『第38回共同通信社杯(GII)レポート』 最終日編

配信日:9月19日

名古屋競輪場で開催された「第38回共同通信社杯(GII)」は、9月19日に最終日が行われた。決勝では3車のラインができあがった神奈川ラインが主導権。落車のアクシデントはあったが、逃げた郡司浩平が押し切って優勝。19年に次ぐ2度目の共同通信社杯Vで通算5回目のビッグ制覇を遂げ、優勝賞金2581万円(副賞含む)を手にした。また、ガールケイリン10周年記念レース「ティアラカップ」は、奥井迪が逃げ切りで優勝。一発勝負を制して、優勝賞金210万円(副賞含む)を獲得した。

決勝戦 レース経過

 号砲で平原康多、松浦悠士、武藤龍生が勢いよく出たが、最内枠の平原が正攻法となる。平原-武藤-神山拓弥の関東勢が前を固め、松浦悠士-柏野智典の中国勢が続く。単騎の佐藤慎太郎がその後ろに入った。郡司浩平-和田真久留-内藤秀久の神奈川勢が後ろ攻めで並びが整った。
 誰も早めにアクションは起こさず、初手の態勢のままで赤板を迎えた。1コーナーで郡司が踏み上げる。郡司は勢いよく前団に迫り、ジャン前に平原を叩いて先頭に立った。平原はすんなり4番手まで車を下げ、郡司-和田-内藤、平原-武藤-神山、松浦-柏野、佐藤の並びに変わる。前に出た郡司は緩めることなく先行態勢に入る。残り1周の4コーナーで松浦がスパート。松浦は好スピードで前団に迫るが、逃げた郡司のかかりが良く、最終バックで和田にブロックされて進めない。2センターで大きくもつれて平原、和田、佐藤の3名が落車するアクシデントが発生。後続のもつれを尻目に郡司が逃げ切り、第35回大会に続き共同通信社杯2V目を達成した。内を締めていた内藤は落車に巻き込まれず2着、落車を避けた武藤が3着に入った。






ティアラカップ レース経過

 スタートは中村由香里、梶田舞、奥井迪が飛び出したが、奥井が誘導員の後ろを占める。初周で早々と奥井、中村、梶田、児玉碧衣、石井寛子、小林莉子、荒牧聖未の一本棒となった。
 初手の態勢のままで動きはなく、ジャンで誘導員が退避。児玉は前との車間を空けはじめたが、まだ誰もアクションを起こさない。最終ホーム線の手前から意を決した奥井が踏み込み、一気にペースアップし先行態勢に入った。2コーナーを立ち直ったところから児玉がスパートするも車の出が悪く、バックでは梶田も踏み込むが中村のアウトまでが精いっぱい。3コーナーで小林、荒牧が内に進路を取り番手を上げていく。正攻法からマイペースで駆けた奥井は後続を悠々と振り切って優勝。終始奥井に付いていた中村が食い下がり2着。4コーナーで中村の後ろに迫っていた荒牧が3着。






<5R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 山口拳矢(写真)をすくって出た川口雄太を、伊藤颯馬が打鐘で押さえて主導権。3番手の外で一度休んだ野口裕史は、最終ホーム手前から再度踏み上げる。後方で構えた山口が2コーナーで外に持ち出し、短くなった隊列に襲い掛かる。前の踏み合いは野口が出切るも、その上をスピードの違いまくり切った山口が1着。一次予選敗退の今シリーズだったが、2勝目を挙げて昨年覇者としての威厳を見せた。
 「打鐘で内から(川口に)行かれてしまったが、頭を切り替えられたので問題なかったです。あとは前が併走になっていたし、そこからでした。(今節は初日に敗退して)連日、気持ちの切り替えの部分で難しかったです。デビューしてあんまり前のレースで走ることもなかったですし、(初日に勝ち上がれなかったことで開催が)長く感じました。2勝できたのは、人気に応えられたという点では良かったと思います」
 山口マークの吉田敏洋は、地元のビッグで勝ち星をつかむべく、直線勝負にかけたが4分の1輪及ばず。
 「(シリーズを通して)結果として満足はできないが、いま持ってる自分の力を出すことはできた。このまま一線を退くつもりはないけど、(山口)拳矢や若い選手がこれからもしっかりとやってくれると思う。自分も、もう少し点数を上げて、目の上のたんこぶでいたいなと。お客さんの声援は涙が出そうになるくらいうれしかったです」

