『KEIRINグランプリ2020シリーズレポート』 初日編

配信日:12月28日

 “ヒトは、強い。”。平塚競輪場を舞台に輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2020シリーズ(歳末チャリティー協賛)」が、28日に始まった。初日のメイン「オッズパーク杯ガールズグランプリ2020(FII)」では、児玉碧衣がまくりで人気に応えて優勝。1着賞金1005万円(副賞含む)を獲得して賞金女王の座に輝き、グランプリ史上初の3連覇を遂げた。2日目の29日には113、115期による「ヤンググランプリ2020(GII)」がメインで行われる。3日間シリーズの「第13回寺内大吉記念杯(FI)」でも準決で激しい火花が散らされる。
 「KEIRINグランプリ2020シリーズ(歳末チャリティー協賛)」の開催中、平塚競輪場の入場は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、神奈川県在住の方を対象とした事前申し込みの抽選に当選した2000人様に限定させていただいています。神奈川県以外にお住まい方、抽選に当選しなかった方々は、テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

ガールズグランプリ出場選手特別紹介
ガールズグランプリ出場選手特別紹介
ヤンググランプリ公開練習
ヤンググランプリ公開練習

ガールズグランプリ2020 レース経過

 号砲で石井寛子が飛び出して正攻法の位置を確保。高木真備、梅川風子が続くが、その後位は児玉碧衣を軸に目まぐるしく位置取りが変わる。4番手以下が石井貴子、児玉、鈴木美教、佐藤水菜で落ち着いたのは赤板手前だった。そのまま打鐘を迎えて誘導は退避。依然として隊列は変わらず、4コーナーに入ったところで児玉から動き出す。最終ホーム手前で合わせて高木が外に車を持ち出すと、児玉はまずはその後位へ。そこを最後方で様子を窺っていた佐藤の強烈なカマシが襲う。1センターで出切った佐藤を、高木、児玉が反応良く追い、内から飛び付きを狙った石井寛は高木に踏み負けて後退。2コーナーで3番手の児玉が梅川を連れてまくりに出る。2番手の高木もまくりで応戦し、逃げる佐藤も含めて踏み合いとなるが、2センターでは児玉がねじ伏せてトップに立つ。直線に入り、追いすがる梅川、高木を突き放して児玉が完勝した。

<1R>

鷲田佳史選手
鷲田佳史選手
 後方から上昇した伊原克彦を植原琢也が突っ張り主導権。今度は打鐘手前で菅原大也も仕掛けるが、植原がペースを上げて合わせる。菅原が不発で嶋津拓弥は、自力に転じてまくり上げる。伊原に乗った鷲田佳史(写真)は、直線で嶋津と川口直人の中を割って突き抜けた。
 「結果的に植原君がめちゃくちゃヤル気で(伊原を)出させてくれなかった。ただ(別線が)踏み合ってくれたんで中団が取れた。(まくった)伊原さんがのみ込む感じだったら外だったんですけど。最後の最後まで待ちました。7車が苦手というか…。(それで11月から始めた)7車用の練習が実を結んでいる感じです。春先くらいにはと思ってたんですけど」
 菅原の余力を見極めてまくりを打った嶋津拓弥が悔やむ。
 「(植原が)強かったですね。自分も思ったより(菅原の)後ろで脚を使ったのか、(自分でまくって)出ていった時に重かった。(直線で)僕が内に降りちゃってるし、まっすぐ走ってれば(ラインで)ワンツーが決まったのかなと。川口(直人)さんに迷惑を掛けた」

<2R>

石川雅望選手
石川雅望選手
 後ろ攻めから押さえた永井清史を小原丈一郎が叩いて打鐘前から主導権を握る。小原唯志が中団の外まで追い上げて残り1周。小原丈をリードした伏見俊昭が車間を空けて援護して3番手の荻原尚人が小原唯のまくりを張ると、石川雅望(写真)が空いたコースを突き抜けた。
 「小原唯志さんが2コーナーの立ち上がりから仕掛けたので、ちょうど3コーナーにかかるなって。小原唯志さんは乗り越えても自分のところでもってこられるだろうと思ったので内を狙っていました。この1着は大きいですね。これでS級点は大丈夫だと思いますけど、残り2日も気を抜かずに」
 番手絶好の伏見俊昭は、ゴール寸前で勝利を逃して2着に。
 「(小原)丈一郎が頑張ってくれましたね。小原(唯志)が止まったのが見えたのでワンテンポ待ってから踏んだらいかれてしまいましたね。自分とオギ(荻原)で内を空ければいかれちゃいますよね。1着の展開だったし、もう少しやりようはあったのかな」

