『KEIRINグランプリ08【GP】レポート』 最終日編
配信日:12月30日
競輪界最大のビッグイベント、KEIRINグランプリ08が大歓声のなか、16時30分に運命の号砲が鳴った。レースは大方の予想通り永井清史がカマして主導権を奪う。小嶋敬二は踏み出しで離れたが、追い付いた勢いを利用して番手まくりを敢行。これを追った井上昌己が直線で鋭く追い込んでグランプリ初制覇。1億円のビッグマネーをゲットするとともに、08年賞金王の座に輝いた。また、寺内大吉記念杯は阿部康雄が優勝した。
KEIRINグランプリ08・レース経過
スタートで飛び出したのは渡邉晴智と井上昌己だったが、内枠の利生かして渡邉が誘導後位に追い付き、平原康多を迎え入れる。井上の前に永井清史-小嶋敬二の中部両者が入り、井上-三宅伸が続く。注目された北勢は山崎芳仁-伏見俊昭-佐藤友和の並びで周回が進んでいく。
7周回の長丁場だけに、淡々としたペースで周回を重ね、大観衆は固唾を呑んで動向を見つめる。思いのほか、動きは早く、青板前から山崎が上昇し、永井のアウトに車を併せ牽制。半周ほどその状態が続いたが、単騎の佐藤が踏み上げて平原を押さえ込むと、平原は引いて佐藤後位に。赤板では誘導の後ろに佐藤-平原-渡邉で、その後ろは内に永井-小嶋-井上-三宅、外に山崎-伏見。打鐘前の二角で平原が佐藤を叩こうとするが、佐藤も突っ張り気味に踏み込む。打鐘寸前に引いた永井が打鐘過ぎの三角から一気にカマシを打つ。小嶋は離れ気味になりながらも懸命に追走、井上が続くも三宅は付け切れずに千切れた。永井は佐藤も飛び付けない好スピードで逃げまくる。小嶋が離れ気味に追い掛け、井上が巧マーク。佐藤、平原も車間が空き気味に追い掛ける。バック過ぎに永井に追い付いた小嶋がその勢いのまま番手まくり。四角を回ると小嶋追走の井上が一気に差し交わしてグランプリ初V。小嶋も懸命に粘るが、空いた内を突っ込んだ平原が2着に強襲。
ゴール
表彰式
胴上げ
<4R>
辻力選手
細切れ戦の4レースは、前受けから巧く三番手を確保した
辻力(写真)
が鮮やかにまくりを決めた。
「今日は何が何でも1着が取りたかった。あそこで引いたら八番手になってしまうし引けないからね。前が踏んでくれて、巧く三番手が取れました。こういう大舞台で走れるのは気分が良いですね」
<5R>
馬渕紀明選手
先行した和田圭と、まくる柴崎俊光で力比べとなった。結局、両者の勝負は柴崎に軍配が上がり、番手を追走した
馬渕紀明(写真)
が抜け出して最終戦を勝利で締めくくった。
「誘導のペースが上がるし押さえると脚を使うから、初手は中団で良いと言ったんです。巧く駆けてくれましたね。柴崎は出切るまでに脚を使っていたしキツそうだった。残したかったけど、最後にタレてきてたんで悪いけど前に踏ませてもらいました」
<6R>
眞原健一選手
6レースは目標の田中孝彦が山口泰生にまくられたものの、
眞原健一(写真)
が俊敏に番手に切り替えて1着。地元バンクで久々に勝ち星を挙げて素直に喜ぶ。
「田中君が頑張ってくれたおかげですね。今日は松岡(孔明)君が粘ってくるかと思ったし、そうなったら割り切って勝負しようと思っていた。でもすんなりでしたね。バックで田中君はタレてきたから番手から出ようと思ったけど、気付いたら山口君がきていた。もうちょっと遅く来るかと思ったけどね。昨日、お客さんに迷惑かけたし、最終戦こそは1着が取りたかった。地元でちょうど200勝をしたんだけど、それ以来だったかな? 久々に地元で勝てて嬉しいね」
山口泰生
は好スピードでまくり上げたが、最後は末を欠いて3着。
「松岡君が何かするかと思ったからそのラインに付いた。前を取ったから突っ張るかなと思ったけど、すんなり引いたんで後方になってしまった。八、九番手だったし、とにかく行ける所まで追い上げたら結構スピードが良かったんでそのまま行きました。練習ではあの距離だったら押し切れるんだけど、競走では難しいですね」
<7R>
桐山敬太郎選手
桐山敬太郎(写真)
が1着となり、6レースに続いて地元勢が勝ち星を挙げた。レースは目標の松坂洋平が伊原克彦に合わされまくり不発となったが、桐山が最後に自力を出して決着を付けた。
「初手で中団を取る作戦だったけど、スタートで位置を取ることに慣れていないから、つい前になってしまった。悪いことをしましたね。今日はとにかく松坂君が前に踏んでくれたおかげ。早めからモガキ合ったから苦しかった。去年の最終戦も1着。負け戦だけど、1着は来年に向けて良い刺激になりますね」
桐山に付けた
秦修司
が2着に流れ込んだ。
「前の二人がよく駆けてくれました。今期はS級点は無理そうだけど、前回(小田原)は決勝に乗れたし、今回も着をまとめることができた(212着)。来年につながるレースができました」
<8R>
村上義弘選手
村上義弘(写真)
が魂の走りを見せた。レースは岡村潤が先行。村上はバックからスパートすると、高橋雅之の強烈なブロックに遭うがこれを気迫で乗り越えた。最後は追い込む坂上忠克を振り切った。
