『第37回共同通信社杯(GII)レポート』 初日編

配信日:9月17日

 岐阜競輪場で「第37回共同通信社杯(GII)」が、9月17日に幕を開けた。初日は、自動番組編成による一次予選が行われた。松浦悠士が敗退の波乱もあったが、あとのS級S班7人は二次予選に進んだ。18日の2日目も自動番組編成による二次予選のA、Bで勝ち上がりが争われる。
 岐阜競輪場では岐阜市独自の緊急事態宣言の発出に伴い、今シリーズは無観客での開催となりますので、ご理解をお願いいたします。テレビ、インターネット中継などでの観戦をお楽しみください。

<1R>

鈴木庸之選手
鈴木庸之選手
 誘導後位に入った志智俊夫との距離を取った吉田拓矢は、2番手から車間を詰める勢いで仕掛けて最終ホーム手前で先頭に立ち主導権を握る。関東3車が出切り、4番手は志智に踏み勝った和田圭。番手の鈴木庸之(写真)が、逃げる吉田を交わして1着。
 「まずは志智さんに粘られないように、ラインで出切ったのを確認してって感じでした。前回(弥彦)の準決でタレてくるって判断で森田(優弥)君を抜けなかったので、ちょっと早めに踏んだ感じですね。セッティングをいじれば、もう少し良くなると思う」
 単騎選手に注意を払いながら、打鐘の4コーナーからカマした吉田拓矢は、ラインを上位独占に導いて2着に粘り込んだ。
 「前からが一番やりやすいだろうなと。志智さんが追い上げてきたので、(入れるか)どうしようかちょっと悩んでしまったのがもったいなかった。ちょっと物足りない感じもしたんですけど、朝イチで刺激も入っていなかったので、徐々に良くなると思う。とりあえず良かったです。セッティングを少し考えてみようかなって思います」

<2R>

寺崎浩平選手
寺崎浩平選手
 打鐘で主導権を握った大石剣士ラインに続いた寺崎浩平(写真)は、休むことなく踏み込む。目の覚めるようなスピードで寺崎が大石をとらえて風を切る。諸橋愛は遅れ気味も懸命に続く。3番手で車間が空いた大石はなかなか詰まらず、別線に出番はない。諸橋もいっぱいで、寺崎がそのまま押し切った。
 「他地区の追い込みの人に付いてもらうのは、普段より緊張します。でも、(諸橋は)心強かった。強かったって言ってもらえたし、ワンツーを決められたんで自信になりました。このメンバーで先行して1着スタートだったんで、それも自信になりました」
 寺崎の加速力に一時は1車身以上置かれた諸橋愛だったが、2着をキープしてラインでワンツー。
 「(寺崎は)まさかあのタイミングで行くとは。初めて付いたっていうのもあるけど、シッティングで行くんでタイミングも取りづらかった。追いつくのに脚を使ったのもあるんで余裕はなかった。朝(のレース)だったし若干、重かった。1走したんで、これで軽くなるかなと」

<3R>

堀内俊介選手
堀内俊介選手
 後方の新山響平を警戒しながら、赤板2コーナーで仕掛けた谷口遼平が逃げる。それでも新山は全開で飛ばす谷口を最終1コーナーで叩き切る。谷口は浅井康太の援護もあって3番手に入るも動けない。4番手の浅井は、車間を詰めながら早めの追い込みで1着。三重勢に付けた山下一輝は、外にいた山田庸平を軽くけん制して浅井に流れ込んだ。
 「(三重勢の後ろを)選んで良かったです(笑)。浅井さんに付いていければ、なんとかなると思っていた。だから、やることは限られていました。内だけ締めてと。思ったよりも余裕があったのは収穫ですね」
 同期の新山マークから差し脚を伸ばした堀内俊介(写真)は3着。新山の頑張りに感謝する。
 「(新山は)自力型として、すごく手本になりますね。勉強になりました。自分は(ラインが)2車で余裕もなかったですし、浅井さんにだけはもらわないようにと気をつけていました。自分の技量不足でワンツーというか、(新山と)2人で3着以内に入れなかった。でも、新山君の番手を回ってチャンスをもらって勝ち上がれたので頑張りたい」

