『第77回日本選手権競輪(GI)レポート』 3日目編

配信日:5月4日

 舞台は平塚競輪場。輪界でもっとも権威のあるタイトル「第77回日本選手権競輪(GI)」は、5月4日に3日目を迎えた。一発勝負の「ガールズケイリンコレクション2023平塚ステージ」では、3番手からまくった久米詩がビッグ初優勝。また、勝ち上がりが争われた二次予選では激戦が繰り広げられ、ホームの松坂洋平が一次予選に続く1着。連勝で準決にコマを進めた。シリーズもいよいよ後半に突入。5月5日の4日目には「ゴールデンレーサー賞」がメインに行われる。いよいよ厳しい勝ち上がりのなかで絞られてきたV戦線を占う意味でも、見逃せない一戦だ。
 日本選手権シリーズ開催中の毎日、先着500人にオリジナルお菓子&グッズのプレゼント(4日目はマイハッピーターン)、トークショー&レース展望会、ローストビーフ丼、ケバブサンド、富士宮焼きそばなどのキッチンカーコーナー、未確定車券によるガラポン抽選会など、また5月5日の4日目には「テツandトモ」のお笑いステージ、五輪スピードスケート金メダリストの高木菜那さんによるスペシャルトークショーも予定されています。平塚競輪場では入場制限はなく、皆さまのご来場お待ちしております。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

ガールズケイリンコレクション出場選手特別紹介
ガールズケイリンコレクション出場選手特別紹介

ガールズケイリンコレクション レース経過

 スタートは野口諭実可が素早く出て誘導員の後ろを占めたが、奥井迪が前に入ると、更に2周目に山原さくらが奥井の前に入った。山原、奥井、野口、久米詩、石井寛子、柳原真緒、小林優香の並びで落ち着く。
 赤板で小林が踏み上げようとすると、これを制して石井が上昇。小林、柳原が続く。石井は奥井に並びかけると、奥井はスンナリ車を下げた。山原、石井、小林、柳原、久米、奥井、野口の並びに変わりジャンが入る。久米が踏み上げて小林に並びかけると、久米に続いていた奥井は、更に外を踏み上げて最終ホームで先行態勢に入った。奥井には石井がスイッチし久米が続く。2コーナーで小林がスパート。小林が前団に迫ると、合わせるように久米が発進。石井も奥井を交わして出ようとするが、久米にコースをふさがれて出られない。2センターで逃げていた奥井を久米が交わして先頭に躍り出ると、小林、柳原が続く。石井は相変わらず内に包まれたまま。直線に入っても久米の脚勢は衰えず、ガールズケイリンコレクション初Vを達成した。小林は伸びを欠き、直線で差し脚を伸ばした柳原が2着、小林は3着。


<7R>

山田庸平選手
山田庸平選手
 小原佑太が松井宏佑にフタをして赤板を通過する。3番手の谷口遼平が2コーナー過ぎに先に切って出て、そこを小原が叩く。しかしながら、松井もすぐに反撃に出て、前団に襲い掛かる。後方でタイミングをうかがっていた山田庸平(写真)は、松井が出切った最終2コーナーでまくりを打つ。山田のスピードが良く、4コーナーで前団に並んでそのまま抜き去った。
 「3人(松井、小原、谷口)の気持ち次第で大きく変わるとは思ったんですけど、余裕はあった。気温も上がっていて、少しスカスカする感じがあった。前もその分、掛かっていたと思う。昨日(特選)のレースで見せられたので、今日のいい結果につながったと思います」
 踏み出しで山田のまくりにわずかに遅れた小倉竜二は、最終3コーナーで浅井康太の内を進んで、直線は松谷秀幸と岡村潤の間を伸びて2着。ラインでのワンツーになった。
 「(山田に)ちぎれたんで浅井君の後ろにスイッチする感じで、かなり減速で突っ込みそうになったんですけど。なんとか抜け出せて良かったです。もう腰は8割りくらい回復している。ただ、練習不足の影響もあって、脚の入り方が悪いですね。まくりに反応できなかったので、近道するしかなかった。最短ルートで行かせてもらいました」

