『被災地支援競輪KEIRINグランプリ2016シリーズレポート』 最終日編

配信日:12月30日
 立川競輪場を舞台に開催された輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2016シリーズ」は、30日に最終日が行われた。1万5000人を超えるファンが詰めかけ、スタンドは寒風を吹き飛ばすほどの熱気に包まれた。輪界の頂上バトル、一発勝負の「KEIRINグランプリ2016(GP)」は、逃げた稲垣裕之の番手からまくって出た村上義弘が12年の京王閣以来、2度目の制覇。優勝賞金1億160万円(副賞含む)を獲得。年間獲得賞金は2億超え、賞金王に輝いた。また、「寺内大吉記念杯(F1)」は、吉澤純平の先行を杉森輝大が追い込み優勝を飾った。
佐々木昭彦 予想会
佐々木昭彦 予想会
グランプリ出場選手が意気込みを語る
グランプリ出場選手が意気込みを語る
武豊 トークショー
武豊 トークショー
大勢のファンが詰め掛ける立川競輪
大勢のファンが詰め掛ける立川競輪
KEIRINグランプリ2016 レース経過
 号砲で平原康多、村上義弘、渡邉一成が一斉に飛び出してポジションを争う。結局、村上が正攻法の位置を取り切って、稲垣裕之―村上―岩津裕介、浅井康太、平原―武田豊樹、中川誠一郎、新田祐大―渡邉で折り合って周回を重ねる。
 青板2角で新田が動き出す。新田はそのままバックで誘導を切って先頭に。これに平原が反応。2センターで新田を叩いて他の出方を待つ。そこを押さえた稲垣が赤板前から先制。ライン3人で出切ると、すかさず浅井が4番手へ追い上げ、5番手に平原、7番手に新田、中川が最後方の隊形へと変わる。稲垣は落ち着いて後方の動きを窺った後、打鐘2センターからペースアップ。村上も車間を取って反撃に備える。最終2角に入ったところで平原がアタック。好回転で並び掛けてくる平原に、村上も番手まくりで応戦。両者で車体を併せて抜きつ抜かれつの壮絶なモガき合いの末、村上が直線半ばで平原を振り切って抜け出す。今度は平原後位から武田が猛然と詰め寄るが、村上がギリギリ堪えた。ディフェンディングチャンピオンの浅井も直線で外に持ち出して伸びてくるも3着まで。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰式
表彰式
<4R>
戸田康平選手
戸田康平選手
 若松孝之が切って出ると、3番手が紀井孝之と山本健也で併走。後方でじっくり巻き返すタイミングをうかがっていた戸田康平(写真)は、打鐘の2センターからダッシュを利かせてカマす。スピードの違いで一気に出た戸田が、後続をシャットアウトして連勝の逃げ切り勝ちを収めた。
 「ジャンで行こうかと思ったんですけど、風が強かったんで我慢しました。そこからはゴチャついたんで、自分にとっては行きやすくなりましたね。バックの風がすごくて、余裕はなかったです。初日は失敗したけど、今日は初日よりも(踏んだ)距離が短かった。(2日目から)1着、1着なんで悪くはないです」
 最終ホーム手前から内を押し上げて4番手に入った山本健也は、早めの追い込みで2着。
 「1着が取れなくて悔しいです。若松君がイン斬りに行かなければ、ジャンで自分がと思っていた。そこからは内から行けるところまでと思ったんですけど。(望月)永悟さんが付いているんで、もうちょっと前まで行ければ良かった。勝ち切れなかったしダメですね。ただ、今回(3日間を通して)落ち着いてできたと思います」

<5R>
片折亮太選手
片折亮太選手
 打鐘で片折亮太(写真)が押さえて先頭に立つと、神田紘輔が粘って番手がもつれる。すると、ゴチャ付いたところを単騎の阿部秀樹がホームから大カマシ。片折は落ち着いて車間を詰めていくと、阿部をバックで抜き去り、後続を引き離してゴールした。
 「今日は黒田(淳)さんに押さえてもらって、脚を使わせてからと思ってたけど、(黒田は)中団でしたね。神田さんの作戦はある程度予想してたけど、順番的に大丈夫かと思ったけど、すかさず来ましたね。朝倉(佳弘)さんには初日にも迷惑をかけてるし、今日は決めたかったですね。申しわけない。バックの向かい風が鬼のようにすごくて、(走り終わって)脚が痛い。バックを取れたのはよかったけど、今年最終戦はラインで決めたかった」
 2着には飯田裕次が入って高配当。最終ホームで9番手となったが、諦めずに前に踏んでいくと、直線で外を鋭く伸びた。
 「9番手だったし、展開は最悪でしたね。でも、S級点がかかっているからコケてもいいからと思って突っ込みました。7、8、9着だったらダメだったので。今回は上手くまとめられてよかった」
 さらに、伏兵の村田雅一が3着となり、3連単は31万円のビッグボーナス。競り勝った神田の後ろから、差し脚を伸ばした。
 「神田君は自力ではないから、自在に前々に踏んでってことだったけど。ただ、片折君がカマシになったときに脚を使わないとアカンなと言ってたんですけどね。打鐘で神田君はコケたかと思ったけど、そこからまた(番手に)行ったので。頑張ってくれたおかげです」

