『KEIRINグランプリ2010シリーズ レポート』 最終日編
配信日:12月30日
輪界最大の頂上決戦。KEIRINグランプリ2010が12月30日に立川競輪場で開催された。1万5千人の観客が固唾を呑んで見守るなか、歓喜の雄たけびをあげたのは村上博幸だった。中団を取った兄・義弘の仕掛けに乗ると、佐藤友和の番手から抜け出す山崎芳仁を微差で捕らえて1億円をゲット。グランプリ初出場、初優勝で見事賞金王に輝いた。
KEIRINグランプリ2010・レース経過
号砲が鳴ると、村上博幸がいち早く飛び出してスタートを取った。並びは村上義―村上博―市田佳寿浩が前となり、平原康多―武田豊樹に海老根恵太が続いて中団、佐藤友和―山崎芳仁―伏見俊昭が後ろ攻めとなった。
周回が進み、赤板ホームから佐藤が上昇して前の村上義を押さえる。平原が北勢を追わなかったため、引いた近畿勢がすんなり中団に入り、7番手に平原が収まったところでジャンが入る。佐藤が誘導との車間を開け、ペースを緩めて後方の様子をうかがうが、平原は追い出し気味に外にはずしただけで結局は7番手に戻った。佐藤は腹をくくって最終ホームから本格的に踏んで先行する。佐藤が懸命に逃げるなか、村上義が2コーナーを出た所でスパート。村上義が迫ると、山崎は合わせて番手から踏み込んでいく。これで村上義は外に浮いて失速したが、村上博幸がスピードを落とすことなく、巧く内に下りて追い込んでいく。直線では山崎、村上博、伏見の力比べとなったが、最後は村上博がハンドル投げでわずかに上回り、優勝を手にした。
ゴール
優勝した村上博幸選手
胴上げ
<2R>
消化不良のまま最終日を迎えた
大内達也
が連日のモヤモヤを吹き飛ばすバックまくり。
「良かったぁ…。このまま1年を終われないし、勝って終われて良かった。来年はもっと気持ちを入れて走りたいね」
<3R>
伊藤信選手
伊藤信(写真)
が前2日とは別人の走りで逃げ切った。
「前検日に練習用のセッティングに変えたのが失敗でしたね。今朝、ローラーに乗っててこれはダメだと思ってぶっつけで元に戻した。コーナーに入ったときに昨日までとは全然違いましたね」
<4R>
バックまくりの片寄雄己後位から
岡嵜浩一
が抜け出した。
「片寄くんが頑張ってくれました。まあこの先、片寄くんを抜くことはもうないと思うので(笑)。色々あったけど、最後が1着だといい年だった気がします。あと7勝で200勝ですか。じゃあ来年あたりに。記念のTシャツ代を溜めながら頑張りますよ」
<5R>
柴田洋輔選手
柴田洋輔(写真)
が逃げ切りで今年最終戦を飾る。
「今日は着よりも先行だと思ってました。1カ月ぶりに先行したのでキツいですね。でも1着で締めくくれたし、お客さんの声援も暖かかった。バックが重くて、あそこで踏んでしまった。良いときならあそこを回せてるし、あとは踏み出し。そこが来年の課題ですね」
志村勇二
は連日の好展開を生かせず。今日も2着に終わった。
「展開は3日間最高。選手19年目で初めてってくらい良かったんですけどね。やっぱり怪我の影響か伸びないです。ショックですね」
<6R>
布居寛幸選手
中団で脚を溜めた
布居寛幸(写真)
がバックまくりで1着締め。
「2Rで同期の大内さんが勝ってたし、僕もチャンスがあったら狙おうと思ってました。(前の)6番(近藤幸徳)がどっかで仕掛けるだろうし、それを見てから。余裕はありましたね。今回で先行は無理ってことは分かったけど、まくりなら何とかなるね。年明けの地元記念にええ感じで終われました」
金田健一郎
は追走一杯。「差せると思ったけど、踏み直された」とレースを振り返った。
<7R>
阿竹智史選手
バックでもまだ車間が空いたままだった
阿竹智史(写真)
だが、2センターから目の覚めるような伸びで前団を捕らえた。
「ホームで6番(辻力)にしゃくられたし、ローリング(先行)を見てしまった。それでも届くとは思ったけどね。あれができるんだったら初日にしとけって感じです」
山崎充央
はゴール寸前でシリーズ2勝目を逃した。
「葛藤したね。1着は取れる展開だったけど、駆けてくれてるのが(岡田)征陽だし。もう少し自分が上手くできれば良かったけどね」
5着の
柏野智典
は悔しそう。
「どんな展開でも前が1着にいってるので、脚が足りないってこと。ここで1着か2着ならダービー(出場が)確定だったのに。とりあえず結果を待ちます」
<8R>
