『KEIRINグランプリ2022シリーズレポート』 最終日編

配信日:12月30日

 平塚競輪場を舞台に開催された輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2022シリーズ(歳末チャリティー協賛)」は、12月30日に最終日が行われた。輪界のトップ9よる「KEIRINグランプリ2022(GP)」は、8番手から仕掛けた脇本雄太が、まくりで前団をとらえてV。グランプリ初制覇で優勝賞金1億2380万円(副賞含む)を獲得。18年の三谷竜生の記録を大幅に塗り替えて、初の年間3億円超えを成し遂げて22年の賞金王に輝いた。また、「第15回寺内大吉記念杯(FI)」の決勝は、地元の松井宏佑が人気に応える番手まくりで優勝した。


グランプリ出場選手がバンクで意気込みを語る

藤原紀香さんのスペシャルトークショー

寺内大吉記念杯決勝ゴール

寺内大吉記念杯表彰式

KEIRINグランプリ2022 レース経過


 号砲が鳴ると郡司浩平、新山響平、平原康多が飛び出すが、新山がスタートを決めた。新山-新田祐大-守澤太志-佐藤慎太郎の北日本勢が前を固め、その後ろは単騎の郡司、平原、松浦悠士となり、脇本雄太-古性優作の近畿勢が後方に待機。
 3周回目に松浦が踏み上げて新田に並びかけると、新田はすんなり車を下げた。新山、松浦、新田-守澤-佐藤、郡司、平原、脇本-古性の並びに変わる。しばらく動きはなかったが、赤板を迎えると新田が松浦の外に追い上げる。これを見た新山は誘導員を交わして先行態勢に入った。新山の後ろは新田が取り返し、新山-新田、松浦、守澤-佐藤、郡司、平原、2車身ほど車間が空いて脇本-古性の態勢でジャンが入る。3コーナーで脇本が反撃を開始。最終ホームで脇本は郡司の外まで番手を上げ、守澤が松浦の外に追い上げた。脇本が素晴らしい加速で前団に襲い掛かると、2コーナーで番手の新田が自力に転じるが、脇本はあっさり新田を飲み込み、最終バック線の手前で先頭に躍り出た。脇本にはきっちり古性が続き、2コーナーを立ち直ったところから車を外に持ち出していた郡司が近畿勢を追いかけて最後の直線へ。古性は渾身の力を振り絞って脇本を抜きにかかるが、脇本が4分の1輪凌いでグランプリ初優勝を飾った。脇本は輪界初の3億円プレイヤーに輝いた。郡司は懸命に迫るも3着まで。






<5R>

岡崎智哉選手
岡崎智哉選手
 赤板1センターで出た鈴木薫を石井洋輝が押さえて打鐘で主導権を握る。鈴木は4番手を確保して、前受けから7番手になった岡崎智哉(写真)は動けず最終ホームを通過する。後続を引きつけながら、石井が徐々にペースを上げて逃げる。2コーナーまくりの鈴木は不発。バックから踏み上げた岡崎がまくり切って1着も、複雑な表情でこう振り返る。
 「ここ最近、ピリッとしたレースができてないんで、先手を取ってモガいてと思ってた。(前を取れば)ああなるのは目に見えていたんで(前は取りたくなかった)。それでもジャンと(最終)ホーム、行けるところはあった。けど(まくりの)こういうレースが現状ですね。(悪い原因が)イマイチつかみきれてない。とにかく頑張って練習して、前の舞台に戻りたい。やっていくしかない」
 石井の先行を利した櫻井正孝、直線で並ばれた岡崎は止められず2着。
 「石井君も頑張ってくれたし、脚は削られながらも援護したつもりなんですけど。体調も良くないし、実力、技術不足でした」

