『第78回日本選手権競輪(GI)レポート』 5日目編

配信日:5月4日

 今年の舞台はいわき平競輪場。輪界でもっとも権威のあるタイトル、令和6年能登半島地震復興支援競輪・大阪・関西万博協賛「第78回日本選手権競輪(GI)」は、5月4日に5日目を迎えた。ファイナルの9枚のキップを巡り、準決の3個レースでは激しいバトルが繰り広げられた。昨年ダービー王に輝いた山口拳矢をはじめ、清水裕友、岩本俊介の3人が1着で決勝に進出。岩本、小林泰正の2人が、GI初のファイナルの舞台にたどり着いた。シリーズも大詰め、5月5日の最終日には決勝の号砲が鳴らされ、第78回のダービー王が誕生する。
 ダービーシリーズは、最終日も様々なイベントでみなさまのご来場をお待ちしております。「武田玲奈」のトークショー、「純烈」のライブ、ふくしま銘菓を先着で1000個プレゼント、グッズ販売、ワットバイク体験などの地元選手会コーナー、グルメブースなどが予定されています。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

準決勝9Rゴール
準決勝9Rゴール
9R1着、山口拳矢選手
9R1着、山口拳矢選手
準決勝10Rゴール
準決勝10Rゴール
10R1着、岩本俊介選手
10R1着、岩本俊介選手
準決勝11Rゴール
準決勝11Rゴール
11R1着、清水裕友選手
11R1着、清水裕友選手

<5R>

窓場千加頼選手
窓場千加頼選手
 赤板2コーナー過ぎに根田空史を押さえた犬伏湧也が、すんなり主導権を握る。追い上げた谷口遼平が打鐘過ぎに4番手に入り、根田は下げる。そのポイントを逃さず窓場千加頼(写真)が、8番手から仕掛ける。犬伏はそれを察知したように、最終ホーム手前から踏み上げて駆ける。一度は4番手の外で休んだ窓場は、2コーナー手前から再度、加速。逃げる犬伏を4コーナー手前でとらえた窓場が1着。
 「組み立てとしては、まだ挑む立場なので、犬伏君の先行に対してどういう風に仕掛けていくか。その内容も問われると思っていた。初手も理想的な位置ではなかったんで、早め、早めと思っていた。後方になった時点で前まで叩きに行くつもりだったけど、(最終)ホームで犬伏君が加速した。その加速がすごかったのでヨコの動きは少ないと思って、(外併走で)ピッタリいきました。メンタルで左右されることが多いので、(成績が出ているのは)まだ半年くらいですけど、しっかりと強い気持ちで冷静に戦っていきたい。強い選手はこれを何十年もやっているので」
 山本伸一が2着で、人気の近畿ラインでワンツー。窓場の成長ぶりに山本が目を見張る。
 「(踏み出しのところは)久しぶりにピリついた。離れるかもしれないっていうのがありました。(犬伏も踏み上げていったけど窓場は)関係なく行ってしまって、いまの充実ぶりが出てましたね。(窓場は強くなって)前とは全然違うけど、半年前くらいに付いた時も特別クラスだなっていうのは感じていました」

<6R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 前受けの北井佑季は、赤板過ぎに北日本勢を送り出して4番手に下げる。先行態勢の高橋晋也がペースを落とし、追い上げた阿部将大と北井で4番手が重なる。外併走から阿部が打鐘過ぎに叩きに出るが、高橋も突っ張って駆ける。突っ張られて浮いた阿部が4番手に入り最終周回。6番手になった北井は、2コーナーまくり。合わせて出た阿部、さらに飯野祐太を北井がのみ込んで、ゴール寸前で郡司浩平(写真)が交わした。
 「(二次予選は車体故障のアクシデントもあり勝ち上がりを逃したが)昨日、1日ありましたし、気持ちを入れ直した。こういうところでしっかり勝ち切らないとっていうのはあるので、北井さんと2人で決まるようにと思っていました。北井さんがどこで仕掛けるかでしたけど、(最終3コーナーであおりもあったが)変に内にいくよりはしっかり付いていって外を踏もうと思いました。(今シリーズは3走とも番手で)まだまだ技量不足の部分もありますし、磨いていきたい」
 郡司と2車の神奈川ライン。まくりに構えた北井佑季が、北日本勢を仕留めた。
 「(別線の)切り方次第で、絶対に突っ張るとか絶対に引くとかはなかったんですけど、結果的に踏まなすぎました。阿部君が仕掛けていって高橋君と踏み合いになったところで行くチャンスはあったんですけど、1回待ってしまった。(最終)ホームで行ければ良かったんですけど、待った分、脚はたまっていた。(二次予選は突っ張り先行に出たが)サラ脚だった寺崎(浩平)君もそうですけど、河端(朋之)さん、自力の2人にいかれてしまっていますし、力負けでした」

