『KEIRINグランプリ2017シリーズレポート』 最終日編

配信日:12月30日

 湘南バンク平塚競輪場を舞台に開催された輪界最大のイベント「KEIRINグランプリ2017シリーズ」は、30日に最終日を迎えた。優勝賞金1億160万円(副賞含む)をかけた夢のビッグマッチ「KEIRINグランプリ2017(GP)」が、メインの11レースで行われた。レースの主導権を握ったのは深谷知広。番手の浅井康太が、絶好の展開から追い込んで優勝。一昨年の京王閣以来、2度目のグランプリ制覇で賞金王に輝いた。

ニッチェお笑いライブ
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グランプリ出場選手 特別紹介
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大観衆の平塚競輪場
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KEIRINグランプリ2017 レース経過

 号砲と同時に桑原大志がいち早く飛び出してスタートを取る。桑原が三谷竜生を迎え入れて即席ラインの2人が前受け、中団に深谷知広-浅井康太の中部コンビ、平原康多-武田豊樹-諸橋愛の関東勢が収まり、新田祐大-渡邉一成の福島コンビが後攻めで隊列は落ち着く。
 青板のバック過ぎから新田が上昇。3番手の外で止まると、併走を嫌った深谷は車を下げる。平原は赤板から踏み込み、2コーナーで誘導員を下ろして先頭に立つ。今度は深谷が仕掛け、打鐘過ぎに平原を押さえて先行策。これを受けた平原が3番手に収まる。6番手となった三谷は最終ホームから反撃に出るが、4番手の外で苦しくなる。2コーナーで後方8番手から新田が大外をまくり上げると、3番手の平原はバック前から仕掛ける。これを外に振りながら浅井が早めの追い込み勝負。2センターでインを突いた諸橋は4コーナーで浅井を押し上げた時にバランスを崩して落車、逃げる深谷と桑原が巻き込まれる。浅井が直線で力強く抜け出し、2度目のグランプリ制覇を果たした。平原が不発の展開から懸命に追い込んだ武田が2着。人気を集めた新田は3着まで。






<4R>

高久保雄介選手
高久保雄介選手
 打鐘手前で出た八谷誠賢が主導権。八谷ラインに続いた関東勢と田中孝彦で中団が併走。田中が1車押し上げて梶應弘樹をさばくと、後方で反撃のタイミングを計っていた高久保雄介(写真)がまくって出る。逃げる八谷を最終4コーナー手前でとらえた高久保が、怪我からの復帰後、初白星を飾った。
 「内容としては終わってますけど、復帰してから初めての1着ですからヨシとします。1着は素直にうれしいです。(復帰初場所の)前回はそんなに感じなかったけど、今回はあんまり良くないですね。先行するつもりだったけど、予想外にラインがクルクル回って、ああなってしまった。人任せになってしまった」
 2着に流れ込んだ布居寛幸は、復帰2場所目で高久保のはやる気持ちを察しながら振り返る。
 「(高久保が仕掛けて)いけるところはいっぱいあったんですけどね。本命だし、好きに走ればいいって。何回もいきかけて、内に突っ込んだりしていた。欠場明けだし、先行してどんな感じだろうってやりたかったと思う。だから、先行選手としていくべきところで、アクションは起こしている。あとは、あれで叩いていければいいんでね。自分は余裕がありましたよ」

<5R>

三槻智清選手
三槻智清選手
 伊原克彦が赤板の2コーナーから踏み込んでハナに立つ。3番手は押さえられた房州輝也と、坂本健太郎で併走に。隊列が短くなったところを蒔田英彦が一気にカマし、最終ホームで主導権を奪取。すると、単独の6番手を確保した坂本が、2コーナーから踏み上げる。直線入り口で前団をまくり切ると、最後は続いた三槻智清(写真)が差し切った。
 「(坂本が)すごいスピードでしたね。ずっと、踏みっぱなしでした。いってくれたおかげです。久しぶりの1着なので、ゴール前は後ろから飲み込まれるんじゃないかって不安でした。(来場者が多くて)顔見せから何とも言えない気持ちの高ぶりがありましたね。こういう舞台で走れて、選手でよかったと思いましたよ。感謝しながら、レースを走らないと」
 白星こそ逃した坂本健太郎だが、勝負所できっちり仕掛けてワンツーを決めた。
 「蒔田が俺のところで止まったので。これは伊原のカマシになるなと。そうなったら、全力で追ってと思っていました。(まくった感触は)もうひとつですね。いつも、初速だけ踏んで。あとは流してから、もう一度踏むんですけど。最終日は踏みっぱなし。(状態は)ちょっと上がってきてはいるけど、まだまだですね」

