『第68回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:3月22日
 第68回日本選手権競輪はいよいよ最終日を迎え、8千人近くのファンが京王閣競輪場に詰めかけた。激戦を勝ち抜いた9名による決勝戦が最終11レースで争われ、最終バックからまくった新田祐大が激しい直線の攻防を制し、シリーズ制のG1初制覇を果たした。


スピーチーズ ミニライブ
スピーチーズ ミニライブ
津軽三味線&和太鼓 和楽器ライブ
津軽三味線&和太鼓 和楽器ライブ
小林優香、石井貴子、梶田舞 トークショー
小林優香、石井貴子、梶田舞 トークショー
アニマル浜口ファミリー トークショー
アニマル浜口ファミリー トークショー
花束を受けるファイナリスト
花束を受けるファイナリスト
中村アン トークショー
中村アン トークショー
決勝戦 レース経過
 号砲が鳴ると金子貴志がS取りを制し、浅井康太を迎え入れる。以下隊列は武田豊樹―平原康多―飯嶋則之、新田祐大―大槻寛徳、原田研太朗―井上昌己の並びで落ち着く。
 青板の2センターから原田が上昇すると、武田が合わせて動き誘導を切る。その上を原田が叩いて赤板の2コーナーから主導権を握る。武田は3番手を確保し、新田は6番手、浅井は8番手で隊列は一本棒。
 原田は別線を警戒しながら駆けていたが、打鐘の2センターからピッチを上げる。武田は最終ホームで後方を確認すると、満を持して1センターからアタック。しかし、井上が武田をブロックすると、そのまま番手から発進し力勝負に。軍配は武田に上がるが、今度はバック前から仕掛けた新田が襲い掛かる。新田は平原のけん制で勢いは止まるが、直線で再度踏み直す。平原も返す刀でタテに踏み、さらに外から浅井も強襲してゴール前は大接戦となったが、新田が微差でまくり切った。平原は新田に屈して2着。浅井も平原とタイヤ差で3着に終わった。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰式
表彰式
<1R>
服部克久選手
服部克久選手
 赤板過ぎに主導権を握った古性優作に対して、前受けから7番手に下げた渡邉一成が打鐘から早めの巻き返し。番手の齋藤登志信が遅れたところに服部克久(写真)がはまる。古性もフカしながら逃げるが、バックで渡邉がまくり切る。直線に入り番手から服部が抜け出した。
「古性君の後ろも競りだったんで、前々に踏んでればと思ってました。後ろで(坂本)亮馬が仕事をしてくれました。(渡邉)一成の後ろに入れて。亮馬が作戦も作ってくれて亮馬のおかげです。今節は自力で動いてないんで、前々にいこうと。(2月)熊本くらいから戦法を変えようか迷いがあったんですけど、今開催中に九州の先輩方と話して自力でいこうと。前でいけるところまでは頑張ります。今開催はためになる開催でした」
 豪快にまくった渡邉一成が2着。
「(今シリーズは)良くないです。結果2連対できましたけど、悪い中でどうしたらいいかで走った結果なんで。(競技との両立は)やっぱり難しいです」

<2R>
松岡貴久選手
松岡貴久選手
 打鐘過ぎに先行態勢に入った郡司浩平を中村一将が強引に叩いて主導権。3番手からまくった郡司を志智俊夫がブロックして両者でもつれると、5番手の松岡貴久(写真)が最終2センターから外を一気に駆け抜けた。
「志智さんが前でフラフラしていたので、ちょっと危なかった。状態は良くなってきていたので、今回は準決ぐらいまでいけると思っていたんですけどね。思っていたより自転車と体がマッチしていなかった。やっと今日はマシになった感じです」
 最終4コーナーで志智の内をすくった福田知也が3着に入った。
「郡司君がいいレースをしてくれました。松岡君が来る前に仕掛けてくれましたからね。止まってしまったので、ワンテンポ待ってから内をいかせてもらいました。今回は課題もたくさん見つかったけど、最終日まで走ることができたし、次につながるいい開催でした」

