『KEIRINグランプリ2021シリーズレポート』 2日目編

配信日:12月29日

 静岡競輪場を舞台に開催されている輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2021シリーズ(歳末チャリティー協賛)」は、12月29日に2日目を迎えた。メインの「ヤンググランプリ2021(GII)(WINTICKET協賛)」は、北日本ワンツー。高橋晋也に付けた小原佑太が直線で抜け出して1着。優勝賞金524万円(副賞含む)を獲得して、来年の飛躍を誓った。30日がいよいよいシリーズ最終日。優勝賞金1億830万円(副賞含む)をかけた「KEIRINグランプリ2021(GP)」が、ファンの夢をのせてスタートする。また、3日間シリーズの「第14回寺内大吉記念杯(FI)」の決勝は10レースに行われる。
 グランプリシリーズ開催中は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、特別観覧席は初日から最終日まで、一般入場は最終日を事前申し込みによる当選者の方に限らせていただきます。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

ヤンググランプリ出場選手特別紹介
ヤンググランプリ出場選手特別紹介

ヤンググランプリ2021 レース経過

 号砲で内枠の3人が飛び出すが、坂井洋が正攻法の位置を確保。坂井-佐々木悠葵、高橋晋也-小原佑太、山口拳矢、伊藤颯馬、寺崎浩平、町田太我-石原颯で隊列は落ち着いて周回を重ねる。
 青板2コーナーで町田が上昇を開始。バックで合わせて高橋も動き出す。町田が一旦、北勢の後方に下がると、高橋は3番手に戻って町田の動きを睨む。それでも赤板ホームから踏み出す町田に対し、高橋はすかさずダッシュして先に前団を切って待ち構える。その北勢に町田が襲い掛かるが、機敏に石原を捌いた山口が続いてくる。打鐘手前から町田の主導権と変わるが、その番手を今度は高橋が山口をドカして奪い取る。町田の先行に、北コンビが続き、4番手が坂井、伊藤、山口で持つれる形で最終周回へ。力強く逃げる町田を先頭に最終バックを迎えたところで、ようやく抜け出した坂井がまくるも、小原のけん制で失速。この3コーナーから内を突いた伊藤もコースが詰まってしまう。直線に入り、粘る町田を高橋が交わすが、その外を小原が一気に突き抜けた。2着に高橋で北日本ワンツー決着。終始、最後方で動かなかった寺崎は最終バックから猛然とまくったものの、届かず3着だった。


<1R>

望月一成選手
望月一成選手
 望月一成(写真)がスタートを出て、南関ラインが前団に構える。青板のバック手前から上昇を始めた山本直は、望月の様子をうかがい番手の大石剣士の外に併せ込む。後位が併走になった望月は、最終1コーナー過ぎまで誘導を使い、そこからダッシュを利かせて押し切った。
 「もう(前を取って)突っ張りって決めてました。あとはどのタイミング(山本が)来るのかなって思ってました。(大石)剣士さんの弱点というか、(山本は)ああいううまいレース運びでしたね。自分が横をやるとかじゃなくて、相手の隙を突くっていうことでは、自分もマネをしていかないと。そのなかで自分の得意な形にもっていけるように。今回から新車にして、その感じも悪くないです。来期は1班なんで、1班に強いヤツが来たなって思ってもらえるように」
 望月後位を大石と併走のまま直線に入った山本直が、2着に流れ込んだ。
 「青板のバックから自分が(上昇して)行ってあんな感じだったんで、切れれば良かったけど(望月に突っ張られると思った)。(最終)1センター、3コーナーで(外併走で)ちょっと遅れてピンチだった。あれで差しにいければ良かったですけど。(内容として)後味は良くないですね」

<5R>

内山雅貴選手
内山雅貴選手
 打鐘で押さえて出た内山雅貴が先行態勢を取るが、林慶次郎の巻き返しが早い。カマシ気味に出た林が、主導権を奪って最終周回へ。3番手に内山が飛び付き、松岡篤哉も踏み込む。内山は松岡をけん制しながら車間を詰めるが、仕掛けられない。林を利した番手の柳詰正宏が、9月以来久々の勝ち星を挙げた。
 「ああいう展開は予想していた。昨日(初日)の走りを見たら林君の調子が良さそうだった。だから出切ったらそんなにまくって来る選手もいないだろうと思ってました。自分がもっと車間を空けて、内山君をけん制できれば良かったけど。ラインが2車っていうのもあった。今日の1着はいいクスリになるし、この1着は(林)慶次郎君のおかげです」
 3番手確保もまくりに出られなかった内山雅貴(写真)は、後ろの中村浩士に申し訳なさそうに振り返る。
 「今日(2日目)は先行することしか頭になかった。流れをもらえなくて先行ができなかった。(3番手に入ってからは)車間を切って一気に行こうと思ってたんですけど、松岡さんが来たんでそこで車間を使っちゃった。後ろの人(中村)に申し訳ないのが一番です」

