『第62回日本選手権競輪(GI)レポート』 5日目編
 
配信日:3月7日


 「だんじりダービー」と銘打たれ、岸和田競輪場で開催中の第62回日本選手権はいよいよ佳境を迎えた。今日は準決勝3個レースで決勝戦9つの椅子をかけた激しい勝ち上がり戦を展開した。優勝候補の筆頭格、山崎芳仁は4着でGI優出が9でストップ。10レースでは村上義弘が魂の走りで近畿最後の砦を守った。明日はいよいよ決勝戦。村上に、武田豊樹、海老根恵太らSS自力選手でし烈な頂上争いを繰り広げる。
  明日のタレントゲストステージは歌手の鳥羽一郎氏を招いて、8レース発売中にBBイベントステージで開催されます。にぎわい広場には「素人脚自慢大会」ブースを設置し、記録更新者には素敵な賞品をプレゼント。予想トークショーや「ブランド王ロイヤル」タイアップ企画などさまざまなイベントでご来場をお待ちしています。注目は何と言っても決勝戦、ぜひ明日は岸和田競輪場で迫力あふれるレースをお楽しみください。



<1R>
栗田雅也選手
栗田雅也選手
   1レースは栗田雅也(写真)が強じんな粘りを発揮した。
  「先行屋のわりには5441着とまとめられたと思います。一次予選で負けたけど、残り3日間は先行できましたから。調子は悪くなかったけど、結果が出ないとデカイことは言えませんからね。次につながるレースができたし、大敗せずに良い収穫があった。今年で30歳だし、もう収穫があったばかりも言ってられないから、次は共同通信社杯に向けて頑張ります」


<2R>
小橋秀幸選手
小橋秀幸選手
   2レースは先行態勢に入った菅田壱道に金子貴志がカマシで襲いかかる。古田義明が離れ、金子後位に菅田がはまると、4コーナーから菅田マークの小橋秀幸(写真)が鋭く伸びた。
  「菅田はもっと頑張れたみたいで、僕が踏むのがちょっと早かったですね。もっと菅田と車間を空けてれば良かったけど、焦って行かれちゃうと思って内を行った。GI初勝利は嬉しいけど、ちょっと申し訳ないですね」


<3R>
西川親幸選手
西川親幸選手
   3レースは柴崎淳後位の競りを尻目に友定祐己がバックまくりを決める。最後は番手の西川親幸(写真)が鋭く抜け出した。
  「(友定)祐己が強かった。踏み出しはヤバかったです。風が吹くのでギアを落としたからスカスカする感じだったけど、回したほうが次のために良いかなと思った。あとは(最終日も走れるように)キャンセル待ちですね」
  3着の十文字貴信は周回中から柴崎後位で萩原操と激しく競り合った。
  「あのほうが気合が入るんです。あまり冷静になりすぎても、まだ技術でやられますから。最終ホームの関戸(努)さんの動きは予想外だったし、押し込んだけど勝てなかった。三番手から良く見てコースが空いたらと思ってたけど、最後は上手く空きましたね」


<4R>
山田裕仁選手
山田裕仁選手
   徹底先行型同士の対戦に注目が集まったが、気合勝ちは金山栄治。青板バックからの仕掛けで主導権を取りきり、番手の山田裕仁(写真)がシリーズ初勝利を挙げた。
  「今日は藤田君から勝ち上がりの時の迫力が感じられなかったし、先行は金山君だと思ってましたよ。新田がすんなり中団に入ったのが分かったので、かなり大きく持っていってしまったけど、あれで中を割られちゃいましたね。もうちょっと締め気味なら(金山を)残せたかな」
  4番手からまくれなかった新田康仁は首を傾げる。
  「落車の影響はどうだか…。ケガは大したことないんですけどね。とにかく、脚を使わずに中団を取れたのにまくれないんじゃ弱いとしか」