<3R>
北津留翼選手
北津留翼選手
 北津留翼が早めに前を押さえると、引いた山田久徳が巻き返して打鐘で先頭に立つ。山田は後方を警戒したのち先行態勢へ。山田が軽快に逃げるなか神山拓弥がバックまくりを放ったが、その外を北津留翼(写真)が力でねじ伏せた。
「スタートは前の作戦だったけど取れなかったので、早めに行ってリセットしてからと。今日は風が強かったから遅めにまくろうかと。でも、先輩が付いてるんで、あそこ(2センター)は絶対に乗り越えようと思ってました。後ろが諸橋(愛)さんになったんで内をしゃくってくるかと思ったけど何とか。今日は必死でした」
 初手から北津留の番手が競り合いとなり、諸橋愛が園田匠を飛ばして2着に入る。
「どっちかの番手(狙い)だったけど、北津留君は後ろ攻めになったんで、まずはそこがスジだと思ったんで。(北津留が)突っ張る展開になったらまた面白いし、切り替えもあったかも。向こう(園田)の方が前にいたけど、そこは何とか。最後はいっぱいだったしキツかった。でも何とか2着に入れたのでよかった」
 神山拓弥は北津留に飲み込まれて4着に終わる。
「山田君が行ってからずっと踏みっ放し。どうにか付いて行ったけど、まくってからは車が出なかった。何もしないよりはいいけど、せめて3着以内に入らないとね。昨日落車して腰のあたりを打撲したから(ペダルが)回らなかった。このあとはしばらく休んでケアに集中します」

<4R>
渡邊健選手
渡邊健選手
 本日2度目の〝サクラ〟(8番車)がバンクに舞った。後ろ攻めとなった藤木裕が赤板前に上昇し前団を押さえるも、中団まで引いた早坂秀悟が叩き返して主導権取りへ。藤木は叩かれた後に前団と口が空いてしまい、松谷秀幸が追い上げる形で3番手をキープ。最終バックからまくり上げるも早坂の番手を回った朝倉佳弘にブロックされ伸び切れず…。後方から踏み上げた藤木の惰性を借りて南修二が直線中割り強襲かに、渡邊健(写真)が南と松谷の間を割って鋭く伸びた。
 初のG1出場で白星をゲットした渡邊は「道中でハグれてしまったし、そこは力不足ですね。でも諦めずに踏んでいたらコースが空いて(笑)。外を回したら自分の脚じゃ届かないと思った判断も良かった」。
 勝ち切れずに終わった松谷秀幸は冷静に自己分析。
「叩きに行ったら中団が空いていたので。その辺の判断は良かったけど、まくりの出が悪かった。一度脚を使ったあとにもう一度踏める脚はまだないですね。でも復帰戦としては上出来ですかね」

<5R>
野田源一選手
野田源一選手
 赤板前に誘導員を交わして先頭に立った竹内雄作が後ろの競り合いを気にしながら徐々にピッチを上げていく。番手の競りは芦澤大輔に軍配。最終バックで3番手以下に10車身程度の差をつけて軽快に逃げる竹内と芦澤のマッチレースかに思われたが、5番手からまくった野田源一(写真)が徐々に差を詰めると、直線に入り前団を捕らえ1着。シリーズを3連対で締めくくった。
「そろそろまくりポイントに差しかかったと思ったら、前が行っちゃってて。余裕を持ってまくりにいければよかったけど、荒井(崇博)君とワンツーできてうれしい。初日は落車もあったんですけど、脚力不足とレースの甘さが出た感じがしました。(シリーズ通して)5走走りの3連対なんでレース的に上手く立ち回れたのかなと思いますね。(初日以外の)4日間は上手く組み立てられたんで、少しずつレベルは上がってきてるのかなと思います。5日間ライン競走だったんで、普段は単騎が多いんですけど、ライン競走も戦っていかなければなと思います」
 7番手に置かれた高橋陽介は九州コンビを追う形で3着に入った。
「位置取りが悪くて中途半端でした。中団も上手く取れなくて。(今シリーズは)やるべきことができました。調子は良かったんで、いろいろな手応えと収穫があった4日間で勉強になりました」