<6R>
中井太祐選手
中井太祐選手
 正攻法の中井太祐(写真)の後位は初手から坂上樹大、小野俊之で競り。中団に矢口啓一郎のライン、飯田憲司が先導する南関勢は後攻めとなった。打鐘が鳴っても隊列は崩れず、最終ホーム手前から矢口がスパート。追走の深井高志は踏み遅れて、中井が番手にはまる。後位の競りはダッシュのタイミングで小野が坂上を押し込んだ。一旦は出られた中井だが、態勢を立て直すと2コーナーからすかさずまくり返して圧勝。最終日にようやく本領発揮となった中井だが、レース後は反省ばかり。
 「矢口さんの仕掛けに気づいたときは勢いが違っていた。後ろが遅れていたので、入ってからすぐに仕掛け直しました。今回は脚こそ悪くなかったけど、課題が多くみつかった。総合的にまだまだと言えばそれまでですが、力は足りないし、初日のようにゴチャついたときの対応もできていない」
 坂上樹大は小野が外に浮いた深井を弾いたタイミングでインを突くと、バックの向かい風で勢いを失った矢口も捕らえ、薄氷を踏む思いで2着をキープ。結果的には中近ワンツーを完成させた。
 「結果的にワンツーを決められたことはよかったけど…。やはり競り合いで勝ちたかったね。小野さんはホントにすごい。当たりの感じなど他の選手とは全然違う。良い勉強をさせてもらいました」
 小野俊之は悔しそうな表情で早々に帰り支度。
 「競り勝ったと言ってもらえるのはありがたいけど、僕は競り勝って前に続ける選手だから。今は自分らしい競走ができていないし、お客さんの車券にも貢献していないから歯がゆい。常に日本一を目指して取り組んできたけど、来期はA級だから一から出直すつもりでやるしかありません」

<7R>
松川高大選手
松川高大選手
 打鐘で飛び出した須永優太を最終ホームで堀内俊介が叩いて主導権を握る。須永を捨てて踏み込んだ早坂秀悟が南関2車を一気に抜き去って伏見俊昭が続く。このまま2人で決着かと思われたが、脚をためていた松川高大(写真)が直線一気の追い込みを決めた。
 「積極的な選手が多かったので、しっかり流れに乗って一発を狙ってました。最後は際どかったけど、なんとか届きました。感触もよかったですね。今年最終戦で勝ててよかったです」
 早坂のまくりに乗った伏見俊昭は惜しくも2着に敗れた。
 「(早坂が)バックでまくり切って、自分もからまれずに付いていけたので、もう前で決まったと思ったんですけどね。後ろ(松川)が強かった。また来年、出直します」

<8R>
新山将史選手
新山将史選手
 打鐘で押さえて出た松岡篤哉が、後続を一本棒にして先行態勢。7番手から太田竜馬が襲い掛かると松岡もアクセル全開で踏み込むが、太田のスピードがいい。最終バックで太田が逃げる松岡を捕らえて、小倉竜二、立花成泰まで出切る。中四国3車での決着に思われたが、太田ラインを追った新山将史(写真)が直線で猛襲。鮮やかに突き抜けた。
 「自分が一番格下なんですけど、一番脚を使わないで立ち回っただけですね。ほかの2人(太田、松岡)は力を出し切っているんで。それでも1着を取れたんで満足している。最後は思った以上に伸びた。もうちょっとカッコイイ勝ち方ができればよかった」
 準決に続いて太田とタッグを組んだ小倉竜二は、ゴール寸前で太田を交わして2着。これからの成長が楽しみな後輩に目を細める。
 「もっと行けるタイミングもあったけど、まだまだですね。すぐに引いてホームで一気に行く作戦だった。まだ(太田はデビューして)半年だから。練習より(力が)全然出てない、練習ではもっと出ますよ」
 「反省点だらけ。気持ちよく行けたのはひとつもない…」と、太田竜馬は3日間のシリーズを振り返る。
 「今日も作戦通りにはいかなかった。スピードの取り方が失敗でした。あの風を乗り越えたら、僕はもうヘコヘコでした。今は経験ですね。実際、走ってみたら、見ているのと全然違うんで」

