『第76回日本選手権競輪(GI)レポート』 3日目編

配信日:5月5日

 いわき平競輪場を舞台に開催されている輪界でもっとも権威のあるタイトル「第76回日本選手権競輪(GI)」は、5月5日に3日目が行われた。メインの「ガールズケイリンコレクション2022いわき平ステージ」では、最後方から大まくりを決めた柳原真緒が、ビッグレースを初制覇。優勝賞金257万円(副賞含む)を獲得して、賞金ランクでもトップに立った。また、二次予選では、山口拳矢、眞杉匠、太田竜馬、嘉永泰斗らが勝ち星を挙げて、若い機動タイプの活躍が目立った。5月6日の4日目には、初日、2日目の特選を勝ち上がった9人による「ゴールデンレーサー賞」が行われる。準決フリーパス(失格以外)ながらも、好メンバーによる戦いは見逃せない。
 なお、開催中は福島県新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に基づきまして、一般入場の場内滞留人数の上限を4000人とします。4000人を超えた時点、入場規制をしますので、ご了承ください。いわき平競輪場では「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となりますので、ご協力とご理解をお願いいたします。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

ガールズコレクション出場選手特別紹介
ガールズコレクション出場選手特別紹介

ガールズケイリンコレクション レース経過

 ゆったりしたスタートから中枠の3車が前に出る。石井寛子が誘導員の後ろに付き、以下は荒牧聖未、尾方真生、鈴木美教、児玉碧衣、小林莉子、柳原真緒の並びとなった。
 初手の態勢のままでしばらく動きはなく、ジャンで誘導員が退避したが誰もアクションは起こさない。最終ホーム手前の4コーナーで尾方がスパート。先頭の石井も懸命に踏み込むが尾方のスピードが良く、尾方、鈴木の3番手に飛びつくのが精いっぱい。尾方、鈴木を追っていた児玉は2コーナーから仕掛けた。児玉のスピードは素晴らしく、最終バック線で尾方を飲み込んだ。小林は続けず、バックから踏み込んだ柳原が児玉を猛追。柳原はゴール前で児玉に並びかけると、一気に抜き去りガールズケイリンコレクション初Vを達成した。児玉が2着で、3着には小林が入った。


<7R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 別線に警戒されてタイミングが取れない松井宏佑だが、赤板2コーナーから踏み込んで主導権を奪う。志村太賀は続けず、3番手に小川真太郎が入る。最終ホーム手前から8番手の山田庸平が仕掛けるも、松井の掛かりが良く行き切れない。九州勢を追った山口拳矢(写真)が、その上をまくって直線半ばで前団をとらえた。
 「(周回中は)松井さんが後ろになったので、切って切ってというよりも、松井さんのタイミングで行くと思った。ジャンで踏み込むか迷ってしまった。ちょっと自分のタイミングと松井さんのタイミングがズレてしまった感じですね。前がやり合ってるなって思ったら、後ろから来られてしまったので冷静にって感じでした。アタマまでは届くかなっていうのはありましたし、自転車もマッチしていて状態はいいと思います」
 3番手まくりの小川を最終2コーナー手前でけん制した守澤太志は、山田との間合いを計り追い込む。まくりで加速する山口には踏み負けたが、2着をキープした。
 「松井君が強い気持ちで先行してくれたので、信頼して付いていきました。もう少しイン切り合戦になってくれればって思っていたんですけどね。小川君が後ろに入ったのがわかったので、強烈にはブロックできないなと。でも、番手としては、あれだけ頑張ってくれたら残さないと。山田君をもっていければ、山口君も飛ばせたと思うのでそこは反省ですね」