<8R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 赤板過ぎに渡邉雄太が眞杉匠(写真)を押さえて出るが、すかさず阿部将大も仕掛ける。渡邉も踏み込んで両者が脚を脚を使い、5番手の眞杉匠にとっては流れが向く。阿部が出切り、眞杉は打鐘3コーナーで仕掛ける。最終ホーム手前で眞杉が主導権を奪取して、神山拓弥が続く。栃木勢を追った山口拳矢と飛び付いた阿部で3番手が併走。後方からまくった渡邉は前が遠く、3番手を取り切った山口が詰めながら外に持ち出して直線へ。眞杉が、神山、山口を退けて逃げ切りで1着。
 「(渡邉と阿部で)踏み合ってくれたんで、展開的にはすごく向いた。(出切った時に3番手が)ちょうど併走するくらいで行きました。正直、脚見せからすごく重くて不安しかなかった。(レースのなかった2日目に)あえて乗らなかったら、フワフワしてダメでした。最近は決まり手も減って、バック本数も減って、自分らしい走りができてなかった。今回はいい走りができているかなと」
 区切りの通算300勝が遠い神山拓弥だが、同県の後輩とワンツーで人気に応えて二次予選をクリアした。
 「阿部君と渡邉君の並びが理想的で、眞杉的にはやりやすくなったんじゃないかと。いつも通りすごい先行力で頼もしいのひと言ですね。ゴール前も強かった。(1走目が終わって)自分なりに体調も整えて少しでも良くなるようにしたけど、今日(二次予選)に関しては内容も着も眞杉が強かった」

<9R>

松坂洋平選手
松坂洋平選手
 南関勢が前団に構える。7番手から上昇した嘉永泰斗を、深谷知広が赤板過ぎに突っ張ってペースを握る。中団がもつれたが、山田久徳が4番手をキープする。浮いた小堺浩二をさばいた嘉永は、6番手で最終ホームを迎える。深谷は、落ち着いて1センター付近からギアを上げて風を切る。3番手で車間を空けた小原太樹が、嘉永のまくりけん制しながら詰めて直線。番手無風の松坂洋平(写真)が、ゴール前で逃げる深谷を差し切った。ホームバンクのダービーは、ラインの力で予選連勝で勝ち上がった。
 「ちょっと恵まれすぎですね。深谷君が強かったですね。嘉永君の後ろ攻めは考えていなかったので、(深谷は)どうするのかなって思っていたんですけど突っ張った。自分はもう口が空かないように付いていきました。(最終)バックから後ろを確認したら小原君が仕事をしてくれていた。(深谷を抜けるかは)ゴールまでわからなかったですね。(連勝で勝ち上がれて)気持ちいいですね」
 南関ライン3番手の小原太樹が、車間を空けて後続との間合いをとる。まくった嘉永のスピードも悪くなかったが、小原が詰めながら対処。ラインでの上位独占の影の立役者だろう。
 「突っ張るか引くかの対応は、深谷さん任せていた。どうしても3番手は難しいので、自分でやれることはやろうと思って車間を切りました。風はありましたけどバンクは軽かった。ラインでワンツースリーだったので良かったですね。純粋にうれしいです」

