『第39回共同通信社杯(GII)レポート』 最終日編

配信日:9月18日

 青森競輪場で開催された「第39回共同通信社杯(GII)」は、9月18日に最終日が行われた。地元のS級S班、新山響平も勝ち上がった決勝は、同県の渡邉雄太を目標に3番手から早めに追い込んだ深谷知広がV。14年8月のサマーナイトフェスティバル以来、およそ9年ぶり、通算5度目のビッグレース制覇を飾り、優勝賞金2790万円(副賞含む)を手にした。

決勝出場選手特別紹介
決勝出場選手特別紹介

決勝戦 レース経過

 号砲で三谷竜生が出て、三谷-南修二の近畿勢が前受け。以下は渡邉雄太-深谷知広の静岡コンビ、単騎の新山響平、佐々木豪-清水裕友-隅田洋介の中四国。もう一人の単騎の嘉永泰斗も中団位置を狙ったが入れず、最後方でレースを進める。
 青板2コーナーで佐々木が動く。佐々木は渡邉に併せ込み、これを嫌った渡邉は7番手まで下がる。引き切った渡邉は赤板前にすぐさま巻き返す気配を見せるも、これを制して佐々木が先に踏み出す。2コーナーで三谷を押さえて先頭に立った佐々木がペースを緩めた打鐘で渡邉が仕掛ける。2センターで叩かれた佐々木は静岡2車を出させて3番手に収まる。しかし、静岡コンビを追って上がってきていた新山が最終ホームで一気のカマシ。俊敏に新山後位に切り替える態勢だった嘉永だが、清水のブロックで遅れ、単騎でスパートの新山を静岡コンビが追う。立て直して上がってきた嘉永だったが、今度は深谷の再三のけん制を受けて中団の外まで。一方、新山は後続を引き離して逃げまくり最後の直線へ。新山を追わせた渡邉の余力を見極めて2センターから踏み出した深谷がそこを襲う。深谷は直線半ばで新山を抜き去ってV奪取。新山が2着に踏ん張り、3着には空いたコースを突いて鋭く伸びた隅田が入る。







<1R>

朝倉智仁選手
朝倉智仁選手
 取鳥雄吾、根本哲吏で押さえて出て、前受けから後方に下げた朝倉智仁(写真)に早めに順番が巡ってくる。すかさず踏み込んだ朝倉が、打鐘3コーナーで主導権。茨栃ライン3車が出切り、根本は4番手に収まり最終周回へ。1センター過ぎに根本がまくりを打つ。番手で車間を空けていた佐藤礼文は根本に入られかけるが、2センターでブロック。空いた佐藤の内を岡田泰地が踏んで、茨栃勢での直線勝負。岡田、佐藤を振り切った朝倉が、ビッグ2度目の出場の今シリーズで初勝利を挙げた。
 「連日、後ろからだった。このメンバーなら(前を取って引いてのカマシでも)行かせてもらえるかなって。でも、いっぱい、いっぱいでしたね。(ビッグ初勝利だが20年の)オールスターで1着失格していたのでドキドキしました。ここ最近は落ち目だったので、ジャン先行で残れたのは自信になりますね」
 佐藤が根本のまくりを外にけん制して、岡田泰地は茨城コンビの間のコースを伸びて2着。
 「(取鳥と根本が)やり合っているように見えた。それで(朝倉は)待ってから行くのかなって思ったら、行ったので口が空いてしまいましたね。内藤(秀久)さんも見えていたのでう回しながら行きました。根本さんが中団だったので、内藤さんのエックス(攻撃)だけ気をつけながらでした。内藤さんも内を見ていましたし、(佐藤)礼文もなかなか戻ってこない感じだった。(今回は補充だったけどビッグの)空気感を味わえて、最終日ですけどこういうメンバーで戦える感じがしたので、かなり収穫はありました」

<6R>

武藤龍生選手
武藤龍生選手
 赤板2コーナー手前で山田庸平が切って先頭に立つと、長島大介は中団の星野洋輝の外でタイミングを取ってから踏み込む。山田がすんなり受けて、長島の先行策。その上を星野も踏み込むが、長島がペースを上げる。阿部拓真のアシストで星野が3番手に入り最終周回。大川龍二の反撃は3番手まで。山田も2コーナーからまくるが、逃げる長島の掛かりがいい。山田をけん制した武藤龍生(写真)が、長島にピタリと並んでゴール。タイヤ差で武藤が差し切った。
 「自分のスタートミスがあって、(周回中は)前中団になってしまった。それで長島さんの(踏む)距離が長くなってしまって申し訳なかったです。あとは長島さんが先行態勢を取ったら、自分が止めなきゃと。(最終)ホームで阿部君が星野君を入れているのがわかったので、星野君はもう来られないだろうと。あとは内をケアしつつ、(山田)庸平さんなり、大川さんが来るだろうから、2車なりに張ってでした」
 別線の動向を冷静に見極めた長島大介が、落ち着いた運行から打鐘先行でラインの武藤とワンツー。上々の動きでシリーズを締めたが、3日目の準決をこう振り返る。
 「少しでも距離を短くと思って、(星野の外でタイミングを取って)山田さんもあれなら出させてくれるだろうと。少し踏めば3番手はやり合ってくれるかなって、思惑通りになりました。距離的にはもつ距離だったんで、どうにかなるかなと。自分の状態はいいけど、準決は嘉永(泰斗)君との力差を感じました。二枚くらい上にいる。そこを課題にやっていきたい」