<8R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 久米康平が、眞杉匠(写真)にフタをして赤板を迎える。2コーナーから踏み込んだ久米が先頭に立つも、眞杉の巻き返しが早い。宿口陽一は眞杉のダッシュに付け切れず、最終ホーム過ぎに叩き切った眞杉を車間が空いて久米が追いかける。3番手を原田研太朗が追走して、宿口をさばいた三谷竜生が4番手。原田は後続との間合いを取る。セーフティーリードを保った眞杉が、2着以下を引き離して逃げ切った。
 「(徳島勢に)離れないように付いていって叩ければと思って、その通りにいって良かった。初日よりは軽かったけど、もっと軽いと思っていましたね。前半のレースで(上がりタイムが)10秒5とか出ていたので。初日のレースでダメージが大きくて、昨日は(自転車に)一切、乗らずに(出走がない)明日もそうしようと。ウィナーズカップの時はオーバーワークだったので、今回はその半分くらいに練習量を調整してきた」
 番手に飛び付いた久米だが、なかなか眞杉との差が詰まらない。原田研太朗は、最終2センターから外に持ち出して踏み込んだ。
 「(久米)康平の掛かりがすごくて、(眞杉が)1人できて、迎え入れる感じだった。自分にもうちょっと余裕があれば残せたと思う。(今回は)初日も朝一のレースで動けていたので、調子は悪くない」

<9R>

太田竜馬選手
太田竜馬選手
 赤板2コーナーで渡邉一成が先頭に立つと、その上を松岡辰泰が叩きに出る。渡邉が突っ張り気味に踏んで、荒井崇博は松岡と息が合わない。主導権を奪った松岡後位には地元勢が続いて、山田久徳、鷲田佳史。荒井は6番手で最終ホームを迎える。打鐘の3コーナーで一度踏み込んでいた太田竜馬(写真)だったが、7番手に戻り2コーナー手前からまくって出る。番手に入った渡邉も踏むが、スピードの違いで太田が余裕をもって抜け出した。
 「(別線が)切って、切ってで行きたかったけど、仕掛けられてキツかったです。(九州勢に)僕も遅れながらの反応だった。(まくりは)無理やりみたいな感じだったんでキツかった。焦りましたね。(調子は)問題ない。むちゃくちゃいいって感じではないけど、普段通りって感じです」
 太田に遅れた小倉竜二が、最終2センターで鷲田のところに降りてもつれる。荒井崇博は、外を踏んで2着に伸びた。
 「(松岡を)入れてやろうと思って、(山田)久徳のところに降りたけど、結局全部すくわれた。それでもう脚を溜めるしかなかった。今日(3日目)は連結を外しているし、タツ(松岡)が頑張ってくれてるんで、絶対に3(着)までに入ろうと。(脚の感じは)たぶん大丈夫」

<10R>

園田匠選手
園田匠選手
 赤板過ぎに郡司浩平が切って、その上を吉澤純平、高橋晋也の順で出て地元コンビが主導権。高橋晋也がペースを握るが、5番手の郡司はそれを見極めて打鐘の4コーナーから仕掛ける。郡司が力でねじ伏せて最終2コーナーで出切る。後方になった北津留翼も、まくりで前団に迫る。神奈川勢の3番手にもぐり込んだ小松崎大地は、松谷秀幸が張って空いたインを突いて押し上げる。松谷、小松崎に小原太樹、北津留まで落車。まくり切る勢いだった北津留マークから、外を伸びた園田匠(写真)が1着。
 「(北津留)翼が好きに走ってくれればと思っていました。あの位置でも全然、問題はなかったです。(最終)2センターで決まったかなって思ったんですけど、翼がいなくなってしまって残念ですね。ワンツーが決まったと思った。初日が不甲斐ないレースだったので、いろいろといじって良くなりました」
 郡司浩平は5番手で構えることなく、打鐘の4コーナーからスパート。3車の神奈川勢だっただけに、ラインを連れ込むさすがの仕掛けを見せた。
 「初手はイメージ通りで、どこかで一発早めに仕掛けようと思っていた。(周回中から順番通りに動けば)3番手を取れたんでしょうけど、早めに(最終)ホームで行こうと思ってた。厳しい勝ち上がりですし、バックでまくるというよりもホームで行こうと。出切るのが遅くなって、手応え的にはもう少しかなって感じですけど、勝ち上がれたので気持ちを入れて走りたい」