<8R>

森田優弥選手
森田優弥選手
 切った三谷竜生を山田英明が押さえて、その上を森田優弥(写真)が出て先行策。森田、鈴木竜士で出切り、山田は3番手で粘り川口直人とからむ。浮いた川口直の外を6番手の三谷がまくる。鈴木が三谷をブロックすると、川口直をさばいた山田がその内を踏む。後続のもつれをしり目に、森田が二の足で押し切った。
 「踏み出した感触は昨日(初日)と同じ感じでいけたけど、昨日より風が強かったんで思うように踏み上がっていかなかった。それで(鈴木)竜士さんに迷惑を掛けてしまった。ビビらずに先行態勢に入れているんで、気持ちの部分ではいいのなかと」
 前々に踏んだ山田英明は、3番手確保から瞬時に鈴木の内を踏んで2着に追い込んだ。
 「切って誰も来なかったら先行だし、来たらその場所にもよるけどっていう感じでした。引いてもないし、3番手にこだわってしまった。あれだったらもう1車前でも良かったかもしれないですね。行こうかと思ったら、自分の出が悪かったんで後ろの坂本(亮馬)君に迷惑を掛けてしまった」
 近畿勢を追った川口聖二は、直線で外を強襲して3着。
 「森田君が出て流すようなら、叩こうかと思ってた。でも、いいピッチでした。山田さんが川口(直)さんのところで粘ってたんで、そこと三谷さんのところを見てしまった。自分は昨日(初日)セッティングを変えてすごく余裕があったけど、タイミングが合わなかった。でも、3着に届けているんでいい方かなと」

<9R>

隅田洋介選手
隅田洋介選手
 中四国勢に続いた塚本大樹を張りながら、渡邉雄太が切った月森亮輔を抑えて先頭に立つ。一度は渡邉ラインの3車が出切り、4番手に引いた塚本だったが、月森と重なると3番手の渡部幸訓の横に追い上げる。中団がもつれて、脚力を温存した隅田洋介(写真)には流れが向く。最終2コーナー手前から踏み出すと逃げる渡邉をスピードの違いでとらえて連勝で優出を果たした。
 「1回動いて行けるところからって考えていましたけど、体が動かなかったですね。ホームの向かい風がキツくて、掛かり切る前に行きたかったんですけど。最悪の展開になってしまったけど、結果は出たので悪くない」
 隅田マークの杉森輝大は、4分の3輪差の2着で茨栃ワンツー。
 「前がゴチャついてくれたので展開が向きましたね。感覚的にニュートラルに入らなかったというか、最後も踏めれば良かったんですけど。ちょっとズレがあります。自転車とかセッティングやシューズもいろいろと変えたり試したりしている。決勝はもう少しセッティングを変えてみます」
 遅れ気味の中田健太は岡村潤に張られて、逃げた地元の渡邉雄太が3着に残った。
 「後ろは(岡村)潤さんだったので、(塚本を)キメめてくれると思った。自分は先行するだけって考えていました。ホームの向かい風がすごすぎて思うように駆けられなかった」

<10R>

荒井崇博選手
荒井崇博選手
 打鐘で先頭に出た吉田有希が主導権。3番手に入った桐山敬太郎だったが、1車押し上げて諸橋愛と吉田後位を取り合う。もつれたところを野原雅也が仕掛けて出る。諸橋が桐山をキメて番手を守るが、吉田は野原に叩かれる。近藤龍徳は遅れて、吉田は番手に入る。7番手の小川真太郎は、最終2コーナーからのまくりで前団に迫る。吉田も番手から踏み込むが、小川に乗った荒井崇博(写真)が中のコースを突き抜けた。
 「読みは良かったんですけどね。(野原)雅也はキレがあるんで、(最終)ホームから絶対に行ってしまうと思った。ただ、(自分たちが)あの位置とは思ってなかった。桐山が上手だった。自分はコースを間違えなくて良かった。今日(2日目)はコース取りだけです」
 桐山に内からからまれた諸橋愛は、番手をキープして叩かれた吉田を迎え入れる。シビアな消耗戦になったが、最後はしぶとく伸びた。
 「油断していた訳じゃないけど、(桐山にすくわれたところは)虚をつかれた。あれで一気にエネルギーを使いました。あの辺は技術でなんとかしたけど、その分最後は伸びなかった。疲れました」
 7番手からまくった小川真太郎は、直線で外を踏んでなんとか優出圏内に届いた。
 「強い同士(野原、吉田)でやり合ってもらって、理想通りになった。もつれて(まくって)行きやすくなった。今日(2日目)はアップした時から初日よりも感触が良かった。(9レースの)隅田(洋介)さんを見ていて、あそこからならまくれるかなっていうのもあって行きました」

