『KEIRINグランプリ2023シリーズレポート』 2日目編

配信日:12月29日

 立川競輪場を舞台に開催されている輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2023シリーズ(歳末チャリティー協賛)」は、12月29日に2日目が行われた。メインの「ガールズグランプリ2023(GP)」は、3番手からまくった佐藤水菜が後続を離してグランプリ初制覇。優勝賞金1330万円(副賞を含む)を獲得して賞金女王に輝いた。また、「第16回寺内大吉記念杯(FI)」では、準決で熱戦が展開され、井上昌己、村上博幸、小林泰正が1着で決勝進出を果たした。シリーズは早くも大詰め、12月30日のシリーズ最終日は、優勝賞金1億3700万円(副賞含む)をかけた一発勝負「KEIRINグランプリ2023(GP)」の号砲が鳴らされる。年末の大一番で制するのは果たして誰か。
 12月30日のシリーズ最終日は、「KEIRINグランプリ2023」出場選手のクリアファイルなどを先着1000人にプレゼント。「なかやまきんに君」のお笑いライブ、「横山由依」トークショー、選手会東京支部ブースなどが予定されています。立川競輪場では、みなさまのご来場をお待ちしております。また、テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

ガールズグランプリ レース経過

 号砲が鳴ると、少し見合ったスタートから外枠の尾方真生、吉川美穂が出ていき、吉川が誘導員を追う。周回中は、吉川、尾方、佐藤水菜、久米詩、児玉碧衣、梅川風子、坂口楓華の並び。
 赤板を過ぎても大きな動きはなく、佐藤が次第に前との車間を空け始めて後ろの動きを警戒する。誘導員退避のジャンでも動きが見られないまま4コーナー手前から尾方が一気にスパート。叩かれた吉川が尾方を追いかけて、佐藤は前との車間を詰めながらもしきりに後方を警戒する。最終2コーナーから佐藤が一気に踏み出すと、凄まじいスピードで先頭の尾方を3コーナーで捕らえる。4コーナーを回っても佐藤の勢いは鈍らない。直線では後続に4車身差を付けてのGP初制覇。久米は佐藤に離されながらの追走で苦しい。児玉が直線半ばで久米を交わすも、更にその外を梅川が伸びて2着。児玉は3着だった。


<5R>

渡邉豪大選手
渡邉豪大選手
 3番手の染谷幸喜が赤板過ぎに先に切って、その上を渡口勝成が押さえて出る。渡口が先行態勢を取り、染谷が4番手で打鐘を通過する。単騎の宮越孝治が7番手で、橋本優己は一本棒の8番手。渡口が最終ホームからさらに踏み上げるが、橋本も反撃に出る。染谷は橋本に合わせてまくりを打つ。染谷、橋本を湊聖二がけん制。逃げる渡口はいっぱいで、早めに追い込んだ湊の後ろから渡邉豪大(写真)がゴール寸前で交わした。
 「湊さんがもっていって、戻ってきてもいいようにとは思っていました。あとは染谷さんに降りられないように。でも、前に踏んでくれた。染谷さんが外を踏んでいたので張らないと伸びられると思って踏みました。人の後ろですけど悪くはないと思います」
 果敢に風を切った渡口を利した湊聖二は、番手から追い込んで2着。
 「彼(渡口)の気持ちが強かったです。あれだけ頑張ってくれたんですけど。バックの向かい風がキツかった。もっと車間を空けられれば良かったんですけど、自分に余裕がなかった。もっとサポートしたかったですね。渡邉君も内を締めていてくれたので、もっていきたかったんですけど2車併走だった。どっちか1人ならもっていけたんですけどね…。最後はもう戻れなくて、渡邉君とゴール前勝負できればと思って踏みました」

<7R>

須永優太選手
須永優太選手
 中団の小松原正登に併せ込んだ大石剣士が、フタをして赤板を迎える。外併走の大石剣は打鐘手前から再度、踏み込んで主導権を奪って駆ける。すかさず巻き返した小松原が前団に襲い掛かり、最終周回へ。外に浮いた小松原はいっぱいで、大石崇晴が2コーナーから自力に転じる。阿部力也が大石崇を止めて、直線で大石剣ライン3番手の須永優太(写真)が、大石剣と阿部の間を突き抜けた。
 「大石(剣)君が早めにフタをして先行してくれた。(阿部)力也さんが残し気味な感じもあった。自分のガッツいた気持ちが出ちゃいました。大石(剣君)が3着に残れれば良かったんですけど」
 小松原の先行を許さずに積極策に出た大石剣の番手の阿部力也が2着で、北日本ワンツー。
 「前で先行選手が頑張ってくれたので、自分が止めるだけだった。小松原君を止めて終わるかと思ったんですけど、大石(崇)君が来た。もうちょっと引きつけたかったですね」

