『第73回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:5月5日

 松戸競輪場を舞台に開催された輪界でもっとも権威のあるタイトル「第73回日本選手権競輪(GI)」は、5月5日に最終日が行われた。脇本雄太、深谷知広のナショナルチーム対決が注目された決勝は、地元地区の南関勢が主導権。8番手の脇本が、最終ホームからのまくりで頂上バトルを制した。86年の滝澤正光(千葉・43期、引退)以来、7人目となる完全Vを遂げ、優勝賞金6500万円(副賞含む)手にした。また、年末の「KEIRINグランプリ2019(GP)」の出場権を獲得し、2年連続でのGPを決めた。

那須川天心アスリートトークショー
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決勝レース出場選手特別紹介
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決勝戦 レース経過

 号砲と同時に近畿両者が出ていく。脇本雄太-古性優作、清水裕友-松浦悠士-原田研太朗、菅田壱道、渡邉雄太-田中晴基、深谷知広で隊列はすぐにまとまって周回を重ねる。
 青板1センターで南関コンビが上昇を開始。すかさず脇本は緩めて、バックでは正攻法の位置に渡邉が入り、南関勢の後位に中四国勢、菅田、深谷と次々に切り替え、脇本は8番手に。赤板で誘導は退避し、渡邉はしきりに後方を見やりながら流していく。そこを内を掬って深谷が上がっていく。深谷は南関勢後位に収まり、清水は無理せず4番手。脇本は依然として車間を切った8番手に構えたまま。渡邉がペースを上げて逃げる中、車間を詰めた脇本は最終ホームから一気に反撃に転じる。合わせるように深谷も3番手からまくるが、これは田中が止める。2コーナーでの田中の2度目のブロックで深谷は外に浮くが、これを避けて清水がまくり出て、さらにその外を脇本のまくりも迫る。田中ももう止め切れず、2センターでは渡邉を捕らえた清水が先頭に立ち、その外に脇本が並び掛けてくる。しかし、菅田が内に入ってきて後続はモツれる。菅田は松浦を弾き、煽りで脇本にピッタリ続いていた古性も連結が外れる。最後は清水と脇本のマッチレースから、粘る清水を力ずくでねじ伏せた脇本が完全優勝を果たした。離れた3着には菅田。


<1R>

小嶋敬二選手
小嶋敬二選手
 赤板前から飛び出した高橋和也に対し、佐々木豪がすかさず反撃に出る。両者で激しいもがき合いになるが、外の佐々木が力尽きると、小嶋敬二(写真)が最終2コーナーから番手まくりを敢行。最後まで力強く踏み切り、S級通算700勝の大記録を達成した。
 「佐々木が無理やり潰しに来るかどうかだと思っていた。(単騎の)林(雄一)が顔見せから付いてくれるような感じだったし、それが大きかった。(高橋)和也は予想以上に強かったですね。疲れました。(S級700勝は)通過点ですけど、勝てて良かったです」
 シンガリ負けに終わった佐々木豪は次の開催に気持ちを切り替える。
 「緩んだから行ったけど、合わされてしまった。あれはキツいですね。今回は勉強になることが多かった。小嶋(敬二)さんにも開催中に練習方法を聞いたりしたんで、それを今後に生かしていきたいです」

<7R>

竹内雄作選手
竹内雄作選手
 赤板前に切った松岡貴久を竹内雄作(写真)が押さえて逃げる。前受けから8番手まで下げた三谷竜生は打鐘前の2コーナーから反撃に出るが、簗田一輝を弾いて3番手を取っていた松岡貴久が最終2コーナーでブロックして止める。ペース駆けに持ち込んだ竹内が強じんな粘り脚を発揮して押し切った。
 「すんなり出させてもらえたし、ペースで逃げることができたんで。久々の1着なんでうれしいですね。ちょっとずつ状態は良くなってます。でも、上のクラスで戦うにはまだまだ物足りない。もっとトップスピードを上げないとダメですね」
 近藤龍徳が2着に流れ込んで中部ワンツー決着。竹内の強さに脱帽する。
 「どこまで行っても抜けないですね。本当に強かったです。今回は成績的にはまとめられたけど、4走とも存在感がなかった。またこういう舞台に戻ってこれるように頑張る」

<8R>

吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 赤板で出た稲垣裕之がペースを握って、吉澤純平は3番手に入る。5番手が中川誠一郎(イン)と吉田敏洋(写真)の併走で打鐘を迎える。最終ホーム手前で吉澤が仕掛けるも、稲垣に合わされる。外併走の吉田がその上をまくって、前団を仕留めた。
 「平均年齢が高かったからやりやすかった(笑)。(吉澤)純平ももうちょっと出るかと思ったけど。自分はタイミングを取ってたんで、(併走でも)余裕はありました。マイナーチェンジした新車も第1走、2走に比べたら、いい方向に修正ができた」
 最終3コーナーのあおりを乗り越えた金子貴志が、流れ込んで愛知ワンツー。
 「安心して付いていけた、(吉田が)強かったですね。(今シリーズは)流れが良かったし、これをしっかり次に生かしたい」