<4R>

野原雅也選手
野原雅也選手
 中国勢が付いて3車のラインになった高橋晋也が先行態勢を取るが、単騎の松岡辰泰はその上を切って出る。打鐘前から仕掛けていた野原雅也(写真)が、松岡を叩いて先行策。抜群の加速力で野原がスピードに乗せて、3番手以下は離れる。追い込む稲川翔を振り切った野原が1着。
 「6番(松岡)が叩いてくれなかったら、危ない展開だった。なんとかうまいことレースが動いてくれた。叩きに行った時にスピードが上がったので、それからはペースでした。長い距離を踏み切れたんで、状態はいいと思います」
 後続との間合いを取って直線勝負の稲川翔は、半車輪及ばすの2着。
 「(前受けは野原)雅也も想定していたと思うし、勝負どころではしっかりと仕掛けてくれると。(あの展開で)最低条件として2人でワンツーと思ってた。ただ、雅也が強かった。自分では2、3日目とどんどん気持ちも上がっていく思います」

<5R>

平原康多選手
平原康多選手
 野田源一が切った上を、中井太祐が押さえて赤板2コーナーから先手を奪う。ペースが上がらず中団が野田ラインと近畿勢を追った高原仁志、さらに平原康多(写真)でもつれるなか、前受けから下げた山崎芳仁が打鐘3コーナーで怒涛の反撃に出る。スピードに乗った山崎が中井を最終1コーナーで叩き切ると、平原が俊敏に切り替えて北コンビの後ろ3番手をキープ。一呼吸置いて平原は2コーナー立ち直りからまくっていく。山崎も抵抗したが、平原が直線半ばでねじ伏せた。
 「中井君がフカしていくイメージだったんですけど、踏んでいかなかったのではさまった。でも、そこ(最終ホーム)で遅れたら勝負権がないと思って思いっきり踏みました。前回からいろいろと試してその延長線でやっているんですけど、いい方向には進んでいると思います。悪かったら切り替えられていないし、仕掛けられてもいない。やるべきことはできましたけど、まだまだ上積みが必要ですね」
 中井が叩かれると、稲垣裕之は切り替えて5番手へ。杉本正隆は平原の仕掛けに反応できずに置いていかれたが、稲垣はその後ろから直線外を伸びて2着まで押し上げた。
 「中井君が積極的にしっかりチャンスある仕掛けをしてくれました。(山崎の)スピードが良くて対処できなかったですし、平原も来ていたので5番手が精いっぱいでした。脚の感じは良かったですし勝負できるなって。でも、日に日に体調が変わると思うのでケアをしながら」

<6R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
 赤板過ぎに一度は連結が外れた森田優弥と佐藤慎太郎(写真)だったが、2コーナーではきっちり付け直す。櫻井正孝ラインに乗った森田が、叩いて出て主導権を握る。内から盛り返した鈴木裕が3番手に入って最終ホームを迎える。森田は絶妙なペースで駆けて別線は不発。佐藤が勝機をモノにした。
 「(森田との連結を外した赤板の1センター)あそこはちょっと難しかった。内抜きになっちゃうところもあったんで、外に退避してうまく対処ができました。(森田は)踏み直しがすごくて、ゴールに向かってトップスピードに乗せていくような強さがあった。掛かりも良かったんで、(鈴木が来ても森田と)ワンツーはワンツーだと」
 赤板の1センター辺りでは包まれていた森田優弥だったが、別線の仕掛けで反撃のタイミングが訪れる。そこを逃すことなく踏んでレースを支配した。
 「すんなりと出られましたね。みんな脚を使ってて、展開が向いたかなと。それで冷静に駆けられた。初日の壁が突破できたんで良かった。(脚も)軽くて気持ちも入ってるんでいいと思います」