<5R>
小嶋敬二選手
小嶋敬二選手
   小嶋敬二(写真)が4日目にしてようやくシリーズ1勝を挙げた。北津留翼にジャンで突っ張られたものの、立て直して中団を取るとバックまくりを決めて快勝した。
  「伊藤君に前を取ってもらったまでは良かったけど、その後は作戦とは違った。前がけっこう掛かっていたし、バックが追い風なんでまくりはキツかったよ。お客さんに怒られるし勝ててよかった」
  伊藤正樹が小嶋を懸命にマークし2着に流れ込んだ。
  「初手で中団を取る作戦だったから、スタートは緊張したし脚を使ってしまった。小嶋さんがが叩いた所を浅井(康太)がカマす作戦だったけど、ジャンで北津留が踏んでたから行けなかったね。ホームでバックを踏んだし2コーナーでは脚が売り切れました」
  浅井康太は七番手に置かれてしまった。意地でまくり上げたが小嶋に合わされ3着が精一杯。
  「ジャンで小嶋さんが番手にはまったのを見て焦ってしまい、展開が分からなくなってしまった。七番手になったけど、行ける所まで行くしかないと。でも、出たら小嶋さんに合わされてしまったんで、三番手の平沼(由充)さんを締め込んで何とか3着を確保しました」
  逃げた北津留翼は「ジャンで小嶋さんを出させたらその上を浅井君に行かれてしまうから、小嶋さんを出させる訳にはいかなかった。もう半周モガける脚があればね。今日は難しいレースだった」。


<6R>
有坂直樹選手
有坂直樹選手
   6レースは稲垣裕之と佐藤友和でモガき合う展開に。菅原晃―池尻浩一の九州勢がその上をまくったが、ゴール寸前で両者が接触してまさかの落車。これを目前で避けた有坂直樹(写真)が一番でゴール線に飛び込んだ。
  「友和のダッシュが凄かったし、行くのが分かっていたのに一車離れてしまった。追い付いたけどキツかったね。カマシなら楽かなと思ってたけど全くそんなことはなかった。落車は間一髪避けられた感じ。脚はないけど反応は良いでしょう」
  稲垣裕之に乗った前田拓也が2着。その後位に切り替えた山田敦也が3着に入る。
  「佐藤さんは止まってしまったけど、諦めずに前に踏んでくれた。あれがなかったら前田さんの後ろにも切り替えられなかったね。体は反応できているし調子は良いと思う」
  稲垣裕之(4着)は「友和はギアを上げていたからやる気なんだなと思った。自分は先行態勢に入っていたし、あそこで出させる訳にはいかなかった。何とか前輪を差し込んで突っ張ることができたんだけど…。まくられたのは仕方ない」


<7R>
室井健一選手
室井健一選手
   まくりのスペシャリスト・石丸寛之が絶妙なカマシ先行で主導権を奪い去ると後続は全く仕掛けられない。結局、ゴール前は中四国勢で上位独占となった。石丸は「志智さんが斬ってくれて楽になりました。でも、今回は流れに乗れてませんね。今日も駆け出しが重かった分、最後はタレちゃいました。あの仕掛けなら粘り切らないと」
  1着は室井健一(写真)がゲット。今シリーズ2勝目に相好を崩す。
  「競輪は展開やね。(石丸が)前取って、どうするんかなと見てたけど、中部が斬ってくれて楽になった。これが準決勝だったら良かったのに。まあ、展開さえ向けば勝てる調子にはありますね」
  ライン三番手を回った西村正彦が2着に流れ込んだ。
  「今回は僕にも余裕があるし、6番(志智)の動きで絶好の展開になりましたね。着が良ければ気持ちも上がってくる。流れも良いし、言うことはないね」


