『被災地支援競輪第70回日本選手権競輪(GI)レポート』 5日目編

配信日:5月4日
 静岡競輪場で開催されている今年2度目のダービー「被災地支援競輪第70回日本選手権競輪(G1)」もいよいよ佳境。5月4日に5日目を迎えた。決勝9つの椅子を巡って、準決の3個レースで激しい火花が散らされ、新田祐大、牛山貴広、近藤龍徳がそれぞれ白星をつかんで優出を果たした。5月5日の最終日に待ちに待った決勝が行われ、第70回のダービー王が決まる。
 本場では5月5日の最終日も、「ふなっしー」のステージイベント、「早朝予想会」、「日本競輪選手会静岡支部ブース」、「競輪自転車体験ブース(サイクルスピリッツ)」、など、様々なファンサービスとイベントが予定され、お客様をお待ちしています。ぜひ、静岡競輪場へ足をお運びください。
柏原芳恵 ミニライブ
柏原芳恵 ミニライブ
オートレーサー 森且行 トークショー
オートレーサー 森且行 トークショー
滝澤正光、井上茂徳、伊藤勝也 トークショー
滝澤正光、井上茂徳、伊藤勝也 トークショー
場内を賑わすイベント盛りだくさん
場内を賑わすイベント盛りだくさん
<1R>
山田義彦選手
山田義彦選手
 後ろから押えた安部貴之が山田義彦(写真)を打鐘過ぎに突っ張り、カマシを狙った藤木裕の番手に飛び付くかと思われたが、藤木ラインまでも突っ張る形に。安部を追走していた紺野が踏み遅れると、安部の後ろにいた山田が空いたインからまくってそのまま押し切った。
 「汚い競走になったけどG1初勝利はうれしいですね。内から行く形になって、坂(カント)を使える外を踏むよりも、使えない内はきつかった。以前に落車した時の影響で左の肘にピンが2本入ってて、まだバランスが悪いから長い距離を踏めない。6月にピンを抜く予定だから、そこまではだましだまし戦うしかない」
 安部に合わされた藤木が不発も、最終バック手前から追い上げ気味に踏み込んだ笠松信幸が2着。
 「力的にも藤木君が出切れないとは思わなくて…。展開もゴチャッとなって一瞬、判断を誤ったけどうまく立て直せたと思う」
 奇襲の突っ張り先行に出た安部貴之だったが、山田にすくわれて万事休す。
 「後ろになったらきついので、とりあえず前々に踏んでいこうと。藤木君は合わせられる感じがしたので突っ張ろうと。でも後ろを確認する余裕はなかったですね…」

<2R>
和田真久留選手
和田真久留選手
 北津留翼が赤板で前に出ると、その上を和田真久留(写真)が叩き打鐘の2センターで主導権を握る。3番手を確保した北津留は、最終1センターでインを進出するも、締められてしまい番手で併走。北津留の動きを見ながら、直線で外を踏んだ柏野智典が迫るが、そのまま和田が押し切って白星を手にした。
 「今日は腹をくくって。キツかったですね。北津留さんは内に来ないと思ったけど…。以後、気をつけます。(今シリーズは)体調もあまり良くなくて、なんとかごまかしながら。経験になりましたね。今後は体調管理もしっかりして」
 石毛克幸は直線で柏野に交わされて3着。
 「2日休むとダメですね。体が緩みすぎちゃって。内から(北津留が)来るし、3コーナーからキツかったです。前が強かった」
 北津留翼は6着。好位を確保するも、進路が誤算だった。
 「前が緩めていたし、後ろも来ると思って(内に行ってしまった)。ホームで外に行けばよかったですね。微妙なリズムだったので。フレームは元のに戻しました。今後はこれでいきます」

<3R>
海老根恵太選手
海老根恵太選手
 荒井崇博が押えた上を小埜正義が打鐘で飛び出し、海老根恵太(写真)、萩原孝之まで出切って後続は一本棒。最終ホームから7番手の池田勇人がロングまくりで前団に迫ると、海老根はギリギリまで引きつけて番手発進。3コーナー過ぎに池田との踏み合いを制した海老根が、同県の後輩の頑張りに白星で応えた。
 「今日はそれ(小埜の頑張り)一本です。ホームでは風が強かったし、小埜も重そうでした。自分は(池田に)行かれちゃったかと思ったけど、なんとかでしたね。脚自体悪くないですけど、もう小埜のおかげですよ」
 ペースが上がると遅れた萩原が海老根の番手まくりに付いていけず、合わされた池田勇人が直線で踏ん張るも齋藤登志信に交わされて3着。
 「小埜さんがゆるめなかったし、(南関勢の)2段駆けを覚悟しました。詰まったし、もうあそこ(最終ホーム)で行かないと自分たちもないですから。行き切れたら良かったけど、それでもあそこまで行けたんで」

