『第67回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:3月23日
 第67回日本選手権競輪はいよいよ最終日を迎え、朝から多くのファンが名古屋競輪場に詰めかけた。激戦を勝ち抜いた9名のファイナリストによる決勝戦が最終第11レースで争われた。レースは稲垣裕之が先行。平原康多の反撃に合わせて番手まくりを放った村上義弘が激しい直線の攻防を制して大会連覇を達成。3度目のダービー王に輝いた。
スタジオ Kooza ダンスパフォーマンス
スタジオ Kooza ダンスパフォーマンス
特別選手紹介 ファンの熱い声援が飛ぶ
特別選手紹介 ファンの熱い声援が飛ぶ
場内が熱気につつまれる
場内が熱気につつまれる
決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると最内の深谷知広がいち早く出て、武田豊樹が続く。初周は深谷―成田和也、平原康多―武田―内藤秀久、稲垣裕之―村上義弘―村上博幸―稲川翔の順番で並んだ。
 レースが動いたのは青板周回の3角から。まずは稲垣が上昇して前を押さえると、深谷はすぐに車を下げて誘導の後ろが入れ替わる。深谷がさらに中団以後に下げていくと、稲垣は打鐘前から誘導を斬って先頭に躍り出た。そして稲垣は緩めることなく、そのままフカして主導権を握る。最終ホームを通過すると、平原が反撃を開始し、ジリジリと番手を上げて行く。平原が視界に入ると、村上義は躊躇なく番手まくりを敢行。一方、これで平原の脚が止まると、武田が自力まくりに転じて応酬する。両者の力勝負となるなか、村上博も加勢して武田をブロックにいく。武田は必死で堪えるが、外併走が精一杯。結局、村上義がそのまま押し切ってダービー連覇を達成した。武田が2着となり、後方から深谷が迫ったが3着まで。


ゴール
ゴール
表彰式
表彰式
胴上げ
胴上げ
<1R>
小川勇介選手
小川勇介選手
 小川勇介(写真)が最終ホームで桐山敬太郎を叩いて主導権。後続のもつれを尻目に堂々の逃げ切り。最終日を白星で締めくくった。
 「3走目は思い切って駆けて結果が出たし、今日もホームで行きました。今回は仕上がりがあまり良くなかったので、気持ちで最後は走りました。勝ち上がりはちょっと着を意識しすぎて失敗した。まずは力を出し切ることが大事ですね。この経験を次のG1につなげます」

<2R>
小倉竜二選手
小倉竜二選手
 1着で入線した浦川尊明だったが、内側追い抜きで審議の末に失格。逃げた阿竹智史を利した小倉竜二(写真)が、柴崎淳のまくりを止めて追い込む。繰り上がりの1着でシリーズを締めた。
 「あれでワンツーに持っていくには、もう少し阿竹君の粘りがないとダメですね。それでも気持ち良く行ってくれたし、自分の仕事はしないとって柴崎君を止めた。今回は1次予選がちょっとミスといえばミスだった。前回(落車で)フレームが壊れて、古いのを持ってきた。それで不安もあったけど、3回も連対できたんで」
 スローペースの先行態勢から、そのまま踏み上げていった阿竹智史。マイペースかに思われたが、粘りを欠いて3着。
 「フレームが(2走目から)新車なんですけど、このフレームで先行は初めてだった。ああいう感じの先行だときつい感じがする。でも、後ろが小倉さんなんで、(最終)バックまでまくられなかったら、残してくれるんで。最近は(師匠と)少し決まり出したから、心に余裕ができた(笑)」

<3R>
菅原晃選手
菅原晃選手
 菅田壱道が打鐘から迷いなく主導権を握るが、4番手をキープした神山拓弥が最終2コーナーからひとまくり。好追走の諸橋愛が直線で鋭く追い込んだ。
 「神山のおかげ。恵まれましたね。ほぼ作戦どおりで余裕もありました。(佐藤)慎太郎のブロックだけ気をつけていました。今回は連日、展開が良くなかったけど、やっと最終日に流れが向いた。最後に勝てて終われて良かったです」
 関東コンビを追った菅原晃(写真)が直線で外を伸びて2着に。
 「神山君がいい位置にすんなり入ってしまったし、神山君の仕掛け待ちになってしまった。踏んだ感触はすごく良かったです。今回は初日に失敗してしまった。もっと上で力を試したかった。やっぱりまくり1本では厳しい。もう少しバックを取るレースを増やさないとダメですね」