諸橋愛選手
「決勝を外したのは今年初めて」の
諸橋愛(写真)
が、最後は意地の差しで締めた。
「昨日は本当にショックでした。でも、これが今の状態だと受け入れないと。今日は山本君のおかげ。それに尽きます。来年は地元でG1(寛仁親王牌)があるので、それに向けてもう一度やり直しますよ」
駆けた
山本健也
は「展開は読み通りだったけど、とにかくバンクが重かった。初めてグランプリシリーズを走りましたが、やっぱり特別な空気ですね。いつもならコーナーで流すんですけど、声援が聞こえるので懸命に踏んじゃいました。今度はもっと上のレースを走れるよう、ステップアップしていきたい」
<9R>
渡辺十夢選手
打鐘から須賀和彦と根田空史で壮絶な主導権争い。根田が強引に出切ったが、絶好のまくり頃を
田中雅史
が逃さなかった。
「打鐘からペースが上がってキツかったけど、まくり頃になってラッキーでした。ワンツーでよかった」
勝った
渡辺十夢(写真)
は「こんなに楽に勝てて良いんですかね。後方になったし、5番(伊勢崎彰大)も7番(内藤宣彦)もまくりがあるからその後ろに切り替えないといけないかなとも思ったけど。こんな消極的で勝てるんだ。ツイてました」と笑顔が絶えない。
伊勢崎彰大
は3着でダービー出場に望みをつなげた。
「大舞台であのレースができるんだから、根田は収穫があったと思う。僕はこれで(ダービー開催地の)名古屋までは行けたかな? あとは駅でタクシーに乗せてもらえるかどうか」
<10R>
北野武史選手
藤田竜矢が斬った上を柴崎淳が叩く。誰も仕掛けの素振りを見せず、そのまま柴崎が先行。番手の
北野武史(写真)
が中を割ってきた南修二、外を迫る三宅達也をしのいで優勝。最後の最後でダービー出場権をゲットした。
「柴崎くんのおかげです。ダービーが決まって良かった。前検日から冗談で南に『中割りでプッシュしてくれ』と言ってたけど、まさかホントになるとは。勝てて良かったです」
外を猛然と迫った
三宅達也
だが僅かに及ばず。
「内は見てなかったけど、食ったかなと思ったけどなあ。でもあの展開でよく2着まで来たなあ。ハンドルを思いっ切り投げたけど、惜しかった」
突き抜けんばかりのスピードで中を割った
南修二
だが、コースが閉まり北野を押す形になってしまった。
「コースといい、スピードといい『よっしゃー』と思ったけどね。僕がガリガリだったらスルスル抜けられたんだろうけど、未熟でした。まあ面白かったです」
柴崎淳
は「今回は全部勝ちにいく。先行はゼロと決めてたんですけどね。誰も来ないんじゃ駆けるしかないんで」と苦笑い。
<グランプリ>
村上義弘選手
山崎芳仁選手
弟・博幸がGP制覇。表彰式を敢闘門から見守った
村上義弘(写真)
は感慨深げにレースを振り返った。
「今日は全部の判断が間違ってなかったし、勝てなかったのは脚。アイツ(村上博)なら届くと思ってました。いつか日本一のおふくろにしてやろうと思ってた。僕はできなかったけど、博幸がやってくれた。幸せやったなあ…。やっぱりグランプリはいいですね」
4角番手で絶好の展開。しかし僅か数センチの差で
山崎芳仁(写真)
は1億円を逃した。
「絶好の展開を生かせなかった。やってしまいました。誰かが来たらそのまま出ようと思ってたけど、友和のスピードも良かった。(村上義をけん制してから)我慢して4コーナーから差しにいった。最後は感覚的に行かれたかなと思いました」
平原康多
は悔しさを隠せない。
「友和の後ろ攻めは考えてなかった。考えが甘かったし、自分のミスです。出し切ったけど、出し切り方がみっともない。情けないなあ…。また出直してきます」
武田豊樹
は「去年は康多が先行してくれた訳だしね。こんなこともありますよ。ゴールした瞬間に来年いくぞって、頭は切り替わってました」と早くも来年のリベンジに思いを馳せた。
連覇を狙った
海老根恵太
は「あっち(北日本ライン)かあ…。中団を取ったラインから組み立てようと思ってたし、しょうがないですね」と後方に置かれた展開を悔やんだ。
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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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