<8R>

新田祐大選手
新田祐大選手
 北日本勢が、前団に構える。中野慎詞が岩本俊介の上昇を阻んで突っ張り、主導権を渡さない。岩本が4番手に降りて、7番手になった島川将貴は打鐘の2センターから仕掛ける。中野もペースを上げて逃げる。島川は北日本3番手の飯野祐太のブロックで力尽きる。今度は荒井崇博が自力に転じて、新田祐大(写真)は3コーナーから番手発進。飯野との福島ワンツーで勝ち切った。
 「彼(中野)の連日のレースで、悔しい部分もあったと思う。主導権を取れないっていうのもあったみたいですね。今日(最終日)はレースでいいものを出してくれた。(自分の判断としては)島川(将貴)君が爆風で止まったと思ったら、そのあとに伸びてきて難しかった。島川君が終わったけど、すぐに荒井さんが飛んできたんで、自分もタテに踏みました。体調はそこまで問題ないけど、組み立てですね。二次予選、準決はイマイチ勝ち切るような走りではなかった。そういうレースをつくってかないと」
 北日本3番手の飯野祐太はソツのない仕事ぶりが光った。島川、荒井をけん制して、新田に流れ込んだ。
 「全体的に余裕がありました。新田がスタートを取って、中野が2周駆けてくれた。自分は(別線を)新田のところまで並ばせないように。まずはしっかりと仕事をしてと思ってました。3番手で落ち着いて走れたのは、前の2人のおかげです」

<9R>

諸橋愛選手
諸橋愛選手
 眞杉匠が関東を代表する先行型として本領を発揮。S班の清水裕友、北津留翼と乗れている機動型をシャットアウトし、諸橋愛(写真)と関東ワンツーを演出した。レースは、前受けの眞杉が押さえに来た北津留を赤板過ぎに突っ張ると、徐々に自分のペースに持ち込んでいく。最終2コーナー6番手から清水が猛然とまくってくるが、諸橋は3コーナーで巧みなけん制を見せて止めてしまう。強烈な踏み直しで粘り込む眞杉を、諸橋は図ったように差し切って1着をゲット。
 「前受けできたらと、スタートを取りにいって。今日は前のラインが決まっていたので。眞杉のおかげですね。意気込んでいましたね。自分もスイッチが入った。風が強い中でのレースは好きなので。清水もきたけど、風の影響もあって自分のヨコまででしたね。余裕はありました。前回(のビッグレース)は前を抜けないような状態だったけど、今回は初日みたいにタイムがいい中で岩本を抜けたし、良くなっているとは思う。でも追い込みなので、前に任せてっていうのはある。準備はしているからチャンスがくればですね」
 準決で敗退と悔しいシリーズにはなったものの眞杉匠はいい形で最終日を締めた。
 「車番が悪くて、前か後ろかなと。ずっと向かい風で山を登っているような感じでした。街道練習が多いから風は苦手ではないですね。ワンツーが決まって良かったです。やっぱり昨日(準決)ですよね。(松浦悠士を)突っ張れば良かったし、後ろが粘られると思わなくて、考えが安易だった。しっかり切るべきだった。課題も見つかり勉強になった。次は親王牌まで空くので、そこまでにしっかりと状態を戻したい」

<10R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 誘導は残っているものの、赤板手前で吉田有希が先頭に立ち主導権を握る。単騎の園田匠が4番手に続いて、小松崎大地は5番手。脇本雄太は8番手で、ペースを握った吉田が、雨のなかで風を切って逃げる。最終ホームを通過しても、脇本は前との車間が空いたまま。詰める勢いで2コーナーから脇本が仕掛けるが、番手で絶好の坂井洋(写真)が早めの追い込みで勝ち星を挙げた。
 「車番的にも初手の並びは、想定していた感じになりました。(吉田が)冷静に駆けてくれた。自分は早めに対応できるように車間を空けていた。(吉田)有希が強かったし、キツかったですね。(悪天候で)視界が悪くて、(吉田との車間を)早く詰めすぎた。もうちょっとうまくやればワンツーだったかなと」
 8番手からまくりを打った脇本雄太は、バンクコンディションもマイナス要因だったようで2着まで。
 「(悪天候で)距離感がわからなくて、判断ミスもあったと思う。吉田君も上手に駆けていた。自分の踏み出しは良かったけど、雨風の危険を察知してスピードが鈍ったかなと。(今シリーズ)良くないままの4日間でした。(調子は)下がっている感じもあったし、上げるのにも限界があるかなと。それは今後の練習の仕方次第だと思います」