<8R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 押さえて出た河端朋之が主導権を握り、森田優弥は車間を空けて3番手。椎木尾拓哉が内を進出すると、松井宏佑は打鐘から仕掛ける。河端も徐々にペースアップして駆けるが、最終ホーム過ぎに松井が叩き切る。松井の掛かりが良く、森田は4番手に切り替えて小休止、バックでは仕掛けられない。4コーナーから森田が追い込むが、地元の佐藤慎太郎(写真)が番手でチャンスをモノにした。
 「(松井は)1つ目のラインが来た時に付いていくのかと思ったけど、そこも松井の間合いがあるのでああなったんでしょう。松井は(出てからも)しっかりと踏み直して、いいペースだった。自分は余裕をもって抜いている感じではない。(二次予選で敗退して)気持ちが落ちているところがあるんで、ピリッとしてない。ただ、今日(5日目)もすごい声援をいただいた。S班として地元のビッグを走れるのは、明日が最後の1走になるかもしれないので、そういう思いで頑張ります」
 同期の森田にけん制されながらも、勝負どころではしっかりと踏み込んだ松井宏佑が、3走連続の積極策で2着に粘り込んだ。
 「(森田には)警戒されると思っていたし、そのなかでしっかりと主導権を取ろうって気持ちだった。(椎木尾に)しゃくられても焦らないで、先行っていう感じでした。河端さんも踏み上げたタイミングで叩き切れたのは自信になります。出切るのに脚を使った。(今シリーズから使っている新車は)柔らかくしたんで、もうちょっと踏み込めるかと思ったけどタレてますね」

<9R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 6番手の菅田壱道が、眞杉匠の突っ張りを制して強引に切って出る。眞杉は3番手で態勢を整えて踏み込んで、打鐘過ぎに主導権を握る。後方の寺崎浩平は3コーナーから巻き返すが、眞杉もペースを上げる。最終ホーム手前での平原康多のけん制を乗り越えた寺崎だったが、眞杉のブロックを受ける。失速した寺崎に接触して南修二が落車。寺崎も後退する。4番手の菅田は仕掛けられず、山口拳矢(写真)がバックからまくりを打つ。逃げる眞杉もいっぱいで平原が番手から追い込む。が、山口がシャープに突き抜けて、日本選手権連覇にリーチをかけた。
 「(眞杉と寺崎の仕掛け合いで)ああなると思っていたので、脚をためて行けるところからっていう感じでした。(連覇は)そんなに意識していなかったんですけど、やっと連覇を狙えるスタートラインに立てたのかなって。(最終)バックでちょっと迷ってしまったんですけど、あそこで思い切って行ければ(川口)聖二さんにもチャンスだったのかなと。二次予選で意識する部分があって、そこをアップの時から意識して最後まで踏めたのかなっていうのはあります。体の使い方の部分ですね」
 アクシデントはあったものの、眞杉を利して番手から追い込んだ平原康多が2着。ラインの諸橋愛ともに決勝に進んだ。
 「(最終)ホームの直線では(寺崎を外に)もっていったんですけど、1コーナーで南さんと合うと思ったので、飛ばせれば1車になるなって思ったら眞杉が自分でもっていった。引っ掛かりそうになりました。菅田君が2周で切りに来て(眞杉は)バックを踏んでから仕掛けでしたし、脚を使っている状態だった。(寺崎を)ブロックしたあと失速している感じだったので、後ろの様子をうかがいながらでしたけど、諸橋さんを連れていかないとなっていう判断に切り替えました。山口君が来ると思った。かなりいい方向に来ていると思います。1カ月前の状況とは全然、違いますね」
 関東ライン3番手の諸橋愛は、前の2人の動きに対応して懸命に食らいつく。3着入線で昨年10月の寬仁親王牌以来の優出を果たした。
 「(残り2周で)眞杉が突っ張る雰囲気だったんですけど。下がってきたのでいつ行くのか、行かないのかなって。寺崎君が来るようなら出させるかもって感じでしたけど、菅田君に出られたのは予想外でしたね。(眞杉は)本当に誰も来られないぐらいだったんで、いい掛かりをしていたと思います。でも、(最終)バックくらいから失速してきた。本当は内しか考えていなかったんですけど、外を行こうかなっていう雰囲気になりましたね」

