『第63回朝日新聞社杯競輪祭(GI)レポート』 最終日編

配信日:11月24日

 グランプリをかけた最後の戦い。北九州メディアドーム・小倉競輪場で開催された「第63回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」は、11月23日に最終日が行われた。S級S班の2人に今年のタイトルホルダーら豪華メンバーによる決勝は、新山響平がレースを支配。単騎で脚をためた吉田拓矢が、6番手から突き抜けてGI初制覇。優勝賞金3618万円(副賞含む)を獲得し、12月30日に静岡競輪場で1億円超をかけた一発勝負「KEIRINグランプリ2021(GP)」の出場権をつかみ取った。これで吉田をはじめ、グランプリに出場する9人が決まった。

決勝戦 レース経過

 号砲で北津留翼がスッと前に出て正攻法。北津留-園田匠の地元勢が前を占め、新山響平-渡邉一成の北日本勢が続く。その後ろは単騎の松浦悠士、郡司浩平となり、7番手は古性優作-山田久徳の近畿勢で、やはり単騎の吉田拓矢が最後方。この態勢でしばらく静かな周回を重ねる。
 赤板前の2センターで古性が踏み上げようとすると、これを制すように郡司が車を上げていく。郡司に近畿勢、吉田が続いて赤板で新山に並びかけると、新山はすんなり車を下げた。3番手に入った郡司は後続の動きを窺いながら更に踏み上げ、1コーナーで先頭に立つ。郡司を追っていた古性-山田が更に前に出ると、郡司は近畿勢に続き、この後ろに吉田が降りた。7番手まで下げていた新山はジャン前から反撃開始。渡邉はきっちり続くが、松浦は付いていけず2センターで郡司の後ろに入り態勢を整える。古性はかなり踏み込むも新山が先頭に立ち、渡邉も外々を回って新山に続き古性は3番手。その後ろはイン郡司、アウト山田で取り合い、以下は松浦、吉田、北津留、園田で最終ホームを通過。最終バックで古性が仕掛けるが、行けずとみて北日本勢の後ろに付き直した。松浦もスパートするが古性の外までが精一杯、北津留も伸びを欠く。新山-渡邉、古性で直線に入ったが、2センターで外に持ち出した吉田がイエローライン付近を鋭く伸びて前団を一気に抜き去りG1初Vを達成。逃げた新山が2着に粘り、4コーナーで吉田にスイッチしていた園田が3着。

<1R>

佐々木雄一選手
佐々木雄一選手
 赤板1コーナーで高橋晋也が先頭に立ち、北日本3車が出切る。単騎の藤岡隆治が4番手に切り替えて、竹内雄作は5番手。高橋晋也が竹内に反撃のタイミングを与えずに、ペースを上げて逃げる。竹内のまくりは一息で、番手の佐々木雄一(写真)が勝機をモノにして、通算400勝をGIで遂げた。
 「最後の4コーナーで櫻井(正孝)君のコースを空けたつもりが、藤岡さんが入ってきていたみたいですね。しっかり確認していれば櫻井君と決まったと思うしミスですね。(通算)400勝勝は意識していなかったですし通過点です。でも、今回は連日、いい番組を与えてもらいながらも、生かせなかった悔しさが残ります」
 単騎の藤岡隆治は北日本勢を追走から、最終2センターでインをすくって直線で高橋と佐々木の間を伸びた。
 「自分は外に持ち出す脚はないので、内が空けばって思っていたらタイミング良く空いてくれた。今回はいい経験になりましたね。まだまだ足りない部分もありますけど頑張っていきたい」

<4R>

門田凌選手
門田凌選手
 京都ラインが押さえて出て、太田竜馬は4番手に下げる。赤板2コーナーから根田空史が仕掛けて、山本伸一もペースを上げる。最終ホーム手前で竹内智彦が降りると、太田は冷静に引いて態勢を整える。根田が不発で浮いたところを、太田がまくる。逃げる山本の番手から稲垣裕之も踏むが、スピードの違いで太田がとらえる。続いた門田凌(写真)がゴール前で差し切った。
 「(太田の踏み出しに)ちょっと空いた感じがあったけど、追いつくと思ったんで様子を見ながらでした。浮いたら内に行かなきゃっていうのもあった。でも、そんな必要もなかったですね。余裕はなかったんで、なんとか(太田を交わせた)。四国で太田君以上のダッシュはいないと思うので、太田君のまくりを差せたのは自信になります」
 別線の踏み合いもあったが、太田竜馬はさすがのダッシュで別線を仕留めて四国ラインを上位独占に導いた。
 「(最終ホームで竹内が降りてきて)そこはこだわるところではなかったし、イケる感じがあったんで引きました。重かったんですけど、無理やりいった感じです。(今シリーズは)自転車を換えたりして、それがイマイチ合ってなかった。練習では良かったんですけど、ドームが合ってなかったのか。このあとまた帰って練習します」

