『第75回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:5月9日

 京王閣競輪場を舞台に開催された「第75回日本選手権競輪(GI)」は、5月9日に最終日を迎えた。S級S班の5人をはじめとした豪華メンバーによって、輪界でもっとも権威のあるGIの決勝が争われた。主導権を握った清水裕友の番手の松浦悠士が追い込んで、郡司浩平、佐藤慎太郎との僅差のゴール勝負を制してダービー王に輝いた。昨年8月の名古屋オールスター以来、通算3度目のGI制覇で優勝賞金6956万円(副賞含む)を獲得。年末に静岡で行われる「KEIRINグランプリ2021(GP)」の出場権を手にした。

決勝戦 レース経過

 松浦悠士がスタートで出て、清水裕友-松浦、松岡健介、浅井康太、眞杉匠-平原康多-武藤龍生、郡司浩平-佐藤慎太郎で周回を重ねる。
 青板2コーナーで郡司が動き出し、眞杉に併せ込んでいく。眞杉は引かず両者で体をぶつけ合っての5番手取り合いに。併走が続いたまま打鐘で誘導は退避。前受けの清水がそのまま先行態勢に入る。これに郡司がすぐさま反応。踏み出していった郡司は、最終ホーム入り口で松岡をキメて3番手を奪い取る。後方に取り残された眞杉は2コーナーからまくるが前が遠く、前団を占めた中国コンビと郡司-佐藤のS班勢の優勝争いとなる。直線に入り、切った車間を詰めて抜け出しを図る松浦の外を郡司、内を佐藤が襲って最後は3人が横一線となってのゴール。優勝の行方は写真判定に持ち込まれたが、松浦に軍配は上がった。







<3R>

野口裕史選手
野口裕史選手
 皿屋豊が先頭に立ちペースを握る。3番手に坂井洋が入り、5番手まで下げた野口裕史(写真)は、打鐘で取鳥雄吾と併走になるがその位置をキープする。3番手からまくった坂井を追いかけるように最終2コーナーからまくった野口が1着。
 「(初手の位置が)前以外だったら絶対に先行しようと思ってたけど、やっぱり(スタートは)誰も出なかったですね。皿屋さんが踏んだんで、坂井君のところで止まれなかった。でも、全部引くつもりはなかった。前だったら(最終)ホームから無理やり行ってたけど、今日は落ち着いていけた。昨日(5日目)先行してみて体の悪いところがわかったんで、今日は力まずリラックスしてと。そしたらアップの時からいつもの感じに戻った。それは収穫ですね」
 野口に付けた和田真久留は、直線で鋭く伸びて2着に入った。
 「野口さんのまくりは特殊なまくりでスパッといくタイプじゃない。僕はスプリンターなので付きづらい部分もあるけど、どんな形であれワンツーが決まって良かった」

<7R>

守澤太志選手
守澤太志選手
 打鐘前に押さえて出た阿竹智史は、高橋晋也の反撃にペースを上げて突っ張る。守澤太志(写真)のアシストで高橋が3番手に入って、最終ホームを迎える。一本棒の隊列で高橋は、別線を待つことなく2コーナー手前からまくりを打つ。前団をとらえた高橋を守澤が楽に交わして1着。
 「(突っ張られたりして)そう簡単にはいかないとは思ってたけど、最後はしっかり(高橋)晋也君が仕掛けてくれた。晋也君も脚を使って前に出ようとしてくれてたけど、香川(雄介)さんにいいのをもらってた。それでもし行けなかったらっていうのも考えてました。連日、脚の感じは良かったんですけど、自分の技術の未熟さ感じました。(佐藤)慎太郎さんの隙のなさはすごいし、ああいう隙のないようにできないと」
 意地を見せて北日本ワンツーをメイクした高橋晋也だが、反省の振り返り。
 「ダメですね、あれをしっかり叩き切らないと。主導権を握れてないんで…。開催を通してダメでした。(守澤に)入れてもらったんで、(ラインの)3車で出切れるようにと思ってたけど、自分が弱いです。(調子も)あまり良くなかった」

<8R>

山崎賢人選手
山崎賢人選手
 新山響平とのナショナルチーム対決を制して山崎賢人(写真)がシリーズ3勝目。岩本俊介、山崎と切った上を叩いて、新山が打鐘先行に出る。飛ばす新山の前に後続はなかなか巻き返せずに単調な流れとなり、すんなり4番手確保の山崎は車間を詰めてバック過ぎからまくりにいく。粘る新山をきっちり直線半ばでとらえた。
 「今日は先行も考えていたのであの位置からで良かったんですけどね。カカっていてきつかったですね。ちょっと車間も空いてしまって。調子は良かったのかなって思うんですけど、これからの課題はフォームですね。フォームの乱れが末の粘りに影響してしまっているので。この後は11日から香港へ行って14日から大会。スプリントとケイリンに出るんですけど、表彰台に乗れるように頑張ります」
 山崎のまくりは許したが、新山の逃げに乗った大槻寛徳が中本匠栄を制して2着に。
 「新山がめちゃくちゃカカってましたね。来たら止めるつもりでしたけど、バックは来れる感じじゃなかったですね。難しい所で来られてしまった。やっぱり初日特選とか昨日の準決とか脚力が2、3個上な感じがしたので底上げしていかないとですね」