<11R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 嘉永泰斗(写真)が赤板2コーナー過ぎに勢い良く飛び出すが、皿屋豊も迷いなく仕掛ける。嘉永は冷静に三重勢を受けて、皿屋の先行策。一本棒の7番手になった古性優作は、最終ホーム手前から反撃に出る。3番手の嘉永が外に持ち出すと、柴崎淳は2コーナーから番手まくり。結果的に柴崎に続いた嘉永が直線で追い込んで、後続の強襲を抑えた。
 「あの位置を取れて良かった。位置を取れてから余裕はなかったですね。誰も来なければ、そのまま先行でもと思ったが、皿屋さんが飛んできた。(最終)2コーナーで行こうとしたら、柴崎さんが(番手から)出たので、1回後ろに付いて2センターから踏んだ。前回(のGI)よりも脚の余裕がないので不安。取手(全日本選抜)の時の方があったと思う」
 古性優作は、7番手からのロングまくり。飯野祐太に合わされながらも、落ち着いた対処で嘉永を追い詰めて2着に入った。が、自己ジャッジは厳しい。
 「力不足です。ただただ弱い。自転車が進んでいない。(車を外に)持ち出してバックでとらえられると思ったが、進んでいない。直前に急激に良くなって、練習で出力を出しすぎて、体が追いついていなくて疲労があります。疲れが中に入っていてしんどい。明日(4日目)は休みなので、考えて調整をできれば、準決は良くなると思う」

<12R>

柳原真緒選手
柳原真緒選手
 周回中、人気の児玉碧衣は5番手。最後方のポジションの柳原真緒(写真)だったが、ムダに動くことなく師匠(市田佳寿浩、引退)のアドバイスを信じて泰然自若。3番手の尾方真生が打鐘4コーナーからカマして、その上を児玉がまくる。最終3コーナーで前団をとらえた児玉だったが、バックの強風もありいつものスピードにはない。最後まで仕掛けを我慢した柳原が、まくりで迫りゴール前で児玉をとらえて優勝。114期の在校ナンバーワンが、ビッグレースを初めて制した。
 「(周回中は)最後方でしたけど、前の前に児玉さんがいたので、もう動かずにと思ってました。児玉さんが行ったタイミングで思い切り仕掛けようと思ってた。(最終)4コーナーで伸びてくれたんで良かったです。やっと大きい舞台で1つ勝てたので、それを自信に変えていきたいです。ここに来る前に師匠にも相談して、師匠の通りに走ったら勝てた。師匠に聞いてなかったら、(あの位置で焦って)動いてしまってたかもしれないです。今回獲っても、1年間を走りぬかないとグランプリ(出場)は確信できないので、優勝を積み重ねていきたい。ここからも守りに入らず、攻めの姿勢で、もっと信頼される選手になれるようにと思ってます」
 勝負どころでの迷いが最後のひと踏ん張りに影響した児玉碧衣は、柳原の優勝をたたえてこう振り返る。
 「(尾方)真生がカマしていって、(石井)寛子さんの前に入るか迷ってバックを踏んだ。その前にもバックを踏んでいたので、残りの1周で2回もバックを踏んだんでキツかった。バックでの向かい風もあって、それも後半に響いたのかなと。自分よりも年下の子が優勝したんで、自分ももっともっと頑張らなきゃいけないと思います。まだまだ成長できるように」
 思惑通り児玉後位からレースを進めた小林莉子だったが、一瞬の判断ミスを悔やむ。
 「(周回中は)児玉さんの後ろしか狙ってなかった。思ってた以上にバックの風がキツくて、児玉さんが浮いたように見えた。それで内のコースを探した。あんなにキツそうな児玉さんを見たことがなかった。それで切り替えようとしたんですけど。あの一瞬がもったいなかった。結果論ですけど、あの迷いがダメだった」