<9R>
小埜正義選手
小埜正義選手
 大方の予想通り、後ろ攻めから坂本周輝が押さえて先行態勢に入ると、小埜正義は中団にこだわり、人気の脇本雄太は7番手まで車を下げる。坂本は徐々にペースを上げると、最終ホームで後方の動きを確認してフルスロットル。坂本が懸命に逃げるなか、脇本雄太が1コーナーから反撃に出るが、小埜正義に合わされ万事休す。その小埜がまくっていくと、櫻井正孝が番手まくりを敢行。櫻井のけん制に耐えた小埜正義(写真)が、最後は山降ろしを使えた分伸びて激戦を制した。
 「相手も強かったけど、僕のラインもしっかりしていたので頑張らないとね。後ろの仕掛けに合わせたのではなく、詰まったタイミングで踏み込みました。今シリーズは脚の感じは良かったけど、セッティングなどまだ微調整が必要と感じた」
 櫻井正孝は2着惜敗に終わるも、今シリーズは手ごたえを感じ、表情は晴れやか。
 「今日だけでなく、シリーズを通してやったほうでしょう。北日本の同期3人で連係できる機会は滅多にないし、それぞれが役割を果たした。結果的に(脇本を)出させなかったのだからアイツ(坂本)はすごいですよ。小埜さんはサラ脚のまくりだと思うし。今回は3日間違う戦法になり、それぞれをこなすのが僕の持ち味。今年は波乱万丈な1年だったけど、自力型としてはあと2年位が勝負だと思うので、さらに上で戦えるように頑張りたい」

<10R>
杉森輝大選手
杉森輝大選手
 寺内大吉記念杯の決勝戦は打鐘で吉澤純平が先頭に出て主導権。ハイスピードで逃げていくと、別線は手も足も出ず。4コーナーを回ると、番手の杉森輝大(写真)が追い込んで優勝を手にした。
 「今日は前受けか中団だったけど、作戦通りにいきました。山田(庸平)君が切って、松岡健介さんが行ったところを自分たちが。全部吉澤君がやってくれたし、吉澤君のおかげです。かかってたから後ろから来ないだろうと思ってました。バックで山田君が見えたんで仕事しようと思ったけど、後ろで止まったので。今年は厳しい1年だったけど、最後に優勝できてよかった。来年は上を目指して、G1で結果を出したい」
 3番手を固めた神山拓弥が2着となる。
 「前が頑張ってるし、無理に中を割ることはできないので、ギリギリまで待ってから踏みました。杉森さんが伸びていきましたね。吉澤さんもあれで3着に残るんだから強いよ」
 その吉澤純平は力強い先行で、ライン4人で上位独占に成功。自身は3着に粘り込んだ。
 「初手で前を取ってから、4人で出切ればと思ってたけど、いい形で出られましたね。そこからは後ろを信頼して全開で行くだけでした。バックの向かい風がすごくて脚がいっぱいでした。今年最後のレースで先行できたし、力を出し切れてよかった。自分はまだまだなので、来年頑張ります」
 山田庸平は実力差を痛感する結果に。
 「(打鐘で)1回突っ張って脚を使ったし、(吉澤に)飛び付けるスピードではなかった。そこから引くのが遅れてしまったし、仕掛けも遅くなってしまって。今回、強い人と走れて課題が見つかりました。また来年頑張ります」

<11R>
武田豊樹選手
武田豊樹選手
浅井康太選手
浅井康太選手
 「KEIRINグランプリ2016」は輪界を代表するベストナインが最高峰のレースにふさわしいバトルを演じた。早めに先行態勢に入った稲垣裕之が後続の出方をうかがいながらピッチを上げる。5番手をキープしていた平原康多が最終2コーナー手前からまくると、これに合わせて村上義弘が番手まくり。平原との壮絶な踏み合いを制した村上が後続の追撃を振り切り、4年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たした。
 「うまく勝ちきれない1年だったので、まさかこういう結果で終われるとは信じられないですね。寒くて(上がり)タイムも悪かったので、組み立ては前からのほうが稲垣の持ち味を発揮できるだろうと。でも、やっぱり稲垣は寒さでいつものスピードには持っていけない感じでした。平原は日本一強いと思っている選手だし、見えた瞬間、とっさに前に踏む判断をしました。ゴールした瞬間は武田さんのスピードもよかったので、よく分からなかった。夢のようです。また次の夢に向かって、頑張っていきたいと思います」
 平原のまくりに乗った武田豊樹(写真)が直線で外を伸びて2着。わずかに村上に届かなかった。
 「難しかったですね。今日は平原君あっての自分ですから。平原君が頑張ってくれた。(平原が村上に)合わされたので、外を踏んだけど伸びなかった。もうちょっとだったんですけどね。でも、強い人が勝って納得している」
 グランプリ連覇に挑んだ浅井康太(写真)は昨年同様、単騎で俊敏に立ち回ったが、3着に入るのが精いっぱいだった。
 「悔しい気持ちが強いですね。優勝しか狙ってなかった。あの位置(4番手)は僕か平原さんのどちらかだと思ってました。行く自信はありましたけど、周りが自分以上に強かったです。来年、また一からやり直します」
 平原康多は番手まくりの村上を乗り越えられなかった。
 「しゃーない。(5番手を)取れたけど、結果、浅井のあの1車が効いた。思いっきり出し切って行ききれなかったので力不足です。また1年間、頑張ります」
 稲垣裕之は強風のなか、果敢に風を切った。
 「早い展開になると思ったので、前を取りました。昨年のグランプリの反省を生かして、ラインのことを考えて、自分のレースをしました。僕の直感で自分が勝つ組み立てで先行しました。平原君も強かったけど、それを内から合わせた村上さんはさすがですね」
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