<8R>

岩本俊介選手
岩本俊介選手
 岩本俊介(写真)が、眞杉匠を押さえて出る。浅井康太が4番手に切り替えて、眞杉が7番手まで下げて打鐘を迎える。ペースを握った岩本は、眞杉を警戒しながら4コーナーから踏み上げる。眞杉も反撃に出るが、岩本がリズムよく駆ける。中団の浅井を越えて前団に迫った眞杉だが、最終4コーナーの田中晴基のブロックで失速。岩本が逃げ切った。
 「道中は眞杉君よりも後ろにいたいっていうのがありました。自分のペースに持ち込むのには、最高の展開でした。自分の力を(積極策で)出し切った方が結果がいいっていうのを再確認をさせられた開催でした。若い時よりも最近の方が強くなっているって感じがするし、自転車に伝わっている感覚がある。道具の使い方がつかめてきたかなと」
 7番手の眞杉匠は、打鐘の4コーナーから反撃。岩本に合わされながらも、踏ん張ってロングまくりで2着。
 「(周回中の位置取りが)前っていうのは考えてなくて、引くのが遅くなってしまいました。自転車の感じが良くなくて、体の方も良くない。セッティングがいつもと違って、それで3日目くらいから腰の方も…。前の自転車が壊れてしまったんで、元に戻そうとはしているんですけど。(シリーズで)5走して1本しかバックを取れてない。積極的に行こうとはしているんですけど」

<10R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 前受けの新田祐大(写真)を赤板で佐々木悠葵が押さえにくるが、新田は突っ張る。打鐘を過ぎて後方から取鳥雄吾が一気のカマシ。この動きを冷静に見極めた新田は、取鳥-柏野智典を出させて3番手を確保する。最終2コーナーに入ると新田は迷わず仕掛けていき、3コーナーでは取鳥を仕留めて直線へ。そのまま新田は押し切って勝利。気持ちを切らさず福島ラインでワンツースリーにも導いてシリーズを終えた。
 「(佐々木悠葵を突っ張って)取鳥(雄吾)君が来るタイミングで(佐々木が外にいたんで)見えなかった。スピードも上がってたんで、(飛び付くのに)思い切り踏みました。このバンクだから早い段階で(ラインの3人で)決めたいっていうのがありました。グランプリを逃してしまって、来年は1班として上を目指す立場になる。本当はグランプリを決めて来年を迎えたかったけど、(今年ラストのGIで1着は)いい形で終われたと思います」
 いい感じで新田に詰め寄った佐藤慎太郎だが2着まで。
 「新田と一緒の時は付いていくことだけに集中してと思ってます。(3番手に飛び付いて新田も)もう一息置きたいところだろうけど、(ラインが)3人いるから、自分がイメージしていたよりも早く仕掛けてくれた。グランプリもあるんで、1着を取って弾みをつけたいところだったけど、新田が強かった」

