『第69回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:3月13日
 第69回日本選手権競輪はいよいよ最終日を迎え、朝から多くのファンが名古屋競輪場に詰めかけた。激戦を勝ち抜いた9名による決勝戦は近畿勢がレースを支配。番手まくりの川村晃司に乗った村上義弘が直線で鋭く差し切り、4度目の日本選手権制覇。名古屋ダービー3連覇の偉業を達成した。
ミス東スポ saasha&藤井奈々 トークショー
ミス東スポ saasha&藤井奈々 トークショー
ダービーファイナリスト 意気込みを語る
ダービーファイナリスト 意気込みを語る
柳 ゆり菜 トークショー
柳 ゆり菜 トークショー
スピーチーズ ライブステージ
スピーチーズ ライブステージ
決勝戦 レース経過
 周りの出方をうかがいながら新田祐大が誘導を追いかける。新田―岩津裕介の前受け。竹内雄作―深谷知広―金子貴志、三谷竜生―川村晃司―村上義弘、単騎の野田源一が最後方で周回を重ねる。
 青板を通過して、三谷は1センターから早めに上昇を開始する。三谷が中団の竹内に併せ込むと、竹内は下げて三谷が3番手に入る。川村―村上と続いて野田。三谷は7番手の竹内を警戒しながら、4コーナーから一気に踏み出し赤板で主導権を奪取。京都の2人まで出切り、4番手を新田が追走し岩津。野田は近畿勢に続けず6番手。三谷が敢然と風を切って、後続は一本棒で打鐘を通過。7番手の竹内は2センターからの巻き返し。竹内が中団の新田のところまで迫ると、最終ホームで逃げる三谷の番手から川村が発進、まくり上げる。川村―村上に新田―岩津が続き、合わされた竹内は不発。今度は深谷が2コーナーから自ら踏んで出ると、バックで新田が合わせてまくりを打つ。新田のまくりを村上がブロック。空いたインを岩津が突いて村上と2人で激しいつばぜり合いで直線へ。立て直した新田も外を踏んで迫ったが、岩津を制した村上がゴール前で川村をとらえて優勝。2着に川村が入り、新田は3着まで。


ゴール
ゴール
表彰式
表彰式
胴上げ
胴上げ
<1R>
田中晴基選手
田中晴基選手
 田中晴基(写真)にフタをした安部貴之が打鐘から駆けようとするが、正攻法の荒井崇博が安部を出させず突っ張り先行。中団に降りた伏見俊昭が2コーナーから自力に転じると、これを追いかけた田中が、まくり切った伏見に乗ってまくり追い込み。松谷秀幸まで連れ込み南関ワンツーとなった。
 「今日はラッキーでした。周りを見ながら進めていたら踏み合ってくれたので。あとはタイミングを図ってたんですけど、伏見さんが行きそうな気がしたし、それにうまく乗れました」
 伏見俊昭は冷静な判断で自力に転じ、九州勢をまくり切ったが、南関勢に飲み込まれ3着に。
 「(まくりを出す)展開は考えてませんでした。ただ(安部が仕掛けるのが)遅かったので『突っ張られるな』とはちょっと思いましたね」

<2R>
佐藤友和選手
佐藤友和選手
 打鐘で黒田淳を押さえて前に出た菅田壱道が後続の出方をうかがいながら絶妙のペース駆け。番手の紺野哲也が真後ろからまくってきた黒田淳を止めて、前2人で決着かと思われたが、後方8番手から佐藤友和(写真)が大外を鮮やかに突き抜けた。
 「(菅田)壱道が先行だなって思ったんですけどね。そこに付いていかなきゃダメですね。全然、届く感じではなかったです。齋藤(登志信)さんに迷惑をかけてしまった」
 番手絶好となった紺野哲也は2着。菅田壱道とのワンツーを決められず悔しがる。
 「菅田君がいいレースをしてくれました。もうワンツーだと思ったんですが…。ちょっとした油断というか、さすがG1ですね」