<8R>

井上昌己選手
井上昌己選手
 河合佑弥が赤板2コーナーで先頭に立ち、3番手は中釜章成と佐々木眞也で併走になる。後方でタイミングをうかがった取鳥雄吾は、河合のペースを見極めて打鐘2センターから仕掛ける。ダッシュを利かせてスピードに乗せた取鳥が、最終1コーナーで出切る。3番手に飛び付いた河合は車間が空いて、佐々木悠葵が2コーナー過ぎから前の2人を追いかける。取鳥との車間を空けた井上昌己(写真)が、佐々木悠を振って直線へ。ゴール前でピタリと交わした井上が1着。
 「(取鳥は)すごい踏み出しでスピードが良かった。取鳥君はタレないと思ったし、雰囲気で佐々木(悠)君が仕掛けてくるのは(最終)バック辺りでわかっていた。ワンツーなので最高ですね」
 スピードの違いで別線をのみ込んだ取鳥雄吾が、持ち味を出して決勝に進んだ。
 「今日(2日目)は一撃でいこうと。佐々木(眞)さんの動きで隊列が短くなっていいタイミング、いいところで行けた。南(修二)さんが張っているのは気になった。けど、出てからはペースでした。今日はめちゃくちゃ重いし、(最終)4コーナーからが長かった。援護してくれた井上さんに感謝です」
 真後ろからの佐々木眞のまくりに合わせて河合マークから前に踏んだ佐々木悠葵が3着。
 「自分は内を狙われると思って締めていた。取鳥君がうまかったですね。(河合が)詰まっていく感じがしなくて、自分もバックを踏んで詰まっていた。佐々木(眞)さんが来てから踏んだ感じです。脚はすごくいい感じではない」

<9R>

村上博幸選手
村上博幸選手
 三谷竜生は周回中は8番手。一度は押さえて出るが、別線も順番通り動いて最終ホームで森田優弥が主導権。結果的に三谷は、再び後方になる。しかしながら、2コーナーからまくりを打つと、三谷の加速は抜群。直線で関東勢に並びかけた三谷マークから、外を踏んだ村上博幸(写真)が突き抜けた。
 「スタートの位置もどこを取れるかわからなかった。(周回中に)後ろになった時点で(三谷に)付いていくことだけに集中していました。感触的にも悪くない。(最終)2センター過ぎに松本(貴治)が内に行くのが見えたんで、そこに伸び勝てないかなと思った。(だから1着は)デキすぎですね」
 高橋築のけん制もあったが、最後の直線でまくり切った三谷竜生が2着。
 「この並びになってしまったし、このメンバーなら森田君が駆けると思ったんで(8番手になったのは)ある程度、しょうがない。森田君の番手が自力なんで、どうなるかと思った。けど、なんとか乗り越えられて良かった。しっかりと進んでくれている」
 森田の先行策で流れが向いた高橋築ではあったが、雨谷一樹がさばかれて後ろには別線の松本。三谷のまくりもあって、辛くも3着で優出。
 「(森田が)流れに沿って行ってくれて、残せなかったのは自分の実力不足です。結構、いっぱい、いっぱいだったけど、そのなかで最低限の仕事はしないとって思ってました。(三谷のまくりの)スピードがすごかったし、後ろに松本君もいた。ただ、もっとできることがあったかなと。状態は問題ないと思います」

<10R>

小林泰正選手
小林泰正選手
 赤板2コーナーで渡邉雄太が押さえて出ると、さらに単騎の長谷部龍一が切って出る。小林泰正(写真)は、後方の嘉永泰斗より先に動いて打鐘4コーナーで先頭に立つ。嘉永もすかさず巻き返して、最終1センター過ぎに叩き切る。3番手の小林は、車間をじわじわと詰めながら九州コンビを射程圏に入れて直線へ。ゴールは3車が横一線も、外の小林が九州の2人をわずかにとらえた。
 「前々に攻めるのが持ち味なので、1回切ろうと思っていた。(嘉永が来るのは)もうワンテンポ遅いかなと思ったが、早く来てそこは自分が甘かった。最終バックでは追いつくと思ったけど、園田(匠)さんのけん制で乗り越えるのに時間が掛かった。脚は前回と変わらずにいいと思う」
 打鐘2センターから踏み出した嘉永泰斗は、園田匠を連れて一気の仕掛けで2着。
 「車番が悪かったので、取れた位置からでした。うまく流れでと。冷静に見られてはいましたね。(スピードの)乗りは良かったが末が甘かった。自分のなかで仕上がっている感じはしないが、(最終)バックを取ってこの成績なので復帰戦にしては悪くない」
 嘉永の踏み出しに抜かりなく付けた園田匠だったが、伸びは一息でタイヤ差の3着。
 「(嘉永)泰斗は完ぺきなタイミングで行ってくれましたね。(小林)泰正が車間を空けてタイミングを取っているのがわかっていて、直線で良く伸びてきた。前を交わせれば良かったんですけど、(嘉永と)決勝に乗りたいと思っていた」