<11R>

平原康多選手
平原康多選手
 赤板で野原雅也が切った上を。渡邉雄太が叩いて打鐘から主導権。しかし、追って上がってきた宿口陽一が強引にこの上を最終1コーナーで叩いてしまう。立て直して2コーナーから野原雅也がまくりで迫ると、僚友の番手を回っていた平原康多(写真)は引き付けて2センターから前に踏み出していく。最後は2着以下を突き放して完勝だった。
 「前か後ろしかないと思ったので後ろよりも前からって感じでした。波のリズムが合わなくて1車くらい遅れてしまいましたね。付いてからは余裕がありました。宿口が失速してきたのでどこから踏み上げるかって感じでしたね。内はわからなかったですけど野原もきていたのが見えたので。ちょっと張って3コーナーくらいですかね。踏み上げる感じだったのでそのくらい(2センター)に見えたんだと思う。宿口も気持ちの入ったレースをしてくれたので。今年は宮杯に(怪我で)出られず悔いが残ったので。来年は全部出られるように頑張ります」
 渡邉が宿口に叩かれると、和田健太郎は平原後位にスイッチ。しかし、埼玉勢追走の神山拓弥も外で必死にこらえて併走が長引いたため、最後は伸びず。平原に迫ることはできなかったが手堅く2着に入った。
 「想像以上に野原に踏まれたので。雄太もきつかったと思います。野田(源一)さんはラインじゃないので難しかったですよね。平原のところはいけなかったので神山君のところに切り替える感じになりました。無理に持っていくというよりもうまく返して感じでした。最後も特に踏み込んだ感覚は良くなかったですね。(チャンピオンユニフォームを着て走った)この一年は大きかったですね。また同じ場所に戻ってこれるように精進したいです」

<12R>

吉田拓矢選手
吉田拓矢選手
 吉田拓矢(写真)が自らの力でグランプリ出場権を勝ち取った。単騎が吉田を含めて3人と超細切れ戦となった決勝は、赤板過ぎから郡司浩平、古性優作が並んで上がってくる。先に切った郡司を、古性が押さえて打鐘へ。そこに新山響平が一気にカマしてくる。古性も合わせて踏み上げたが、2センターで叩いて新山の先行勝負に出る。ハイペースの中、3番手に古性、5番手に郡司、6番手に松浦、7番手に吉田、8、9番手が地元勢となって最終ホームへ。郡司が山田をさばいて1車上げる一方、松浦は2コーナーからまくり発進。郡司の後位に車を上げた吉田は2センターでさらに松浦を追うように踏み出す。結局、直線では松浦も古性も郡司も逃げる新山の3番手でからんで伸び切れず、番手の渡邉一成もいっぱいとなったが、中コースを吉田が一気に突き抜けた。
 「松浦さんに入られたけど落ち着いてためられました。今日もはもう一発狙ってって。道中も余裕がありましたし、松浦さんに勢いをもらっていけました。追っかけられてスピードをもらえたので。4コーナーの下りで伸びる感じがしたので、何とか届きました。やっぱり弟も出てきて負けられないので。お互いに高め合ってこれているので。グランプリが楽しみですね。グランプリでもいいレースができるように頑張ります」
 新山響平はこの日もレースを完全に支配する先行で押し切る態勢だったが…。吉田の強襲に屈して悔しい2着に。
 「スタートの位置はどこでも良かったですね。北津留(翼)さんがインを切りにくる単騎の選手を突っ張るかなって思ったので、僕は早めに引いて態勢を整えられれば巻き返せると思っていました。(古性に)飛び付かれたら自分もチャンスがなくなるのでイエローラインのギリギリを攻めました。座ったときに変な所に座ってしまって直している余裕はなかったんですけど意外と踏めました。4コーナーの下りまでいけたんですけど拓矢にいかれてしまった…。(同期の)拓矢に獲られたのが悔しいですね。なんかもう追いつけないんじゃないかって…。拓矢はうまいし強いんで…。でもまた追いつけるように頑張ります」
 園田匠は2コーナーまくりの北津留が不発の展開にも、スピードを殺さず直線に入ってきて大外を伸びる。及ばず3着だったが意地は見せた。
 「こんなに悔しいレースは今までにない。翼と一緒に乗れたチャンスを生かせなかった。バック9番手であのコースしかないって所を踏みましたけど、あと2車届かなかった。あそこまでが今の力ですね」

次回のグレードレースは「第2回施設整備等協賛競輪in武雄GIII」が11月25日~28日の4日間に渡り開催されます。
今開催はS級S班が不在なものの、当所記念で4Vを達成している荒井崇博を筆頭に、トラック短距離の強化指定選手である小原佑太、8月に特別昇級を果たしたばかりの土生敦弘など注目選手が出場予定です。
11月15日時点の出場予定選手データを分析した、「第2回施設整備等協賛競輪in武雄GIII」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

プロスポーツ号外版(表)は"こちら"
プロスポーツ号外版(裏)は"こちら"