『第72回日本選手権競輪(GI)レポート』 最終日編

配信日:5月6日

 平塚競輪場を舞台に開催された輪界でもっとも権威のあるタイトル「第72回日本選手権競輪(GI)」は、5月6日に最終日が行われた。4車で結束した近畿勢にGI3連覇がかかる新田祐大、昨年当所でグランプリを制した浅井康太と、ダービーの決勝にふさわしいメンバーがそろった。レースは、脇本雄太が先行策。番手で願ってもない展開が巡ってきた三谷竜生が、直線で追い込んでダービー連覇を遂げた。優勝賞金6500万円(副賞含む)を手にし、年末の「KEIRINグランプリ(GP)2018」の出場権を獲得した。

お子様サイエンス教室
お子様サイエンス教室
決勝レース出場選手紹介
決勝レース出場選手紹介
アルコ&ピースお笑いライブ
アルコ&ピースお笑いライブ
都丸紗也華とアルコ&ピースのスペシャルトークショー
都丸紗也華とアルコ&ピースのスペシャルトークショー

決勝戦 レース経過

 号砲で浅井康太、新田祐大、和田健太郎が飛び出すが、車番を生かした浅井が素早く誘導後位を確保。浅井-香川雄介-新田-山中秀将-和田-脇本雄太-三谷竜生-村上義弘-村上博幸の並びで周回を重ねる。
 赤板前から徐々に車間を空けた脇本は詰めた勢いで1センターで一気に踏み上げると、4番手の村上博まできっちり続きライン4車できれいに先頭に。誘導との車間を切って脇本の仕掛けに備えていたはずの浅井だったが、打鐘で3、4車身車間が空くと、出切ってからもペースを落とすことなく踏み続ける脇本の前にさらに車間が開いてしまい追い付くことはできず。8番手に置かれてしまった山中が2コーナーから巻き返すが、新田に合わされ不発。その新田もそこから車が出ない。近畿4車はセーフティーリードを保ったまま最後の直線へ。逃げた脇本は最後の力を振りしぼって踏み直すが、番手絶好の三谷がゴール前で抜け出し、史上7人目のダービー連覇を飾った。直線で外を回した村上義が粘る脇本をわずかにとらえて2着。4着にも村上博が入って、近畿4車で上位を独占した。


 

 

<1R>

山崎芳仁選手
山崎芳仁選手
 前受けから後方に引いた佐藤博紀は、打鐘から踏み込んで松岡篤哉を強引に叩く。番手の山崎芳仁(写真)は、すかさず反撃してきた野原雅也に合わせて番手まくりを敢行。そのまま力強く押し切った。
 「スタートで誰も出なくて、前からになりました。(佐藤)博紀が頑張ってくれた。。博紀が行けなかったら、野原の前(4番手)が空いていたので、降りて迎え入れようと思っていたけど。伸びていったから、行き切るなと。今シリーズは初日がダメでしたけど、(シリーズを通して)なんとできましたね」
 大槻寛徳は、山崎の仕掛けをきっちり追走して2着に入った。
 「後ろに南(修二)君が切り替えたのがわかったので。内を警戒していました。最後も、下手に抜きにいって中を割られるのが怖かったですね。早めに踏んだら、3着になってしまうので。ワンツーが決まって良かった」

<2R>

池田憲昭選手
池田憲昭選手
 後ろ攻めの杉森輝大が赤板で前に出る。この動きに坂本健太郎も続く。高橋和也が打鐘の3コーナーで杉森を押さえると、巻き返してきた早坂秀悟とモガき合いに発展。坂本健太郎は最終ホームから、早坂目掛けてスパート。前団を一気にまくり切る。最後は続いた池田憲昭(写真)が差し切った。
 「すべて坂本さんに任せていました。抜けないかと思うくらい強かったですね。まくり切ってからは、後ろに誰も来ていないか確認して。恵まれましたね。南(修二)さんにセッティングを見てもらって。シリーズ中にセッティングを大幅に変えました」
 坂本健太郎は、タイミング良く仕掛けて別線を一蹴。ラインでワンツーを決めた。
 「ノリ(池田憲昭)が付いてくれたので、強い気持ちを持って走ろうと。最終ホームでここしかないと思って腹をくくりました。あそこで行かないと杉森君も態勢が整ってしまうので。負け戦ですけど、GIでまくれて自信になりましたね」