<9R>

山田英明選手
山田英明選手
 赤板前に飛び出した山崎芳仁は後続の動きを確認しながらペースを上げる。単騎の小原太樹が内をもぐり込んで4番手を取りにいくと、山田英明(写真)は冷静に5番手に下げる。後方から浅井康太が巻き返すが、山田がこれに合わせて最終ホーム前からまくる。佐藤慎太郎のブロックを乗り越えた山田が、最終バックで山崎を抜き去って快勝した。
 「みんな似たような(戦法の)メンバーだったし、どこからでもいいかなと。あとは浅井君がきたので、仕掛けていこうと。自転車の感触はよく分からないけど、負け戦でも気持ちを切らさずにと思って走れたし、そこが大事。初日と準決勝はからんで最後まで踏めなかった。最終日は最後まで踏み切れたので、よかったです。(自分の)ダービーは終わったけど、次もあるので(一戦一戦)諦めちゃいけないなって思います」
 バックで山田の後位にスイッチした佐藤慎太郎が2着に入った。
 「山田君のことを止められれば良かったんですけどね。山崎の2周先行はすごかった。感覚は悪くないので、もうワンランク上を目指していろいろと試していこうと思います」

<10R>

諸橋愛選手
諸橋愛選手
 金子哲大が赤板の2コーナーで郡司浩平を叩いて主導権を取る。そのままハイピッチで駆けて後続は1本棒。最終ホーム7番手から山崎賢人が巻き返すが、2コーナーから平原康多が番手まくり。続いた諸橋愛(写真)が鋭く差し切った。
 「今回は4日間、(平原)康多と連係できて恵まれました。一緒に決勝に乗りたかったですけどね。ゴールデンレーサー賞を走ったあとにプチギックリ腰みたいな感じになったんですが、準決勝の感じは悪くなかったし、チャンスがあれば抜けるんじゃないかなって思ってました。しっかりケアして次も頑張ります」
 番手まくりの平原康多は2着。関東ワンツー決着となった。
 「(金子が)頑張ってくれました。山崎(賢人)君に行かれないように、番手から出る形になりました。後輩が前で頑張ってくれた時に躊躇して失敗することもあるので、しっかり判断して後ろとワンツーが決まったのは良かったと思います。今回は準決勝が悔しかった。今年はビッグレースを3回走って、全部、準決勝が4着。それが今の実力だと思うし、精進していくしかないですね」

<11R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 平成から令和にまたがり6日間かけて行われた日本選手権競輪は、脇本雄太が豪快なまくりで快勝。ダービー完全優勝を成し遂げた。レースは後ろ攻めから早めに動いた渡邉雄太が赤板前から先行態勢を取る。前受けの脇本は8番手まで下げて態勢を整える。打鐘前に内をすくって3番手を取った深谷知広は最終ホームから仕掛けるが、田中晴基のブロックを2度受けて失速。さらに清水裕友がまくり上げるが、脇本が圧巻のスピードで大外を駆け抜けた。
 「後ろ攻めよりも前受けか中団かって感じでした。残り3周で車間を空けて、(展開に応じて)仕掛けようかなって。自分のタイミングで仕掛けたし、外を回っても残り1周だったら踏み切れる自信がありました。1着を取れて本当に良かったです。昨年は3着だったので、そのリベンジができて良かった。(ナショナルチームでの)練習の成果が競輪につながっています。令和元年の格式高いダービーで優勝できて嬉しい。一戦一戦頑張って、競輪界を盛り上げていきたいです」
 渡邉をまくり切った清水裕友(写真)だったが、最後は脇本のスピードに屈して2着。初のタイトル獲得へあと一歩及ばなかった。
 「悔しいですね、夢を見ました。(道中で)深谷さんにすくわれたのは予想外。一人でラッキーでした。(深谷に)ラインができていたら、終わっていた。(仕掛けた時は)深谷さんの内か外で迷ったけど、外を回しました。展開が絶好すぎて、見過ぎてしまいまいした。(脇本と)ゴール前勝負ができているけど、力の違いを見せつけられました」
 最終2コーナーから空いたインコースを進出した菅田壱道が3着に食い込んだ。
 「全体は見えていました。自分がどこにいるか、誰が仕掛けているか見えていた。みんな外に意識がいっていると思ったので、内にいきました。田中さんがけん制した時に突っ込んでいってチャンスがあると思ったけど、松浦(悠士)とからんじゃいましたね」

次回のグレードレースは5月11日~5月14日まで平塚競輪場で開催予定の開設69周年平塚記念「湘南ダービー(GIII)」となります。
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