<4R>
長塚智広選手
長塚智広選手
 単騎の渡邉晴智が3番手に続いて、三谷竜生が先行。小林大介が好ポジションの4番手をキープ。中川誠一郎、野田源一を後ろに置いて、小林は最終2コーナーから先まくりを敢行。小林に乗った長塚智広(写真)には絶好の展開も、筒井敦史の強襲に屈して2着。
 「今日は小林さんがいいところを取ってくれた。あの展開なら本当は(自分が)1着を取らないといけないんですけど、力不足です。まだ、足首の炎症があったりで、左右(バランス)がバラバラですね。一から鍛え直してきます」
 中川のスピードをもらった筒井敦史が、鮮やかに突き抜け。1着には自身も驚きを隠せない。
 「不甲斐なさすぎたし。もうどうしたらいいのかわからないほど、ひどすぎた。でも、やるしかないんで、今日はセッティングを変えてギアを上げて。それで気合を入れて臨んだ。いいコースが空いて、(1着で)いい締めくくりができた。4.50のギアも使えそうですけど、やっぱり4.33くらいでいけるようにならないと。また、高松宮記念杯に向けて頑張ります」

<5R>
吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 打鐘から主導権を握った藤田竜矢に松川高大が襲いかかる。前団のもつれを吉田敏洋(写真)が豪快にまくって快勝。敗者戦3連勝で地元G1を締めくくり、スタンドを沸かせた。
 「6日間は長かったですね。結果のことを言い出したらキリがないけど、とりあえず無事に走り終えて良かったです。今日も早いレースなのにお客さんにたくさん入ってもらって、今までに受けたことのないぐらいの声援をもらって本当にうれしかった。初日に飛んだ時点で負け残るのも本当に大変だと思っていたし、よく気持ちを切らさずに走りきれたと思います。3走目は前で(柴崎)淳が頑張ってくれたし、本当に周りの後輩のおかげです。最終日に1着で少し返せたかなと思います」

<6R>
飯野祐太選手
飯野祐太選手
 福島コンビは、渡邉一成の前回り。ポテンシャルの高さでは随一の渡邉がダッシュを効かせて主導権を握って、北日本ペース。番手の飯野祐太(写真)は渡邉との車間を大きく空けると、別線の反撃に合わせて踏み込んで1着。
 「自分は調子も良かったし、道中の余裕もあった。もうちょっと車間を空けられればよかったと思います。それで抜きに行くタイミングを自分がずらせれば。それだけで(別線は)違ったと思うんで、(渡邉と)ワンツーだったかもしれない」
 4番手を確保した三宅達也が外を踏むと、うまく空いたコースを伸びた吉村和之が2着。
 「三宅君がいい位置を取ってくれたし、あそこから行っても。(飯野に)詰めて行かれてしまうだけなんで、三宅君は(別線が)来てから踏んで正解だったと思います。今日は4.25のギアを試してみて、これなら使える感じはありますね」

<7R>
新田康仁選手
新田康仁選手
 松谷秀幸が打鐘前から前に出てハイペースで踏み上げるが、早坂秀悟が強引に叩いて出る。早坂後位に俊敏にスイッチした新田康仁(写真)が直線で鋭く追い込んだ。
 「松谷君が流さずにハイペースで踏んでいったので、とにかくきつかった。早坂君には対応できなかったし、(松岡)貴久が見えたので、そこを飛ばして、うまくスイッチできました。今日はタマタマ後ろに入れて勝てました。今回はデキが悪かったんですが、気付いたことがたくさんあるので、次に活かせるように。40歳ですけど、まだ伸びしろがあると思っているし、常に何か探して進化していきます」
 早坂秀悟はシリーズ3連対。4走ともバックを取る競走で持ち味を出し切った。
 「松谷さんの走りは予想どおり。空いている3番手に入ろうと思ったんですが、鈴木(誠)さんが内から復活してきたので。今回は3回連にからめたし、いいレースはできたと思います」