<7R>

松川高大選手
松川高大選手
 中団から切りに来た小原佑太を太田竜馬が突っ張る。いったん流れが落ち着くが、赤板2コーナー過ぎから再度、太田、小原、朝倉智仁のダッシュ勝負。小原が主導権を奪い、和田圭は付け切れない。小原後位は太田と朝倉での併走で最終周回。久木原洋をさばいた松川高大(写真)が単独の4番手。2コーナー過ぎに太田、朝倉が落車して、避けた松川が逃げる小原を目標に踏み込む。後続との間合いを取りながら、小原を交わした松川が1着。
 「1個のラインを突っ張って中団を取れればと思ってたら、(太田)竜馬もスイッチ入っちゃってましたね。(前で太田が朝倉と併走になって)自分は久木原(洋)さんを飛ばして、(太田が)引いてもいいようにと。そしたら竜馬もハコにこだわってた。それで危ない感じもしました。自分は余裕をもって空けてたから、落車が避けられた。自転車も進んでいるし、だいぶいいですね」
 小原を見失った和田圭は、松川、太刀川一成の後ろから追い込んだ。
 「朝倉君が先行しそうな感じだと思った。それで(小原は)先に切って出させてっていうのだったと思う。太田君が強いんで、朝倉君とやり合わないで太田君を後方に置きたかった。(連結を外したあとは最終)2コーナーで緩んでいたから行けるかなと思ったけど、見ちゃいました。(今シリーズは)まったく良くなかった」

<8R>

上吹越俊一選手
上吹越俊一選手
 山岸佳太にフタをされた原田亮太は、後方に下げて赤板を迎える。2コーナーで原田が仕掛けると、4番手の山岸も合わせて踏み込む。山岸が出切り、最終ホーム過ぎに原田1車を受けて番手に入る。別線の踏み合いを後方で冷静に見極めた中川誠一郎は、1センターからまくって出る。番手から出る山岸を中川がスピードの違いでのみ込んで、上吹越俊一(写真)が続く。九州コンビの直線勝負は、上吹越が差し切った。
 「(打鐘で)もしかしたら駆けるかもって思ったんですけど、(中川は)引いて一発で行ってくれたので付けやすかったですね。抜けたのはたまたまです。初日、2日目と単騎で流れ込むだけだったんですけど、今日(最終日)は前を抜けた」
 2日目にまくりで久々の勝ち星を挙げた中川誠一郎は、シリーズ最終日も持ち前のスピードを発揮して復調をアピールした。
 「ちょっともう駆けた方がいいのかなって8割方、思ったんですけど。見たら2人(原田、山岸)とも踏んできていたので1回引いた。佐藤(和也)に内から来られてしまって、ワンテンポ遅れてしまったんですけど。(和田)真久留が降りたのが見えたので、まくりに行きました。ちょっとどうかなって思ったんですけど、バックからは流れてくれた。やっとまともに走れるようになってきた」

<9R>

瓜生崇智選手
瓜生崇智選手
 前受けの太田海也は誘導との車間を空けて、赤板目がけてスピードを上げる。中村隆生の上昇も遅く、太田がそのまま主導権をキープする。中団は南関勢が確保して、6番手の柴崎淳は最終2コーナー手前からまくる。4番手から嶋津拓弥も合わせて、前団に好スピードで迫る。しかしながら、瓜生崇智(写真)がブロック。別線の反撃を阻んだ瓜生が太田を差し切った。
 「(太田)海也とは初連係だったので、ダッシュとかどのくらいかわからなかった。すごく強かった。フォームもきれいですね。僕も仕事ができて良かった。昨日(2日目)が不甲斐ないレースだったんで、なにがなんでも仕事をして2022年を締めくくりたいと思ってました。各々の仕事をして、ラインでワンツーだったので最高です。ここで負けるわけにいかなかったし、太田君のおかげです」
 突っ張りの腹を固めていた太田海也は、思惑通りの組み立てで風を切った。
 「今日(最終日)は自分の頭の中では、突っ張り以外は考えてないくらいの感じでした。しっかり突っ張りをやり切ろうと。(前回の)高松の時に岡山の先輩に教えてもらったことを改善して発揮できたかなと。あれで1着を取れなかったので、もっと勉強していきたい。でも、手ごたえは感じたので、体力だったりもっと底上げをしたい」


