『第64回朝日新聞社杯競輪祭(GI)レポート』 最終日編

配信日:11月28日
 22年、グランプリをかけた最後の戦い。北九州メディアドーム・小倉競輪場で開催された「第64回朝日新聞社杯・競輪祭(GI)」は、11月27日に最終日が行われた。決勝は、4車の北日本ラインの先頭を務めた新田祐大が主導権。坂井洋が番手に飛び付いてもつれたが、新山響平が番手まくりで抜け出して初戴冠。昨年準Vの雪辱を果たして、優勝賞金4147万円(副賞含む)を獲得。グランプリ出場のキップをつかんだ。また、グランプリをかけた獲得賞金争いもこれでピリオド。平塚が舞台の1億円超をかけた一発勝負「KEIRINグランプリ2022(GP)」に出場する9人のメンバーも決まった。
決勝レース出場選手特別紹介
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Kー1三階級王者 武尊トークショー
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北九州市(小倉けいりん)からトラック自転車競技へ寄付
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決勝戦 レース経過

 号砲と同時に平原康多、郡司浩平、新田祐大の内枠3人が一斉に飛び出してスタート争いに。結局、再内枠の平原が譲らず、坂井洋-平原の関東勢が前受け、その後ろは郡司-小原太樹の神奈川コンビがガッチリキープして、単騎の荒井崇博、新田-新山響平-守澤太志-成田和也の北勢は後攻めとなって周回を重ねる。
 青板バックを過ぎて、坂井が徐々に誘導との車間を切って警戒が始めるが、後続の動きはなし。坂井がさらに車を外に外して後方からの仕掛けを警戒していくと、荒井が内を機敏にすくって赤板で関東勢の後位まで車を上げる。坂井、郡司に見られながら、新田は2コーナーでダッシュ。坂井も踏み込んで突っ張り、打鐘3コーナーからは両者で車を併せての激しいモガき合いに。新田が“世界のスピード”を発揮して最終ホーム手前で坂井をねじ伏せて主導権を奪取。叩かれた坂井も諦めずに踏み続けて今度は新田後位に飛び付く形で新山と併走を始める。そのまま番手がモツれるかに、2コーナーに入ると迷うことなく新山はまくりに転じる。見る間に守澤-成田は置き去りとなり、追って仕掛けた郡司-小原が、後続を突き放して駆ける新山追撃を始める。スピードに乗った郡司は、守澤を乗り越えて着実に新山との差を詰めていくが、こらえた新山がセーフティーリードを保ったままゴール。2着は郡司で、守澤にからまれながらしのいだ小原が3着に続いた。

<4R>

大槻寛徳選手
大槻寛徳選手
 松本貴治が切った上を伊藤颯馬が押さえて先行態勢を取る。一本棒の8番手でタイミングをうかがった渡邉一成は、打鐘2センター過ぎから反撃に出る。渡邉がスムーズに加速して、最終2コーナーで出切る。北日本勢に切り替えた長島大介は、まくりじわじわと北日本勢に迫る。渡邉に付けて絶好の大槻寛徳(写真)が、直線で落ち着いて追い込んだ。
 「(渡邉は仕掛けるタイミングを)ツーテンポくらい、わざと遅らせたみたいですね。それでもつ距離からと。自分も余裕はあったんで、(長島が来たら)止めようと思ってたけど、うまくツケマイされました。脚的にはそんなにいいていう感じではなかった」
 長島大介は俊敏な立ち回りで、最終ホームで北日本勢を追いかける。小休止してからのまくりをこう振り返る。
 「(渡邉)一成さんが切れば、僕の先行かと思ったけど。一成さんが待ったんでああなりました。もうちょっと伊藤君とやり合ってくれれば、僕も行けたんですけど。一成さんもペースに入れてたし、大槻さんにもってこられるかなと。(コーナーを我慢してもう一度踏む)そういう地脚はあるんですけど、あれを乗り越える自力ですね。それがあれば、もう少し上で戦えるかなと。自分の課題がみえて、次からやりたいレースっていうのがみえたんで収穫がありました」