「岡村君が(松田優一を)叩いてからは仕掛けるタイミングを逃さんように、それだけはしっかりと注意していた。高橋君は全力でぶつかってきたから落車しそうになったけど何とか凌げましたね。お客さんから大きな声援をもらって嬉しかったけど、本当なら最終レース(GP)に乗らないといけないと思うと、何か自分の中にモヤモヤしたものが残りました(苦笑)」
連係した
坂上忠克
は村上の気迫に圧倒された。
「強かったぁ! あんなにブロックされてももう一回踏んで行っちゃうんだから。あれで止まってしまうのか、行けるのか付いていて判断に迷ってしまった。前が村上だってことを忘れてました。最後はヤバイと思って慌てて抜きに行ったけどハンドルを投げるのが早すぎた。今日は村上の闘志がみなぎっていたよ」
それはブロックした
高橋雅之
にも伝わっていた。
「後ろから村上さんが来ているのが分かっているのに止められなかった。もう一回持っていこうと思ったら、先に行かれてました。とにかく村上さんが凄かった」
<9R>
菅原晃選手
先行一車の9レースは予想通り
菅原晃(写真)
の番手が大競りとなり、後続のもつれを尻目に菅原が逃げ切った。
「大塚(健一郎)さんと相談して、競り易いところから仕掛けたんですけどね。大塚さんが離れていたのが分かったんで仕掛けを待ったんだけど、もう1コーナーに入ってしまったんでペースを上げました。誘導のペースが上がって大塚さんは脚を使っていたと思う。先行一車だし、たまにはこういう(有利な)レースもありますよ」
出口眞浩
は前受けから飛び付き、最終的に番手を奪って2着。
「ここの所、落車で脱臼したり、筋肉が固まってあまり体調が良くなかったけど、今日は気持ちがこもったレースができたと思う。地元でたくさんのお客さんがいる中で次につながるレースができました」
<10R>
阿部康雄選手
村本大輔選手
栄えある初代・寺内大吉記念杯を手にしたのは
阿部康雄(写真)
。木暮安由との連係は実らなかったが、自ら活路を切りひらいて久しぶりのV。
「嬉しいですね。木暮君が内に行っちゃったときに付いていけなかったんですけど、そのまま僕もインに入って被っちゃうよりもと思って、外を踏みました。思ったよりも車の出は良かったですね。今年はこれが2回目の優勝。一年の最後を良い形で締められてよかった。みのりを勝った手島慶介君に続くことができました」
村本大輔(写真)
は好展開を生かせず渋い表情を見せる。
「今日は厳しいレースでしたね。石橋が出切るまでに相当、脚を使っていたので、バックではもうタレ始めていた。打鐘で押さえて駆けた方が結果的には良かったのかな。これで優勝できないのが(二人の)現状です」
木暮安由
は勝負所で痛恨のミス。
「バックで前が詰まったときに内に差し込んでしまった。スタートは中団が理想だったんですけどね。後ろに迷惑はかけたくなかった」
駆けた
石橋慎太郎
は淡々と話す。
「正直、今回は状態が良くなかった。高谷君も全開で踏んでいたので、出切った時点でイッパイでしたよ」
<11R>
平原康多選手
小嶋敬二選手
08年の総決算! 「グランプリ08」を制したのは
井上昌己
となった。初手は中部追走の作戦が見事的中。小嶋敬二が自力策に転じると最後は渾身の追い込みで小嶋を交わし、一億円のビッグボーナスをゲットした。
「最終ホームで思い通りの展開になったので、あとは落ち着いて走るだけという感じでした。この優勝はまず家族と、練習グループのみんなに伝えたい。あまりプレッシャーは感じない方なんですけど、来年一年間は1番車のユニフォームを着て走らないといけないので、またグランプリに帰ってこられるよう頑張ります」
平原康多(写真)
は中団キープから最後は落車覚悟で内を突っ込んだが惜しくも2着に終わる。
「ホームで永井の番手に飛び付こうと思ったけど、ちょうど友和と踏み出しが一緒になり、合わされる形になってしまった。(05年平塚YGPに続き)また2着なんて情けない」
昨年に続き、
小嶋敬二(写真)
はゴール寸前で優勝を逃してしまった。
「踏み出しで離れたけど、展開としては悪くなかった。追い付いた勢いでそのまま出たけど、井上が良いスピードで付いてきた。追い付くのが早過ぎたね」
佐藤友和
は「永井は後ろ攻めと思ったんですけどね。単騎勝負だし、あのまま福島二人の後ろに付いて終わる訳にもいかないから自分から動いたけど。井上さんが勝負強かったね。永井が駆ける前にあの位置にいたかった。自分の理想とする展開にはならなかったけど、単騎戦らしいレースはしたつもり」とサバサバ。
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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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