『第76回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:5月8日

 いわき平競輪場を舞台に開催された輪界でもっとも権威のあるタイトル「第76回日本選手権競輪(GI)」は、5月8日に最終日が行われた。決勝は眞杉匠が迷うことなく先行策。7番手に置かれた脇本雄太だったが、最終ホーム過ぎからのロングまくりで前団をとらえて優勝。一昨年10月の寛仁親王牌以来となる通算6度目のGI制覇を飾り、優勝賞金7837万円(副賞含む)を獲得。年末に平塚で行われる「KEIRINグランプリ2022(GP)」の出場権を2月の全日本選抜Vの古性優作に次いで手に入れた。

決勝競走出場選手特別紹介
決勝競走出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 けん制気味のスタートから古性優作、脇本雄太が前に出た。脇本-古性-東口善朋の近畿勢が前を固め、中団は清水裕友-荒井崇博の西日本勢。眞杉匠-平原康多-佐藤慎太郎の東勢が後攻めで、単騎の守澤太志が最後方。この態勢でしばらく静かな周回が続く。
 赤板前の3コーナーからゆっくり踏み上げる眞杉に対し、脇本はペースを落として誘導員との車間を空けはじめる。眞杉が平原-佐藤を引き連れて先頭に立つと守澤が続き、清水-荒井もこれを追う。脇本はすんなり7番手まで車を下げた。まだ誘導員は残っていたが、差を詰める勢いで2コーナーで眞杉は誘導員を交わして先行態勢に入った。ジャンが入ると眞杉はぐんぐんペースを上げていく。後続からの仕掛けはなく、最終ホームは一本棒で通過した。1コーナーで脇本が反撃を開始すると、清水は脇本を合わせるように2コーナーからスパート。脇本と清水が前団に迫ると3コーナーから平原が番手まくりを敢行。アンコになった清水は後退した。懸命に踏む平原を脇本は力でねじ伏せ4コーナーで先頭に立つ。脇本に続いていた古性は佐藤に捌かれて離れてしまい、空いた佐藤のインに守澤が潜り込んだ。脇本は後続をまったく寄せ付けず、第73回大会以来となるダービー2V目を達成した。守澤に踏み勝った佐藤が2着に入り、守澤は3着。

<5R>

石原颯選手
石原颯選手
 石原颯(写真)が打鐘過ぎに主導権。四国ライン3車が出切ると、7番手の坂井洋は4コーナーから巻き返す。逃げる石原の後ろで車間を空けた門田凌が、坂井を再三にわたりけん制。坂井は不発も、和田圭が門田の内をすくって石原後位に取りつく。が、石原のスピードは直線に入っても落ちることなく、そのまま押し切った。
 「自分の脚だと前を取ってカマシっていうのは無理なので、ああいう形でした。坂井さんにフタをして、行けるところからと。(逃げ切れたのは)門田さんが仕事をしてくれましたから。(シリーズを通して)しんどかったけど、全部、先行できてバックも4個取れた。内容としては良かったし、(感じは)そこそこかなと。怪我前より強くなれるようにと思ってます」
 坂井の余力を確かめて、和田圭は最終バックで門田と湊聖二の間を進出。門田をさばいて追い込むも、石原はとらえ切れなかった。
 「坂井君の頑張りで2着に入れました。無理やりいってくれた。あとは坂井君のスピードと門田君の判断と。門田君が出ていくようならと思ったけど、坂井君を止めるのに一生懸命だった。湊さんもキツそうだったんで、入っていったけど、石原君が強すぎた」

