『第65回朝日新聞社杯競輪祭(GI)レポート』 最終日編

配信日:11月27日

 グランプリをかけたラストバトル。北九州メディアドーム・小倉競輪場を舞台にナイターで開催された「第65回朝日新聞社杯・競輪祭(GI)」は、11月26日に最終日が行われた。太田海也らGI初優出となる選手もいたトップ9による決勝は、3車の南関勢が主導権。単騎の眞杉匠が番手まくりに出た松井宏佑をゴール前でとらえてV。8月のオールスターに次ぐ通算2度目のGI制覇で優勝賞金4590万円(副賞含む)を獲得した。これで年末に立川で行われる優勝賞金1億円超の一発勝負「KEIRINグランプリ2023(GP)」の9人のメンバーも、すべて決まり、獲得賞金で9番目に新山響平が滑り込んだ。

決勝競争出場選手特別紹介
決勝競争出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 号砲が鳴ると、内枠を利して松浦悠士が誘導員を追う。太田海也-松浦、深谷知広-松井宏佑-簗田一輝、眞杉匠、脇本雄太-南修二、北津留翼で隊列が落ち着いた。
 青板バックから脇本が上昇し深谷にフタをすると、深谷は2センターですかさず引いて、すぐさま赤板ホームで巻き返して1コーナーで先頭に立つ。深谷-松井-簗田、眞杉、太田-松浦、北津留、脇本-南で赤板バックを通過。ジャンで深谷は一気にペースを上げていく。最終ホームで脇本がスパートするも、車があまり進まない。2コーナーから太田がまくりを開始。それに合わせて深谷の番手から松井がスパート、4番手の眞杉も踏み上げる。松井の踏み出しに簗田はやや口が空き、眞杉は松井後位にスイッチすると、外の太田をけん制する。ゴール寸前で松井を捉えた眞杉がオールスターに続き今年2度目のGI制覇。番手まくりを放った松井は、眞杉に半車輪交わされて2着。太田のまくりが不発となり、切り替えた松浦が眞杉を追う形から3着に入った。

<3R>

犬伏湧也選手
犬伏湧也選手
 赤板過ぎに犬伏湧也(写真)が踏み込んで突っ張る。黒沢征治は7番手に戻り、2コーナーから再度仕掛ける。が、犬伏も打鐘でペースを上げて、黒沢は中団まで。犬伏がリズム良く駆けて最終ホームを通過。5番手で脚をためた窓場千加頼がまくると、番手の橋本強がけん制。単騎の岡村潤が4番手から中割りを試みるが、ゴール前は犬伏と橋本の勝負。8分の1輪差で、犬伏が振り切った。
 「いつもの感じではなかったですね。5走目の疲れというよりも…。今シリーズは悔しいの一言です。今回の前に地区プロがあったりしたけど、それでも強い人っていうのは勝ち上がることができるし、今回は予選も勝ち上がれていない。今年のGIでは(3回決勝に乗って)やれる感じはあったけど、そういう(勝ち上がり)ところのレベルアップをしていかないと。GIの決勝にずっと出れていれば(S級S班やタイトルの)チャンスはある」
 シリーズ3走目は犬伏ラインの3番手から突き抜けた橋本強が、今度は2着でのワンツー。
 「(窓場が)粘りっこく来たので、2回振って最後に突っ込んできたのも(渡部)哲男さんだと思って、コースをつくりながら踏んだけど抜けなかったですね」

<6R>

東口善朋選手
東口善朋選手
 前受けから突っ張る中野慎詞を制して、橋本壮史が主導権を握る。中野が下げると、打鐘3コーナーで東口善朋(写真)が4番手に追い上げる。単騎の小川勇介も近畿勢に続いて、中野は最終ホーム手前でようやく7番手まで引き切る。1センター過ぎに中野が反撃に出ると、東口も合わせてまくり上げる。逃げる橋本の後ろの吉澤純平は、車間を詰めながら東口をけん制。直線の踏み合いに勝った東口が1着。
 「正直、1着は難しいなってレースでしたね。中野君が突っ張りならそこでと思ったけど、橋本君が行ったら中団と思っていた。昨日(5日目)も同じようなレースで失敗したので、そこはないようにと。それで先まくりにいければって。もっときれいに車が出れば良かったです。年齢を重ねているけど、課題がある。とくに今日は厳しい戦いだったけど、昨日、今日は気持ちをしっかりともって戦えた」
 東口マークの神田紘輔は、直線で外を踏んで吉澤との2着争いをタイヤ差で制した。
 「本来は東口さんの前でやらないといけないけど、弥彦の寬仁親王牌の時もお世話になっている。自分はまだまだですね。東口さんは追い込みで一番脚があると思っている。今日(最終日)も勉強させてもらいました。自分も前でやれるように頑張りたい」