<10R>

松井宏佑選手
松井宏佑選手
 青板3コーナー過ぎから徐々に誘導との間隔を取った北井佑季が、赤板からペースを上げてレースを支配する。佐々木豪は後退するが、今度は4番手から畑段嵐士が仕掛ける。北井は畑段も合わせて、松井宏佑(写真)も番手を守る。南関勢の布陣は崩れず、最終ホームを通過。4番手から再アタックを試みた畑段に、松井は2コーナーから番手まくりで対応。和田健太郎が続いて、もつれたその後ろで浅井康太が落車。松井が詰め寄る和田を退けて優勝。
 「自分にできることをしようと思っていました。北井さんはどんな形でも主導権を取ってくれるって信じていた。誰も出させない力強い走りだった。あの展開だったら誰か追い上げてきて狙われるかなって思ったんですけど、しのげた。(今年は)もうちょっといい結果が欲しかったし、モヤモヤしていたんですけど。後半になってナショナルチームをやめてからは、うまく気持ちを切り替えられた。それで競輪でも結果を残せるようになってきたと思います」
 畑段、南修二と重なるシーンもあった和田健太郎だが、冷静な立ち回りで2着に入った。
 「北井君が(佐々木を突っ張ったあと)ペースを落とさなかったから、松井君も耐えられたと思う。(松井が番手から出ていったところは)今回は南君に決められっぱなしだったので対処できるように。締め込まれても返せるようにって思っていました」
 佐々木の余力を確かめるように最終バック過ぎからインを進出した小倉竜二は、4コーナーで浅井との接触もあって離れた3着。
 「(南関勢に)前を取られたら、ああなりますよね…。もう自分はあれで精いっぱい。自分のなかではまっすぐ走っていた。(自分と南で浅井を)サンドイッチした感じですかね。(佐々木には)1回は仕掛けて欲しかった…」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 新山響平がスタートを出て、4車の北日本勢が前団に構える。しかしながら、松浦悠士が新田祐大に併せ込む。新田が追い上げて赤板を迎える。先行態勢の新山に番手を死守した新田、松浦、守澤太志、佐藤慎太郎の隊列になる。郡司浩平、平原康多が6、7番手。脇本雄太(写真)は、打鐘の3コーナーから車間を詰める勢いでスパート。新山の掛かりも悪くないが、脇本が抜群の加速で襲い掛かる。松浦と守澤が最終1センターでもつれ、新田が番手まくりも脇本が一気。バック手前で新田をのみ込んだ脇本が、古性優作との直線勝負を制した。
 「松浦君の動きを冷静に見ることができました。自分が行きたいところでしっかりと動くことができたのがポイントだった。(松浦の動きは)まったく想定してなくて、これで僕にもチャンスがあるなって思いました。ちょっと緊張で手が震えていたけど、古性君を信頼して仕掛ければワンツーが決まるかと。(昨年の)オリンピックが終わって、自分の満足いく結果が生まれなかった。その悔しさを日本の競輪でしっかりリベンジしたいと思ってた。このグランプリで晴らすことができた。去年グランプリに出られなかった分も、今年はしっかりとグランプリで優勝するっていう目標を達成できてすごくうれしい」
 脇本との連結を壊すことなく直線を迎えた古性優作は、ゴール前でのハンドル投げに持ち込んだが2着。グランプリ連覇はならなかった。
 「(脇本は)いままでで一番強かったんじゃないですかね。もう脇本さんが出切った時点で、自分も出し切っていました。とにかく脇本さんが強かった。本当に頼もしかった。北日本ラインが長くて強かったんですけど。村上(義弘)さんが2023年、安心できるレースがしたかった。今年はお互いに2個、2個(GIを)獲って、最後も(近畿で)獲れた。近畿の年だったと思うし、来年もそうできるように」
 地元の郡司浩平は、最終1センター過ぎに近畿勢にスイッチ。4コーナーでは射程圏に収めるも、近畿の2人に割って入ることはできなかった。
 「(スタートで)新山君が取りに行ったので、自分は内枠でしたしその後ろからって感じでした。道中の松浦君の動きはさすがだなって。僕だったらできなかったと思う。たぶん新山君も松浦君の動きがあったので、赤板のところは踏みたくなかったと思うんですけどハイペースになったのかなって。(脇本が)あそこで来るかっていうタイミングできた。自分も仕掛けたかったんですけど、単騎でしたしまだ早いかなっていうのもあった。その後ろをって見たんですけど、古性君も隙がない選手なので、そこに飛び付くっていう判断もちょっと。最後は苦し紛れに外を踏みましたけど、すんなりの古性君が差せていない。力の差を感じました」

次回のグレードレースは、1月4日~7日の日程で立川競輪開設71周年記念「鳳凰賞典レース」が開催されます。
新田祐大、平原康多、郡司浩平、佐藤慎太郎、新山響平のSS班5名をはじめ、昨年までSS班だった清水裕友、吉田拓矢らが参戦する超豪華メンバーによるV争い。 勝ち上がり戦から激しいスピードバトルが繰り広げられるのは必至です。ビッグレースにも見劣りしない、目が離せない4日間です。

12月25日時点の出場予定選手データを分析した、立川競輪「鳳凰賞典レース」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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