<7R>

坂口晃輔選手
坂口晃輔選手
 打鐘でじわりと先頭に立った柴崎淳が、先行態勢を取る。吉澤純平が叩きに出ると、柴崎は落ち着いてペースを上げて主導権をキープ。山崎芳仁は6番手で前との車間を空けて、北津留翼は8番手。最終1コーナーから坂口晃輔(写真)が、再三のブロックで吉澤を止める。3コーナーから山崎も踏み込み、その上を北津留がまくる。柴崎を利した坂口が、別線の強襲を退けて久々に勝ち星を挙げた。
 「スタートで鷲田(佳史)さんがいってくれたのもファインプレーでした。そのあとも鷲田さんの1車は大きかった。普段から練習をしている(柴崎)淳さんを信頼してました。レベルが高くて1着取れる感じじゃなかったけど、これからしっかり立て直すキッカケとしては大きい1着です。付いていく分にはいいんですけど、(最終)4コーナーを回ってからが勝負できない感じです」
 8番手からまくり追い込んだ北津留翼は、外を伸びるも2着まで。
 「(自分は8番手になって6番手の)山崎さんは地元なんで絶対に仕掛けてくれると思ってました。それもあって仕掛けが遅れちゃいました。あおりがあったり、(小倉竜二にあたられた)山崎さんがフラついたりして避けた影響もありました。(今シリーズは)自転車を戻して正解でした」

<8R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 赤板過ぎに高橋晋也が飛び出すが、前受けの松井宏佑が盛り返してもつれる。打鐘手前でインから松井が主導権を奪い返して、番手に高橋が入る。後方の太田竜馬が仕掛けて、最終ホームでは叩いて駆ける。新山響平は自力に転じて2コーナー手前からまくる。松浦悠士(写真)が新山を外に振って、空いた内を成田和也が突く。新山を止めた松浦は、直線で成田を差し返して1着。
 「太田君がしっかり引いて詰まったところでって感じでしたけど、ちょっと早かったですね。でも、タイミング的には良かったですし、(前団を)とらえてくれた。新山君が来るだろうなって思っていたんですけど、成田さんも入ってきた。今日(最終日)も重たかったですけど、あれだけ太田君が頑張ってくれて(三宅)達也さんも後ろを固めてくれたおかげですね」
 北日本3番手の成田和也は、最終3コーナーで俊敏な立ち回りを披露。インに切り込んで松浦を弾くも、直線で伸び返した松浦が一枚上だった。
 「自分たちのラインとして、(高橋)晋也君の後ろに新山君がいて、しっかりついて行こうと思っていたんですけど。太田君もいたのでまさか松井君が粘るとは思っていなかったですし、甘かったですね。新山君のスピードが良かった。しっかり付いていけて、松浦君にもってこられたのでいけると思って入った。でも、(松浦は)さすがでしたね。」

<9R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 3車の九州勢が打鐘手前で主導権を握り、隊列は一本棒。3コーナーを過ぎて8番手にいた吉田拓矢(写真)が踏み上げる。嘉永泰斗も合わせて駆けるが、吉田のスピードがいい。吉田、武藤龍生で出切り、3番手には中本匠栄のアシストもあり嘉永が入る。渡邉雄太のまくりは中団までで、吉田が押し切った。
 「自分が前からなら2番目のラインが嘉永君だろうし、嘉永君と力勝負と思ってました。(打鐘の3コーナーの)あそこを逃したら行くチャンスがなくなっちゃうと。ラインで決めるには、あそこで行かないと。昨日(準決)はいいところがなくて、自分のダメなパターンだった。自分自身に腹が立った。それで今日は、気持ちを入れ直して勝負ができたんで良かった」
 中本のブロックをこらえて吉田に続いた武藤龍生は、5日目に白星を挙げて気配も悪くなかった。
 「(吉田は)後ろに付いていて頼もしかった。(最終)1コーナーでは(中本)匠栄さんのブロックで苦しかったけど、(吉田)拓矢の後ろってことで気持ちが入っていた。(2月の)全日本選抜の落車からおかしくて、不甲斐ないレースが続いていた。それが昨日(5日目)くらいからちょっとずつ良くなってきた。試行錯誤していたけど、セッティングをいじって自転車とのマッチングが良くなった」

