『KEIRINグランプリ2021シリーズレポート』 最終日編

配信日:12月30日

 静岡競輪場を舞台に開催された輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2021シリーズ(歳末チャリティー協賛)」は、12月30日に最終日が行われた。優勝賞金1億830万円(副賞含む)をかけた「KEIRINグランプリ2021(GP)」は、単騎の古性優作がまくりで優勝。賞金王の座に就いた。また、「第14回寺内大吉記念杯(FI)」の決勝は、同県の山田英明を目標に荒井崇博が抜け出して優勝を飾った。

グランプリレース出場選手特別紹介
グランプリレース出場選手特別紹介
寺内大吉記念杯決勝ゴール
寺内大吉記念杯決勝ゴール
寺内大吉記念杯優勝インタビュー
寺内大吉記念杯優勝インタビュー

KEIRINグランプリ レース経過

 号砲が鳴ると内枠勢が飛び出す。郡司浩平が誘導員の後ろを取り、郡司目標の佐藤慎太郎-守澤太志の北日本勢が続く。中団は清水裕友-松浦悠士の中国コンビが占め、後方は吉田拓矢-宿口陽一-平原康多の関東勢に、単騎の古性優作が最後方。この並びでしばらく静かな周回を重ねる。
 赤板前の2センターで郡司が誘導員との車間を切りはじめて別線の動きに備えると、清水裕友-松浦悠士が踏み上げる。赤板で郡司は清水を突っ張ると、中国コンビに続いていた吉田がすかさず主導権を狙ってスパート。吉田-宿口-平原に単騎の古性まで続き、郡司は5番手、清水は8番手で打鐘が入る。先頭に立った吉田はペースを緩めることなくブンブン飛ばす。最終ホーム前の4コーナーから清水が反撃を開始するが前は遠い。清水は2コーナーでようやく古性の後ろまで進出したが、2コーナーを立ち直ったところからほぼ同時に吉田の番手の宿口、4番手から古性が発進。スピードは古性が断然優っていて、あっという間に前団を飲み込み3コーナーで先頭に立った。清水は古性と車間が空いてしまい、更に3コーナーで平原に捌かれて後退。古性の脚勢は最後まで衰えず、後続に2車身の差を付けてグランプリ初出場ながら初Vを達成した。直線半ばで宿口を交わした平原が2着に入り、4コーナーから平原を追う形で伸びた郡司が3着。


<5R>

大石剣士選手
大石剣士選手
 赤板2コーナーで切って出た大石崇晴が、木村弘を受けて3番手に入る。前受けから8番手に置かれた大石剣士(写真)は、車間を詰める勢いで打鐘の4コーナーからスパート。大西健士は大石剣の加速に付け切れず、逃げる木村を1人でとらえた大石剣が地元シリーズを白星で締めた。
 「風も強いんでスタートはなるべく前でと思ってました。木村さんの踏み出しが良くて車間が空いちゃったけど、ジャンくらいからは踏んでいました。出ていく時のスピードは前まで行けるかなっていうのがありました。今回は前の2日間、いままでヨコをやってなかったのが出てしまった。それで超消化不良でした。勉強をさせてもらいました」
 大石剣のまくりを佐伯亮輔が追いかけて、直線で外を踏んだ山本直が2着。
 「(佐伯は)切って後方になったけど、流れをつくった結果だったんでナイスレースだった。あれでシャッキッと(大石剣に)追いつければワンツーができたかなっていうのもあります。自分は昨日(2日目)もいい感じだったんですけど、今日はハコだったんで」

<6R>

松本秀之介選手
松本秀之介選手
 酒井雄多が赤板2コーナーから襲い掛かる。先行態勢に入っていた三好恵一郎も踏み込むが、酒井が叩いて主導権を奪う。松本秀之介(写真)は後方で仕掛けを待つことなく、打鐘の4コーナーから反撃。開坂秀明のブロックを乗り越えた松本が連勝のゴール。
 「風が強かったので、前から組み立てました。引いて一発狙おうと思っていたら、前が踏み合ってくれて短くなったので行きやすくなりました。抵抗されましたけど、しっかり外を踏みながら内も気にしてブロックを受けないように走りました。初日が悔やまれますけど、2日目、最終日と修正できたので良かったです」
 直線の入り口で酒井に当たられた瓜生崇智だったが、きっちりと松本に続いて2着。
 「酒井君も結構、掛かっていたんですけど、(松本は)その上を行くんだからさすがっすね。最後は酒井君が内にいたので気にしながらでした。でも、抜ける感じはまったくしなかったです」

