『KEIRINグランプリ09シリーズ レポート』 最終日編
 
配信日:12月30日



 熱気渦巻く京王閣バンクで開催された『KEIRINグランプリ09』。トップレーサー9人による一発勝負の大一番を制し、頂点の座へ君臨したのは海老根恵太だった。最終バック6番手から伏見に続き前団に迫ると、直線で大外を突き抜け賞金一億円をその手に掴みとった。また、『寺内大吉記念杯』は番手絶好の展開を活かした井上剛が優勝を飾った。



KEIRINグランプリ09・レース経過
 スタートで平原康多と加藤慎平が飛び出すも、誘導の手前で両者譲り合う形となったが、結局加藤が誘導後位へ。永井清史を受けると、単騎の海老根恵太が踏み上げて岐阜コンビの後ろに入った。中団に平原―武田豊樹―神山雄一郎の関東勢が入り、この後ろに石丸寛之。山崎芳仁―伏見俊昭の福島コンビが後攻めとなる。
 7周回の長丁場だけに、淡々と周回が進み、動きが始まったのは赤板前の3コーナーから。山崎がジワジワ上昇すると、赤板で正攻法の永井を押さえた。永井は車を下げて、切り替えた平原の内で併走に。打鐘で山崎が誘導を交わし、ややペースを上げるも中バンクを使い牽制状態。すると2センターから山おろしで平原が一気に仕掛け山崎を叩いて主導権を奪う。山崎は三番手の神山の内で粘る状態になると、神山は無理せず山崎後位に入り直した。2コーナーで八番手から永井が仕掛けると、山崎との連結が外れた伏見がバックまくりを敢行、海老根が続く。これに合わせて武田が平原を交わし直線に入った。伏見を合わせ切った武田が優勝かと思われたが、伏見のスピードに乗った海老根が大外を強襲し、武田を微差交わしてグランプリ初制覇。



ゴール
ゴール
表彰式 胴上げ
表彰式 胴上げ



<4R>
久米康徳選手
久米康徳選手
   1着は久米康徳(写真)。先行した中野彰人に付け切ると、直線で鋭く抜け出し09年最終戦を1着で飾った。
 「今日は安福さんの引退レースで緊張したけれど、気持ちの入ったレースができたし、この1着は価値がありますよ。今年の後半戦はなかなか1着も獲れず、ボロボロでしたからね。練習仲間の川村晃司や伊藤信も成長してきているし、自分も負けていられないので、この勝ち星をきっかけに、来年はもう一度上を目指して頑張りたいですね」
 現役最後のレースを終えた安福洋一は出迎えた大勢の選手の前で、感謝の言葉を口にする。
 「ここまで32年間頑張ってこれたのは、家族、関係者の皆さん、そして仲間選手の支えがあったから。本当にありがとうございました。来年は早稲田大学でスポーツマネージメントを学ぶ予定です。まだ先の事ははっきりとは分からないけど、今後はなんらかの形で、競輪界に恩返しをしていきたいと思っています」


<5R>
篠原龍馬選手
篠原龍馬選手
   篠原龍馬(写真)が、強靭な粘り脚を発揮。打鐘過ぎから主導権を奪うと、まくる藤木裕に踏み勝ち、見事に押し切った。
 「今日はとにかく藤木の動きを警戒していたし、藤木が巻き返して来るポイントで僕も踏みなおした。長い距離を踏んだので、脚は一杯だったけれど、藤木にヨコに並ばれた途端、再びスイッチが入りましたね(笑)。負け戦でも1着は1着。良い締め括りになったし、来年に向けてまたやる気が出てきましたよ」
 2着となった藤木裕は悔しさを隠せない様子。
 「特に作戦は考えていなかったけれど、本当は僕が篠原さんのレースをしなくてはいけませんでしたよね。最終ホームで仕掛けた時はまだ余裕があったし、出切れると思ったんだけど、篠原さんが強すぎました。あそこで出切れていれば古田さんとワンツーだったのに」