<11R>

佐藤水菜選手
佐藤水菜選手
 スタートで尾方真生、吉川美穂が出て、1番車の佐藤水菜(写真)は願ってもない3番手を確保する。打鐘を通過しても後続の仕掛けは見られない。2番手の尾方が、4コーナーから仕掛けて主導権を奪って最終周回へ。佐藤は慌てることなく、3番手で車間を空けてタイミングを取る。2コーナー過ぎから前との距離を詰めながら佐藤がスパート。絶好の3番手からスピードに乗せた佐藤を誰も止めることはできない。逃げる尾方を楽にとらえると、後ろにいた久米詩もちぎって、2着に4車身差をつけてゴール。グランプリ初制覇を飾った。
 「正直、攻める攻めると言いながら怖気づいたけど、(お客さんに)勇気をもらって強いレースができた。グランプリは自分の力だけでは勝てないので感謝を伝えたい。(周回中の3番手は)この位置にいていいのかってぐらい、いい位置だった。あとはいい位置を譲らないように後ろをけん制して守って、最善のポイントでと。6番手の位置に梅川(風子)さんがいたので、(仕掛けて)くるのかなっていうのはありました。それに誰が来てもおかしくないし、来たとしても準備していた。後ろをけん制しながら、届くかどうか不安もあった。1着でゴールした瞬間、うれしくてすぐに(お客さんの声援に)応えました」
 6番手からの一撃にかけた梅川風子は、直線で外を伸びて2着に入ったが佐藤を脅かすことはできなかった。
 「サトミナ(佐藤)のレースコントロールがうまかった。サトミナを知っている分、動けなかった。レースが終わってからああすれば良かったとかあるけど、これがいまのすべてです。自分が悪い。レース中に思いつかなかったし、対応できなかった。自転車は伸びていない。2着じゃ意味がない。もっと団子状態になるかもと思っていたので、自分のミスですね」
 児玉碧衣は、5番手で3番手の佐藤を見ながら周回を重ねる。最終3コーナーから踏み込んで前の久米は交わしたが、4度目のグランプリ制覇は遠かった。
 「取れた位置からって考えていましたけど、後ろに坂口(楓華)さんと梅川さんがいたので、誰かが押さえに来たら合わせて動こうと思っていたんですけど。(結果的に誰も動かなかったが)だからと言って自分が動く勇気もなかったですし、あれだけ(佐藤に)車間を空けられてしまうと…。どうしたら良かったんだろう。(自分が)行ったら(佐藤は)合わせる気満々でしたし。結構感じは良かったんですけどね…」

<<最終日11R「KEIRINグランプリ2023(GP)」>>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 昨年は圧巻のまくりでグランプリを制した脇本雄太(写真)は、今年は無冠。獲得賞金ランクでのグランプリ出場も、8月のオールスターで落車で大怪我に負って苦しいシーズンでもあった。
 「(今年の)前半戦は自分のなかで納得できるレースが多かったんですけど、後半戦はやっぱり怪我に悩まされたって感じだった。(復帰後は競輪祭で決勝にも乗ったが)怪我に関しては重かったので影響がまったくないわけじゃない。それをいかにどう乗り越えていくかっていうところが課題かなと思います。(ここまでは)競輪祭が終わったあとは1週間じっくり休みつつ、その次の週からはしっかり追い込んだ。前夜祭が終わったあとは、雪の影響があったので満足できる練習はできなかった。それでもしっかりやることはやってきた」
 深谷知広は、17年以来のグランプリ出場。静岡に移籍してからは初めてのグランプリだが、ここ立川では10年前に師匠の金子貴志をグランプリ制覇に導いた。
 「(今年は)比較的コンスタントにしっかり戦えたシーズンではあったと思います。その結果、賞金で(グランプリに)出られている。(ここまでの調整は)安定して計画通り練習はできたので、悪くないと思います。(セッティングは)いじる時間があったんですけど、意識的にいじらないようにしてキープしてきました」
 5月の日本選手権ではGI初優出でタイトルを奪取した山口拳矢は“持っている”だけに、初のグランプリでもあっと言わせるかもしれない。
 「(今年は)オールスターまではわりと自分の調子も良くて、いい感じで来られた。けど、落車で体は問題なかったけど、なかなか波に乗れずにきてしまった。ちょっと気持ちにブレーキが掛かっちゃう部分もあった。ただ、もう今回が本番なんで、そこも考える必要もない。(ここまでは)自分のやりたい練習ができて、調子も上がってきた」