<7R>

野原雅也選手
野原雅也選手
 併走になっていた3番手の外から内山雅貴が仕掛けて、月森亮輔は野原雅也(写真)の内をすくって進出する。打鐘の3コーナーで内山が主導権を握り、月森は番手に入り、二藤元太。連結を外した三宅達也が追い上げて3番手をキメにかかって二藤が最終ホームで落車する。避けた野原は2コーナーからまくり一気。柴崎俊光は続けず、野原が力の違いでのみ込んだ。
 「あんまり突っ張りは考えてなかった。なにが起きてるのかもわからなくて、前がゴチャゴチャしていいるのは見えた。脚の感じは悪くなかったんですけど、今回は新車っていうのもあった。自転車の進みがあんまり良くなかった。昨日(2日目)くらいからなんとかセッティングが出たんで、あとはかみ合ってくれればと思います」
 渡部哲男は、最終3コーナー過ぎに野原を追うように外を踏んで2着。
 「あんなにゴチャゴチャすると思わなかった。僕は3番(二藤)の落車があったんで単独になった。でも、あれがなかった厳しかった。前の2人には申し訳ないけど、西川(親幸)さんもいましたし、外に切り替えた。今回は前回の小倉に比べて全然良かった。競輪祭、地元の松山記念とあったんで、(前回は)疲れが取り切れないまま走った感じでした」

<8R>

吉田有希選手
吉田有希選手
 3番手にいた吉田有希(写真)が赤板2コーナーから仕掛けるが、誘導を交わして態勢を整えていた南潤は突っ張る。吉田は外に浮いて、南の先行で最終周回。村田雅一のブロックを受けた吉田だが、再度2コーナーの下りで仕掛ける。連結を外していた鈴木竜士が、バックでまくり気味に追い上げる。吉田がねじ伏せて近畿勢をのみ込む。切り替えた村田雅一が鈴木をさばいて詰め寄るも、吉田が振り切った。
 「中団になったので桐山(敬太郎)さんが来る前に動こうと思っていました。横に並ばれたら下げるしかなくなる。南さんに合わせて踏まれましたけど、引けないと思って勝負しました。(最終)1センターでスピードが落ちなかったので行けるかなと。2コーナーで(南が)タレてきたのでなんとか行けました。やっぱり難しいですね。上位の人は強いしうまい。昨日(2日目)もダメでしたし、自分は脚力もまだまだですね。来年はヤンググランプリに出られるように頑張りたい」
 気持ちの入った南の積極策を利した村田雅一は、追い込むも吉田は交わせず。
 「(南)潤のダッシュが良くて、普通に口が空いてしまいましたね。(吉田が)止まったと思ったんですけど。強かったです。自分は(坂本)亮馬君にもすくわれてしまってキツかった。あれがなければ、もう1回当たれていたかも。今回は3日間ともちょっと重たかったですね」

<9R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 押さえて出た林慶次郎をすかさず叩きに出た松井宏佑(写真)だったが、林が全開で踏むと冷静に空いた3番手に入って態勢を整える。後続を確認した松井は、最終2コーナー手前からまくりを打つ。あおりもあって出足は一息だった松井だが、さすがの加速力で勝ち切った。
 「先行する気満々だったんですけど。林君が切ってから行こうと思ってたら、いい感じで林君が踏み上がった。無理やり叩いてもラインに迷惑を掛けるかなっていうのもあったし、(3番手が)空いているのもわかった。(入ってからは)後ろから来る選手を警戒しながらだったんですけど。久々のまくりで行くタイミングだったり、バックを踏んでしまったりと…。ヤバいかなと思ったけど、下りでいけました」
 三谷竜生のまくりをけん制した岡村潤が流れ込んで南関ワンツー。
 「(松井)宏佑はああいう(まくる)展開が得意じゃないので、自分としても判断が難しかった。我慢して付けられました。今回からフレームを昔の良かったころに戻して、感覚的に良かった。収穫ですね」

<10R>

荒井崇博選手
荒井崇博選手
 赤板2コーナー手前で先頭に立った森田優弥がペースを緩めると、後方の山田英明が打鐘の3コーナー過ぎに仕掛ける。佐賀コンビが主導権を奪取して最終ホームを通過する。5番手の渡邉雄太がまくりを打つが、逃げる山田の掛かりがいい。番手の荒井崇博(写真)は、後続との間合いを見極めて直線手前から踏み込む。渡邉、外を強襲する隅田洋介らを退けて、今年5度目の優勝を遂げた。
 「ヒデ(山田)のおかげですね。森田もガンガン行くタイプじゃないって、ヒデも分析していたみたい。一番いい形にはなったけど、ワンツーが良かったね。でも、(渡邉)雄太のスピードが良かったんで、あそこまでいってもらって優勝しないわけにはいかないと思った。今年は前半が悪すぎたけど、後半は納得いく成績が残せたから来年につながるかなと。来年はどっか1回でもいいから、GIの決勝に乗りたいね」
 最終バックで7番手になった隅田洋介は、浮いていた川口聖二を2センターで弾いて直線猛襲。
 「他力本願すぎましたね。余裕はあったけど、山田さんがいった時にボーっとしてしまっていた。半周も踏んでいないし伸びたといってもね。もったいない。スンナリ中団は苦手ですね。でも、この感じなら来年はGIに行けそうかな」
 地元Vを狙った渡邉雄太は、最終2コーナー過ぎに5番手からまくるも前団をとらえることはできなかった。
 「もう森田君が先行すると思っていた。初手で山田さんが前を取ったからどうするのかなって思いましたけど、自分は森田君ラインの後ろが取れたので。(山田に)行かれちゃったので、あとは自分のタイミングで行くしかないと思いました。まくり切れていないですけど、スピードには乗せられた」

