、力強い走りを披露しラインでワンツーを決めた。
 「(小松崎が吉田を)出させたら、仕掛けないかんところですけど。踏んだ雰囲気で出させないかなと。あとは吉田君が引いていって、僕は出られないようにしていました。態勢を整えて、(佐藤)慎太郎さんのブロックだけ。来るのはわかっていたので、止められないように気をつけていました」

<7R>

牛山貴広選手
牛山貴広選手
 赤板手前から飛び出した渡邉雄太が、ペースを上げて逃げる。一本棒の7番手に置かれた中井俊亮は、打鐘の3コーナーから巻き返して渡邉を1センターでとらえる。最終2コーナーからまくった神山拓弥だったが不発。今度は神山マークから、佐藤悦夫が踏み上げる。単騎の牛山貴広(写真)は、栃木コンビ追走して外を突き抜けた。
 「ジャン前のところで脚を使ったんで、正直、いつもより脚を溜められている感じはなかった。いつも(神山)拓弥と(位置取りを)バッティングするんで、それはやめようと思ってあの位置(栃木勢の後ろ)になりました。(佐藤)悦夫さんが踏んでくれたんで、それで助かりました」
 力尽きた神山を見極めてから踏んだ佐藤悦夫は、牛山に食われて2着。
 「なんとか伸びたのに、ウッシー(牛山)が強かったです。1着かと思ったんですけど…。拓弥が頑張ってくれたし、自分も徐々に良くなってきている」

<8R>

香川雄介選手
香川雄介選手
 山中秀将が赤板の1センターで前に出る。すると、押さえられた吉澤純平が、萩原孝之の後輪に接触して落車。結局、主導権は打鐘の3コーナーで山中を叩いた河端朋之が握った。岡山勢との連結を外した香川雄介(写真)は、5番手に収まり前団の様子をうかがう。最終バックからインを進出すると、2センターで山中を飛ばす。最後は中のコースを鋭く伸びて、番手から踏んだ柏野智典と横一線のゴール。結果は、柏野との同着で白星を分け合った。引き揚げて来た香川は、苦笑いを浮かべながら口を開く。
 「(萩原が)離れていたので、申し訳ないけど南関の3番手にいきました。そのあとは、内にいって1車でも前にいこうと。(2センターでは)山中を片づけないといけないとって。直線では、外を踏もうと思っていたけど、柏野君が外にいったので、中のコースを踏みました」
 河端の逃げを利した柏野智典は、河端を気遣いながら口を開く。
 「河端君は掛かっていましたね。香川さんがいないのがわかって、石井(秀治)君か、諸橋(愛)さんが内に来ると思ったので締めていました。そしたら、香川さんが来たので外を踏もうと。前とワンツーができたら最高でしたけど、後ろと2人で決められてよかったです」

<9R>

椎木尾拓哉選手
椎木尾拓哉選手
 金子貴志が打鐘から押さえて先行策。4番手の内に坂本貴史、外に松浦悠士で中団はもつれながら、最終ホームを通過する。後方から仕掛けた中川誠一郎に合わせて、最終2コーナーから松浦がまくり上げるが、椎木尾拓哉(写真)のブロックを受け不発。最後は椎木尾がきっちり抜け出して、白星を手にした。
 「金子さんのおかげです。後ろから(別線が)仕掛けてくる感じもなかったが、(バックで松浦が)来たのが見えたのでしっかり止めてと。最後は差すだけでした。また次に向けて頑張ります」
 椎木尾のブロックで内を締めていた東口善朋が2着に入った。
 「自分は付いて行っただけなので。金子さんが先行してくれたおかげですね」
 松浦マークから直線でコースを選んで伸びた小倉竜二が3着に食い込んだ。
 「松浦が無理にでも仕掛けてくれた。松浦も車の出が悪かったですわ。もう半車前ならよかったけど、あの展開なら3着が精いっぱいです」

<10R>

橋本強選手
橋本強選手
 和田真久留が切った上を太田竜馬が出て、赤板の2コーナーで主導権を握る。太田がリズムよく駆けて、打鐘の4コーナーから反撃に出た稲垣裕之は3番手までで力尽きる。番手で願ってもない流れが訪れた橋本強(写真)が、抜かりなくチャンスをモノにした。
 「僕の後輪が稲垣さんと接触して…。本当は車間を切りたかったけど、切るに切れなかった。もっと(太田を)残せたらよかった。これ以上待つとっていうのがあって、焦っちゃいましたね」
 単騎の合志正臣は、主導権を握った四国勢後位から中のコースを踏んだ。橋本に続く2着にこう振り返る。
 「もっていったらタツ(近藤龍徳)が入ってくると思って…。稲垣君にかぶった時点で2着取りかなと。あれで割れて(コースができて)アタマまで届けばよかったんですけど。動き出しとかは余裕があった。ただ、課題というか、こうするともっと良くなるっていうのがありますね」
 S級S班の稲垣を不発においやる内容の濃い先行策の*太田竜馬だが、さすが直線半ばで失速して4着。
 「先行って決めていたわけではないけど、あの順番なら逃げた方がいいかなと思った。自分にできることはやったと思います」


<11R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 青板のバック過ぎに竹内雄作が落車に見舞われた。主導権を握った深谷知広の番手は1車上げて浅井康太。単騎の脇本雄太、原田研太朗は動くに動けず、新田祐大が3車になった中部ラインの後ろの4番手を確保し、反撃のタイミングをうかがう。最終2コーナーから新田がまくると渡邉一成も続いて、2人で中部ラインをのみ込む。山崎芳仁は置いていかれ、新田、渡邉の地元両者のV争い。最終4コーナー手前で新田が外に振ると、渡邉が新田の内に進路を取って直線へ。ハンドル投げで新田をとらえた渡邉が、2度目のGI優勝を地元で手に入れた。
 「本当に今回だけは、地元の執念だけでした。新田君に申し訳ないし、ブサイクなレースだったんで、手放しでは喜べない。スッキリした勝ち方ではないですよね。今回は全部、番手からの勝負だったんで、新田君みたいに(自力で)豪脚を発揮できるようなレースをしたい」
 高松宮記念杯、サマーナイトフェスティバルに次いで3連続でのビッグ制覇がかかっていた新田祐大(写真)は、4分の1輪差で2着。しかしながら、深谷の逃げをあっさりねじ伏せたスピードで地元ファンを魅了した。
 「目標としていた(ラインの)3人で独占ができなかったのは悔しい。まさかあんな風に落車になるとは誰も思っていなかった。波乱のレースになったなかで、地元ワンツーはよかったです。深谷君も強いし、浅井(康太)さんはタテにも踏めるしヨコもできる。坂口(晃輔)君もいてしっかりしたライン。だから、4番手を取ったからといって確信はできなかった。しっかりしたところでしっかり仕掛けようと。しっかり仕掛けることはできました」
 竹内の落車で深谷の番手になった浅井康太は、新田のまくりを止め切れず3着がいっぱい。
 「(竹内)雄作の落車を避けてだいぶ脚にきていた。そのあとはしっかりとレースができたけど、新田君が強かった。あれは止められない…」
 新田が4番手で構えて、単騎の脇本雄太、原田は7、8番手。最終1コーナーで脇本がまくりを打ったが時すでに遅く、新田に合わされ不発。
 「新田さんが引いてきた時点でチャンスがなかった。落車を避けて、(体が)固まってしまった。もうちょっともつれると思ったんですけど…」