<3R>

中西大選手
中西大選手
 中西大(写真)にフタをした片折亮太が、再度踏み込んで先頭に立つ。が、中西の巻き返しも早い。打鐘手前から踏み込んで、逃げる片折を最終1センターでとらえる。三谷政史が離れて、片折が追いかけるが車間が詰まらない。直線ではいっぱいも中西が、そのまま押し切った。
 「(前回の)佐世保記念の初日に早坂(秀悟)さんと走って同じような展開だった。だから、(片折が)すかさず行ったところをスイッチしてカマそうと。(出るのに)脚を使ってたんで、あとは(三谷)政史さんに仕事をしてもらってどこまでと思ってた。そしたら(最終)2コーナーくらいから(後ろの)気配がなくてどうなっているのかと。自分はもう4コーナーからバタついて、あとはなんとかでした」
 番手で中西を追った片折だったがなかなか詰まらない。最終2センターで踏み込んだ宿口陽一は、鋭く追い込むも2着。
 「三谷さんが離れるとは思ってなかったけど、いい形にはなった。片折君も番手に入ったんで追えるかと思ったけど遠かった。地元の柴田(功一郎)さんも付いてくれたんで踏んだけど、結果届かなかったんで判断ミスですね」

<4R>

坂本貴史選手
坂本貴史選手
 後ろ攻めから押さえた門田凌を小堺浩二が押さえて先行態勢に。中団の外に追い上げた坂本貴史(写真)がタイミングを取って最終2コーナーからまくり上げると、中部勢を一気にのみ込んだ。
 「車番的に前か後ろだと思ったので、だったら脚を使わない前かなって。自分のなかで小堺さんは点数以上に力があるし、あれぐらい踏んで出られないなら外併走でもいいかなと。今日(初日)はアップ中から前回の平よりも比べものにならないくらい良かったのでいけると思った」
 目標の門田が内に包まれる窮地にも、格上の柏野智典はコースを探して2着に強襲。
 「自分が坂本君の後ろをさばければ良かったんですけど、うまくタイミングが合わなかった。(予選は)2着権利だったので3コーナーからあと2、3人抜かないとなって。外は届かないので空いたコースと思って踏みました」

<5R>

大石剣士選手
大石剣士選手
 赤板過ぎに佐藤幸治が押さえて出ると、前受けの大石剣士(写真)は7番手まで下げて一本棒の隊列。反撃のタイミングをうかがっていた大石だったが、佐藤がペースを上げてまくりに構える。中団から先まくりの小酒大勇は1車しか進まず、最終2コーナー手前から踏み上げた大石がスピードの違いでのみ込んだ。
 「内容はともかく1着で上がれたんで良かった。(仕掛けて)行こうと踏み出したと同時に佐藤さんに踏まれた。タイミングがバッチリすぎて見ちゃいました。調子は問題ないし、(佐藤)龍二さんにも抜かれなかったんで感触的にも良かった」
 直線に入っても大石のスピードは鈍らず、地元の佐藤龍二は流れ込みの2着。
 「(大石は)あそこ(打鐘過ぎ)で行ってたら、もっと楽だったかもしれない。まくりだとやっぱりラインで決まらないリスクが高まるんで。でも、彼が力でねじ伏せてくれた。強い後輩がいると心強いです」

<6R>

不破将登選手
不破将登選手
 後ろ攻めの才迫開が赤板の1コーナーで押さえて先頭に立つ。小林令が中団に収まり、前受けの川口聖二は7番手まで下げて打鐘、ホームを一本棒で通過。中団から早めにまくろうとした小林は、車が進まず元の位置に戻る。戦況を見極めていた川口が最終2コーナーから一気にまくると、続いた不破将登(写真)がゴール前で逆転した。
 「川口君の好きなように走ってもらうつもりでした。2コーナーから仕掛けていった時がすごい掛かりだったので、のみ込むだろうなって。最近は川口君だったり、後輩が頑張ってくれていますけど、基本自力で戦う準備はできている」
 後方7番手から豪快にまくった川口聖二が、2着で予選を突破した。
 「小林君が中団から仕掛けたけどすぐに戻ったので、あれって感じでしたけどね。自分は踏み込んだ感じも良かったし、状態はいいと思う」