<10R>

岩本俊介選手
岩本俊介選手
 赤板1センターで深谷知広が先頭に立ちレースを支配する。坂井洋が4番手に収まり、6番手の外でタイミングを計った古性優作が打鐘から踏み込んでいく。古性の仕掛けに呼応して、深谷も踏み上げる。古性は坂井をキメて4番手を奪取して最終周回へ。先行した深谷の番手で岩本俊介(写真)が車間を空ける。2コーナー手前からまくった古性に、岩本は詰めながら対応。直線まで待った岩本が追い込んで1着。3連勝で08年のデビューから初めてのGI決勝のキップをつかんだ。
 「(初のGI決勝は)うれしい。めちゃくちゃうれしいです。3番車だったので坂井と古性を追って単騎は入れないようにスタートの位置は取れた。深谷のイメージ通りだったと思う。深谷は強いので、みんな脚にきながらでしたがバンクコンディションもあって、先行の深谷がキツいのかなって思っていた。それで後半にタレてしまうかもという思いもありました。できることはしようと思ってました。でも、(古性に)上手に来られて、前に踏ませてもらった。この歳まで自力でやってきて、こういうところで深谷の番手を回れて、普段、タテでやっている分、少しは自転車が出た」
 最終ホーム付近で坂井が東口善朋とからんで、吉田拓矢は連結を外す。バックから内を踏んで坂井後位に取りつくと、直線で強襲して2着。
 「(坂井)洋がどう走るか、任せていた。(最終)ホームで連結を外して、その辺がなんとも言えないですね。洋が外を踏んでくれたので、コースができました。状態は道中も楽でいいと思う。(GI決勝は失格した昨年のオールスター以来で)やっと戻ってこられたっていうのはある」
 結果的には深谷ラインに2度合わされた古性優作だったが、あきらめることなく直線でしぶとく追い込んで3着。脚力差を痛感するも、古性だからこその対応力は見せた。
 「(周回中は)あそこを取って、先に動かしてと思っていた。けど、深谷さんが来るのも早かったし、坂井君も。ちゃんと切れたら良かったけど、誘導もあったんで。追い上げるところまで行こうとして、深谷さんのダッシュがすごかった。それであそこを取るだけになった。後ろが競りになったのがわかって、(最終)1センターから踏んだが、力がなかった。深谷さんと僕の力の差があった。深谷さんが強くて、力負けした。結果、内容は悪かったけど、感触は良かったと思う」

<11R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 周回中、8番手を余儀なくされた三谷竜生が早めに動き出すが、前受けを選択した新山響平は、地元コンビと息を合わせて赤板過ぎに突っ張る。スタートで北日本勢の後ろを手に入れた小林泰正は、4番手をキープ。清水裕友(写真)が、6番手で打鐘を通過する。一本棒の隊列のまま、最終ホーム手前から新山がフルアクセル。2コーナー手前から小林が踏み込んで、さらに清水もまくり上げる。ペースが上がり、松浦悠士は付いていけない。3コーナーでは山崎芳仁に小林、清水がほぼ同時に襲い掛かるが、スピードは清水が断然。まくり切った清水が1着。
 「北日本の後ろが取れたら良かったけど、武藤さんのスタートが早かったので(周回中の位置は)しょうがないですかね。(6番手は)あんまり想定をしてなかった。けど、4番手だったら固まって仕掛けられてなかったかもしれない。(先まくりの関東勢の上をまくる形になって、隊列が)短くなったんでラッキーでした。(前団を)越えることはできるかなと思った。ただ、越えてからはスカスカした。早くゴールが来てくれっていう感じだった。踏みすぎてるんでしょうね。力んでいるのか…。でも、まあ、1着なんで」
 武藤龍生がスタートで飛び出して、関東コンビは好位置を確保。そこから敢然と先まくりに出た小林泰正は、2着でGI初優出を果たした。
 「(GI初優出は)自分でもビックリしているし、うれしいです。すごい状態はいいんですけど、3走してみて展開もすごく自分に向いてくれたんじゃないかと。自分たちは外枠なんで、後ろからになると絶対に(新山に)突っ張られると。(武藤がスタートでいい位置を取ってくれて)行けるところから行こうと。まくりを(北日本勢に)合わせられるだろうけど、清水よりも先に仕掛けないと勝機はないと思っていた。実際、仕掛けられたんで良かった。自分のタイミングで(まくりに)行って、(感触も)すごい良かったけど、(清水には)力負けした。ただ、今年で一番仕上がっていると思います」
 最終ホームでは前の小林に立ち遅れた武藤龍生だったが、小林のまくりに離れることなく流れ込んだ。さらなる上積みを求めて、セッティング変更に着手するようだ。
 「新山君の突っ張りがあると思ったので、前の方が取れたらっていう感じだった。内も気になりつつ、(最終)ホームでは口が空いてしまってヤバいなと思いながらだった。(小林)泰正が勇気をもって仕掛けてくれて、自分もちょうど追走できた。ただ、清水君が強くて、ここを来るんだっていうのがありました。(自分の脚の感じは)いいんですけど、今日(5日目)も口が空いた。初日(のあとに)ハンドルまわりをいじって、昨日のゴールデンレーサー賞のあともまた違うなっていじった。明日に向けてまだいじる予定です。また(GIの決勝に)乗れて良かったです」