<8R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 野原雅也の上昇に合わせて、中団から山崎芳仁も動くが、前受けの清水裕友(写真)も赤板過ぎに踏み込む。中近ラインを受けた清水が、うまく4番手をキープして打鐘を迎える。野原が4コーナーからもう一度加速、そのまま主導権を握って駆ける。前団を射程圏に収めた清水は、2コーナーからまくる。番手から出た三谷竜生をねじ伏せた清水が1着。
 「中団から組み立てたかった。(前受けになって)あのまま淡泊になると7番手になるから、1個(のラインを)突っ張ってと思いました。あれで(山崎が)ドカンと行かれるのは想像しにくいし、作戦がうまくハマったかなと。三谷さんもちゅうちょしている感じもあったので、緩んだ隙を(まくって)行けた。その前に脚を使ってた分、キツかった。初日から自分だけのレースばっかりだったので、最後はラインで決められたのは良かった」
 中四国ラインで上位を独占。清水マークの柏野智典は、1輪差まで詰めてのゴール。
 「(清水が)冷静に立ち回ってくれましたね。(最終)ホームくらいで(清水が)行くかなっていう気配があった。そこを見てからだったけど、そこまでキツい感じはなかった。(シリーズを通しては)すごい良かった。仕上がっていたと思います」

<9R>

渡部幸訓選手
渡部幸訓選手
 犬伏湧也も果敢に突っ張るが、7番手から赤板目がけてスパートした菊池岳仁げ強引に叩き切る。打鐘で犬伏は3番手に立て直し、松浦悠士、中本匠栄の追走。再度、犬伏が仕掛けるが、菊池も合わせて逃げる。両者が重なり隊列が短くなったところを、8番手から単騎の渡部幸訓(写真)がまくる。3コーナー過ぎに前団を1人でのみ込んだ渡部が、後続をちぎった。
 「菊池(岳)君と犬伏君がやり合って、脚を削り合ってくれた。それでいい位置に入れればって感じで(まくりを)考えていました。松浦君もかばっている感じだったので、休むよりは行った方がいいと思った。犬伏君と松浦君を目標に吸い込まれる感じで行けた。あとは山を乗り越えられればって感じでした」
 犬伏マークの松浦悠士は、最終2コーナーで外に浮いて態勢を立て直す。渡部を追いかけるが、6車身差の2着まで。
 「犬伏君が(菊池岳を)合わせ切れば追い上げないとですし、引いてきたら入れないとだった。(打鐘4コーナーから再び仕掛けた犬伏の仕掛けに)出脚で付け切ってしまうとしゃくられるのも嫌だった。それで内外線間を外さないように。行き切りそうだったので付いていって、諸橋(愛)さんに(ブロックを)もらった。行き切りそうだったので、そこに集中しすぎていたら(まくった渡部の)気配に気づけなかった」

<10R>

山田久徳選手
山田久徳選手
 赤板1コーナーで北津留翼を押さえた深谷知広が先頭に立つ。古性優作が4番手に続いて、単騎の瓜生崇智、浅井康太が6、7番手。北津留が8番手になり打鐘を通過する。北津留の反撃を警戒しながら、2センターから深谷がさらにスピードを上げて逃げる。古性は、最終1センター過ぎから仕掛ける。深谷の掛かりも良く、松坂洋平のブロックもあったが、まくった古性が直線でとらえる。古性に付けた山田久徳(写真)が、差し切って1着。
 「(古性が仕掛けて)行った瞬間、まくり切ると思った。そしたら(松坂の)ブロックが(古性の)車輪に来て危ない感じだった。それで古性も止まった。(深谷知広ラインの)3番手が離れてたんで、そこは位置を確保して自分は余裕がありました。その分、最後は伸びてくれた。(シリーズを通して)タテ脚自体は悪くなかった」
 抜かりなく4番手を確保。どっぷりと構えることなく力勝負で前団を仕留めた古性優作が2着で近畿ワンツー。
 「(4番手を取ってのまくりは)最低限ですね。(駆けている)深谷さんがとんでもなく強かった。行ける感じがしなかったけど、(山田)久徳さんが付いているんでとりあえずは踏まないとっていきました。松坂さんのブロックがかなり危ない感じだった。昨日(5日目)からセッティングはいじってなくてボチボチかなと。(グランプリまでに)自転車との一体感を上げていきたい」

