『第50回競輪祭朝日新聞社杯争奪競輪王決定戦(GI)レポート』 最終日編
 
配信日:1月25日


 北九州メディアドームで開催された「第50回競輪祭・競輪王決定戦」が4日間の熱戦に幕を下ろした。今年最初のG1を制し、記念すべき50代目の競輪王に輝いたのは山崎芳仁。逃げる九州勢、中団からまくる中部勢を上がり10秒7という脅威のラップでひと飲み。一昨年に続き二度目の競輪祭制覇で、いの一番にGPの切符を手中に収めた。


決勝戦・レース経過
 スタートで山内卓也が飛び出し誘導後位へ。山田裕仁を受けて、山田-山内-坂上樹大の中部トリオが前受け。山崎芳仁-伏見俊昭が中団に構え、北津留翼-井上昌己-小野俊之が後攻め。番手宣言の飯嶋則之が井上のアウトに車を合わせたまま、周回が進んでいく。
 長丁場だけに、淡々としたペースで周回を重ねていくが、途中で井上は一車下げて一本棒になる。赤板前から上昇した北津留が山田を押さえると、誘導を残したまま山田は車を下げていく。打鐘過ぎに北津留が後ろを確認しながら中バンクを使うと、井上が空いた内を突いて再び北津留後位が競りになる。しかし、九州勢の呼吸はピッタリで北津留後位は井上が取り切り、小野も飯嶋を飛ばして三番手をキープ。北津留が最終ホームから全開でフカすのに対し、二角の立ち直りで、五番手から山田が好スピードでまくりかける。すると井上も山田に合わせて踏み込み、四角では井上と山田のモガキ合いになった。両者の優勝争いかと思われたが、八番手から怒涛のまくりを仕掛けた山崎が大外を伸び切り、競輪祭2度目のVを決めた。ゴール前は山崎の内に入った伏見が山崎に迫るも2着。井上と山田はからみあったのが響いて伸びず、中を踏んだ山内が3着に入った。

表彰式
表彰式
ウィニングラン
ウィニングラン
ゴール
ゴール




<1R>
廣川貞治選手
廣川貞治選手
   1レースは矢口啓一郎の先行策を利した廣川貞治(写真)が直線で追い込んだ。
  「メンバーを見れば、矢口の(逃げる)展開だったでしょう。だから踏み出しだけ気をつけて、あとは仕事をするだけと思ってました。だけど、2センターで伊藤(正樹)も来なかったし、四角で矢口が踏み直したんで、慌てて目一杯踏みました。最終日に、ひとつ勝てて良かった」
  単騎の山田敦也は、矢口ラインの四番手からまくりを放ったが思うように車は伸びず。
  「今回、久々の実戦だったし、どれくらいいけるかを確認したくてまくってみました。矢口さんを乗り越えられれば、直線で垂れても良いくらいの気持ちでしたが、全く進みませんでしたね」


<2R>
 2レースは逃げる濱田浩司の番手で中井達郎がイン粘り。後続のモツれを尻目に逃げ切ってシリーズ2勝目を挙げた濱田だが、さすがにヘトヘトの様子。
  「疲れました。早めから長い距離を踏んだし、流せんかったから粘れてよかったです。最終日で気持ち的にも疲れ気味だったけど、1着で締められましたからね。また次のG1で頑張ります」


<3R>
牧剛央選手
牧剛央選手
   3レースは金子貴志が主導権をにぎると、即席で連係した牧剛央(写真)が差して1着に。
  「(金子が)もの凄くカカってましたね。中団に山口(貴弘)君がいたし、どこから来るのかずっと気にしていました。だけど2センターでも来なかったから、これはいけるなと。こういう絶好の展開は生かさないとダメでしょう。だけど、直線では少し抜きすぎてしまいましたね」
  3着の山口貴弘は「前がカカッていたし、後ろに室井(竜二)さんが入ってしまい仕掛けにくかったんで、直線勝負で行こうと思っていました。だけど、牧さんもタテがあるし抜けませんね」


<4R>
太田真一選手
太田真一選手
   4レースは吉田敏洋、中川誠一郎の仕掛けが遅く、前で受けた武井大介がそのまま最終ホームから先行態勢に。吉田の巻き返しを武井が2コーナーで大きくけん制すると、空いたインコースを抜けた太田真一(写真)がそのまま押し切った。
  「武井の先行みたいになって、これで三番手と思ったけど、あれだけ空いたからね。かぶると思って瞬間的に内に行ったら先行になりました。今は目標がいないときに良い位置を取ることを課題にしてるけど、今日は体が反応した。逃げになっちゃったけど、結果ワンツーだから良かった」


<5R>
 5レースは、先行した海老根恵太マークの鈴木誠が2センターでまくりをブロックすると、その空いたインコースを突いた宗景祐樹が1着をさらった。
  「今日は長塚(智広)に任せていたし、彼が良い位置を取ってくれたから俺が恵まれただけ。何にもしてませんよ。最後も、内か中しかコースが無かったし、誠さんが大きく持っていってくれたから自然と突っ込めたわけだし」
  2着に逃げ粘った海老根恵太は「連日、積極性に欠けていたし、今日は2車でも先行してやろうと決めていました。ホームでは、まだ柴崎(淳)君がカカッていなかったし、とりあえず出切っておきたかった。思い通り先行できてホッとしました」