<7R>

寺崎浩平選手
寺崎浩平選手
 赤板1コーナーで坂本貴史が押さえて先頭に立つ。寺崎浩平(写真)は一本棒の8番手から、2コーナー過ぎに仕掛ける。北日本勢に続いた単騎の佐々木龍は、打鐘でインを押し上げて坂本の番手を奪取する。加速した寺崎のスピードが断然で、畑段嵐士は付いていけない。最終ホームで寺崎が出切り、飛び付いた坂本をキメて離れながら畑段が追いかけるもいっぱい。2コーナーからまくった松本貴治も一息で、寺崎がセーフティーリードを保ってゴールを駆け抜けた。
 「緩んだところから、自分のタイミングで行ければって思っていました。自転車がマッチしてきたというより、(競輪用のフレームの)乗り方がわかってきた感じですね。(今回は前回と別のフレームに換えているが)立ち上げも楽ですけど、道中も楽でした。いまは先行に対して苦手意識もないですし、主導権を取った時の方が結果もついてきている」
 まくった松本のスピードが、佐々木に合わされて鈍る。松本マークの小川真太郎は、4コーナーで外に持ち出して離れた2着争いを制した。
 「寺崎君に前を取られてカマされるよりはと思って、(松本は)前からだったと思うんですけど。結果的にカマされてしまいましたね。でも、(松本は)良くリカバリーしてくれました。(松本)貴治君が強かった。終わったあと小倉(竜二)さんにも言われたんですけど、まだまだ追走が甘くて自分でまくりに行く感じで付いていってしまっている。もう少しうまく付いていければ、もっと楽になると思う。マークする時はしっかりやれるように」

<9R>

坂井洋選手
坂井洋選手
 犬伏湧也を警戒しながら4番手から踏んだ北井佑季が、主導権を握る。坂井洋(写真)が中団に入り、7番手の犬伏は赤板2コーナー手前からスパートする。北井が合わせてペースを上げて、打鐘2センターで守澤太志が犬伏を大きく外に振る。逃げる北井と守澤の車間が空いて最終周回へ。守澤のブロックを乗り越えた犬伏が北井に迫り、坂井は2コーナー過ぎからまくりを打つ。北井をとらえた犬伏もいっぱいで、坂井が直線半ばでとらえて1着。
 「(周回中は)うまく中団が取れたらラッキーだけど、後ろよりは前をって思ってました。そこ(最終ホーム)で内に差しちゃって、カミタクさん(神山拓弥)に迎え入れてもらったんで助かりました。自分も踏み合う形でそれなりに脚を使ってた。普通だったら切り替えられてもしょうがなかったと思います。そのあとも正直、脚がたまらなかったけど、イチかバチかで(仕掛けて)行きました。昨日(3日目)終わってからペダルを換えたんですけど、感じはわからないですね。でも、1着が取れたんで、次もって思ってます」
 栃木コンビの後ろの川口公太朗は、スムーズに外を伸びて2着に届いた。
 「ジャンのところはキツかったです。そのあとは柏野(智典)さんとかが降りてきたら、対応しなきゃと思ってました。(坂井が)まくっている時は楽になってました。そこからは(坂井のまくりが)いい感じで行ってたし、すんなり前までいけそうなスピードだった。自分の感じはめちゃくちゃいい。この感じで1着にいけそうだったけど、まだまだ技術不足、力不足です」