<8R>
川村晃司選手
川村晃司選手
 後攻めの竹内雄作が佐藤友和のラインにフタをしてから一気にスパート。序盤から早い流れとなったが、5番手の川村晃司(写真)が最終ホームからのロングまくりで混戦を断ち切った。
 「僕と竹内君でやり合う展開を予想していました。5番手に入ったんですが、ホームから仕掛けないと厳しいと思ったし、何とか乗り越えられて良かったです。今回は決勝を目指していたんですけどね。準決勝はメンバー的にも厳しかった」
 勝負どころで3番手を取った牛山貴広は2着まで。
 「いい位置を取れたけど、川村さんに来られてかぶってしまったし、自分だけのレースになってしまった。後ろに申しわけなかったですね」

<9R>
池田勇人選手
池田勇人選手
 4車で結束した関東勢が絆の強さを示した。徹底先行の脇本雄太を相手に上原龍が主導権を奪うと池田勇人(写真)がバック手前からの番手まくり。埼京3車で上位独占を決めて人気に応えた。
 「今日は全て(上原)龍のおかげですね。打鐘から全開で踏んでくれました。自分もけっこうきつかったんですが、しっかり勝てて良かったです。次は地元の西武園記念なので、しっかり頑張ります」
 関東ラインの先頭を任された上原龍は迷わず主導権を握った。
 「自分の役割はきっちり果たせたと思います。今回は良くも悪くもない感じの成績でしたが、身体の状態は良くなっているし、これからしっかり脚を付けていきます。来月は共同杯もあるので、そこで結果を残せるように頑張ります」

<10R>
芦澤大輔選手
芦澤大輔選手
 師匠の中村浩士を連れた根田空史が打鐘から先行。この4番手を確保した芦澤大輔(写真)が人気の新田祐大、金子貴志を後方に置いて先まくり。狙い済ました一撃を決めた。
 「このメンバーでまずは位置をしっかり取らないといけないと思ってました。駆けているのが根田君でしたけど、チャレンジしないわけにはいかないですからね。やっとこさでしたけど、何とかまくり切れました。今回はできれば決勝に乗りたかったですね。もっと力を付けて自信を持って走れるようにしたい」
 大外をまくり追い込んだ金子貴志は惜しくも2着に敗れた。
 「すごい追い風で流れる感じはあったんですが、届かなかったですね。今回は身体のハリが少し足りなかったです。課題も見つかったので、次につなげます」

<11R>
武田豊樹選手
武田豊樹選手
深谷知広選手
深谷知広選手
 G1最高峰の大会に相応しい決勝戦だった。稲垣裕之が打鐘前から全開スパート。村上義弘が番手まくりでダービー連覇を成し遂げた。近畿の結束の前に目標の平原康多が外併走で力尽きる。武田豊樹(写真)は村上義が番手まくりを放つと同時に自力にチェンジ。自ら踏んで村上義に迫ったが、村上義を交わすまでには至らず。
 「(平原に)任せていたので、悔いはないです。前の平原君が頑張ってくれたし、あともう1車前だったら…。近畿のラインに勝つのは無理でした。若手を育ててきた、村上(義)君がご褒美をもらったということですね」
 8番手からまくり追い込みの深谷知広(写真)は、外を力強く伸びたが3着での地元表彰台。
 「いままで経験した中で一番いいレースだった。ただ、力負けです。(ラインの)地区の力はどんだけ頑張っても崩せなかった。負けたのは悔しいけど、これが今の力。すばらしい2人と表彰台に上がれたのはよかったです」
 兄を懸命に追った村上博幸は4着まで。兄弟ワンツーはならなかったが、力の限りを尽くした。
 「いつもの兄の後ろ姿とは違った気がします。気迫というか魂の走りと言われるのがよく分かりました。自分は脚がいっぱいだったし、できることは車間を斬ってけん制するぐらいでしたね」
 稲垣裕之は近畿ラインの先頭で持てる力を全て出し切った。
 「最高の先行ができたと思います。番手から出たあとの村上さんの後ろ姿を見て、気迫が伝わってきました」
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