<6R>
富永益生選手
富永益生選手
   最終ホームから巻き返した竹田和幸の番手から抜け出した富永益生(写真)が今節初勝利をゲット。
 「竹田が結構早めに巻き返してくれたし、僕はただその後ろに付いていっただけです。実はレース前に4Rで1着を獲った久米君の脚を触っておいたのだけれど、そのご利益がありましたね(笑)。ただ、1着はうれしいけど、本当はもっと上のレースを走ってなくてはいけないんでしょうね」
 2着入線を果たした三橋政弘は「今回はあまりデキが良くなかったし、中部勢は一緒に走る事もあるので戦いづらい相手だったけれど、その中で何とか2着に入る事が出来ました。でもせっかくだったら、1着を獲って、お立ち台に立ちたかったなぁ!」と悔しさを滲ませる。
 飛びつき狙いだった大井浩平も「葉狩さんのカマしに飛びつこうと思っていたら、まさか先に竹田さんが巻き返してくるとは。必死に飛び付いたけど、スピードが違ったし、富永さんの内併走になって怯んでしまいました。中途半端なレースをしてしまいましたね。状態が良かっただけに残念です」と反省しきりだった。


<7R>
高谷雅彦選手
高谷雅彦選手
   後位が競りで千切れ、岩本俊介が一人で大逃げを打つ展開となったが、後方で脚を溜めた佐々木雄一が4角でまくりきり、番手の高谷雅彦(写真)が直線で抜け出した。
 「風が強かったしきつかったけれど、前がバラけた分、雄一も一人一人風除けに使い、上手くまくってくれた。僕は必死に食らい付いていっただけですよ。でも、最後だけ良い形で締め括れても、一年通して良い競走が出来なくては意味がない。僕ももういい歳になってきたので、来年はギアにしても走法にしても、もう一度見直していかないとね」
 好気合いを見せた佐々木雄一。2着の結果にも納得の表情を見せる。
 「1センターで岩本君がずっと前にいるのに気付き、慌てて追いました。風が強かったし、前もきつかっただろうから何とか間に合いました。今日は良いレースができたけど、初日にこのレースをしないとだめですよね。最近は成績が変に落ち着いちゃっているので、来年は気合いを入れなおし挽回していきたいね」
 果敢な大逃げ策も、最後は力尽き4着に沈んだ岩本俊介はガックリとうなだれる。
 「後ろが離れているのは何となくわかっていたし、本当なら勝たなくてはいけないパターンだったけれど、とにかく重くて3角で一杯になってしまった。風の影響もあるけど、コンディションの部分の方が大きいのかな」
 岩本のハコ回りも、位置を狙われ続けた三上佳孝は「番手を回った時に、競りこまれるのは仕方無いけど、今日は『一人仕上げたら、また次!』ってどんどん来るから、本当にしんどかった。でも、こういうレースも見せておかないとダメだし、今日は勉強になりました。ただ最終的に離れてしまい、岩本には申し訳ない」とレースを振り返る。


<8R>
吉川誠選手
吉川誠選手
   吉川誠(写真)が好気合いを見せた。最終ホームで後方に置かれるも、スピード差歴然のまくりで前団をひと飲み。決勝進出こそ逃したものの、今節は完全復活を強烈に印象付けた。
 「今回はスタートで全部前を取っての競走だったし、その中で内容のあるレースが出来た。今までは徹底先行スタイルにこだわっていたけれど、これからはもっと自分の持ち味であるダッシュを活かした競走をしていかないとね。今日も脚を溜めての一発に賭けられたし、ファンにも『ニュー吉川誠』を存分にアピールできたと思いますよ」
 前に続き2着入線を果たした大木雅也も吉川のダッシュを絶賛する。
 「今日は風が強いからまくり狙いの作戦だったけれど、それにしても吉川君のダッシュは本当に凄かった。でも、付けきれたって事は僕もかなり良い状態なのだと思います。だからこそ、決勝を逃したことが悔やまれますね。せっかく大観衆の前で走れるチャンスだったのにね」
 強風の中、果敢な主導権取りで先行した石川雅望は6着の結果にも、納得の表情でレースを振り返る。
 「今日は志村さんや、宿口さんという自分でも前を回れる選手が、僕に任せてくれたし、その中で消極的なレースは出来ませんからね。思い切って仕掛けられたけれど3角で風にあおられて車が止まってしまいました。まくられてしまったのは自分の力不足だし、これから練習して、来年はもっと強いレースを見せたいですね」


