『第76回日本選手権競輪(GI)レポート』 5日目編

配信日:5月7日

  いわき平競輪場を舞台に開催されている輪界でもっとも権威のあるタイトル「第76回日本選手権競輪(GI)」は、5月7日に5日目が行われた。ファイナルのキップをかけて、準決で熾烈な戦いが繰り広げられた。2月の全日本選抜からGI連覇のかかる古性優作、平原康多、守澤太志が白星を挙げて優出。地元の佐藤慎太郎は3着で決勝に進んだ。いよいよシリーズも大詰め、5月8日の最終日には優勝賞金7837万円(副賞含む)をかけて、第76回日本選手権競輪の決勝の号砲が鳴らされる。
 なお、開催中は福島県新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に基づきまして、一般入場の場内滞留人数の上限を4000人とします。4000人を超えた時点、入場規制をしますので、ご了承ください。いわき平競輪場では「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となりますので、ご協力とご理解をお願いいたします。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

9レース準決勝ゴール
9レース準決勝ゴール
9レース1着守澤太志選手
9レース1着守澤太志選手
10レース準決勝ゴール
10レース準決勝ゴール
10レース1着平原康多選手
10レース1着平原康多選手
11レース準決勝ゴール
11レース準決勝ゴール
11レース1着古性優作選手
11レース1着古性優作選手

<5R>

井上昌己選手
井上昌己選手
 和田真久留が緩めたところを、打鐘の3コーナーで飯野祐太が主導権を握る。内から盛り返した門田凌が3番手に入り、和田は4番手で立て直す。7番手になった山田庸平は、溜めて最終2コーナー手前から仕掛ける。山田のスピードが良く、山崎芳仁は対処できない。九州コンビが前団をとらえて、離れ気味に単騎の志村太賀が続く。山田を楽に差し切った井上昌己(写真)が、3日目から3連勝を遂げた。
 「(最終)ホームで緩んだんで、(山田は)行くのかなって思ったんですけど。そのあとの踏み出しはすごかった。ただ、踏み直しは前回(岸和田)の方が良かったんで、(山田の)調子がどうなんですかね。(山崎は)前に出ながらだったんで、ちょうど4日目と同じような感じでうまく対処ができた。(シリーズ4走して)顔見せの時から脚が変な感じもあったしキツかった。しっかりとケアしたい」
 特選スタートだった山田庸平は、残念ながら二次予選で敗退。抜群のスピードで別線を一蹴しただけに、勝ち上がりが悔やまれる。
 「ジャンのところとか、4コーナーで行くタイミングがあった。けど、1、2走目とうまくいかなくて、気持ち的に弱気になってしまった。(まくりの)踏み出しは良かったです。(今シリーズは特選スタートで)1年間かけてやってきたんですけど、まだ力が足りないっていうところだと思います」

<6R>

武藤龍生選手
武藤龍生選手
 松岡辰泰が打鐘で主導権を握ると、島川将貴が番手に飛び付く。先行態勢の松岡後位が併走になり、後方の久木原洋は4コーナーからスパート。松岡の後ろは島川が奪取するが、最終2コーナー過ぎに久木原が出切る。武藤龍生(写真)が続いて、柿澤大貴をさばいた小倉竜二が切り替える。直線を迎えて久木原はいっぱいで、武藤が抜け出した。
 「島川君は小倉さんと久米(良)さんが付いていたし総力戦って感じだったので、気合が入っていると思った。1走目、2走目と不甲斐なかったので、気持ちを切り替えて、セッティングもいじって少し良くなった。久木原さんがいいところで行ってくれたのと、後ろを固めてくれた柿澤さんのおかげです」
 島川が松岡の内を踏んで、小倉竜二は柿澤を弾いて外を追い込んだ。
 「あそこで引いても中川(誠一郎)君のヨコまで追い上げても出ていかれてしまうので、島川君の判断で粘った感じですね。途中までは良かったんですけど、内へ差し込んで行ってしまった。外にいく余裕はあったと思うんですけど。自分は切り替えていきましたけど、武藤君もすんなり番手だったし、まったく伸びなかった」