<6R>
神山雄一郎選手
神山雄一郎選手
 神山雄一郎(写真)がシリーズ最終日にようやく1勝を挙げた。目標の池田勇人が打鐘から先行したが、空いた内を突いた東口善朋に競り込まれる厳しい流れ。厳しいさばきで番手を死守すると、直線で粘る池田をきっちり捕らえた。
「池田君の先行1車みたいな感じでしたからね。きついメンバー構成だったし、もう必死でした。最終日なんですけど、こうやって走れて勝つことができて良かったです」
 池田勇人が2着に逃げ粘り、関東ワンツー決着となった。
「落ち着いて駆けられたと思います。神山さんが後ろで全部、仕事をしてくれたおかげ。セッティングとかもう少し煮詰めていかないと、上では戦えないと感じました。乗り方もまだつかみ切れていないところがある。1つずつ課題をクリアしていきます」

<7R>
牛山貴広選手
牛山貴広選手
 小松崎大地が赤板で前を押さえて先頭に立つと、打鐘で叩きに来た稲垣裕之を強引に突っ張って主導権を握る。内藤宣彦と稲垣の両者でもつれたため、番手に後閑信一が入る展開に。最終2センターに差し掛かり、その後閑が必死の追い込みをかけるが車は伸びを欠き、その後ろから牛山貴広(写真)が伸びて最終日を勝利で締めた。
「前がゴチャ付いていたし、今日はホント展開がよかっただけ。そこで自分も参戦できるだけの脚はないので。1着は取れたけど、風の影響なのか自分としてはあまり伸びなかったですね」
 連係した内藤秀久が小松崎と後閑の間を突いて2着に入る。
「中割りはリスクがあったけど、体が反応して行ってしまった。でも、これが僕の得意分野なんで。(望月)永悟さんのコースを考えたら僕は外を行くべきだったんですけど。でも(望月が)3着に入ってくれたんでよかった。僕は今回二次予選でダメだったけど、今日走った感じは問題ないんで大丈夫。また次頑張ります」
 ダービー初出場の小松崎大地は今日は見せ場を作ったが、トップの壁は厚く「まだまだ課題ばかりです」と最後に肩を落とした。
「昨日の二の舞(村上義弘を相手にまくり不発)になってしまうんで反省を生かして。稲垣さんを出させると厳しいですから。後ろがもつれてたのは分かったけど、後閑さんが入ってるのは。それでも行くしかなかったので。出し切れたのはよかったけど力がないですね。でも、課題が分かっただけでも収穫でした」

<8R>
松岡健介選手
松岡健介選手
 三谷竜生が中団から合わせて上昇した海老根恵太を打鐘で叩いて主導権を握ると、そのまま緩めることなくフカしていく。車間を大きく空けた松岡健介(写真)は、詰める勢いを利用して番手まくりを敢行。直線に入ると後続が迫ってきたが何とかしのぎ、シリーズを連勝で締めくくった。
「(今シリーズは)後輩が頑張ってくれました。(今日は)バックの風がすごく重かったです。(三谷)竜生も残れるようにと話してたんですけど…。竜生が頑張ってくれたんで感謝です。(連勝で締め)嬉しいです」
 後方7番手の山崎芳仁が直線外を鋭く伸びて2着に食い込む。
「今日は自分のタイミングで踏めました。(シリーズ通して)昨日は内で我慢しきれず外行っちゃいました。また一戦一戦頑張ります」
 5着に敗れた海老根恵太だが今シリーズは一次予選を番手まくりで勝利。二次予選は先行して2着に逃げ粘って準決勝進出と、復活の手応えを感じているようだ。
「もう今回は松谷(秀幸)に初戦で助けられました。なんとなくG1の感じも分かったんで、(今年)後半に勝負できるようにしていきたいです」

<9R>
村上義弘選手
村上義弘選手
 ダービー3Vの実績ある村上義弘(写真)がようやく最終日に白星をゲット。脇本雄太が石井秀治の上を叩いて鐘前で先頭に立つと、カマしてきた天田裕輝を突っ張り主導権を奪取。それでも最終ホームで石井秀治に早めに巻き返され最終バックは大混戦。脚をためていた小川勇介がまくって桑原大志とワンツーかに、村上義弘が桑原の後ろにスイッチして直線一気に抜け出した。決して楽な展開にはならなかったがしっかりと意地を見せた村上は「脇本君がいつもと違う先行パターンだったからどうするのかなと。いつもだったら鐘前にカンッって踏んでくれるから。もしかしたら天田(裕輝)君を出させるんじゃないかなって思いました。(道中は)きつかったですね。最後は何とか届いてくれと。自分自身は日本選手権に全てをかけていて結果を出すことができなかったんですけど、また新たなスタートだと思って一戦一戦頑張ります」。
 「前がもつれていたしタイミングも良かった。体も動いていたから踏み出した瞬間に勝ったと思いましたよ…」と最終バックで勝ちを確信したかに思えた小川勇介だが2着までに終わった。
 鎖骨骨折明けで状態が不安視されていた脇本雄太だが「多少はまだ痛むけど、ダッシュも悪くなかったし、準決まで勝ち上がれたし収穫はありましたね。あとは気持ちの問題。もっと練習できれば自信を持って走れると思うし、宮杯までにはしっかり仕上げて万全の状態で戦いたい。まずは次の地元福井F1。しっかりと頑張ります」。