<3R>
海老根恵太選手
海老根恵太選手
 大方の予想どおり、ライン4車の南関勢が主導権。先頭の山中秀将が赤板で押さえ、打鐘で誘導を斬って先頭に立つと目イチで駆けていく。山中のスピードが鈍ると、バックから海老根恵太(写真)が番手まくりを敢行してシリーズ3勝。続いた渡邉晴智とワンツーを決めた。
 「後ろを回ってて必死だったし、余裕がなかったですね。後ろを固めてくれたのもあって前に踏ませてもらいました。今回は後輩たちのおかげ。開催を通して全て番手を回ったのは初めて。自分の力ではまだまだ勝てないので。番手回りだけでなく、何でもできるのが理想なので。頑張って練習してきます」
 稲毛健太は中団から内に潜り込み、勝瀬卓也を退かして渡邉の後ろをキープ。そのまま3着に流れ込んだ。
 「前受けから誘導を残して引いてしまったので、矢口(啓一郎)さんに斬ってもらえればとアテにしてしまいました。このメンバーでもがき合っても仕方ないし、後ろに迷惑をかけるだけなので。(内をすくって)あそこまで行ったなら、せめて番手まで行ければよかった。難しいレースでしたね」

<4R>
小埜正義選手
小埜正義選手
 千葉勢3車が絆の強さを見せた。打鐘で斬った後閑信一を根田空史がタイミング良く叩いて主導権を握る。4番手の後閑は大きく車間が空いてしまい、完全に千葉勢のペース。最後は小埜正義(写真)が鋭く追い込んだ。
 「根田君のおかげですね。すごいかかりで、びっくりしました。中川(誠一郎)さんがものすごい勢いで来たのが見えて、少し早めに踏んじゃいました。僕に余裕と落ち着きがあれば3人で決まってました」
 人気の中川誠一郎は最終バック8番手から猛然と迫ったが、3着に入るのが精いっぱいだった。
 「前まで遠すぎました。前半は世界選の疲れで体が重かったけど、日に日によくなって後半は影響がないぐらいの状態でした。もっと前々に攻めて、いい位置を取らないとダメですね」
 先行した根田空史は直線で力尽きて5着に敗れた。
 「3日間、内容が良くなかったので、今日はいいレースをしようと思ってました。後閑さんが斬ってくれて、あれでだいぶ行きやすくなりました。感じは悪くなかったけど、最後はいっぱいでした。今回の反省を生かして静岡ダービーは結果を出したい」

<5R>
阿竹智史選手
阿竹智史選手
 5車で結束した南関ラインの先頭を担った石井秀治が、赤板手前からスパート。しかし前受けの早坂秀悟がこれを突っ張って赤板から激しい踏み合いに発展。結局、石井は出切れず、片寄雄己が最終ホームから自力に転じたがこれも不発に終わる。早坂も終盤は力尽き、終始好位を回っていた阿竹智史(写真)が2コーナーまくりを決めて快勝した。
 「(南関勢が)来るのが遅かったし、秀悟も上へあがったので『突っ張るかな』と。ちょっとかぶってしまったけど、コーナーの出口だったので対応できました」
 意地の突っ張り先行で奮闘した早坂秀悟だが、さすがに最後は失速した。
 「(突っ張り(先行の作戦)は南関が5車で並んだ時点で(決めた)。『別でやった方が良い』と思わせたかったので、今日は必死に頑張った」
 5車で結束したが南関作戦は実らず。片寄雄己は悔しそうにレースを振り返る。
 「向こう(早坂)もやる気でしたね。秀治が『もし突っ張られても秀悟だけは倒す』と。その時はホームから自分で行こうと思ってました。5車で結束して結果を出せず悔しいけど、みんな頑張ったので。また練習して出直します」

<6R>
松坂英司選手
松坂英司選手
 後ろ攻めの松坂洋平が中団の佐川翔吾にフタをしたのち、打鐘で前を叩いて主導権。佐川はすぐに反撃に出るが車は伸びず、松坂英司にブロックされて万事休す。さらに松坂英司(写真)は自力に転じた稲川翔をしっかり止めると、直線で追い込んで勝利した。
 「ああいう走り方ができるのが洋平ですね。さすがというか。打鐘から思い切って行ってくれたし、まくらせなかったし。今シリーズ落車したけど、これで全て良しですね。このあとは(川崎記念)桜花賞があるので、そこに向けてしっかり仕上げたい。今回の怪我は大丈夫です」
 続いた和田健太郎が2着に入る。
 「内を締めてただけでもきつかった。稲川君とずっと目が合ってたし、下りてくるんではないかと。それにしても洋平はすごい。打鐘で後ろ(中団)が離れてたのにフカし込んでくれたので。押さえるところも完璧。突っ張られるかどうかのギリギリのところで行ってくれたので。シビレました」