<3R>

田中晴基選手
田中晴基選手
 打鐘手前で吉田拓矢から主導権を奪った渡邉雄太の先行策。中団に収まった吉田が最終ホームから巻き返すと、番手で引きつけた田中晴基(写真)は絶妙なブロックで反撃を阻む。田中が渡邉との空いた車間を詰めながらきっちり追い込んだ。
 「(渡邉は)早めに出てくれて、ペースに入れてくれた。あとは自分が失格をしないようにやるだけのことやってと。(渡邉)雄太がちゃんと駆けてくれたから、自分もあれができる。最後は抜けないかと思ったけどよかったです」
 吉田、太田竜馬を相手にして、先行策でラインを上位独占に導いた渡邉雄太の内容は濃い。
 「(最終)バックは全開であとはだ性でと思ってました。今回は調子が良かったし、たまたま流れが向いたのもある。でも、自信にはなりました」

<4R>

和田真久留選手
和田真久留選手
 青板2センターで石塚輪太郎が上昇を開始すると、山岸佳太が合わせて踏んで先に切る。赤板で山岸を押さえた石塚を清水裕友が叩きに行くが、石塚は全開で突っ張って両者で激しい先行争いに発展。最終ホームから踏み上げた山岸のさらに上を、和田真久留(写真)が鋭くまくって今シリーズ初勝利を挙げた。
 「(ハイペースで)脚が溜まらなかった。いっぱいでした。清水と石塚が叩き合ってるのがすごい遠くに感じました。調子がいい時なら(打鐘の)2センターで行けてるんですけど、前のスピードが上がり切ってたんで、すごい厳しかった。自分の着よりも、どういう形であれラインでワンツーが決まったことが大きい」
 ラインのワンツーで車単1番人気に応えた渡邉晴智が、地元の和田を称える。
 「(和田は)あのメンバーであのスピードが出るんですからすごいですね。今回初の1着でしょ。良かったんじゃないですか。次は抜けるように努力します」
 石塚と清水の踏み合いを最終ホームから仕掛けた山岸佳太は、南関コンビにまくられたものの3着に入った。
 「(先行争いに)参加したかったって気持ちもあって、まだ緩んでないホームから仕掛けました。切るのと、清水が内に締めてきて脚を使ったのもあって、結果的に(和田)真久留君のまくりごろになってしまった。勉強になりました」
 先行バトルの末に石塚と共倒れとなってしまった清水裕友は、悔しそうにレースを振り返った。
 「(石塚が出た後に)すぐに行っておけば、ああはならなかったかな。(先行争いを)誘発してしまいました。一瞬出させてくれるかと思ったんですけど…」

<5R>

荒井崇博選手
荒井崇博選手
 根田空史にフタをした取鳥雄吾が、合わせて踏んだ松岡健介を打鐘で押さえて先行策。一本棒で最終ホームを通過すると、3番手を確保した松岡が2コーナーで踏み上げて取鳥とサイドバイサイドの展開に。番手の荒井崇博(写真)は2センターから取鳥の内を踏むと、直線で伸びてアタマ。今シリーズ2勝目を挙げたが、表情は浮かない。
 「(取鳥の内に)行く気はなかった。2センターで内に差してしまって。入っちゃったから、1着取るしかないと思って(踏ませてもらった)。見ばえが悪いね」
 根田が7番手で最終バックを通過すると、成清貴之は3コーナーからコースを縫うように踏んで2着に伸びた。
 「メンバー的にコースは空くと思っていました。神山(雄一郎)さんだけかると思ったから先に入れたらと。2センターで真ん中が締まっていたけど、そこから再度踏んでいきました。でも、ビビッていたから2着でしたね。イチかバチかで踏んだら突き抜けていたと思う」

<6R>

吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 先行態勢を取った中井俊亮を北津留翼が強引に叩いて逃げる。吉田敏洋は7番手に置かれ、5番手の山賀雅仁が最終ホーム手前から仕掛けるが大塚健一郎が止める。大塚のブロックであおりが生まれたものの、怯むことなく吉田が豪快にまくり上げる。前団をとらえた吉田を坂口晃輔がわずかに差し切った。
 「(吉田)敏洋さんは仕掛けどころを見ることなく、前が仕掛けた上を行ってすごいスピードだった。自分は苦しかった。あの勢いでうかつに(内を)空けて、(牛山貴広に)入って来られたらワンツーが決まらんから。そこを気をつけてました。自分の感触は最終日が一番良かった」
 二次予選で落車に見舞われた吉田敏洋(写真)だったが、その後は5日目、最終日を力走。「思った通り周りが動いてくれた」と、慌てることなく最後に動いて、ラインでのワンツーを演出した。
 「(中団から先まくりの山賀が)行けなくても、自分で(仕掛ける)タイミングを取っていた。今回も疲れた。何回走ってもダービーは慣れない。このサバイバルレースはね。まずは休みます」