<10R>

山口拳矢選手
山口拳矢選手
 前受けの野田源一が、赤板過ぎに岩本俊介を突っ張る。野田が緩めたところを山口拳矢(写真)が切って出て、眞杉匠は打鐘3コーナーで叩く。眞杉がリズム良く風を切り、3番手を山口が確保。野田は5番手で最終ホームを通過する。別線は動けず、そのまま眞杉の先行でバックを迎える。4コーナーから追い込んだ山口が、ゴール寸前で前の2人を交わして1着。
 「(スタートの位置は眞杉が)前を取って突っ張ればその後ろですし、そうじゃなければ自分のタイミングで切ってと思っていた。でも、眞杉が引く感じだったので、そこにいてもいいかなって思ったんですけど。あの3番手を取った時点でゴール前勝負って思いました。自分の状態的にも。やっぱり良くないですね。踏んでも返ってこなくて、踏み過ぎている感じだった。体の問題ですね、連動の部分が」
 別線のまくりはなく眞杉の先行を利した佐藤慎太郎が2着。
 「(眞杉は)いいペースでした。2車ですし3番手に自力選手が入るんで難しかったと思うんですけど。バックもかなり(風が)向かっていました。ああなると後ろから来ない限り、(山口も)仕掛けないかなと。1着を取りたかったですね。応援してもらっているんで、1着を取るところを見せられなくて残念でした」

<11R>

深谷知広選手
深谷知広選手
 赤板2コーナー手前で先頭に立った佐々木豪がペースを落とすと、その隙を逃さず渡邉雄太が7番手から踏み込む。打鐘2センターで叩き切った渡邉に深谷知広(写真)、少し遅れながら単騎の新山響平が3番手に続く。静岡勢を追った新山は、迷うことなく最終ホーム手前から踏み込む。新山が一人で出切り、後続をちぎる。離れた2番手に渡邉が飛び付いて、深谷は2コーナー手前で嘉永泰斗を外に弾いて追走する。中団で佐々木、嘉永と併走になり清水裕友も動けない。渡邉もじわじわと車間を詰めるが、3コーナー過ぎから深谷が自ら踏み上げる。直線でいっぱいの新山を、深谷がスピードの違いでとらえて優勝。
 「(約9年ぶりのビッグ制覇で以前は)力が落ちてて勝ててなくて、いい練習できて力がついてるなって感じになって、そのなかで勝てて良かった。(渡邉との)連係は何度もあるけど、GIIの決勝での連係は初めてだった。でも、力がわかっているので、うまく力を発揮すれば互いにチャンスあると。単騎の選手は基本的には考えず、まずは中四国の動向を注視していた。早めに押さえにきて、引いたほうがいいと思ったところで(渡邉が)引き出したんで考えていることが一緒だなと。そこからは安心して付いていた。(新山が)一瞬で横に来て止められる感じではなかったから、(渡邉)雄太をうまく入れたいなと。嘉永君がいたので止めて、そこはうまくいった。前を見た時に新山君が見えず車間がどれだけ空いているのか読めなかった。自分の間合いというか踏ませてもらった。出が悪くて届かないかと思ったけど、そこからガムシャラに踏んでどんどんと詰まっていけるかなと。(優勝は)すごくうれしい」
 ただ一人、S級S班として優出。地元のビッグでただならない重圧もあった新山響平だが、単騎でも臆することなく力を出し切った。深谷につかまっての準Vも、その走りは称えられていい。
 「(組み立てとしては)先手ラインの3、4番手っていう感じだった。三谷(竜生)さんの(ラインの)3番手だと立ち遅れると思った。結局、9番手になってしまったんですけど、(渡邉)雄太君が行く気があるように見えた。雄太君が踏んだ時に遅れたんですけど、緩んだところで前に出られた。(自分の後ろは)ピタッとついている感じじゃないのはわかったんですけど、目いっぱいだった。フォームもぐちゃぐちゃで、落ち着いていつも通りの感じで踏めれば、もっとゴール前勝負ができた思う。もっと遅めにいければ、もうちょっと良かったかもしれないですし、(位置を取れる)テクニックがあれば良かったんですけどね」
 近畿コンビに割り込まれた隅田洋介は、最終ホームで9番手。最終2コーナーからインを進出して、中団まで取りつくと直線で外よりのコースを伸びた。
 「ちょっと追走できなかったですね。タイミングがズレてしまった。追い上げようと思ったんですけど、三谷さんも引かないでしょうし。(清水裕友の後ろに)付いていれば違ったと思う。内はずっと空いていたんで、とりあえずドッキングしないとなって。(3番手回りは)難しいですね。人に合わせて踏まないとなんで、番手でも難しいし勉強です」

次回のグレードレースは、松阪競輪場開設73周年記念「蒲生氏郷杯王座競輪」GIIIが9月23日~26日の日程で開催されます。
今シリーズは郡司浩平、新田祐大のSS班2名をはじめとして、ダービー王の山口拳矢などの強豪が参戦。地元勢はこの大会2Vの実績がある浅井康太を中心に、柴崎淳、皿屋豊らが一丸となって地元Vにまい進します。
勝ち上がり戦から激しいバトルが繰り広げられそうで、ファン必見の4日間です。

9月10日時点の出場予定選手データを分析した、松阪競輪「蒲生氏郷杯王座競輪」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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