『第63回朝日新聞社杯競輪祭(GI)レポート』 5日目編

配信日:11月23日

 グランプリをかけた最後の戦い。北九州メディアドーム・小倉競輪場で開催されている「第63回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」は、11月22日に5日目を迎えた。ファイナルのキップをかけた準決では、迫力のスピードバトルが展開された。12レースでは園田匠、北津留翼のホームバンクの2人がワンツーで場内が盛り上がった。6日間にわたるロングランシリーズもいよいよ大詰め、11月23日の最終日には、今年最後のGI覇者が決まり、年末に静岡競輪場で行われる「KEIRINグランプリ2021(GP)」のベストナインが出そろう。
 開催中、小倉競輪場では、場内のお客様が5000人を超えた場合は入場制限をさせていただきます。北九州市の施設、イベントに関する基本方針をふまえた感染症拡大防止へのご協力をお願いします。また、「競輪・オートレースにおける新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」に沿った開催となります。検温、手指の消毒、マスク着用などのご協力とご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦もお楽しみください。

<5R>

長島大介選手
長島大介選手
 前受けの町田太我は誘導との距離をとって、赤板過ぎに高橋晋也を突っ張る。櫻井正孝のアシストで高橋が4番手に入り、長島大介(写真)は冷静に6番手に下げて態勢を整える。高橋が最終1センターから仕掛けるが一息。その外を長島がまくって前団に迫る。長島が直線で逃げる町田をとらえて、4日目からの連勝を遂げた。
 「(中団で)変に櫻井さんと勝負するよりも、(町田と高橋で)踏み合ってくれればと。それで(北日本を入れて6番手まで)下げました。あとは自分のタイミングで行こうっていう意識でした。高橋君が早めにいったんで、見てからになりました。(まくりは)加速が良かったけど、細かいところが納得いってない。フォームだったり、そこを修正すれば、かなり良くなると思います」
 長島に一瞬、置いていかれた田中晴基だったが、終わってみれば4分の3車身差の2着でワンツー。
 「もう(長島に)すべてお任せしてました。自分は付いているだけでした。(長島のまくりのスピードが)すごかった。(最終)バックで長島君、バイバイって感じでした(笑)。(浮いた)高橋君のあおりをもらってたんで、それで長島君に追いついた」

<8R>

和田健太郎選手
和田健太郎選手
 打鐘で7番手に置かれた渡邉雄太だったが、2センターから内をすくって中川誠一郎から中団を奪取する。逃げる森田優弥の掛かりも良く、渡邉は最終2センターから外に持ち出して追い込む。渡邉マークの和田健太郎(写真)は、中のコースを冷静に探して、諸橋愛と神山拓弥の間がわずかに空くと鋭く突き抜けた。
 「(打鐘では)予定では中団を(渡邉)雄太が取り切っているところだったですけど。そのあと予想外のなかで雄太が臨機応変ににやってくれた。赤板で脚を使ってたんで、(中団を取っても)すぐには行けないなと思っていました。内藤(秀久)君には悪かったけど、あそこは外に開いても伸びないっていうのがあって、あのコースでした。もうちょっといい判断ができたのかなっていう反省点もあります」
 アクシデントもあった渡邉雄太だったが、中団確保から追い込んで2着。
 「(中川)誠一郎さんが来た時に前輪を接触して、バックを踏んで整うのに脚を使ってしまった。森田君も掛かってたんで、いつもの伸びるところからになりました。一瞬、合わされたかなと思った。(脚の感じは)いいんで、あとは走り方ですね」