<7R>

清水裕友選手
清水裕友選手
 スタートでけん制があり、清水裕友(写真)が誘導を追いかけて中国勢が前団に構える。町田太我がそのまま突っ張るが、寺崎浩平も踏みやめず両者で壮絶な主導権争い。打鐘過ぎに寺崎が出切ると、巻き返した森田優弥が最終1コーナーで近畿勢後位に入る。清水は町田の余力を確かめて、自力に転じてまくり上げる。2センターで清水がまくり切って、山崎賢人の強襲を退けた。
 「寺崎さんが前かなと思ってたんで、スタートけん制があったのは意外でした。(町田)太我が強かったけど、寺崎さんがすごかった。太我もあそこまで行ってくれて、後ろに久保田(泰弘)も付いているので、仕掛けてみようかと。みんな消耗していたんで(いけた)。(今シリーズは)調子が悪くなかったけど、二次予選がすべてですね」
 最終ホームで8番手に置かれた山崎賢人は、まくった清水ラインを目標に踏み込んで微差、届かずの2着。
 「前がかなり踏み合っていたんで、僕もキツかったです。(仕掛ける)タイミングもズレてしまった。(今シリーズは新車を使って)最近では一番良かった。ただ、今日(最終日)も井上(昌己)さんを付けて不甲斐ない。(準決も)反省ですね」

<8R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 小原佑太が前受けから踏み込んで、突っ張られた取鳥雄吾は阿竹智史のアシストもあり赤板2コーナーで3番手に入る。打鐘手前から8番手の北井佑季が反撃に出る。新田祐大は北井を張りながら前に踏むが、そこに山口拳矢(写真)がまくりで襲い掛かる。スピードの違いで新田をとらえた山口が、後続をちぎった。
 「(別線は)みんな行く選手ですし、スピードが上がってからは位置にはこだわらなかったですね。前もアンコになっていて出づらいかなって思ったんですけど、いいタイミングで行けたと思います。(今シリーズは)チェーンを換えたりインソールを換えたりしたんですけど。(グランプリで使う)フレームはまだ決めていないですね。(今シリーズは)グランプリに向けてというか怪我が一番怖かったので、勝負できなかったというか消極的になってしまった。でも、最後は気持ち良く踏めた」
 単騎の伊藤旭は最終2コーナーで外に持ち出して、浅井康太をさばくように山口のまくりにスイッチして追った。
 「先手ラインの3番手って考えて、北日本が前ならその後ろからって思っていました。(赤板から打鐘にかけて)きたのが取鳥さんラインだったので、あそこは入れてもいいかなって。山口さんが仕掛ける前に仕掛けての2着の方が良かったんですけど。飛び付きばっかりやっていたら自分も狙われますし、先に仕掛けられるように」