<11R>

奥井迪選手
奥井迪選手
 ガールズケイリン10周年を記念して行われた「ティアラカップ」は、ガールズを代表する先行選手である奥井迪(写真)が女王の座に輝いた。レースは意外と単調な流れとなり、正攻法の位置に構えた奥井が誘導が退避した打鐘3コーナーからそのまま先行勝負に出る。中村由香里、梶田舞が続き、4番手には児玉碧衣という態勢で最終ホームを通過。再三、巻き返しの機会をうかがった児玉だったが、快調に逃げる奥井の前に全く車が出ない。児玉の動きに乗っていこうとしていた石井寛子、小林莉子もこれで苦しくなり、奥井が堂々と逃げ切って、グランプリ出場へ大きく前進する優勝賞金210万円を手にした。
 「こういう大きいレースは初めて(1着)。初優勝も名古屋だったし、こういうレースを勝ててうれしい。誰も出させずに、碧衣ちゃんを合わせるっていう、これを練習してきた。それができてうれしい。風が強くて、前を取って自分のペースで行こうと。風が吹くのは自分にプラスと前向きに考えたのが良かった。練習通りのペースで、ここで碧衣ちゃんがくると、駆けていった。後ろを見る余裕はなかったです。(ガールズグランプリに向けてこの賞金は)大きいです。(賞金ランキングが)落ちてきたところだったので大きい1勝だった。自分に足りないところを競輪祭(ガールズグランプリトライアル)に向けてやっていきたい。(まだ足りないところはある?)まだまだ足りないです」
 初手の位置取りが全てといった形だったが、古豪・中村由香里の意地も光った。絶好の展開にも久々のビッグレース制覇は叶わなかったが、しっかり奥井に食い下がって2着を確保。
 「師匠(田谷勇・引退)に作戦を全部立ててもらって、出すだけだった。一生懸命仕上げてきたが、差せなかったのは力不足。出し切りました。グランプリを獲ったときも師匠に作戦を立ててもらいました。(デビューして)10年経ったけど、万全を尽くせるようにサポートしてくれた。差せなくて申し訳ない。ジャンから行っての奥井さんを立てるしかないです。この開催を企画してもらって感謝しかない。40歳になって負けるのに慣れているところもあったけど、(ティアラカップに出場するのに)恥じない走りをしないとってデビュー当時の気持ちを思い出して今の精一杯を出した結果。目標をもってやっていると違うなって思いました。(師匠には)優勝できなくて申し訳なかったです。でも半年前の力なら大差負けしていてもおかしくない。みっちり仕上げてきたし、今後につながるレースでした」
 荒牧聖未は最終バック7番手と絶望的な位置。だが、諦めることなく3コーナーから内に切り込んで3着まで押し上げた。
 「車番が外枠だったので、組み立てが難しかったです。一生懸命、走って確定板に乗りたいっていう気持ちが強かった。お客さんに貢献したいっていう思いでした。(最終3コーナー過ぎに内を踏んだところは)もうちょっと早く判断したら良かったかな。そしたらもうちょっといい着が取れたかもしれません」

<12R>

郡司浩平選手
郡司浩平選手
 徹底先行不在の大一番となったが、同県3人でのラインが実現したことで郡司浩平(写真)の腹は固まっていた。後攻めから打鐘手前で平原康多を叩くと、徐々にペースを上げていって先行勝負に出る。7番手に下がった松浦悠士が最終ホーム入り口から巻き返すが、郡司は出せない。松浦は番手の和田真久留と絡んだままで3コーナーを通過。2センターで和田が松浦を大きく外に持っていくと、空いたインコースに選手が殺到し、落車のアクシデントが発生。これを尻目に郡司が力強く押し切った。
 「(優勝して)うれしい反面、真久留が転んで複雑な気持ち。車番が外枠だったので切って、切って、カマされたりするのは嫌だったので、一発切りに行ってからレースの流れを見てと。初日は(眞杉匠の)番手でしたけど、昨日(準決)で半周ですけど、まくりの自力が出せたので、長い距離に不安はなかったです。ホームではこられてしまうようなスピードでしたが、バックで踏み上げるようにトップスピードに上げるつもりで。この競輪界で逃げて勝つのはかなり厳しい。その中でアクシデントはあったけど、先行できたのは自信になった。(賞金が上積みされたが、平塚グランプリは)確定していない。残り数少ないレースを悔いのないように。GI優勝を目指して。(今回)優勝すれば(グランプリが)近づくと思っていて、一歩踏み出せて良かった。次の親王牌や、その前の久留米(熊本記念)もあるし、できることをしっかりとやって準備して臨みたい」
 落車のアクシデントもあって、神奈川ライン3番手を固めた内藤秀久が2着に流れ込んだ。
 「バックで真久留がどこまで引き付けるかでしたけど、クイックな動きについていけなかった。バックを踏みながらでしたが、6番(柏野智典)に入られて、前輪も引っかかっていたし、(佐藤)慎太郎さんもしゃくってくるし、このステージの3番手は難しい。力量がない。(落車を)内に避けてぺダリングはぐちゃぐちゃでした。浩平を差すとかではなく周りを見てゴールでした。結果、2着でしたけど、気持ちいい2着じゃない。最低限、ラインから優勝者が出たのはよしとして、あとは真久留の回復を祈って」
 前の落車を間一髪で避けた武藤龍生が3着に。
 「平原(康多)さんなら仕掛けると思って待っていました。内を見ていて(落車を)避けられたのかなって。平原さんが落車して自分だけになってしまいましたね。昨日も危なかったが、今日も、あの展開なら、内しかないと、そこをよく見ていて、空いてくれと。自分も何かやりようがあったのかなと複雑です」

次回のグレードレースは、向日町競輪場開設72周年記念「平安賞」が9月24日~27日の日程で開催されます。
今シリーズは古性優作、清水裕友、宿口陽一のSS班3名が参戦しますが、主役を務めるのは輪界トップの豪脚を誇る脇本雄太。
目下のところ20連勝中で、S級の連勝記録を更新し続けています。脇本が更に連勝記録を伸ばすのか、それとも待ったをかける選手が現れるのか?興味津々の4日間です。

9月13日時点の出場予定選手データを分析した、開設72周年記念「平安賞」の主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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