<11R>

古性優作選手
古性優作選手
 「近畿が1人になって心細かったんですけど、近畿の選手として恥ずかしくない走りができればと思ってました」  単騎でのグランプリ。関東勢は3車で強固な布陣。中国コンビは3年連続での連係になり、郡司浩平には北日本勢が付いて3車のラインができあがった。ただ、古性優作(写真)は攻める気持ちを失ってはなかった。
 「自分の力はどんなもんかと思って一生懸命、仕掛けました。脇本(雄太)さんのおかげでGIを獲らせてもらったけど。自分の力でも獲れるって証明したかった」
 初戴冠となった8月のオールスターでは、脇本が先行策で別線を完封。番手を回った古性が差し切った。「近畿のラインに助けられた1年だったなと思います」と、グランプリ前に今年を振り返った。それだけに1人で初のグランプリは、近畿勢の代表として、すべてを背負う覚悟だった。
 「近畿勢の先輩方もみんな連絡をくれました。そのプレッシャーを楽しんで走るのは、二流選手だと思ってます。そのプレッシャーをしっかり背負って走れたので、近畿勢のみなさんに感謝したい」
 上昇した清水裕友を阻んだ郡司が、関東ラインの3車を受ける。関東勢に続いた古性は郡司と一瞬、重なったものの、郡司が下げて単独で4番手をキープした。妥協を許さない古性の一戦、一戦の積み重ねが生んだポジションだった。逃げる吉田拓矢の番手から宿口陽一がまくりに出るとほぼ同じタイミングで、古性が踏み込む。これ以上ないタイミングは、12年、憧れの村上義弘が単騎でグランプリを初めて獲ったあの時と姿が重なった。
 「(最終)ホーム前はいい感じで間合いが取れてたんですけど、ちょっと詰まりすぎてしまった。詰めすぎてしまったのでヤバいなと思った。だけど、とにかくここしかないかなと思って、1センターくらいから思い切りいきました」
 番手まくりの宿口陽一を最終3コーナーでのみ込むと、後続の影はない。それでも18、19年と記念を制覇している静岡バンクの直線は長く感じた。
 「なんで(ゴールが)来えへんのかなって。すごくファンのみなさんの応援があって、直線長かったんですけど。すごく声が聞こえてきた。なんか不思議な感覚だった。本当にファンのみなさんに感謝したいです」
 終わってみれば2車身差の完勝だった。ゴールした古性が、ファンに両手が上げてアピール。大阪から初のグランプリ王者が誕生した。
 「来年は自分の力で、いっぱい近畿勢がグランプリを走れるように。自分がしっかり頑張っていきたいなって。デビューした時からグランプリを見てきましたし、まさか獲れるとは思っていなかった。来年は(グランプリチャンプの)1番車に恥じないようなレースで、しっかり近畿勢を引っ張っていける選手になりたい」
 “ひとりじゃない”。近畿に育まれ賞金王に就いた古性は、これからも計り知れないプレッシャーから逃げることなく、仲間ともに歩んでいく。
 関東3番手の平原康多は、宿口をピタリとマーク。単騎の古性にスイッチすることなく清水を張って直線で追い込んだ。
 「悔しいですけど、出し切って負けた。宿口もやることやってくれましたし、あの上を行かれた。自分があの上を行くわけにはいかないですし、古性が強かったですね」
 最終バックではコースがなかった郡司浩平は、外の松浦悠士を弾くも中のコースを踏んだ。
 「古性君はヨコが強いですし、あそこ(4番手)でやっても仕方ないですからね。やるなら(吉田の)番手でって思っていました。古性君もサラ脚でしたし、まくっていくだろうと思ったんですけど。清水君に締められて苦しくなりました。1着を取るためにレースをつくらないといけなかったですし、ラインとしても優勝を狙える仕掛けができなくて悔しい」

2022年のG戦線は1月4日~7日の日程で開催される立川競輪場開設70周年記念「鳳凰賞典レース」からスタートします。今開催は、新年のグレードレースを飾るにふさわしい豪華なメンバーが揃いました。S級S班からは、平原康多、守澤太志、清水裕友、吉田拓矢の4名が、地元東京S級1班からは河村雅章、柴田洋輔が出場します。他にも新田祐大や浅井康太、渡邉雄太など各地から自力型の強豪選手が参戦予定です。

12月26日時点の出場予定選手データを分析した、「立川競輪GIII 鳳凰賞典レース」の出場メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

プロスポーツ号外版(表)は"こちら"
プロスポーツ号外版(裏)は"こちら"