<7R>
木暮安由選手
木暮安由選手
 後攻めの古性優作の後位は初手から大塚健一郎と南修二で激しい競り合い。打鐘前に上昇した古性を山崎芳仁が突っ張って前団がもつれると、そこを天田裕輝が一気にカマして最終主導権。これに乗った木暮安由(写真)が好ガードから余裕を持って追い込んだ。
 「山崎さんの動きが予想外だったけど、天田君が冷静に行ってくれました。あとは自分で車間を空けて、ワンツースリーが決まったんで良かったです。今回は初日に1着が取れたんですが、二次予選が悔やまれますね。でも、調子は良くて手応えも感じたので、これから飛躍していけると思います」
 タイミング良くカマした天田裕輝は2着。今シリーズは4走で確定板に3回上がった。
 「山崎さんの突っ張りはあると思ってました。仕掛けどころを逃さずに、スピードよく行けました。古性君に出切られた方が厳しかったかもしれないですね。踏み切れたけど、最後はタレました。その辺が課題ですね」

<8R>
柏野智典選手
柏野智典選手
 小松崎大地が後ろ攻めから斬ると、打鐘で吉田敏洋が一気に巻き返す。しかし出切った吉田がペースを緩めると、今度は井上昌己がすかさず反撃開始。もう一度踏み上げた吉田をまくり切ると、最後は井上マークの柏野智典(写真)が直線で追い込み、今シリーズ2勝目を挙げた。
 「(井上)昌己はさすがですね。必ずどこかで仕掛けてくれるという安心感がありました。勝ち上がり戦だったらまず前を残す事を考えるんですけど、昌己もタレていたし、前を回してくれた『桑原(大志)さんと決めたい』という気持ちが強くて、昌己には悪いけどタテに踏ませてもらいました。(2勝挙げて)次が地元の玉野記念なんですが、良い流れで入れます」
 立て直して外を伸びた小松崎大地が3着に入線。しかしレース後は反省の弁。
 「(吉田に)流されてしまって…。結果的には緩んだホームで仕掛けないと、あとはチャンスがなかった。こういう想定外の展開になった時の対応がまだまだ。これから打開していかないと上では厳しいですね。また課題が見つかったので頑張ります」

<9R>
渡邉一成選手
渡邉一成選手
 強力な自力型がそろい、さらに細切れ戦とあってレースは激しく動いた。まずは後ろ攻めの武田豊樹が押さえていくと、打鐘で藤木裕が叩き、さらに郡司浩平が反撃に出て力づくで先頭に立つ。番手の岡村潤はさばかれ、前がもつれたところを、狙いすましたかのように渡邉一成(写真)が襲いかかる。渡邉はスピードの違いを見せ付け、シリーズを1着で締めた。
 「スタートで近藤(龍徳)君も出たけど、中団狙いだったみたいですね。今日は何とかタテ脚勝負ができたのがよかった。今回はダメだったけど、タテ脚勝負に持ち込めれば戦えてるので。準決勝は深谷(知広)君が切る前に、自分が叩いてれば中団が取れて勝負できた。今後もG1が続くので、そういう細かいところを詰めていきたい」
 大槻寛徳は武田に食われ3着。ワンツーを決められず「情けない」と肩を落とす。
 「一成の後ろでキツかった。最後に余裕がなかった。あれは決めなきゃいけない。少しでも差し込んでいればワンツーが決まったのに。これが今の現状ですね。また脚を作ってきます」
 郡司浩平も叩いたのは良かったが、8着に大敗し、悔いを残す結果に。
 「仕掛けがダメですね。もっと早くでないと。出切るまでに時間がかかってしまったし、もがき合う形になってしまった。あれでは渡邉さんと武田さんを引き出すことになってしまう。武田さんが押さえた上を斬ればよかったですね」