<7R>

井上昌己選手
井上昌己選手
 地元の村上直久が切ったところを九州ラインが出て主導権。林大悟が後続を一本棒にして風を切る。車間を空けた4番手の村上が最終2コーナーからまくるが、井上昌己(写真)が外に張って村上を阻む。直線で落ち着いて踏んだ井上が1着で人気に応えた。
 「(林)大悟が落ち着いて駆けてくれました。(打鐘の)4コーナーから駆け降ろして踏み上がっていった。これなら別線はまくって来られないと思ってたら、村上君が来た。(村上は)調子がいいんじゃないですか。自分は重かったけど(1着で)良かった」
 逃げる林と井上の間のコースを踏んだ塚本大樹が2着に入った。
 「動きはいいのなかと。流れに恵まれているところもありますけど、(S級で)だいぶ戦えるなっていう感じがあります」

<8R>

鈴木庸之選手
鈴木庸之選手
 赤板過ぎに切った近藤隆司を小川祐司が打鐘前に押さえて逃げる。前受けから7番手まで下げた鈴木庸之(写真)は、最終1コーナーから反撃に出る。中団からまくった近藤に合わされかけた鈴木だが、二の足を使って外を突き抜けた。
 「近藤さんにずっと見られてたので難しかったですね。でも1コーナーから行けば何とかなると思ったので。タイミング的に近藤さんに合ったので海老根(恵太)さんを決めようと思ったけど、決められなくて外を踏みました。近藤さんが3コーナーで止まったら自分も終わってましたね。キツかったけどなんとかです」
 三宅伸の援護を受けた小川祐司が、2着に逃げ粘り高配当を演出した。
 「鈴木君は受けてくれると思ったので自分のタイミングで先行できればと思っていました。前回最終日の7着が悔しくて、力をつけられるような練習をしてきた。体の使い方とか意識も変えた」

<9R>

寺崎浩平選手
寺崎浩平選手
 吉武信太朗、引地正人の順で押さえて出て、人気の寺崎浩平(写真)は赤板2コーナーで7番手。打鐘の2センターから反撃に出た寺崎が踏み込むと、引地も合わせてペースを上げるがスピードが違いすぎる。中近ライン3車で出切って、別線には出番がない。番手の近藤龍徳も寄せつけず、寺崎が危なげなく押し切った。
 「(仕掛けて)行く場所を決めていたんで、前に関係なく行きました。気温も上がってますし、バンクも軽かった。だから、しっかり先行すれば残れると思って自信をもって行った。ラインでワンツースリーだったんで、それも自信になりました。2020年最後の開催でしっかり優勝で締めくくれるようにしたい」
 寺崎マークから2着に流れ込んだ近藤龍徳は、寺崎を手放しでほめる。
 「(寺崎は)距離が長いかなって思っても、行くところいく選手ですからね。敵だと怖いけど、味方だと本当にありがたい。自分はなんとか付いていってる。いい時が10なら、まだ2とか3ですね」

<10R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 赤板手前から上昇してきた吉田拓矢(写真)にフタをされた島川将貴は空いた内を判断良くすくって打鐘前に先頭に立つ。吉田も素早く反応して4番手へスイッチ。稲毛健太と柴崎淳は立ち遅れてしまう。そのまま島川がピッチを上げるが、最終2コーナーからまくった吉田が小川真太郎のブロックを乗り越えて、先頭でゴールを駆け抜けた。
 「とりあえず島川さんを警戒しながら前々へ行く作戦でしたけど、内から行かれてしまったので自分も付いていこうと。うまく反応できたと思います。仕掛けるタイミングを待ち過ぎず、あの位置から行けて小川さんを乗り越えられたので良かった。踏んだ感じも良かったです」
 2着には椎木尾拓哉がコースを探して突っ込んだ。
 「バンクも軽かったですし、うまくいいコースも踏めたと思います。調子自体は前回の奈良から変わらずいいと思うので、準決勝もしっかりと頑張りたい」