<7R>

稲川翔選手
稲川翔選手
 前受けの高橋陽介を金子貴志が押さえると、赤板2コーナーから踏んだ岡村潤が先頭に立つ。その上を出た古性優作が先行態勢に入ると、大阪勢に続いた高橋がすかさず巻き返す。最終ホームで高橋を合わせ切った古性が先頭で4コーナーを迎え、番手の稲川翔(写真)が抜け出した。
 「安心して付いていきました。内も外も来るのはわかっていたし、最低でも自分が1着って状況だった。自分の調子が良くないなかで、(古性が自分に)1着を取れるレースをしてくれた」
 高橋が不発になると、諸橋愛は3番手の岡村と絡んで結局、4番手に降りる。最終2センターで内を進んだ諸橋は、直線で古性と稲川の間を割って2着に入った。
 「しっかり準備してきたつもりだったけど、少し口が空いたりだとかは、ダッシュの練習が足りなかったってこと。今節は競りもあったし、単騎もあったし、いろいろやれた。そういう意味では良かったかな。レース勘に関してはだいぶ戻ってきているし、次の名古屋記念あたりではって感じですかね」

<8R>

小川真太郎選手
小川真太郎選手
 後ろ攻めの小川真太郎(写真)が、早めに動いて誘導員後位が入れ替わる。中四国勢に続いて3番手の稲垣裕之と併走した桐山敬太郎が桑原大志をすくうと、小川は誘導を降ろして先行態勢へ。桑原はすぐさま追い上げてドッキングに成功。稲垣裕之は3番手を確保するが、桑原のけん制で仕掛けるタイミングが狂う。結局、そのまま小川が力強く押し切った。
 「(別線に)行かれない程度のペースで駆けられましたね。後ろがごちゃついてくれて押し切れました。先行でも、もうちょっと強くなれたら。逃げると思わせられたら、まくりも生きるだろうし。今後も逃げたりして。(今シリーズは)準決で力の差を感じたけど、3勝できたのは大きいです」
 桑原大志は小川とのゴール勝負も2着。
 「最終日は赤板から小川君のスイッチが入っていたね。(自分は)稲垣を見過ぎた。1着をプレゼントしてくれる展開だと思って、もう1回、稲垣を見たら(来ていた)。まあ、ワンツーでよかったです」

<9R>

小松崎大地選手
小松崎大地選手
 先に動いた岩本俊介が切った上を赤板で渡邉一成が押さえて出る。隊列は一本棒で6番手の柴崎淳、8番手の坂本亮馬は動かず、4番手の岩本が2コーナーで叩きに行くが、渡邉は突っ張り主導権をキープ。4番手に出戻った岩本は再び最終ホームで仕掛けるも、渡邉がペースを上げる。今度は脚を溜めた柴崎のまくりが襲い掛かると、小松崎大地(写真)が2発のブロックで仕留めて抜け出した。
 「めちゃくちゃ緊張したし、気合も入ってました。(柴崎の)スピードが良かったんですけど、意地でも止めてやるって思った。(渡邉)一成が踏めてたから、止められた。あれが自力っていうんですね、勉強になりました。僕が踏むスペースをつくらないと、成田(和也)さんのコースもないからと。ものすごくいい経験になりました」
 「自分は恵まれました。一成が掛かってたし、(小松崎が)よく止めた」とは、成田和也。同県の後輩2人の仕事ぶりを称えて、静かに振り返る。
 押さえ先行から別線を不発にした渡邉一成は、ゴール前で失速して5着もその内容とスピードが光った。
 「いつもみたいに構えて成績を残すことができなかったんで、なにか違うことをしていかないとって。(周回中は)基本的に後ろから行こうと思っていた。次の高松宮記念杯では、1走目からこういうレースができるようにしたい」