<10R>

松谷秀幸選手
松谷秀幸選手
 赤板1センターで押さえて出た守澤太志は、平原康多の仕掛けに合わせてペースを上げる。赤板2コーナー過ぎに平原は空いた3番手に入り、埼京コンビを追った郡司浩平がそこをすかさず叩きに出る。郡司が打鐘4コーナーで出切り、神奈川勢の主導権。3番手が山田英明と守澤でもつれて、荒井崇博もさらに外を踏む。が、先行策の郡司の掛かりも良く、3番手以下は苦しい。番手の松谷秀幸(写真)は郡司を交わした。
 「出たとこ勝負だった。(自分のところに)誰かしら来るとは思っていた。(最終ホームで)山田君が来たのがわかったけど、そこは(郡司)浩平も踏んで合わせてくれた。それで自分はなにもすることがなかった。前回の京王閣で落車をしてフレームがダメになった。(今回は)昔のフレームだったし不安だったけど、むしろここ最近では付いていて一番楽だった」
 仕掛けどころで臆することなく踏んで風を切った郡司浩平が、さすがの走りを見せてシリーズを終えた。
 「守澤さんが押さえたところで、ヒデさん(山田)が思ったよりも踏み込んだんでタイミングを見ちゃった。そのあとは平原さん(のライン)に付いていって、切ったらその上を、併走になるならすかさずと。そこのタイミングだけは逃さないようにした。出てから流して、(最終)ホームでヒデさんが来ていた。後ろがもつれるような形になったんで、ペースでもつようにと。今日(最終日)はこれしかないっていう感じでした」

<12R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 周回中、7番手になった脇本雄太が上昇して南関勢に併せ込むと、深谷知広はすんなり6番手まで下げて立て直す。赤板1コーナーで深谷が先頭に立ち、先行態勢を取る。南関ラインには単騎の眞杉匠(写真)が続いて4番手。5番手に太田海也が入り、もう1人の単騎、北津留翼は7番手。脇本は一本棒の8番手で打鐘を迎える。逃げる深谷が踏み上げるなかで、4コーナーから脇本が巻き返す。しかしながら、脇本はあおりもあって2コーナーで後退。5番手の太田が2コーナーからまくり、合わせるように眞杉が踏み込む。それに反応して番手まくりを打った松井には、眞杉が追走。太田は不発で、松浦悠士が切り替えて直線へ。押し切り図る松井をゴール寸前でとらえた眞杉がV。8月のオールスターで初戴冠を遂げた眞杉が、2度目のGIを制覇した。
 「(優勝は)自分が一番ビックリした。南関が行くと思ってたので、そこは読み通りでした。(最終)バックで(太田が)仕掛けて来たのがわかったので、そこを1車追い上げて、あとは松井さんを抜ければと。いっぱい、いっぱいでしたけど、(4日目のダイヤモンドレースの)失敗を生かせて100点のレースができたかなと思います。単騎は苦手というより、得意な方なので、それで優勝ができて良かった。前回(オールスター)はラインのおかげで優勝できて、今回は自力で獲れたので、あとはグランプリを頑張るだけです」
 深谷が敢然とレースを支配して、流れは南関勢。番手の松井宏佑は、最終バック手前からまくって出たが、後位には簗田一輝から奪った眞杉がいた。ゴール線では、眞杉に半車輪交わされタイトル獲りはならなかった。
 「悔しいです。ダメですね。(別線の巻き返しが)早めならけん制して、少しでもラインが有利にと考えていた。深谷さんが掛かっていました。後ろがもたついていたので、見えてから引きつけてからでした。最後の最後、自分の力は出し切れた。来年こそタイトルを獲れるように練習をしたい。今回は自分の成長を感じるシリーズだった。来年はとりこぼしがないように、全部の特別競輪(GI)で自分の納得できるように優勝を目指したい」
 5番手まくりの太田が合わされて、最終2センターでは眞杉に弾かれていっぱい。太田に委ねた松浦悠士は、簗田と太田の間の狭いコースから差し脚を伸ばしたが3着まで。
 「深谷さんの駆け方は緩急をつけながらでうまかった。(太田)海也がもう少し自信をもっていければ。(タイミングとしては最終)ホームから1コーナーですか。(グランプリに)だいぶ勝負になるデキです。これから上積みもつくれそうです」

次回のグレードレースは、伊東競輪場開設73周年記念「椿賞争奪戦」GIIIが、12月2日~5日の日程でナイター開催されます。
今シリーズは地元の深谷知広、渡邉雄太に松井宏佑と南関勢の戦力が充実していますが、新山響平、犬伏湧也などスピードスターがそろっていて、一筋縄ではいきそうにありません。
また、最終日第9レースにて「レインボーカップA級ファイナル」が一発勝負で争われます。A級のチャンピオンを決める戦いにも注目です。

11月19日時点の出場予定選手データを分析した、伊東競輪「椿賞争奪戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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