<11R>

児玉碧衣選手
児玉碧衣選手
 それぞれの思惑が交錯して隊列が落ち着いたところで赤板を迎える。5番手で打鐘を通過した児玉碧衣(写真)が、4コーナーから踏み込むと2番手にいた高木真備も合わせて出る。児玉は冷静に高木を追いかける。その外からカマした佐藤水菜が先頭に立ち、高木は2番手に入るが、児玉がその上をまくる。スピードの違いで前団を仕留めた児玉が、そのまま後続に1車身半の差をつけて余裕のゴール。グランプリ史上初となる3連覇で賞金女王の座に就いた。
 「誰も動かなかったら1周駆けるつもりでいた。カマそうかなって思ったら、(高木)真備さんが自分と合わせる感じで出てきたんで、真備さんも結構踏むような感じだった。それでいったん真備さんの後ろに収まって、そのまままくりに行くような感じでした。けっこう冷静に見れてたと思います。3連覇してちょっとひと安心している気持ちのほうが大きい。来年の目標はって聞かれたら、まだはっきりは言えないんで、今年中はちょっとゆっくりして来年、また考えたいなって思います」
 勝負どころでは外の児玉にかぶった梅川風子は、最終2コーナーで外に出して児玉を追ったが脅かすまでには至らなかった。
 「いい位置は取れたかなって。後ろを気にして脚を使うよりも、前の石井さんと高木さんに任せて自分はフリーでいようという判断は悪くなかったと思う。でも、児玉さんが外に持ち出すのが思っているよりも早くて、内に包まれてしまいましたね。そこがミス。児玉さんが予想以上に強かったです」
 佐藤のカマシに飛び付いた高木真備だったが、児玉のまくりに反応しきれず3連覇を許した。
 「前の方からと思っていました。あそこから仕掛けようと思っていたんですが、(佐藤が)すかさず来たので追いかけた。本当は先まくりが良かったんですけど、児玉さんのスピードが良くて出られてしまいました。番手にハマってからすぐに行ければもう少し違ったのかなって思いますけど、今の力では及ばない感じでした」

<2日目・11R ヤンググランプリ2020>

森田優弥選手
森田優弥選手
 単騎だった昨年のヤンググランプリは惜しくも準Vだった森田優弥(写真)が、今年は同県同期の黒沢征治とタッグ。番手からV奪取にかける。
 「もちろん自分が前で戦う気持ちもありましたけど、それ以上に黒沢さんの気持ちが強かったので自分が番手を回ります。番手を回るのは人生で初めてですね。寬仁親王牌から硬めのシューズに換えて道中の脚の溜まりが変わった。このシューズなら番手戦にも向いているはず。今年で最後のヤンググランプリなので、自分の可能性にかけて頑張ってみます」
 ビッグ初出場だった3月のウィナーズカップでいきなりの優出で決勝は3着。そのウィナーズカップを含めて今年は6度ビッグを経験している高橋晋也は、北日本ラインで小原佑太に託す。
 「(前回の)高松は自分のなかでは結構良かったと思います。高松終わってからちょっと調子が悪くはなったんですけど、しっかり調子を上げてこられたと思います。(平塚は)初めてですけど、(指定練習で乗って)すごいきれいで走りやすいなって思いました。僕は小原君に任せて、しっかり後ろで自分のできることをして、優勝を狙っていきたいと思います」

<最終日・11R KEIRINグランプリ2020>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 11月の競輪祭で落車に見舞われた脇本雄太(写真)は状態が気になるものの、機動力では他の追随を許さない存在。平原との“夢”のタッグでブレることなく先行でのグランプリ初制覇を目論む。
 「(落車の怪我は)小指の骨折と肩の脱臼だったんですけど、今はもう普通の練習に戻っている。大丈夫だと思います。前夜祭(22日)のあとに練習をやったんですが、落車する前と変化がないくらいのタイムが出せているので問題はないかなと思っています。なんとか戦える状態にはもてこれたかなと」
 2月の全日本選抜で初戴冠。真っ先にグランプリの出場権を手に入れた清水裕友だが、6月の高松宮記念杯からはGIの優出がない。今回は松浦悠士の番手からV争いに加わる。
 「初めてグランプリに出た時は単騎だったっていうのもあって、怖いものなしで走れた。けど、去年は前検日からこう焦っていたというか、入れ込み過ぎて失敗しましたね。今年は3回目なので、ゆっくりゆっくり過ごしながらです。やることはしっかりとやってきたので、今のところは順調だと思います」
 連覇がかかる佐藤慎太郎は、今年も同県の後輩、新田祐大をマーク。さらに守澤太志がラインを固めて一大ラインができあがった。
 「今年は安定した成績は残せたので、(グランプリチャンピオンジャージの1番車の)責任は果たせたと思っています。GIが欲しいとかも言ってましたけど、グランプリには最低でも出たいと思っていたので良かったです。もちろん連覇を目指してここまでトレーニングをしてきました。トレーニングの段階ではそういう風に強く思っていましたが、ここに入った時点では楽しむぐらいの感じでいければいいかなと」