<9R>
伊勢崎彰大選手
伊勢崎彰大選手
   打鐘から朝倉佳弘が一気にフカしたが、中団を確保した南修二がまくりで飲み込む。追走していた吉永和生に絶好に展開かに、更に続いた伊勢崎彰大(写真)が外を鋭く伸びた。
 「今日は風が強いし、脚を溜めてと思ってた。みんな3コーナーで止まってたし、予想どおりでしたね。ギアを(当日変更で)3.92にしたのもよかった。いい感じにアタリが出ましたね。連日よくなかったけど、今日はモガき切れました」
 2着に敗れた吉永和生は致し方なしといった様子。
 「今年最後で決めたかったけどね。マーク屋の南がまくってくれたんだから、残しながら1着が取れればと思った。伊勢崎くんが見えたときは目一杯踏んだけどスピードが違った」
 まくった南修二は「昨日のこともあるので、今日は後ろも見ずに行けるところから行った。風はみんな一緒、結果は力不足です」と出し切ったレースに満足げな表情。


<10R>
井上剛選手
井上剛選手
   GPを直前に控えた15時45分、「寺内大吉杯」の決勝戦の号砲が鳴った。単騎での戦いを選んだ後閑信一、絶好調の武井大介、そして抜群の機動力を誇る渡部哲男。激しいレースは打鐘で後閑と武井が落車する大波乱となった。結局、守谷陽介の番手から井上剛(写真)が抜け出し優勝を飾った。
 「全て守谷君のおかげ。僕は何もしてませんよ。それにしても落車してから、急に流れが良くなるなんて。焦って競走に参加せず、ゆっくり治したのが良かったのかな。今回も身体は軽かったですね。こんなにたくさんのお客さんの前で優勝できる機会は、まずないでしょう。本当に嬉しい。来年はもうワンステップ上で走れるよう頑張ります」
 2着の山口富生は「もうひと伸びがなかったな」と悔しそう。
 「しっかり脚を溜めていられたし、哲男も前に踏んで頑張ってくれた。僕の好きな展開になったけど届かなかったなぁ。悔しいですよ」
 渡部哲男は首をひねる。
 「落車はうまく避けられたけど、一瞬、吸い込まれそうになったね。あんなにペースで駆けられちゃ厳しいな。これでダービーの特選は難しくなりました」


<グランプリ>
武田豊樹選手
武田豊樹選手
伏見俊昭選手
伏見俊昭選手
神山雄一郎選手
神山雄一郎選手
   掉尾を飾る大一番は、海老根恵太の強襲劇で幕を閉じた。平原の番手から抜けでた武田豊樹(写真)はゴール寸前で海老根に屈し、微差でタイトルを逃した。
 「ゴールした時点で『負けた』とわかりました。平原君がすんなり先行なら、結果はまた違っただろうけど、山崎君の動きが誤算でしたね。GPタイトルは逃したけれど、それで自分の今年の頑張りが無になるわけでもないし、また来年もグランプリに乗るため1年間頑張って行きたいと思います。結果は悔しいけれど、今日は良いレースだったですよ」
 永井清史は引き上げると検車場の椅子に座り込む。
 「うーん、もう一回やり直せるなら、もっと早く引くべきだったと思います。前を取るのは作戦だったし、カマシか位置取りで勝負と決めていたんですが。中団からが良かったかもしれません」
 いったん、先行態勢に入りかけた山崎芳仁は「あのまま駆けるつもりで踏んでましたね。平原がなかなか来ないのが誤算でした…」。
 タッグを組んだ伏見俊昭(写真)は自らまくり上げたが…。
 「山崎君に任せたレースですからね。でも悔しいな。僕も勝ちを狙うなら、あそこで踏むしかない。結果的に武田さんとモガキ合う形になって、海老根に抜かれちゃいましたけどね。今回は狙っていただけに悔しいです」
 神山雄一郎(写真)は武田豊樹から離れて万事休す。悲願のグランプリ制覇は来年以降に持ち越しとなった。
「この日のために練習してきたのに、こんな日に限って離れてしまうなんて…。僕がもし付いて行けてれば、武田の優勝はあっただろうし、そう考えると僕の責任は重い。何とか追いつこうとホームで必死に追い上げたところで、ほとんど脚を使いきってしまいました」
 単騎での戦いとなった石丸寛之は「狙いは間違ってなかった。海老根は行くと思ったし、最終的にその後ろを取れてるからね。バックで『行く!』と思って踏み込んだら、海老根が行かなかったので、バックを踏んでしまった。次の瞬間、海老根が行っちゃったので、もう付いて行けませんでした。また来年、この舞台に帰ってこられるよう頑張ります」

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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