<9R>

原田研太朗選手
原田研太朗選手
 赤板2コーナーで7番手から根田空史が仕掛けるが、吉田敏洋がペースを上げて逃げる。根田は中団で不発。後方でタイミングを取った単騎の原田研太朗(写真)は、最終2コーナーからまくる。吉田をあっさりとスピードの違いでとらえた原田が後続をちぎった。
 「吉田さんが踏み出したら、簡単には(根田も)出切れないなと思ってました。道中は北津留(翼)さんのところを追走してたんですけど、かぶるのがわかったんで引きました。モガき合ってくれたんで、自分の展開になりました」
 原田を追うようにまくった宿口陽一が、4車身離れた2着。
 「(根田に)フタをして吉田さんに突っ張られないところで出ようかと思ってたんですけど。(根田が)引いちゃいましたね。それでも最後は(まくりに)行けて(阿部)力也と2、3着に入れた。内藤(秀久)さんも外に外してたけど、そこを乗り越えられたし、昨日(5日目)もレースをつくれた」

<10R>

鈴木庸之選手
鈴木庸之選手
 赤板で前団を切った鈴木裕をさらに山田英明、単騎の竹内雄作の順で押さえる。そのまま先行態勢に入る竹内を、古性優作が襲う。古性は最終2コーナーで竹内をねじ伏せるが、単騎で脚を溜めていた鈴木庸之(写真)が追って仕掛けて2センターで古性を飲み込んだ。
 「今日は考えてもダメだと思ったので一番後ろでもいいかなって思って。裕さんが切った時に古性が下げたので、だったらあの位置でもいいかなって。古性も早めに仕掛けると思ったのでうまく4番手にスイッチして気持ち的には1コーナーから踏む感じでした。風もやんで6日間の中で一番軽かった」
 近畿勢の動きに乗れず最後方となった渡邉一成だが、前の鈴木庸がまくったのに続いて2着に入る。
 「理想の位置は古性君の後ろでしたね。古性君も早めに巻き返すと思っていたので。でもノブ君(鈴木庸之)とタイミングが合ってしまったので。ノブ君も位置を譲るタイプの選手じゃないので下げてって感じで。まくりに付いていってって感じでしたけど、ちょっと外々踏まされる感じになって踏み遅れてしまいましたね」

<11R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 中国の黄金タッグは今回もしっかり機能した。前受けの清水裕友がそのまま逃げる展開となると、郡司も機敏な追い上げで最終的に3番手を奪取。番手から抜け出す松浦悠士(写真)に、郡司、佐藤慎太郎が襲い掛かって横一線となったところがゴールだった。軍配は微差の争いを制して松浦に。
 「裕友がいいタイミングで駆けてくれましたね。郡司が後ろにハマったのがわかったので。いつ来るかわからなくてゴールが遠かった。一番調子良い郡司が後ろにいたので早めに仕掛けて欲しかったけど最後までためられた。裕友が頑張ってくれた。肘をひっかけて慎太郎さんには勝てたと思ったけど、内を気にし過ぎて郡司にはいかれたかと。写真判定が長かったので早く結果が出て欲しかった。ここに向けてと思っていましたけど、ピークじゃなかった。裕友と一緒にグランプリに乗りたい。中四国から1人でも多く」
 決して好調とは言えないなかだったが、清水の気持ちに応えた松浦はホッとした表情で最高峰のレースを優勝した味をかみしめた。
 郡司浩平もさすがのレース運びだった。微差でGI3連覇の偉業は逃したが、松浦とのライバル対決はこれからも続く。
 「あそこで勝負をしようと。変に叩きに行くタイミングもなかったですし、清水の突っ張りもあるかなって。でも5番手で併走だと旨味はないかなって思って詰まったので。いい位置を取れたたけど松浦に見られてしまって弱気に。仕掛けたら合わされるなって。ゴール前勝負でいいかなって。良くて同着か、もしかしたら内の慎太郎さんかなって感じでした。ちょっとおおげさに避けちゃいましたね。でもまともに当たったらないと思ったので。深谷(知広)さんや松井(宏佑)がいなくてもいつでも獲れる状態にって。しっかりゴール前勝負できたのは大きいですね」
 微差、微差の3着に終わった佐藤慎太郎だが、ゴール前では松浦の内が空いて優勝のチャンスだった。
 「松浦の肘が引っかかってしまって。でも抜く場所じゃなかった。かけられたらかけ返せばいいって判断だったんですけど。内へ避けていればアタマまであったかも。松浦がイメージよりも外に膨らんだので。でもダービーの決勝で優勝争いができたことは素直に嬉しいですね。自信になります。松浦、郡司って競輪界を引っ張っていっている選手ですから」

次回のグレードレースは、函館競輪GIII「五稜郭杯争奪戦」が5月15日~18日の日程で行われます。
ダービーから間もない開催ですが、S級S班の郡司浩平、松浦悠士、守澤太志、佐藤慎太郎の4名を中心に、高橋晋也、野口裕史、松本貴治、小松崎大地、鈴木庸之にも注目です。
5月2日時点の出場予定選手データを分析した、函館競輪GIII「五稜郭杯争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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