<10R>
岩津裕介選手
岩津裕介選手
 順位決定戦は岩津裕介(写真)が勝利した。レースは川村晃司が巻き返してきた深谷知広を突っ張って主導権を握る展開に。深谷が飛んで目標を失った岩津だったが、内に下りて川村の番手を確保すると、2センターから追い込んで1着。SS班の意地を見せた。
「小倉(竜二)さんは車間が空いててきつそうだったし、深谷君も止まったんで番手に入りました。あれ以上待ったら後ろが大渋滞になりそうだったんで出ました。今回も調子としてはまだまだでしたね。すぐには良くならないだろうけど、少しずつ上積みして戻していきたい。何とか巻き返したいですね」
 石丸寛之は小倉に割り込まれたが、最後は自分で外を踏んで2着をキープした。
「自分で出たら小倉君に持って来られるかと思ったけど、小倉君はキツそうだったから行きました。でも、(川村、深谷は)あれだけ早くから踏むんだからすごいよ。俺だったら自力では無理だね。今回は久々にG1の準決勝までいけて、最終日も上のレースを走れたのでよかった」
 「打鐘で離れてしまい、ずっと追い付かなかった」と話すのは小倉竜二。本調子を欠き、今シリーズを未勝利に終わる。
 突っ張られた深谷知広も「力不足です」と最終日は完敗。
「今回もまだまだでした。でも、発見できたこともあったので、少しずつだけど修正していきます。焦っても仕方ないので、時間はかかると思うけどやるしかない」

<11R>
平原康多選手
平原康多選手
浅井康太選手
浅井康太選手
 強固結束の関東ラインを破って新田祐大が初のダービー王に輝いた。初手の並びは中部勢が前受けを選択し、その後ろに人気を背負った関東ライン。新田祐大が率いる北ラインが続き、原田研太朗、井上昌己ラインが後ろ攻めとなった。赤板前に武田豊樹が先に動いて原田研太朗ラインを受けて打鐘を迎える。最終ホームもそのまま動きがなく、1センターから3番手にいた武田豊樹がまくり上げて惰性をもらった平原康多が絶好かに、最終バックから新田祐大もまくり上げ、浅井康太も8番手から最短コースを探して突っ込んでくる。3車並んでの伸び比べを制したのはスピード自慢の新田だ。
「正直言うと勝った感触はなかったですね。タイミングとしては武田さんが前に踏んだ瞬間から平原さんの動きを見るのではなくてとにかく前に踏もうと。浅井さんの伸びが良かったから2着かなって。競輪選手全員が1年間ここを目指して調整してきていると思うし、その中で勝てたのはうれしいですし、支えてくれた家族や周りの人に感謝したいですね」
 「(前に踏む)タイミングは難しかったけどそれは言いわけ。完全に伸び負けです」と惜しくも2着に敗れた平原康多(写真)は足早に検車場を後にした。
 全日本選抜に続き3着の浅井康太(写真)は「大槻(寛徳)さんが離れたのが見えて。外じゃ間に合わないと思い内へ行きました。8番手で動かなかったのは自信があったから。全日本選抜から少し変えてまた少し埋まった部分もあると思うしあとちょっと(苦笑)。その差をまた帰ってから埋められるように頑張ります」。
 武田豊樹は3番手から前団をまくり切るも伸びを欠いて6着。
「まくり切ったけど残れなかった。ラインから優勝を出せれば一番良かったけど、力は出し切れたので悔いはないですね」
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