<11R>

脇本雄太選手
脇本雄太選手
 岩本俊介の上昇に脇本雄太(写真)は、赤板前に引いて7番手で構える。3番手にいた山口拳矢が、打鐘で踏み込んでカマす。山口が主導権を握り、野田源一が3番手に飛び付いて最終周回。5番手の岩本が2コーナーから仕掛けて、脇本がその上を踏み上げる。南修二、東口善朋は付け切れず、脇本がスピードの違いで、逃げる山口を楽にまくり切った。
 「(スタートから)ちょっと想定外だったので、ちょっとパニックになってしまいました。ジャンの2コーナーで仕掛けるタイミングはあったんですけど、ちゅうちょしてしまった。(踏み込んだ感触は)悪くなかったですけど、ラインで決められていないですし反省点は多いです」
 山口がタイミング良くカマして先行策。山口を利した香川雄介が、差し脚を伸ばして離れた2着。
 「正直、後ろはどうなっているかわからなくて、山口君の動きにだけ集中していました。山口君のタイミングで仕掛けてくれればって思っていた。(最終)バックですごく掛かっていて、ひょっとしたら1着あるかなって思った。山口君は才能があるし、すごいダッシュでしたね」

<12R>

新山響平選手
新山響平選手
 6番手の新田祐大が、赤板2コーナー手前からフルダッシュ。前団に構えていた関東勢も合わせてペースを上げるが、新田が打鐘4コーナーで主導権を奪う。坂井洋が飛び付て、最終ホームでは新田後位が坂井と新山響平(写真)で併走。新山は逃げる新田のペースを見極めて、2コーナー手前からまくりに転じる。守澤太志が遅れ気味に追走。まくりで襲い掛かる郡司浩平と守澤がからんで、新山は後続を離して3コーナーに入る。郡司が守澤を越えて、新山を追いかけるがセーフティーリード。新山が押し切って、ビッグ初VでGI制覇を遂げた。
 「本当にラインの新田さん、守澤さん、成田(和也)さんに感謝の気持ちでいっぱいです。新田さんに位置取りから、なにからやらせてしまった。僕は後ろから出ていっただけ。(優勝で)新田さんの走りをムダにしなかったことだけですね。それが最低限のことだった。調子が悪くないのは、初日からわかったので、自分できることをしっかりとやった。余裕はあったので、ゴールまで踏める自信はありました」
 まくった郡司浩平は、仕掛けのタイミングが遅れて、スピードに乗り切った新山を追いかける。守澤のブロックでスピードも失速。新山を脅かすまでには至らなかった。
 「赤板で(北日本勢が)来なかった時点で、一発カマシでスピードに乗せてくると思った。そうなれば坂井君も踏むと思った。あとは緩んだところでと。ちょっと(最終)ホームで見ちゃいましたね。成田さんの動きもそうですし、その前の守澤さんと平原さんのところも。そこで見ながら詰まっちゃったんで、ワンテンポ遅れましたね。あそこで仕掛けていれば、結果的に(最終)1コーナーで苦しくても、新山君の後ろにスポッとハマれたかなと」
 同県の郡司に続いた小原太樹が3着。19年高松宮記念杯に次ぐ2度目のGI決勝でも表彰台にあがった。
 「結構、守澤さんのブロックがキツくて、(郡司)浩平のスピードが止まっちゃった。自分も1回スピードを殺してからだった。そのあと浩平もタイミングがズレて伸びていく感じでしたね。最後は優勝はなくても、理想を言えば浩平を抜きたかったです」

次回のグレードレースは、高松競輪場開設72周年記念「玉藻杯争覇戦」が、12月3日~6日の日程で開催されます。
今シリーズは平原康多、宿口陽一の埼玉SS班コンビが人気を集めそうですが、太田竜馬、山口拳矢、吉田有希、嘉永泰斗、太田海也ら将来性豊かな若手の自力型がそろっており、一筋縄ではいきそうにありません。
勝ち上がり戦から激しいバトルが繰り広げられそうで、見逃せない4日間です。

11月23日時点の出場予定選手データを分析した、高松競輪「玉藻杯争覇戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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