<10R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 前受けの深谷知広(写真)を赤板で原田研太朗が押さえて前に出る。原田はそのまま中バンクを走行して流していき、ガラ空きのインを打鐘で突いて山口拳矢が先行勝負に出る。中部コンビに、単騎の稲川翔、大槻寛徳も続き、原田が5番手、深谷は7番手となって最終ホーム。原田は動けなかったが、深谷が2コーナー立ち直りからまくり発進。一気にスピードに乗った深谷は直線で大外に振られたのも乗り切って上がり11秒1の好タイムでアタマに届いた。
 「誰も前を取らなかったので。(打鐘の2コーナーで)ちょうど自分が行こうとしたタイミングで(山口が)内から行ったのが見えたので。無理やり原田君の上を行っても遠回りして終わるかなって。昨日の反省を生かしてまくりに切り替えられたのが良かった。バックでも一瞬待ってしまってまくり追い込みになってしまったんですけど、最低限なんとかですね」
 逃げる山口を庇おうとする浅井康太の内を突いた稲川翔が2着。
 「自分は自力選手ほど脚はないですし、1着を取れる位置を確実に取ってからって。いろいろと想定して、選手の心境も想定しながら走ったんですけど、なかなか取れないですね。体調は良かったんですけど準決勝で負けて。でもそれが今の実力なのかなって。でも(2日目に脇本雄太ともワンツーを決めて)次には目を向けられるのかなって。しっかり自分も優勝を狙える位置にいられるように」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 脇本雄太(写真)が20年10月の寬仁親王牌以来のGI優勝を達成した。レースは、前受けの近畿勢をまず眞杉匠が押さえ、誘導との車間を切って後続の動きをけん制するが誰も仕掛けてこない。腹をくくった眞杉は2コーナーで自ら誘導を切って先行勝負に出る。眞杉ラインに単騎の守澤太志が続き、5番手に清水、脇本雄太は7番手で一本棒。車間を詰めた脇本は最終1コーナーからスパートすると、2コーナーで合わせる清水裕友、さらにバック番手まくりで応戦の平原康多をねじ伏せて堂々先頭でゴールした。
 「走れるGIが限られているなかで優勝したい一心で頑張りました。眞杉君が全開でいくか見るかで違いましたけど、眞杉君が油断せずに踏んでいったのでかなり苦しい展開になりました。(乗り越えられるか)自信はなかったですけど、一度踏んでからは最後まで諦めずに踏んだのでそれが結果に現れたと思う。平原さんを乗り越えた所で記憶がないくらい力を振り絞ったので余裕はなかったです。ゴールした後、ハンドルを投げて1秒くらいして自分が優勝したのかなって。そのくらい力を出し切るレースだったと思います」
 平原は沈み、脇本追走の古性を2センターで飛ばしにいった佐藤慎太郎と、そこを逃さず内をすくった守澤太志の2、3争いに。踏み勝った佐藤が2着に入る。
 「ワッキーがすごかったですね。自分としてはリラックスして走ろうと思っていたんですけど、お客さんの熱気が凄くてそうも言っていられなくなりましたね。眞杉君も強かったですし、平原も。ラインとしてなんて言うか最後まで信頼できたので。地区は違いますけど。あそこ(最終3コーナーで)前に踏むっていうのもあったと思うんですけど、古性君はテクニックもあるのでその前に仕上げておこうと思って。まあでも前に踏んでいても脇本君の優勝には変わらなかったと思いますよ。そのくらい強かったので」
 守澤太志は佐藤との直線での攻防をこう振り返る。
 「その(ゴール前で突っ込む)ために1人でやったので。最善は尽くせたと思います。普通の選手なら割れたと思うんですけど、慎太郎さんの壁は厚かった。でも想定した展開でしっかりとゴール前勝負できたので」

次回のグレードレースは、函館競輪場開設72周年記念「五稜郭杯争奪戦」が5月14日~17日の日程でナイターにて開催されます。
今開催は平原康多、郡司浩平、佐藤慎太郎、清水裕友、守澤太志のSS班5名をはじめとして、実力トップクラス級の新田祐大も参戦する素晴らしいメンバーが勢ぞろい。ダービーの興奮がまだ冷めやらぬなか、勢いに乗っている選手はだれか?熾烈なV争いが繰り広げられるのは間違いなく、ファン必見の4日間です。

5月2日時点の出場予定選手データを分析した、函館記念GIII「五稜郭杯争奪戦」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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