<8R>
岩津裕介選手
岩津裕介選手
   8レースは坂本健太郎にけん制を受けながらも永井清史が強引に出て主導権を握った。番手の岩見潤に展開が向いたが、永井の失速に岩見もスピードが鈍りゴール前は大混戦。追い込み勢が雪崩のように前団に襲い掛かり、岩津裕介(写真)が中を鋭く伸びて1着をさらった。
  「バックで最後方になったけど、達也(三宅)さんは強いしスピードがあるから前に踏んでくれれば自分にもチャンスがあると思っていたし、腹を括って脚を溜めることに専念しました。中団が空いていたし、詰める勢いでスピードに乗れたね」
  中団からまくり出た坂本健太郎だが、思いのほか車が伸びず7着に敗れた。
  「永井君にうまく脚を使わせて駆けさせたつもりだったけど、あれで結構自分も脚を消耗していた。バックでは前が空いてしまったしね。追い掛けたけど4番(加藤圭一)を越えるまでに脚が売り切れてしまった。今日は前(永井清史)が強かった」
  永井清史は「出切るまでに脚を使ったけど、今日は風が強かったし流れるところが全くなかった。今日の条件だったらカマした方が良かったですね。結果的に自力型は皆止まりましたね」と、囲まれた記者団に敗因を説明する。


<9R>
加藤慎平選手
加藤慎平選手
山口幸二選手
山口幸二選手
   準決勝最初のこのレースでは、鉄の結束を誇る中部勢が完璧なレース運びを見せた。吉田敏洋が渾身の先行勝負を見せると、番手の加藤慎平(写真)がアシスト。そのまま番手から抜け出して無傷の決勝進出を果たした。
  「決勝に乗れたのは嬉しいんですが、(吉田)敏洋が残れなかったのは残念ですね。でも、後ろをS級S班の山口幸二さんが固めてくれたので、二人で決めなくてはという気持ちが強かった。オッズを見ても、僕と幸二さんが売れてましたからね。これでやっとベスト9に入れただけだから、まだ気を抜けません。今日はラインの前後のおかげで勝てました」
  2着の山口幸二(写真)も納得のレースで優参。加藤まで1/2輪差まで詰め寄り、伸びも上々だ。
  「慎平君も僕に気を使ったレースをしてくれるから、納得して後ろを回れるんです。僕が後ろを回ることのプレッシャーもあるだろうけど、頑張ってくれるからね。今日は(吉田)敏洋がよく頑張ってくれました。彼もそういう気持ちを感じてくれているんだと思う。初日に感触をつかんで、そのままの勢いでここまで来たって感じですね。競輪祭では昨年末の賞金レースや公務で忙しかった影響で今一つだったけど、今回は踏めてますね」
  目標の平原康多がゴールを目前にして落車。踏み出しで離れてしまった兵藤一也だが、逆にこれが幸いして3着に突っ込んできた。
  「離れたのはちょっと恥ずかしいけど、そこで逆に気合が入りました。それで3着までに入れたんだと思います」
  平原とからんだ村上博幸は優参を逃して、「勝負所で前々に行けたし、(決勝に)乗れそうな展開だっただけに悔しい」とうつむいた。
  吉田敏洋は「一次予選、二次予選と同じ形で逃げ切れたけど、さすがに準決勝になると現実は厳しいですね。この厳しさを肌で感じられたし、次に繋がる競走ができました」と納得の表情を見せる。