<8R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 地元ラインが出て、高橋晋也が主導権を握る。打鐘の4コーナーから高橋がペース上げて、6番手の小川真太郎も巻き返していったん空いた4番手に入る。地元勢は3番手の伏見俊昭が遅れて、最終2コーナーから踏んだ小川がスピードの違いでまくり切る。小川追走の松浦悠士(写真)は、スムーズに外に持ち出してそのまま抜け出した。
 「(三谷)竜生さんと併走する感じだったんで、あたられても大丈夫なように態勢を整えていた。(小川)真太郎がすかさず行ってくれたんで、自分は(あたられず)体力を使わずに追走できた。今日(5日目)の感触だと、自力でやってどうかなっていう疑問があります。結局、脚力不足だし、技術不足。平の重いバンクに対応できなかった。実力不足です。昨日(二次予選)から今日にかけてセッティングだったり、自転車の乗り方だったり、できることを考えてやった。けど、踏んだ感触は良くない。自分が変わるかしないと、重たいバンクに対応できない。そこを持ち帰って自分を見つめ直さないと」
 6番手で構えることなく素早い動きを見せた小川真太郎が、別線を仕留めて松浦とワンツー。
 「いつもより早く仕掛けられた。周りも見えていたし、想定していたなかでうまく走れたんで悪くないかなと。吸い込まれるというよりも、風を浴びないでようにいきました。(あれで松浦を振り切って押し切るには)もっと練習しないと話にならない。(GIで)ちょっとずつ勝負ができて、いいレースができるようになっている。ただ、感じが良くなってやれているのも(G1としては)1つ目なんで、高松宮記念杯、オールスターとしっかりと踏めるようになっているように」

<9R>

守澤太志選手
守澤太志選手
 前受けの清水裕友も踏み込むが、渡邉雄太が切って出る。その上を赤板2コーナー過ぎに押さえて出た眞杉匠が先行策に出る。守澤太志(写真)が続いて、3番手は渡邉と山口拳矢の取り合い。中団争いは最終ホーム過ぎに山口が踏み勝ち、清水裕友は後方。中部勢に続いた単騎の松岡健介を郡司浩平が弾いて松岡は棄権。2コーナーでまくった山口だったが、眞杉の掛かりが良く守澤の横まで。守澤が追い込んで1着。
 「ゴールした瞬間は、眞杉君が4着で申し訳ない気持ちでしたけど(繰り上がりで)良かったです。山口君が叩きにきたと思ったんですけど止まった。後ろを確認しながら冷静に走れました。SSの2人(郡司、清水)がすごい勢いで来ていたので踏んでしまったんですけど、(眞杉が)結果3着で良かったです」
 2位入線の郡司は失格。後方からまくり追い込んだ清水裕友が、外を伸びて2着に繰り上がった。
 「渡邉君に切られる分にはよかったんですけど、山口君に切られると後方になってしまう。最悪でも山口君には切られないように。難しくはなりましたけど、落ち着いてはいました。脚を使っていなかったですけど、伸びて確定板に入れたので良かったです」
 守澤との2車のラインながらも、ケレン味なく逃げた眞杉匠が3着に粘り込んで、昨年のダービーに次いで2度目のGIファイナルのキップをつかんだ。
 「4着だなって思ったんですけど、(最終)1センターで接触があった音は聞こえていた。今日(5日目)は落ち着いて、引っ張って引っ張ってって感じで駆けました。去年よりも成長できているのかなと」