<9R>

木暮安由選手
木暮安由選手
 赤板過ぎに野田源一が切った上を叩いて、金子幸央が打鐘から先行勝負に出る。前受けから引いた深谷知広はすぐさま巻き返しに出ようとするが、5、6番手を占めた吉田敏洋-坂口晃輔の執拗なけん制に阻まれる。一本棒で最終ホームを通過し、2コーナーに入ったところで野田が3番手から先まくり。金子の番手を回った木暮安由(写真)がブロックしながら合わせて出て行って両者で踏み合って直線へ。互いに譲らずゴール前勝負に持ち込まれたが、踏み勝った木暮がシリーズ3連対目を果たす勝利を飾った。
 「(初手は)深谷の後ろにいれば、チャンスはあるなと。金子君が気持ちの入ったレースでした。先行力はあるから、力を出し切ればと。源さんがどれくらいのスピードかわからず、いいタイミングでこられた。1着が取れれば、勝ちグセが付きますね。(今回は)新田(祐大)と連係してナショナルチームのオリンピック選手に自分も付いていけるんだなと、刺激をもらったし、課題も増えた」
 最終3コーナーからようやく踏み出した深谷、その後位から伸びた佐藤慎太郎は及ばず4着、3着。2分の1輪差で木暮に及ばなかったが、野田源一も最後まで力強く踏み切って2着に入った。
 「深谷君に前を取らせて、(自分が)押さえたところを吉田君か、金子君に先行してもらって、とにかく深谷君を後方に置きたかった。後ろを見る余裕はなかったけど、詰まったら行こうと思っていた。(桑原大志と)ワンツーを決めたかったが、力不足ですね。ここに向けてやってきたけど、2場所前の落車で歯車が狂った。力は出せているが、できれば、準決勝に乗て勝負したかった。まだ1着を取れていないので、最終日は頑張りたい」

<10R>

松浦悠士選手
松浦悠士選手
 赤板1コーナーで郡司浩平が先頭に立つと、取鳥雄吾はタイミングを取って2コーナーからスパートする。取鳥が主導権を握り、松浦悠士(写真)まで出切る。郡司は3番手に飛び付いて、中国勢に続いた単騎の山田英明と併走になる。後位は内を突いた古性優作と和田真久留でもつれる。最後方から佐々木悠葵がまくって、好スピードで前団に襲い掛かる。逃げる取鳥との車間を空けた松浦が、佐々木をけん制してきっちりと抜け出した。
 「自分の後ろが併走だったので、もうちょっと空けたかったんですけど。ちょっとヒデさん(山田)に追い上げられてっていうのも。みんなが内に詰まってくれたらなと思っていた。でも、(最終)バックから佐々木君が来た。(踏むのを)ギリギリまで待ったんですけど。状態は今日(5日目)が一番良かったです。(取鳥)雄吾の頑張りで脚力消耗もそんなにしてないですし、明日(決勝)はしっかり自分の力を出せるデキかなと思います」
 最終3コーナーでようやく山田に踏み勝った郡司浩平は、直線で松浦の内から追い込んで2着。
 「(決勝は)南関の勝ち上がりが少なかったなかで最低限ですね。先に僕がハナを切れたんで、あとは雄吾がどこから来るのかなと。雄吾もジャンから思い切りフカしていくというよりは、出切ってちょっとペースに入れてって感じだった。そこで合ったところが3番手だったので、そこは譲れないなと。ヒデさんをキメれずに併走が長引いちゃったんで、仕掛けどころを逃がしてしまいました」
 松浦、郡司に遅れを取った古性優作に焦りがあったようで、前々に攻めて3着に入ったものの、その表情は険しい。
 「自分の判断が全部、すごく遅かったと思います。総力戦で戦おうとは思っていたんですけど、(周回中の)並び自体もああなると思っていなかったので、難しかったですね。松浦君と郡司君がすんなりと出た段階で自分が一番脚ないですから、なかなかレース展開が難しくなると思った。今日までの4走は、全部内容が良くない。自分だけ(勝ち)上がっても意味ないですし、本当に反省しかないです」