<6R>

天田裕輝選手
天田裕輝選手
 日野博幸の動きを察知した中団の吉川誠が、赤板で先に出る。その上を日野が打鐘で押さえて先行策に出た。正攻法に構えた天田裕輝(写真)は、7番手で最終ホームを通過。先にまくった地元勢を追う形で仕掛け、力でねじ伏せた。
 「(作戦は)前受けからと決めていました。前のペースが緩めばカマすつもりでいましたけど、(日野が)結構踏んだので。連日、積極的に仕掛けていたから別線も警戒したんだと思う。そういった意味でも展開が向きましたね。1着も取れたし、積極的に動けていたのでいいシリーズになったと思う」
 中団から仕掛けた吉川誠は、2センターで先頭に躍り出る。しかし、最後は天田のスピードに屈して3着に終わった。
 「中団から自分でレースを動かして、先にまくろうと。狙い通り動けたし、もうこれないと思ったのに。天田君が強かったですね。2日目に失敗してしまったので、最終日は攻めのレースがしたかった。負けたけど、納得はしています」

<7R>

海老根恵太選手
海老根恵太選手
 別線の動きを待つことなく、赤板の2コーナーから誘導を交わして伊早坂駿一が主導権。単騎の重倉高史と桐山敬太郎が3番手を取り合うが、桐山は伊早坂のペースを見極めて打鐘の4コーナーから叩いて出る。海老根恵太(写真)、高橋雅之が続いて、佐藤友和がまくりで襲い掛かるが3番手まで。番手の海老根は後続との間合いを計って、きっちり追い込みシリーズ2勝目を飾った。
 「桐山はすごいですね、あれでいっちゃうんだから。自分も構えていたし、岡(光良)はすごいもって来るんで、そこも越えられた。(佐藤)友和が来たら、なんとしても止めよう思ってた。調子ですか? (準決で連係して離れた)早坂秀悟に白紙に戻された感じなんで、叩き直してきます」
 3番手取りかに思われた桐山敬太郎だったが、柔軟にレースの流れに対応。先行策でラインを上位独占に導いた。
 「詰まったんでいっちゃった。あれでもっと駆けてくれれば、3番手が取れるんですけど。そうしたら遅めに仕掛けられた。自分の感じはすごくいいし、やっぱり自分でやった方がいいですね」
 最終2コーナーから南関ラインに襲い掛かった佐藤友和だが、桐山の掛かりがよく不発の7着。
 「新車の感じもいいし、初日の感じから体調もいい。あとはレースの組み立てだとか反応の部分。そこも悪くはないけど、まだ勝てるレベルではない」

<8R>

吉本卓仁選手
吉本卓仁選手
 吉本卓仁(写真)、山形一気の順で動くと、伊藤裕貴は仕掛けどころを逃さず打鐘の2センターで主導権を握る。そのまま軽快に風を切って、最終ホーム、バックと一本棒。反撃の機会をうかがっていた5番手の吉本は、車間を詰める勢いで3コーナーから踏み込む。ショートまくりを決めて、シリーズ2勝目を挙げた。
 「山形君が内にいったので、展開も向きましたね。あそこで(山形が)外を踏んでいたら届かなかったかもしれない。でも、脚の状態は戻ってきていたので。あとは、気持ちの問題で勇気を出せるかどうかでした。レースも見えていたし、余裕もありました。今年はダメでしたけど、なんとか来年には間に合った感じですね」
 新山将史は、2センターから大外のコースを踏み込む。直線で鋭く伸びて2着に食い込んだ。
 「普通は、細切れ戦で前は取らないけど。今の脚の状態的に押さえたらきついかなって思って。最終日が一番脚が回っていましたね。落車の影響というより、単純に脚が落ちていて、長い距離を踏んで勝負はできない状態。徐々に先行でも勝負できるくらいに戻していきたいです」
 絶好の3番手を確保した山形一気は、2センターから内を突く。しかし、番手の山内卓也に締め込まれて終了。
 「伊藤君が結構踏んだので、ホームで口が空いてしまった。詰める勢いで仕掛けようと思ったけど、追いかけて一杯に。最後は狙ったわけじゃなくて、吸い込まれるように入ってしまいましたね」

<9R>

石塚輪太郎選手
石塚輪太郎選手
 石塚輪太郎(写真)が、強豪を相手に堂々の逃げ切り勝ち。早坂秀悟に蓋をした石塚は、先に出た久米康平を打鐘で叩いて主導権。そのまま絶妙なペースで駆けてゴールを目指す。中団を確保した久米は2コーナーから仕掛けるも、石塚をまくれず、澤田義和に張られて終了。最後は踏み直した石塚が、澤田の追撃も振り切った。
 「早坂さんは自力選手と言うより、先行選手と思っています。その人を相手に、どこまでいけるか。そこを目標に最終日は走りました。(出切ってからは)早坂さんのカマシがどれくらいで飛んでくるのか。でも、あれくらい踏んでいれば、来ても一人か二人だろうと。余裕はなかったですね。また、この舞台で走りたいっていうのをモチベーションにして頑張ります」
 澤田義和は、石塚を交わせず2着。
 「石塚君が強かったです。久米君が止まって、抜きにいって。(自分が1着の)ワンツーと思ったら、逆ワンツーになってしまいましたね。練習します」
 中団から仕掛けた久米康平だったが、石塚に力負け。
 「いまいちセオリーのイメージが浮かんでこなくて。一回出てから考えようと。石塚がすぐにきたら中団ですし。でも、(石塚を)突っ張ってもよかったかもしれないですね。いけると思って仕掛けたんですけど、石塚君に合わされました」