<10R>

平原康多選手
平原康多選手
 周回中は8番手にいた平原康多(写真)が赤板過ぎに押さえて、その上を九州勢が出る。嘉永泰斗が先行態勢を取り、3番手に平原で山田久徳は5番手。2コーナー過ぎから深谷知広が反撃に出て、嘉永も全開で合わせる。深谷が5番手まで押し上げると、前の佐藤慎太郎と接触した山田がバランスを崩して、深谷と接触して鈴木裕が落車。荒井崇博は、逃げる嘉永と車間を空ける。平原は仕掛けず、3コーナー過ぎから荒井が踏み込む。抜け出した荒井を平原がゴール寸前で交わして3連勝。
 「(初手は)後ろになってしまった。周回中は厳しい展開になると思っていました。押さえに行く時にペースを上げないでいけば、深谷が引き切るのが遅くなって、(自分が)前々にいられると思った。ああなったら開き直ってやるしかない。その結果ですね。(佐藤)慎太郎さんとの番組だったので、なんとしても地元選手を(決勝に)乗せないといけないと。コンディションが悪いわけではないけど、バンクコンディションが独特ですね。風がずっと追っていない感じがします」
 深谷を相手に嘉永が敢然と風を切り、荒井崇博に流れが向くが3番手には平原、そして後位では佐藤慎太郎も脚をためる。難しい判断を迫られたが、3コーナー過ぎから踏んで、13年の高松宮記念杯以来のGI決勝に進んだ。
 「(嘉永)泰斗に億万長者になるチャンスをもらった。それ(嘉永が頑張ってくれた)以外ないですね。あの展開になったら(決勝に)乗らないと失礼なので精いっぱいでした。チャンスがきたら、乗れる準備をしてきたので良かった」
 アクシデントで5番手に切り替えた稲川翔が、最終3コーナーからインを突く。地元の佐藤慎太郎は稲川を制して、荒井と平原の間を追い込む。最後は外から迫る深谷との3着争いに僅差で勝った。
 「どういう結果であれ(平原に)全面的に任せていた。イナショー(稲川)が入って来たのがわかって、コースを殺しにいく時に自分の勢いも殺しながらだったので伸びなかった。地元の日本選手権の決勝に乗れて本当にうれしい。ここまでくれば、いろいろな要素が勝ちにつながる。(地元で)佐藤慎太郎グッズを持って、応援してくれているし、それがモチベーションにつながっている。地元の決勝は自然と気合が入るので、できるだけリラックスしたい」

<11R>

古性優作選手
古性優作選手
 周回中、後方に構えた脇本雄太だが、別線に警戒されて赤板を迎えても動けない。1センター過ぎに踏み込むと、3番手の新山響平もスパート。打鐘で出た新山に大槻寛徳は付け切れず、新山を追った脇本が最終ホームで叩いて主導権を奪う。古性優作(写真)が抜かりなく追走して、からまれた東口善朋も前の2人に追いついて近畿ラインが出切る。吉田拓矢を制した太田竜馬がバック手前からまくりを打つが、3番手まででいっぱい。押し切り図る脇本を古性が交わした。
 「1、2走目はちょっとどうかなと思ったけど、昨日(4日目)の休みがいい感じで過ごせた。それで調整がここに来て、いい感じでハマってきたかなと。疲労が残っている状態で良くなかったのが、日本選手権にふさわしい状態になった。明日(決勝)が楽しみです。ちょっと遅いけど、ギリギリ間に合った。今日は脇本さんが頑張ってくれて、東口さんが内を締めててくれたんで安心して走れました」
 新山との力勝負に踏み勝った脇本雄太は、近畿勢での上位独占をメイクして決勝でも3車のラインができあがった。
 「(周回中は)後ろ受けにすんなりなると思ってなくて意外でした。すんなり出させてくれない展開を力でねじ伏せられたんで良かった。新山君も同じナショナルチームで活動していた仲間ですし、より一層警戒してくるだろうと。ジャンのところでは新山君の番手にハマる思考回路だったけど、ラインで決めるには前に踏まないとっていうのがありました。脚的にはまだまだ満足いくところまできてない。でも、精神的な面では良くなってきているのなと」
 打鐘の4コーナーでは大槻にからまれて車間が空いた東口善朋だったが、そこからはさすがのリカバリー。まくる太田にも踏み負けることなく3着に入った。
 「2人とも強いし、脇本君、古性君の後ろを走るために練習をやってきた。こうしてワンツースリーができて、決勝を走れることがありがたい。しっかりと3着までに入って、(決勝の)権利を取るっていう意識だった。それがしっかりと3番手の仕事ができたのかと。前が抜けてないけど、気持ち的にも、脚的にも入っていると思います」