<4R>
松岡貴久選手
松岡貴久選手
 3番手で大きく車間を空けた飯野祐太が、郡司浩平を警戒しながら山降ろしでスパート。しかしながら、郡司も負けじと応戦し飯野を叩きにいく。結局ホームで郡司が出切ったが、今度は椎木尾拓哉が踏み上げて3番手へ追い上げ、その椎木尾を目標にして追いかけた松岡貴久(写真)が、その上をまくり追い込みで突き抜けた。
 「風がハンパなくてキツかったけど、体は問題なかったので。ここまでは(体に)気持ちが追いついていなかったけど、今日はうまくいきましたね。休み休み、落ち着いてまくれました」
 松岡をマークした吉本卓仁だったが、最終3コーナー過ぎのあおりで離れ気味。付け切ることができず3着が精いっぱい。
 「踏み合っていたし、(松岡)貴久がまくっちゃうなとは思ったんですが。スレスレのところを(松岡が)まくっていくから、自分はビビッてしまって。脚には余裕あったけど、完全に追走技術不足。でも、こういう経験をしたかったっていうのもあって、今日は番手を回ったので、いい勉強になりました」

<5R>
佐藤友和選手
佐藤友和選手
 渡邉雄太がライン2車でも果敢に攻めて小松崎大地に抵抗するも、打鐘の4コーナーから巻き返した小松崎がパワーに物を言わせて渡邉を沈める。番手を回っていた佐藤友和(写真)が、鈴木庸之のまくりをブロックして、直線で抜け出した。
 「(小松崎は)頑張ってくれたけど、キツそうでしたね。自分は余裕はあったけど、鈴木君のスピードが良くて、内にも坂本(健太郎)さんが見えたのでもう踏むしかないと思ってタテに踏みました。昨日は車の伸びがイマイチだったけど、今日はしっかり反応してくれたので悪くないと思います。でも、もっとやれたことはあると思うので、レース(VTR)を見直して細かい部分を修正したい」
 鈴木のまくりに乗った朝倉佳弘が、2着に突っ込んだ。
 「本当は外を踏みたかったんですけどね…。まだまだその辺が下手ですね。内にいた坂本君が気になって締め込みながら回っていたら、鈴木君の内に(車輪を)差し込んでしまった。それでも鈴木君にはできるだけ当たらないようにと踏めたのは良かったかな」
 あわやのまくりを披露した鈴木庸之は、直線で踏ん張って3着。
 「向かい風のバックで、(小松崎が)伸びていっちゃう前に行きたかった。それで無理やり踏む感じになってしまいましたね。でも、やっぱり車の伸びは悪くないし、乗り越えたかったですね」

<6R>
和田健太郎選手
和田健太郎選手
 後ろ攻めの吉澤純平が前に出ると、続いた渡邉一成がその上を叩きにいく。しかし、吉澤は突っ張って打鐘からモガき合いに発展。すると、後方で脚を溜めていた山中秀将が最終1センターからスパート。大外を好回転でまくって前団をひと飲みする。最後は続いた和田健太郎(写真)が、ゴール寸前で交わして1着。
 「山中君がいいタイミングで行ってくれました。本当にダッシュがすごくて。山中君は点数以上の脚がありますね。1着もうれしいんですけど、なによりワンツーが決まったことがうれしい。なかなかワンツーって決まらないし、これで僕が2着でも喜んでいたと思います」
 山中秀将が2着。まくり展開をモノにして、千葉での連独占を果たした。
 「風が強くてキツかったです。でも、追い風のところで、うまく仕掛けられました。今日は誰が強いと言うより、展開ですね。でも、展開が向いたところを仕掛けられているし、いい状態だと思います。このメンバーで結果を残せたのは大きい」
 渡邉を突っ張り切った吉澤純平は、千葉勢にこそ屈するも、3着に粘る力強い走りを見せた。
 「このメンバーでは(渡邉)一成さんが一番強いし、(渡邉ラインが)3車なので、出さしたらまくれないと思った。自分も2走とも逃げているし、先行したほうが持ち味が出ると思いました。一成さんが(初手で)一番前だったらよかったんですけどね。そうしたら一番後ろにおけたんですけど」