<7R>

和田健太郎選手
和田健太郎選手
 格上の千葉コンビが大名レース。望月一成、長尾拳太、阿竹智史の順で切った上を叩いて岩本俊介は打鐘3コーナーから主導権を奪う。これで8番手に置かれた望月がすぐさま巻き返して行くが、待ち構えていた和田健太郎(写真)のけん制もあって出切れない。和田の車間を切っての援護もあって岩本は快調に飛ばして最後の直線へ。後方からの長尾のまくりも届かず、ゴール寸前で岩本をとらえた和田が1着スタートを切った。
 「理想的な形になって、岩本君がうまく駆けてくれた。1着というよりも2人で決められたのが良かった。いまの自分は周りに助けられてなんぼ。岩本君はいつも頑張ってくれるし、頼りになる後輩です」
 3着も初手から千葉コンビを追っていた神山拓弥と、レースを完全に支配した岩本俊介は納得の表情で振り返る。
 「望月君が惑わせるような良い切り方をした。反応してスイッチできなかったけど、阿竹さんの動きに対応していい形で先行に入れた。距離的に長かったですけどペースに入れて、和田さんがもっていった時に整えてマイペースで踏めました。望月君と別でやったけど、自分の中で葛藤とこだわりがあって難しかったけど後悔はないです」

<8R>

嘉永泰斗選手
嘉永泰斗選手
 地元コンビがすんなりと主導権を握ったものの、単騎の中西大が打鐘から仕掛けて山田諒はマイペースとはいかない。後方の清水裕友は4コーナーから仕掛ける。最終2コーナー過ぎに清水が出切り、小松崎大地、終始、清水ラインを追った嘉永泰斗(写真)まで続く。4コーナー手前から外に持ち出した嘉永が突き抜けて、S級S班を破る大金星でビッグ初勝利を飾った。
 「初手があそこ(清水ライン後位)が取れたんで、そこで勝負しようと。今日(初日)は流れで勝てるようにでした。(最終)ホーム過ぎくらいまで口が空いてたんで、そこが微妙かなと。ただ、感触もすごくいいし、(二次予選Aで)上のレースを走れるんで、2日目以降もしっかりと気持ちを入れて頑張ります」
 河村雅章が内に詰まり、武藤龍生は嘉永後位にスイッチする。直線半ばで中を割って強襲した。
 「河村さんには申し訳ないけど、芦澤(辰弘)さんも付いてたんで外を行かせてもらいました。前回から自分のセッティング、乗り方とかで少しつかむものがあって、余裕はありました。感触がいいっていうのもあるけど。関東に流れが来ているので、自分も乗り遅れたくないっていう気持ちで突っ込みました」

<9R>

守澤太志選手
守澤太志選手
 赤板手前から門田凌が上がっていくが、前受けの渡邉一成は合わせて誘導を切って突っ張り門田を出させない。門田はあきらめて下がっていく一方、ペースが緩んだ打鐘3コーナーで山口拳矢が一気にカマす。ホーム手前では山口が主導権を奪ったものの、番手の皿屋豊は離れ気味になった上に守澤太志(写真)にダメ押しのけん制を受けて続けない。山口後位には渡邉、守澤、佐藤友和の北日本勢がスッポリとハマる形で最終回へ。後方からの中川誠一郎のまくりは不発で、一時は大きく空いた車間を詰めていった渡邉がゴール前で山口をとらえるが、その外を守澤が強襲。
 「前の方からが良かったので出ました。(山口がカマしてきたときに)やっぱり2車行かれて単騎勢にもズラズラ行かれてしまうと厳しいと思ったので、遅れている人がいたらと思っていた。前というより後ろに中川さんがいたのでそこだけ警戒する感じでしたね。感触は前回よりもいいですし、余裕もありました。ペダリングを修正したのがいい方向に出たと思う」
 冷静に立ち回った渡邉一成が、ライン3車の強みも生かして2着に入った。
 「遅ければ突っ張って、そこから考えようと思っていました。門田君が4番手に入ろうとした時ですかね、山口君が中川さんをドカして踏んでくるのが見えた。突っ張り過ぎず、でも番手に入れるような感じで踏んでいきました。ラインのおかげですね。3車でしたし家族のようなラインで安心して駆けられた」