<10R>

平原康多選手
平原康多選手
 赤板で誘導の後ろに入った山田英明を、平原康多(写真)が押さえる。前受けから下げた郡司浩平が2コーナーから叩いて出ると、平原は郡司を出させて3番手を確保。最終ホームから巻き返す山田を平原は1センターで外に振って大きくけん制して、2コーナーからまくって出る。松谷秀幸のブロックを乗り越えた平原が、1着でゴールした。
 「山田がすごいスピードで来てたし、かぶっちゃうとまた出し切れないで終わっちゃうと思った。松谷にいいの(ブロック)をもらっちゃいました。あれでスピードが殺された。でも、やっと自分らしい競輪ができた。決勝でやりたかったですけどね。悔しいです。自分のなかで感覚が悪いとかはないし、見えない疲労でズレがあるのかもしれない」
 山田が不発に終わると、狭いコースを縫って井上昌己が2着に強襲した。
 「(山田の仕掛けは)ワンテンポ早かったね。もうワンテンポ待てば2コーナーで下りを使えた。自分はサラ脚だった」
 果敢に先行した郡司の番手で仕事した松谷秀幸だったが、平原を止められず張り気味にタテに踏んで3着に入った。
 「(郡司)浩平が頑張ってくれました。気持ちが入ってた。まさかあんなにいってくれるとは思わなかった。自分なりに仕事をしたつもりだけど、(平原が)3番手ですぐだったからキツい。ブロックで止まったと思ったんですけど…」

<11R>

村上義弘選手
村上義弘選手

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 赤板を通過しても隊列は崩れず、6番手でワンポイントにかけた脇本雄太が1センターから一気。4車のラインを意識しながら出切ると、そのまま別線をちぎって逃げる。前受けの浅井康太は5番手に飛び付くも、近畿ラインとの車間は大きく空いて成す術がない。脇本がつくり出したハイペースに、V争いは近畿ラインの4車に絞られた。番手の三谷竜生が落ち着いて直線半ばで脇本を交わして、初戴冠だった昨年に次ぐ2度目のGI優勝。ダービー連覇を成し遂げた。
 「(優勝は)素直にうれしい。去年は(近畿勢が)ひとりだった。今年は4人いてみんなのおかげで獲らせてもらいました。(昨年)ダービーを獲ってから怪我で低迷していたけど、今回に向けて仕上げてこられました。脇本君のすごい先行を差すことができてよかった。去年のグランプリは悔しかったんで、次のグランプリは優勝を目指して頑張ります」
 3番手から外を追い込んだ村上義弘(写真)は、逃げた脇本との2着争いに持ち込むのが精いっぱい。わずかに脇本をとらえて2着に上がった。
 「脇本が強かった。オーバーペースかと思ったけど、最後はもう1回加速していった。(別線が大きく離れていたが)後ろがどうなっているかはわからなかった。来たらどうにかしなければと。今年の(三谷)竜生の活躍通り、近畿でSSは(三谷)ひとり。(近畿勢を)引っ張って来てくれたんで、日本選手権の優勝者にふさわしい」
 別線に反撃の隙をまったく与えず近畿4車で上位を独占。脇本雄太(写真)が、GIファイナルで衝撃の逃走劇を披露した。
 「誰か切りに行っても追いかけるつもりはなかった。自分のタイミングでと思っていた。自分のなかで一番最悪なのは、(別線に)飛び付かれてラインが崩れること。(ラインを)最大限に生かすには、(仕掛けが)あのタイミングだった。ラインを生かそうという気持ちが強かった。反省を言うと、もうちょっと(仕掛けが)遅くても良かった。でも、自分らしくていいかな。(自力で)タイトルを獲りたい。もう少しで届きそうな気がする。あとはもうちょっと貪欲な気持ちに」
 「勝負どころで仕掛けられなかったのが敗因」とは、GI3連覇ならずの新田祐大。脇本の仕掛けに一瞬、合わせて踏み込みかけたが、思いとどまり7番手で圏外に置かれた。
 「脇本の仕掛けが見えてたんで、そこですね。浅井(康太)さんが飛び付く感じで踏んだと思った。自分で踏んでいればよかった。そこから浅井さんが車間を切っているのかと思った。どこから詰めるのかなと思ったら、浅井さんが苦しそうだった。慌てて(仕掛けて)行ったけど…」

次回のグレードレースは、5月12~15日まで京王閣競輪場で京王閣競輪開設69周年記念「ゴールドカップレース(GIII)」となります。
4月30日時点の出場予定選手データを分析した「ゴールドカップレース(GIII)」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

プロスポーツ号外版(表)は"こちら"
プロスポーツ号外版(裏)は"こちら"