<7R>
村上義弘選手
村上義弘選手
 赤板の2コーナーから襲い掛かる根田空史を脇本雄太が突っ張って、打鐘では見ごたえたっぷりの同期による主導権争い。壮絶な踏み合いを演じた両者だったが、2センターで根田が力尽きて脇本に軍配が上がる。番手の村上義弘(写真)にとっては絶好の流れ。まくり追い込む櫻井正孝をけん制しながら、追い込んだ村上がシリーズ3走目で初勝利を挙げた。
 「脇本の気迫ですね。(脇本は)今回来る前に調子が良さそうだった。2人とも勝ち上がれなかったモヤモヤをレースにぶつけようと。ただ、風が強かったんで脇本もキツかったと思う。僕も車間を切っていっぱい、いっぱいだった」
 最終ホームで迎え入れた櫻井がまくると、佐藤慎太郎は飯嶋則之の内をすくって進出し直線で中を鋭く追い込み2着。
 「(櫻井は)飯嶋のところでやって下がってきちゃった。自在でやっているなら、あれは大敗するパターンだからダメですよね。それで大バックを踏んで入れた。でも、櫻井もこのキツいメンバーで無理やり(まくりを打って)踏んだんでいいんじゃないですか」
 4番手を確保していた櫻井正孝だったが、目標を失った飯嶋に最終ホーム手前で絡まれて1車下げての立て直し。2コーナーからまくって出ると村上に迫ったが、最後は佐藤に交わされて3着。
 「1回バックを踏んでから行ったんで…。引っこ抜いてからすかさず行ったんですけど、あれがなかったら面白かった。(佐藤)慎太郎さんが切り替えていくかと思ったけど、自分もまだ行ける感じがあった」

<8R>
菅田壱道選手
菅田壱道選手
 赤板でハナに立った古性優作が、徐々にペースを上げて打鐘からスピードに乗せる。菅田壱道が好位を取り切ると、浮いた三谷竜生は外併走から古性を叩きにいく。しかし、南修二のブロックもあって出切れない。そんな前団のもつれを、脚を溜めていた浅井康太が最終1センターからのまくりで一蹴。岩津裕介をちぎる好回転の一撃で貫禄を示した。
 「(別線を選択した近畿勢同士が、踏み合う展開になり)ジャンでもらったと思いました。あと1日、なんとか期待に応えられるように頑張りたいです」
 外の三谷を弾きながらまくって出た菅田壱道(写真)が、浅井を追うがその差は詰まらず3車身差の2着。
 「風がキツかったし、とにかく前々にと。3番手で勝負して、取り切ったらすかさずまくる作戦でした。浅井さんのスピードがすごくて(上を)行かれたけど、自分のタイミングで仕掛けられたのでよかったです。それにしても風がすごくて、全然脚が溜まりませんでした」
 浅井に離れた岩津の後ろから友定祐己が、差し脚を伸ばして3着。
 「自分はなにもしてない。前が頑張ってくれて、それでコースができた。余裕がないけど、もうあそこを踏むしかなかった」

<9R>
新田祐大選手
新田祐大選手
 山田英明が切った上を近藤隆司が叩いて踏み込むも、稲垣裕之が一気にカマして主導権を奪取。新田祐大(写真)は稲垣ラインを追いかける形で近藤の外で3番手併走となるが、最終バック手前から踏み込む。懸命にブロックする稲川翔を乗り越えて逃げる稲垣をとらえた新田が、ゴール一番乗り。
 「稲垣さんがあの位置になると思ってたけど、自分も諸橋(愛)さんと積極的なレースをしようと。それで体が自然に反応してくれました。稲川さんがすごいところまで持ってきていたので、それを警戒しながら通過しようと。でも、稲垣さんも持ってくる可能性があるので、そこも通過するまでは油断せずにと思ってました。風がすごいキツかったんですけど、他に北日本の選手が準決に乗れていなかったので、みんなの気持ちを背負って戦いました」
 最終バックから切り替えて2着に追い込んだ渡邉晴智は、地元の意地を見せて優出の喜びをかみ締める。
 「たまたまですよ。いやー、でもうれしいですね。近藤君のおかげ。まさか(決勝に)乗れるとはね。内に(山田が)いたからどうなっちゃうんだろうって。8年間、支えてくれた仲間のおかげです」
 稲川翔は新田を止められなかったものの、稲垣の余力を計りながら追い込み3着で優出。
 「勝とう、勝とうじゃなくて、しっかりと自分の仕事をしようって思いながら走れました。どんな展開でも仕掛けてくれるって、(稲垣に)信頼感がありました。新田君が後ろなのはわかったけど、もう少しどうにかしたかったですね。本当に稲垣さんのおかげです」