<10R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 徳島勢をけん制しながら3番手の根田空史が、赤板1センターで先頭に立って南関4車が出切る。単騎の福永大智が5番手で、坂井洋は6番手まで下げる。根田が敢然と風を切り、番手の郡司浩平(写真)は盤石の態勢。後続をギリギリまで引きつけて、きっちり抜け出した。
 「(根田が)あんなに踏むとは思わなくて、油断していたところもあった。道中はかなりいいペースで、いい先行だった。そのぶん最後はタレてきたのかと。(最終)バックで(別線が)来なかったんで、(番手の仕事は)やることはなかった。ただ、後ろ2人(内藤と簗田一輝)連れているんで、踏むタイミングが難しかった。番手だったけど、踏んだ感じはかなりいい手応えだった。かなりいい感触でいけました」
 福永も伸びてくるが、郡司に続いた内藤秀久が2着で人気の神奈川ワンツーでの決着。
 「正直、自分はなにもすることのないレースで、ラインに連れていってもらっただけなんで、なにも言うことはない。余裕はありました」

<11R>

眞杉匠選手
眞杉匠選手
 S班の松浦悠士が二次予選への勝ち上がりを逃す波乱の決着に。レースは後方から上昇の石原颯が赤板1コーナーで先手を奪取。合わせて動いた松浦が四国3人を出させて注文通り中団を確保。打鐘2センターから石原はペースを上げて駆けだし単騎の4人はそれぞれ後方に置かれた時には勝負あったかに思われたが、空いた車間を詰めて最終2コーナーからまくった眞杉匠(写真)のスピードが抜群に良かった。松浦はまったく対応できず、その外を一気に通過した眞杉は四国勢をものみ込んでしまう勢い。2センターで石原後位から太田竜馬が踏み出すが、上がり11秒1の好タイムで駆け抜けた眞杉がねじ伏せて1着を奪った。
 「タイミングだけは逃さないようにと思っていました。(最終)ホームで車間が空いてしまったんですけど、落ち着いて詰める勢いでそのまま仕掛けられました。単騎は2、3回しかないんですけど、1着なので悪くないですね。初めは苦手だったんですけど、先行できなかった時にと思ってだんだんまくりが打てるようになってきました」
 眞杉をギリギリまで引き付けて踏んだ分、踏み負けてしまったが、番手で絶好だった太田竜馬が2着を確保した。
 「石原君もいいペースで駆けてくれたので、ゴール前勝負かなって思っていた。けど、眞杉君が来たので焦ってしまいましたね。タイミングが難しかったです。状態自体は安定しているし悪くない。あとは明日(2日目)以降に自力で戦ってどうかって感じだと思います

<12R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 宿口陽一が赤板2コーナー手前で切って出る。伊藤颯馬ラインを受けて3番手キープの思惑だったが、新田祐大(写真)の動きがいい。外を張りながら伊藤に合わせて出て3番手を手に入れる。別線の仕掛けを待つことなく、最終2コーナーからのまくりで持ち前のパワーを発揮した。
 「僕のなかでオリンピックが終わってから、ここまでの3開催に参加して、自分の持ち味を出せてなかったり、競輪に無理やりなじもうとしているっていうのがあった。だから(初日は)まずは自分の持ち味を出そうっていうことで、それがいい形になった。前回の向日町も感覚が良かったんですけど、失格をしてそのあとがどうだったのかがわからなかった。(初日の走った感じは)その時と同じ感覚で入ってこられて、なかなかいいのかなと」
 新田に3番手を取られた宿口陽一は5番手。動くに動けず3着も反省の振り返りだった。
 「伊藤君が先行すると思ったので、あの形だと自分が3番手を取れるなと。新田君の動きが見えてなかった…。ああなると後ろの2人(杉森輝大、芦澤大輔)に勝負権がないので申し訳ないレースになった。初日はだいたい体が重いんですけど。一番強い人(新田)に3番手に入られた。それがすべての敗因です」