<10R>
村上義弘選手
村上義弘選手
武田豊樹選手
武田豊樹選手
   場内が大いに沸いた一戦。近畿の星・村上義弘(写真)が昨日に引き続き総力戦で勝ち星をゲットした。ゴール後は何度もガッツポーズ。検車場に引き上げてからも高ぶる気持ちを抑えるのに必死だった。
  「ホンマに良かったのひと言です。先行日本一の武田さんに胸を借りて逃げたかった気持ちもあるけど、ペースを上げられて仕掛けるところがなかった。何とか(武田ラインの後ろを)確保しようと必死でした。今まで、神山さんのブロックをかいくぐったこともなかったしね。出切ってからは夢中でした。声援に後押ししてもらったんでしょう。今シリーズは初日からお客さんの応援で力を発揮できています。明日の決勝は力を出し切ることだけを考えて走ります。2年前のダービーでケガをしてから、正直、気が抜けてしまった時期もあったけど、応援してくれる人がいたからここまで戻って来られた。明日はそういう人たちの気持ちに応えられる走りをしたい」
  武田豊樹(写真)は冷静そのもの。3着に粘って準決勝を突破した。
  「相手が村上君ですからね。レースに対してすごくこだわりを持っている選手だし、俺もそうだから今日は先行で勝負したかった。でも、まくられちゃってはね(苦笑)。僕も打鐘からフカしてるから仕方ないかな。でも、僕の1着で車券を買ってくれているお客さんもいるんだし、決勝では内容よりも結果にこだわった走りをしたいですね」
  目標の五十嵐力は不発に終わったが、渡邉晴智は内を巧みに伸びて連にからんだ。これで2年連続Vに一歩近付いた。
  「五十嵐は後ろから攻めるって言ってくれてたんです。あとは武田さんが先行したっていうのをうっすら覚えてるぐらいだけど、ただ前に踏んだらコースがあった。あの位置で五十嵐が頑張ってくれたから、僕にチャンスが巡ってきた。今日は前2走より感じが良かった。連覇のチャンスが残っている限り頑張りますよ」
  競輪祭、西王座と決勝に進んだ井上昌己だが、3連続での優参はならず。正攻法から進めるいつものスタイルでレースを運んだが、先まくりの村上に追い付くことはできなかった。「失敗した。4コーナーで接触して(車輪が)ロックしちゃいました」と言葉少なに敗因を語った。


<11R>
鈴木誠選手
鈴木誠選手
海老根恵太選手
海老根恵太選手
   11レースは後ろ攻めの渡部哲男が動いた上を海老根恵太が叩き、人気の山崎芳仁は七番手に。中団からまくり追い込む渡部、七番手まくりの山崎も4着までに終わり、逃げた海老根ラインで上位を独占した。ゴール寸前で海老根を捕らえて一昨年のオールスター以来となるGI優出を決めた鈴木誠(写真)はホッとした表情。
  「前のおかげですね。海老根は徐々に駆けていって、バックでトップスピードに乗せる感じ。これはまくられないなと思いました。それでも相手が山崎だし、4コーナー回ったらどうなるかと思ったけど、ラインで決まって良かった。体調も良いと思います」
  連日、堂々としたレース振りの海老根恵太(写真)が先行。後続を一本棒にする快速ラップで打鐘から主導権を握り、2着に粘ってダービー初優参を決めた。
  「駆けたのはタマタマですよ。スタートで中団が取れたから、ある程度、僕が駆けることになるだろうなとは思っていました。車番と展開がかみ合った結果、昨日も今日も先行しているだけ。(渡部)哲男もスッと出させてくれたし、山崎が内に差し込んでいるのも見えたから、先行態勢に入るまでに脚を使わなかったのが大きいですね。うまくペースで駆けられたし、昨日、平原と叩き合いしたのも生かせたと思います。このまま行けるほど決勝は甘くないと思うので、力を出し切ることを考えて、いつもの走りで頑張りたい」
  千葉ライン三番手を回った山内卓也が競輪祭に続いてGI連続優出を決める。
  「良かった、とりあえず決勝に乗れて。山崎が飛んできても僕が三番手で車間を切って、詰める勢いで踏めばと思ってたし、余裕はありましたね。海老根のバックでのかかりならまくられないと思ったし、僕は3着キープで。展開がすんなり過ぎて、1着を取りにいくのは難しかった」
  10秒8のラップで七番手から巻き返した山崎芳仁だが前団は遠かった。4着に終わり、GI連続優出は9回でストップした。
  「(勝ちタイムは)上がりは11秒4ですか? 今日の重いバンクじゃ届かないですよね。誘導を残してるのに、勝負所の打鐘で内に差したら終わり。情けないなあ…、やっちゃいました」
  中団四番手を確保した渡部哲男だが仕掛けが外にスライスして万事休す。
  「スタートで中団が取れたら先行したかったけど、後ろ攻めになったから。4コーナーでスライスしたし、自分の調子も良くはないね」


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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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