<11R>

新山響平選手
新山響平選手
 上昇した山田庸平を阻んで、前受けの吉田拓矢が突っ張る。両者の踏み合いを後方で冷静に見極めた新山響平(写真)は、赤板2コーナーから仕掛ける。新山がスピードに乗せて主導権を奪い、渡邉一成の追走。3番手に飛び付いた吉田は大きく車間が空いて最終ホームを通過する。6番手の浅井康太は2コーナーから内を踏んで詰まり、山田も前が遠い。直線で車間を詰める渡邉を振り切った新山が圧巻の逃走劇を完結させた。
 「長い距離ではあったんですけど、前が踏み合って力を使っていた。(吉田)拓矢も器用だし、中団取りだなと考えていた。それでタイミング良く前に出られた。(渡邉)一成さんとワンツーできたのはうれしいですね。今日(準決)は逃げイチみたいなメンバーだったので、ここで逃げないとこの先厳しいかなっていうのがあった。出切ってからも踏みすぎることなくペースで回せました」
 別線を警戒しながら番手で車間を空けた渡邉一成は、直線での猛追及ばず2着。同地区の後輩を絶賛する。
 「(吉田が突っ張ったあとに)ペースも落ちて、そのタイミングで新山君がものすごい勢いでいって。そこからの1周半のラップは今まで経験したことないスピードでしたね。(新山は)最後の最後まで加速してて抜けなかったです。(2人で決勝に乗れたのは)新山君の力が90パーセント、残りの10パーセントは自分の努力もあってかなと思うので本当にうれしい」
 3番手に飛び付いた吉田拓矢は、結果的に車間を詰めての流れ込み。ラインを固めてくれた埼玉コンビには申し訳なさそうに振り返る。
 「後ろに迷惑を掛けちゃったなと。思いの外(山田)庸平さんとのあれが長引いて、新山さんにいい形で出切られた。追いつくのにも時間が掛かったし、新山さんも掛かっていたので行けなかった。(グランプリ出場とGI制覇の)チャンスをいただいたので、もちろん優勝を目指して頑張るだけです」

<12R>

園田匠選手
園田匠選手
 眞杉匠に突っ張られた北津留翼は園田匠(写真)の援護で中団に迎えられるが、新田祐大に割り込まれて7番手で打鐘を迎える。4番手の新田は最終ホーム手前から早めのスパート。逃げる眞杉を2コーナーでとらえる。しかしながら、北津留翼がその上を襲い掛かる。北津留が新田をとらえて、園田がゴール前で交わした。
 「(北津留が突っ張られて位置を確保しにいって)山田(久徳)君を押さえたら引いてくれたので、あの1車は大きかった。それで(北津留)翼が落ち着いて仕掛けられたと思う。(新田に入られて北津留は7番手の)結局いつもの位置に戻っただけです。信頼していました。(北津留がまくって新田ラインを乗り越えていった時は)興奮していました。脚の感触よりも気持ちです。お客さんがあんだけ暖かいので翼と気持ちだけで走っていたと思います」
 打鐘で7番手に置かれて万事休すかに思われた北津留翼は、4番手の新田が早めに仕掛けてチャンスが生まれた。まくりで強襲も最後は新田に当たられてスピードが鈍ったものの、地元ワンツーをメイクした。
 「先輩の前だったんでちょっと緊張しましたけど、なんとかワンツーできて良かったです。(周回中は)前から2番目からの組み立てだったんですけど、それか前かで…。早くも失敗して、3回失敗しちゃいました。切りにいって突っ張られて、園田さんが中団を取ってくれたんですけど、それを見送ってしまい…。もうバランバランでした。(まくりで前団に迫り)最後に新田君とぶつかって失速したんですけど、なんとか耐えることができました」
 単騎の山田久徳は、不本意な9番手。が、結果的にそれが功を奏して、GI初優出を決めた。
 「園田さんが降りてきて、行けるかどうかわらなかった。ちょっとビビッてバック踏んで一番後ろになりました。(最終)ホームで北津留さんが行く気配がしてたんで、信頼して付いてました。もし北津留さんが止まったら、内に行けばいいやと思っていた。単騎で9番手なんで、その辺は反省点です。でも、しっかり付いていけて良かった。目標にしていたGIの決勝に乗れたのでとりあえず一区切りというか、明日(決勝)はしっかり古性(優作)君に付いていきたい」