<10R>

犬伏湧也選手
犬伏湧也選手
 長島大介が赤板過ぎに切って出ると、前受けの犬伏湧也(写真)が下げる。栃茨勢に山本伸一が続いて、新田祐大は5番手。7番手の犬伏は、打鐘手前からスローペースをカマシ一気。柏野智典は踏み出しで遅れて、最終ホームで主導権を奪った犬伏の後ろには、長島が入る。打鐘4コーナーでインを突いた新田祐大は、山本と4番手を併走。ラインの援護を失った犬伏だが、軽快なリズムで駆けて長島は車間がなかなか詰まらない。横一線の2着争いをしり目に犬伏が逃げ切った。
 「作戦通りじゃなかったんで、一瞬パニックったところもあったけど。(周回中は)前からだったんでカマすしかないなと。(長島が)しっかりと切りに来たんで、引かせてもらいました。新田さんに見られていたんで、行きづらいところもあったけど、そこで仕掛けないとって。(出切ってからは最終)ホームで長島さんが後ろに入ったのがわかった。バックが追い風気味だったんで、踏み直して詰められないようにと。風が強かったんですけど、脚見せから軽かったんで、自分的にはやれるなっていうのがあった」
 1人の犬伏を最終ホームで受けた長島大介が、番手に飛び付いて流れ込む。犬伏のパワーに2着キープがいっぱいで、脚力の差を痛感する。
 「犬伏君が前でちょっと嫌だったんですけど、切らせてもらえた。(犬伏が来た時に)一応、全開で踏んで、犬伏君が1車だったいうのがわかった。ただ、踏み出しが強すぎてああなっちゃいました。犬伏君にピッタリと付いても追い込みしかできないので、詰めていく勢いでいけばと思ったけど。それ以上に強かった。高知(全日本選抜)の初日みたいな(犬伏を抜けない)印象がつけられて、精神的には苦しいですね。完全に脚負けです」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 前受けの脇本雄太(写真)は、誘導を残したまま引く。赤板で佐藤一伸が誘導後位に入り、大きく車間を取った太田竜馬が、3番手で脇本を警戒する。打鐘で行きかけたように見えた脇本だったが、再度タイミングを見極めて最終ホーム手前から発進する。脇本がさすがのスピードで前団に迫る。2コーナー手前で太田に振られてからんだ三谷竜生は、出切った脇本に離れながら追走。ロングまくりの脇本が、セーフティーリードを保ったままゴール。
 「(太田が)車間を空けていたので、詰めた勢いで行くのかどうするのかの対応で、ちょっと迷いました。そのままいくなら付いて行ってもいいかなって思ったんですけど、(太田が仕掛けず)1周なら勝負しようと思った。ちょっと参考外の部分もありますけど、踏みたいところから踏めている。(上がりタイムは10秒8で)そこは意識していないですし、すんなりのまくりだったので参考外にとどめておきたい」
 脇本には5車身離された三谷竜生だが、3着には2車身差つけた。機動力のある三谷だからこその2着だったかもしれない。
 「想定していた展開になったと思います。ちょっと(太田が)変なもってき方だったので、変な感じで引っ掛かってしまいました。太田君が転びそうでしたし危なかった。調子は良いので、ああなっても乗り越えられるとは思っていました。駆け出しも大丈夫でしたし、もうちょっと外を差し込み気味に追走できれば良かった」

<12R>

久米詩選手
久米詩選手
 打鐘でアクションを起こした久米詩(写真)は、2番手にいた石井寛子の後ろでストップ。久米に続いた奥井迪が、そのままの勢いで先頭に立って主導権。石井が逃げる奥井の後ろにスイッチして、久米は3番手を手に入れて思惑通りの展開に持ち込む。小林優香がまくりで襲い掛かるが、久米が最終2コーナーからまくり上げて合わせる。奥井をとらえて直線で先頭に立った久米が、柳原真緒の追撃を振り切って優勝。ビッグレースを初めて制した。
 「今日は自分に自信をもって戦えたことが、勝ちにつながったかなと思います。(周回中のポジションは)前の方か中団から組み立てていこうかなと。あとは後手を踏まないように、レースに沿っていこうって。最終バックで奥井(迪)さん、(石井)寛子さん、自分の順番になっていたらいいなって思っていました。そうなったら寛子さんより先に仕掛けたかった。(まくり切ったあとも)思った以上に(後続に)詰められている感じはなかったけど、最後はガムシャラに踏みました。今回に向けて緊張に対する向き合い方とか、一から見つめ直してきた。それがいい方向に出たのかなと」
 最終3コーナーでコース取りに迷いが生じた柳原真緒は、結果的に外を踏んで2着に強襲。そのちょっとの間が、久米との明暗を分けた。
 「(周回中は6番手になってしまったが)もう少し前の方が取れると思っていたんですけど。石井さんが行って、小林さんも行ったので、自在には動けたのかなって思っています。(最終)3コーナーは真ん中が空いたので迷ってしまった。外を踏む自信もなかった。もう少し自信をもって走れていれば良かった。正直、残り1周でキツかったですね。(最後は)思ったより脚が残っていたと思う」
 中団からまくった小林優香は、久米に合わされて最終2センターで久米の後ろに降りる。再度、直線で力を振り絞ったが3着がいっぱい。
 「結構みんな前々に行った。(石井の)動きに乗って行けたんですけど、(打鐘過ぎに)内に包まれてしまった。すんなりいければ良かったんですけど。脚を使ってしまった分、(最終)2コーナーで行き切れなかったですね。もうちょっと(久米に合されたあと)すぐに直線勝負に切り替えられれば良かった。けど、焦りがありました。(最後の直線は)内が空いた。最近勝てていないので底上げしないといけないですね」