<10R>
牛山貴広選手
牛山貴広選手
 平原康多が青板の2コーナーから上昇して誘導員後位が入れ替わる。関東ラインに続いた中川誠一郎が中団に収まり、前受けの竹内雄作は車を引いて打鐘で踏み上げていく。しかし、これに合わせて平原がピッチを上げて、主導権を譲らない。竹内は一旦中団で併走した後に、最終1センターから再度アタック。しかし、3コーナーで神山雄一郎の強烈なブロックを受けて万事休す。神山のブロックで空いたインを牛山貴広(写真)が伸びて高配当を演出した。
 「神山さんがイエローラインまでもっていったから、すみませんという感じで。3番手の仕事をできたのかわからないけど、そのぶんも決勝で頑張りたい。いい状態で臨めていますね」
 中団でチャンスをうかがっていた中川誠一郎は、外を踏めずに結果的に牛山を追いかけて2着に入る。地元熊本を盛り上げるため、大舞台で決勝まで勝ち進んだ。
 「神山さんのブロックが大きくて、降りたところを外だなと思っていました。牛山は内にいかないと思っていたけど、行ったから付いていくしかないなと。(地元の熊本に対して)僕は走りで魅せるって決めて、やるだけのことはやってきた。決勝は地元の競輪ファンに向けて力いっぱい頑張りたい」
 目標の竹内が力尽きた吉田敏洋だったが、直線外コースを踏んで3着に入る。
 「(竹内)雄作が(平原に飛び付かれないように)必要以上に意識して、気を遣ってくれた。何回か(竹内は)行けるタイミングがあったんですけどね。ハナから自分で踏むっていう頭でいたら、ラインの強みにならない。とにかく雄作を信じてと思っていた。さすがに3コーナーでは雄作が力尽きたので、冷静にコースを探して踏み切れましたね。僕が3人のなかで一番点数が低いのに番手を回してくれた金子(貴志)さんと雄作のおかげです」
 本来の先行力を見せることなく竹内雄作が不発の8着。
 「自分のリズムじゃなかったですね。見すぎてしまいました。休むところで相手も休んでいるし。これも経験ですね」
 なかなか仕掛けて来ない竹内に先行のスイッチが入った平原康多が、意地の突っ張りを見せた。
 「悔しいです。ああなったら駆けるしかない。車番が悪いので、(初手で)あの位置になるのも仕方ないですね」

<11R>
近藤龍徳選手
近藤龍徳選手
 7番手に構えた深谷知広は、青板の3コーナーから早めに上昇を開始。合わせて出た木暮安由だったが、赤板ではさすがに分断策を封印。近藤龍徳(写真)、松坂英司までが出切って、結果的にはそこで勝負あり。後続を一本棒にしてマイペースで駆けた深谷の掛かりが“超抜”。最終1コーナーからまくった木暮は1車しか進まず、8番手の原田研太朗も不発。松坂まで流れ込みラインの3車での上位独占は、最後のハンドル投げで近藤が深谷を追い込んで1着。深谷とのワンツーに興奮を隠すことなく、近藤がまくし立てる。
 「俺だけが願ってた場所じゃなくて、みんなが見たかった場所にしたかった。そん時は必死だったけど、(ワンツーが)決まって深谷さんが肩を叩いてくれた。競輪人生のなかで一番うれしかった。目指してきた場所だったんで。深谷さんがあんだけ行ってくれたんで、自分が付いていくとか食らいつくとかじゃなくて、しっかりと番手の仕事がしたかった。(深谷との)車間を空けたのは残すとかじゃなくて、ああしないと差せないと思ったからです」
 一走目の特選同様に先行策で抜群の強さを見せた深谷知広は、クールダウンを終えるとうれしそうに口を開く。
 「後ろになったら、とりあえず(後ろが)粘られないように駆けようと思ってました。そこからはマイペースでいけた。今の状態だから自信を持って駆けられました。今日は合格点だと思います」
 愛知コンビの後ろを選択した松坂英司は、冷静に近藤との間合いをとって流れ込み。10年のダービー以来、2度目のG1決勝進出を決めた。
 「僕が言うのもなんですけど、(深谷は)すごい強い。深谷と(近藤)タツに付いてて迷惑を掛けないようにと思っていた。一番脚がないのにあれもこれも考えてもダメだから、(愛知勢に)付くって決めたからには余計なことは考えなかった。キツかったけど、絶対(内を)空けちゃいけないと思ってました」
 木暮は最終3コーナーで力尽き後退。今度は武田豊樹が外を踏み込み、乗った芦澤大輔が内よりのコースを踏むも5着まで。
 「松坂さんも最後まで内外線のところをうまく踏んでましたね。そこが空くのか空かないのか…。道中は余裕があったけど、あとは武田さんに任せてゴール勝負と思っていた。それで(決勝に)乗れてないってことは力不足です」
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