<6R>
加倉正義選手
加倉正義選手
   6レースは前受けの荒井崇博が村上博幸を突っ張って打鐘から先行。番手絶好の加倉正義(写真)が最終日にして、ようやく白星をゲットした。
  「今日は荒井のおかげ。強かったよ。ジャンで突っ張ってから流せばいいけど荒井はバックを踏んできた。荒井はギアが小さいけど、自分はギアが掛かっているからバックを踏むのに大分脚を使ってしまった。最後はやっと抜いた感じ」
  2着の荒井崇博は納得の表情でレースを振り返る。
  「今日は突っ張ることしか考えてなかった。昨日負けた悔しさがあったし、気持ちが切れてたところもあるけど、そこを何とかするには先行しかないと思った。俺を信頼して付いてくれる人もいたから。敗者戦で負けたら本当に弱いし、敗者戦こそ大事に戦いたい。今回は準優で負けたけど形にはなってたと思う」


<7R>
渡邉一成選手
渡邉一成選手
   7レースは村上義弘が渡邉一成の抵抗を受けながらも押さえて主導権を奪った。隊列は一本棒となり村上のペースとなったが、バックから渡邉一成(写真)がこれを一瞬にしてまくった。
  「追い出しをかけて、村上さんが流した所を自分がカマす作戦だったんですけどね。村上さんは行ってしまったんでまくりに構えました。昨日もそうだったけど、前田(拓也)さんのブロックはキツいから、何とかそこを凌げればと思って必死で踏みました。ホームで車間が空いてしまったし苦しかったですね」
  渡邉晴智はマークが精一杯。
  「あんな凄いスピードで行ってしまうんだから一成は強い。ホームで車間が空いてたし、(前田)拓也に良いブロックをもらったのに。あれは交わせないし、付いているだけで一杯でした」


<8R>
新田祐大選手
新田祐大選手
   8レースは打鐘で叩いた小嶋敬二を菅原晃が叩いて先行。兵藤一也に切り替えられ、八番手に置かれた新田祐大(写真)だったが、上がり10秒8の好ラップで大外を一気に駆け抜けた。
  「まくりの展開は全く考えてなかったけど、小嶋さんの動きがあったし、兵藤さんの切り替えもあって判断が遅れた。本当だったら4日間バックを取って帰りたかったので、それができず喜びも半減です」


<9R>
紫原政文選手
紫原政文選手
   9レースは入れ替わりの激しいハイスピードなレースとなった。渡部哲男、平原康多、稲垣裕之の自力型が入れ替わりで押さえ合う中、最後に石丸寛之が絶妙のタイミングでカマして最終主導権を奪うと、ゴール寸前で紫原政文(写真)が差し切った。
  「ジャンからのペースがもの凄かった。あの上を行ってしまうんだから石丸は強い。今回は準決勝で負けて悔しかったけど、お客さんの声援もすごかったし、最終日に1着が取れてよかった」
  稲垣裕之は昨日に続き力を出し切り、清々しい表情で引き揚げてきた。
  「押さえたときに平原が三番手に入ったのが分かったから、気になって流してしまった。そこを石丸さんは見逃さなかったですね。結果的に平原とモガき合う形になってしまった。このメンバーでラインが2車だと厳しいですね。でも、今日は勉強になりました」
  大ガマシを決めた石丸寛之も出し切ったレース内容に満足げ。
  「一回は強引に仕掛けようと思ってたし、ホームではある程度行かないとと思ってました。強引に出たからキツかったけど、僕にとっては1着に等しいレースだと思います」


<10R>
武田豊樹選手
武田豊樹選手
   10レースは佐藤友和の先行を中団四番手から武田豊樹(写真)が豪快にまくる。ゴール前は神山雄一郎の猛追を振り切って動きの良さを証明した。
  「中団から(佐藤と)一緒に上がっていって先行争いになるかと思ったけど、友和が強引に踏んできたから中団狙いに切り替えた。ホームでは5番(三宅達也)が外にいたのが見えたから強引に出ました。自分のタイミングではなく無理矢理行った感じだから苦しかった。まくりだったけど、走り終わってからは脚がビンビンしていたよ」
  猛追及ばず2着の神山雄一郎は武田の強さに舌を巻いた。
  「武田が凄かったし、強かった。懸命に抜きに行ったけどダメでしたね」


<11R>
伏見俊昭選手
伏見俊昭選手
山内卓也選手
山内卓也選手
   11レースの決勝戦はバック八番手に置かれた山崎芳仁が第50代競輪王に輝く。ゴール寸前で一度は交わしたかに見えた伏見俊昭(写真)だったが、タイヤ差の2着。さすがにレース後は悔しさを隠せない。
  「ホームでカマすって話だったけど、仕掛ける素振りがなかったので、アレッて感じでした。バックでは実質12番手ぐらいでしたね。あそこまで詰め寄ったけど、(タイヤ差と聞いて)ホントに悔しくなってきました。これでまたヤル気が出ると思います」
  最も落胆の色を隠せないのが、山田裕仁のまくりに乗った山内卓也(写真)だ。初タイトルの夢はゴール寸前でスルリとその手からこぼれ落ちた。
  「あれで獲れないんじゃ…。バックではやったと思って、2センターではよだれが出た。山田(裕仁)さんも良いスピードで行ってくれたし、あとは山崎だけだと思ったけど、山崎は強い。もうちょっとでしたね」
  飯嶋則之との競りをしのいで最終バックを番手で通過した井上昌己だが、「俺の力不足でした。(まくりを)引き付けてと思ったけど、山田さんのスピードが想像以上によかった」
  九州勢の前で果敢に主導権を握った北津留翼は7着に。
  「(打鐘の)3コーナーで上りながら、内から井上さんが来たら全開で駆ける作戦でした。そのとおりになったし、スピードを出し切って惰性でどれだけ行けるかだったんですけどね。微妙な加速配分ができない分、ゴールまで持たなかった。脚がなかったですね」

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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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