<10R>

松岡貴久選手
松岡貴久選手
 「寺内大吉記念杯」の決勝戦は波乱の結末となった。動きなく赤板を通過すると、8番手の脇本雄太が2コーナーから動く。これを前受けの吉田敏洋が突っ張って踏み合いに。すると、3番手の松岡貴久(写真)が最終ホームから内に潜り込む。叩けなかった脇本は番手の外で併走すると、吉田に接触して落車。5人を巻き込む大アクシデントが発生する。3人となった戦いは、内から先頭に躍り出た松岡がゴールを目指す。最後は番手にハマった吉田が、ゴール前で交わして勝利。かに思われたが、吉田は失格で斜行。松岡が繰り上がりで優勝となった。
 「作戦は取れた位置から。行ける所からいきますと話をしていました。まあ、いつも通りですね。(赤板の2コーナーまで)誰も動かなかったのでドキドキしました。落車があったけど、ヒデ(山田英明)さんが後ろにいるかなって思ったら違って。どうせ流しても一緒だと思って、全開で踏みました。久々にきつかったです」
 吉田に続いた北野武史が、繰り上がりの2着。
 「(動き出しが遅くて)あんな展開になるとは。(吉田が)前受けから引いてドカンといくか。まくり追い込みなら、内を見ないといけないと思っていました。(落車後は)吉田君を入れるところまでは余裕があったけど。脇本君と接触した時に、クリップバンドが外れそうになって踏めなかったです」
 落車再乗した山田英明が、3着に入った。
 「怪我は大丈夫です。避けたと思ったんですけどね。松岡君は前々にいってくれるとわかっているし。任せた以上は、あれでいいと思っています」

<11R>

武田豊樹選手
武田豊樹選手
新田祐大選手
新田祐大選手
 輪界の覇を決める戦い「KEIRINグランプリ2017」。優勝賞金1億円超をかけた一発勝負は、浅井康太が制した。レースは平原康多が赤板の2コーナーで誘導を降ろすと、その上を深谷知広が押さえて先行策に出る。6番手となった三谷竜生は最終ホームから仕掛けるも、中団でいっぱいに。さらに、3番手から平原もまくるが、深谷の掛かりがよく車の進みはいまひとつ。すると、諸橋愛がインを突いて浅井をしゃくりにいくが、押し返されて落車。浅井は、これに巻き込まれることなく追い込んで、一昨年ぶり2度目のグランプリ制覇を成し遂げた。
 「今年1年、結果という結果を残せていなかったですけど。最後に残せてよかったです。今年1年は、自分がどうやったら勝てるのかを考えて、このグランプリに賭けていました。ゴールしてからは、(初めてグランプリを制覇した)2年前の景色が思い浮かびましたね。深谷が落車したのは残念ですけど、気持ちは伝わってきて勝てたと思う。来年の1年間は、1番車を背負って頑張ります」
 平原が後退すると、武田豊樹(写真)は浅井後位へ。直線勝負に賭けたが、浅井を交わせず準V。
 「脚は余っていました。最後の勝負所まで我慢してと。でも、我慢しすぎて、車が伸びなかったですね。自信がないわけじゃなかったんですけど。(外帯線を)外したら、(諸橋が)内に入ってくるのはわかっていたんですけど。落車で腰が抜けたのはある」
 新田祐大(写真)は1センターから大外をまくり上げるも、3着までが精一杯。
 「深谷が掛かっていたし、三谷が仕掛けたのも見えていました。たぶん、あのスピードなら止まるだろうなと。飛んだ所をいくか、飛ぶ前にいくか考えていました。1コーナーでいったけど、車が出なかったです」
 平原康多は深谷に真っ向勝負を挑むも、力及ばず6着。
 「自分の競輪をしようと。(自分だけ)ライン3車でグランプリを走ってまくり追い込みでは。深谷に勝負をしにいったけど、掛かっていたし、強かった。勝負にいける気持ちになれたのは、よかったですね」
 三谷竜生は、反省点を交えてレースを振り返った。
 「もうちょっと早く仕掛ければよかった。(深谷が)まだ駆けてなかったし。一回見てしまいました。平原さんもいけていないし、深谷君が強かったです」