<10R>
村上博幸選手
村上博幸選手
 自力型が並んだ九州勢が打鐘前から果敢に飛び出すが、7番手の原田研太朗がすかさず反撃を開始。山田英明を最終ホーム過ぎに叩き切る。番手絶好となった村上博幸(写真)が直線で鋭く追い込み、シリーズ3勝目を挙げた。
 「まくりでも良かったんですけど、思い切って行ってくれました。スピードも良かったし、あれだけ長い距離を踏んでくれましたからね。バックで車間を空けて詰める勢いで最後は踏みました。ちょっと諸橋(愛)さんに中を割られてしまったけど、3日間の反省を生かして、自分のイメージどおり走れたと思います」
 原田研太朗は直線で末を欠いて4着。それでも準決勝以外は積極策を貫いた。
 「ちょっと緩んだので、思い切って行きました。力は出し切れました。(村上に)だいぶ車間を空けてもらっていたんですけど、最後はいっぱいでしたね」

<11R>
川村晃司選手
川村晃司選手
新田祐大選手
新田祐大選手
 竹内雄作を警戒しながら青板周回でアクションを起こした三谷竜生が、赤板手前から全開で先制。新田祐大が4番手に収まり、一本棒で打鐘を通過。打鐘の2センターで竹内が巻き返して出るも、最終ホームで川村晃司が早くも番手まくり。これで竹内は苦しくなり、深谷知広が自らまくり上げるがこれも不発に。最終バックから今度は新田がまくったが、村上義弘が好ブロック。これで新田の勢いが鈍った。この動きで内が空くと、新田マークの岩津裕介が俊敏にコースを突いたが、戻ってきた村上が締め込み強襲をしのぐ。返す刀でタテへ踏み込んだ村上が、押し切りを図った川村や、外をもう一度伸びてきた新田との接戦を制し、名古屋ダービー3連覇を達成した。
 「まさかあそこまでハイピッチなレースになるとは。もつれる展開になるかと思ったけどそうならず、竜生が一本棒でジャンを聞かせてくれた。後ろは確認できたし、誰かが内へ入ってくるとは思ったけど、晃司を4角先頭で回らせる事が自分の仕事だったので。最後は(川村と)ワンツーだったのもわかった。日本選手権は選手の夢だし、そのタイトルを手にできて光栄。年々苦しくなっていく戦いの中で、ファンが背中を押してくれています。(グランプリ出場が決まったが)自分はこれからも目の前のレースをひとつひとつ戦っていくだけです」
 番手まくりで三谷の気迫に応えた川村晃司(写真)が、オール2着での準V。G1初制覇こそならなかったが、大健闘した。
 「悔しい反面、うれしい気持ちです。夢を見たか? いや、もう必死だったので(笑)。竜生は高校の後輩だし、頑張ってくれましたね。近畿の結束力を見せられたのも良かったです」
 好位からまくった新田祐大(写真)だったが、村上のけん制もあって3着まで。ダービー連覇はならなかった。
 「行けても行けなくてもあそこ(のタイミング)で勝負と。車輪が前にかかってしまい、潜るか外すか迷ってしまった。結局外したんですけど、それに時間がかかってしまった。昨日の感じが悪くなかったから、いける自信があったけど。でも仕掛けての3着だし、意味はある。仕掛けずの3着だったら悔しい想いをしていたはず。次のダービーまでにまた仕上げておきます」
 地元でのG1制覇を狙った深谷知広は7着に敗れた。
 「(近畿と)やりあってもしょうがないし、竹内さんには自分にもチャンスがある仕掛けでと話していた。今の脚では(優勝は)厳しかったです。でも、久々にダービーの決勝に乗れたし、もっと練習してまた次のダービーと地元の(高松)宮杯で頑張りたい」
 竹内雄作は持ち味を発揮できずに終わった。
 「これが今の現状ですね。何もせずに終われないし、自分の中では緩んでいる気がしたので仕掛けたんですが…。本当に力不足です」
↑ページTOPへ