<11R>

小原佑太選手
小原佑太選手
 昨年のヤンググランプリに続いて、今年も北日本は同じ顔。高橋晋也とともに小原佑太(写真)が、この舞台に帰ってきた。ただ、違ったのは前後の並び。小原が前でチャンスメイクをした昨年に変わり、高橋に前を委ねた。
 「(高橋)晋也さんは昨年の時点で、来年は前でやるとおっしゃっていた」
 1年前の約束だった。そしてその高橋とワンツーを結実させた。
 「(ゴールして自分の優勝はわかったので)あとは晋也さんがどれくらい残ってるかなと思った。そしたら晋也さんが2着だったって言ってたので、無事にワンツーだったんだって」
 右手を高く突き上げたウイニングランに高橋が寄り添って勝者をたたえた。
 レースは町田太我の主導権。もつれた番手に飛び付いた高橋が山口拳矢をさばいて番手を奪い、小原が続いた。
 「町田君が行くところを飛び付いてと。(高橋が)しっかり飛び付いた時点で、ボクもちょっと車間を空けてた。それで誰か来たらなるべく合わせるような感じでと思っていたんですけど、晋也さんが強かったですね。あそこまできたらなるべくワンツーという気持ちもあった。(最終)3コーナーで自分が外に持ち出したら、晋也さんも踏み出していた。これだったら大丈夫だと思った」
 普段は持ち前のスピードを生かして風を切り、北日本勢をけん引している。それだけに不慣れな番手回りだったことは想像に難くないが、心憎いまで落ち着きはらった立ち回りだった。4番手からまくる坂井洋を阻むと、最終3コーナー過ぎに外に持ち出しVロードを確保。あとは高橋の余力を見極めながら抜け出した。
 「今年に入ってからGIIを走らせていただけるようになった。やっぱりGIIになると、FI、GIIIよりも全然上なものと感じた。共同通信社杯の時に準決までいけたんですけど、その舞台で優勝しないとグランプリもないですし、しっかりそこで勝ち切るという強い気持ちがないと。(来年の競輪の目標は)グランプリに乗れるくらいの賞金であったり、結果を出せるように頑張りたい」
 一昨年7月にデビューした時からナショナルチームに所属している小原にとっては、競輪と競技ともに力を注いできた。
 「(競技の目標はパリ五輪に向けた)オリンピックポイントが来年から始まるので、しっかり世界選であったり、ネーションズカップで勝って、ポイントを積み重ねていいきたい」
 今年のグランプリは佐藤慎太郎、守澤太志。北日本勢は追い込み選手が2人で機動タイプは不在。高橋とともに。来年はグランプリの舞台に立ちたい。
 町田の番手を奪取した高橋晋也が2着。
 「町田君が強かったです。ドンドン伸びて行ってキツかったですね。結果(小原と)ワンツーだったので良かったですけど。1回動いてから誰も来なければ駆けるつもりで、町田君が来れば番手にいくって決めていました。去年は小原君が頑張ってくれたけど、迷惑を掛けてしまった。今年はその分もって頑張りました。優勝したかったですけど、最高のワンツーです。自転車もマッチしてきて良くなってきている」
 単騎の寺崎浩平は9番手まくりではさすがに前が遠かった。力を見せたものの3着。
 「2回目に切ったラインについていこうと思ったんですけど、赤板で思ったよりもペースが上がってしまった。ゴチャついたのもあっていったん、落ち着いてからと思いました。でも、一番やっちゃいけない展開でした。最後は意外と伸びたけど、もうちょっとなめるようにいきたかった。ちょっと落車だけが怖くて外々をいってしまいました。感触自体は思いのほか良かったので、収穫はあったと思います」

<最終日・11R KEIRINグランプリ2021>

平原康多選手
平原康多選手
 現在の獲得賞金ランク1位の松浦悠士は、このグランプリで優勝すれば年間獲得賞金の記録を塗り替える。前回の地元、広島記念を完全Vで弾みをつけてグランプリを迎える。
 「(グランプリは)3回目っていうこともありますし、だいぶ要領もわかってきた。(ここまで)いい感じにこられたんじゃないかなって思います。(清水)裕友とも何回か練習できました。今回は去年、一昨年よりもいい調整ができたんじゃないかなって思います」
 メンバー最多の12回目のグランプリとなる平原康多(写真)は、吉田拓矢、宿口陽一との関東連係。後輩の成長を肌で感じた1年だった。
 「高松宮記念杯前の骨折からだいぶ連続で転んでしまって、全然立て直せない状態が続いた。けど、だいぶ体が良くなってきて寬仁親王牌で結果を出すことができた。とくにやっぱりヨシタク(吉田)が今年成長してくれた1年だったと思う。それに引っ張ってもらう形になりました。(競輪祭のあとは)体調が悪くなってしまったけど、後半はしっかり戻ってきました。(いままでは)競輪祭が終わって調子崩したことなかった。けど、逆に1回崩れたことで、いまはだんだん上がってきている」