『第25回共同通信社杯秋本番(GII)レポート』 最終日編
 
配信日:10月11日


 短走路の奈良競輪場を舞台に激闘を繰り広げた共同通信社杯秋本番も11日に最終日を迎えた。メインの決勝は4車そろった強力北ラインに、武田豊樹らがどう立ち向かうかが注目されたが、結果は北日本勢の完勝。優勝した伏見俊昭は賞金額を大きく上積みして、今年も年末のグランプリ出場がほぼ確実となった。



決勝戦 レース経過
 号砲で飯嶋則之が勢い良く出て、目標の武田豊樹を迎え入れる。隊列は武田―飯嶋の茨栃コンビが前団、これに川村晃司―小倉竜二のラインが続く。単騎の園田匠は5番手に入り、新田祐大―山崎芳仁―伏見俊昭―斉藤正剛の北日本勢が後攻めの形で落ち着く。
 青板過ぎの1コーナーから新田が早くも上昇を始め、バック前に誘導を交わして先頭に立つ。単騎の園田はこの5番手を確保し、下げた武田は6番手、川村は8番手に置かれる。新田は後続の動きを確認しながら徐々にペースアップ。新田のスピードは良く、別線は反撃できない。一列棒状の態勢で赤板、打鐘を通過する。前との車間を少し空けた山崎は最終1コーナーから番手まくり。最終2コーナーからまくり上げた武田は斉藤の横で勢いが止まって不発。絶好態勢となった伏見が直線鋭く追い込んで優勝を飾った。伏見追走の斉藤が2着に流れ込み、末を欠いた山崎は3着。北日本勢で上位を独占した。
ゴール
ゴール
表彰式
優勝した伏見俊昭選手
表彰式
優勝した伏見俊昭選手


<1R>
 菅田壱道が戦歴回復へ兆しを見せた。番手の桑原大志に差し込まれて2着も、桐山敬太郎や西谷岳文を封じる逃げに、「後ろの状況が分からずゴール前も余裕なかったが、逃げの決まり手数が付いたのは自信に。体が治ってきたし、今後へも繋がる」。


<2R>
中村一将選手
中村一将選手
   中村一将(写真)が絶好展開を生かした。脇本雄太の番手回り。赤板前に連結を外しながら、打鐘で脇本に付け直した後の一気差しに、「脇本君は仕掛ける時に気配を見せない。お尻を上げないから、自分は離れてしまった。何とか勝てて良かったけどね。次は和歌山。近畿地区だし、良い状態を維持して臨みます」。
 脇本雄太は僅かに末脚を欠いて3着。
 「ダッシュも良い坂本(貴史)君に突っ張られた時は、また、このパターンかと。Gのレースは、これをやられてばかり。福井記念に今回と。まあ、これで10月は終わり。久々に間隔が空くし、しっかりと練習して11月に」と出直しを誓った。


<3R>
鈴木誠選手
鈴木誠選手
   鈴木誠(写真)が本家の鈴木誠(千葉・55期)ばりの強襲劇を見せた。石毛克幸がホームカマシ。武井大介が外へ車を持ち出した最終2センターで、俊敏にインから突き抜けてビッグ初勝利に、「一つ勝てて良かった。2日目は千切れたから。しっかりと修正出来たのは収穫。大レースの雰囲気も分かったし」。
 石毛克幸が2着。
 「武井(大介)が任せてくれたし、長い距離で仕掛けたから、最後はタレましたね。S班へは厳しいけど、何とか賞金額で上位に。ダービーの特選シード権が欲しいしね。負け戦でも集中して戦えている。南関の地区プロもあるけど、次の広島へは間隔が空くし、練習して備えます」


<4R>
倉野隆太郎選手
倉野隆太郎選手
   倉野隆太郎(写真)が原点回帰だ。4回転超の大ギアで、3日目は逃げて2着、今日は高谷雅彦の逃げを中団3番手キープからロングまくりで仕留め、「攻める、が大事と気づきました。大ギアは一度緩めちゃうと、もう一度スピードを乗せるのが大変。サンサンだし、踏んで踏んでいけば、が良かったみたい。今後もこのギアを使うかは分からないけど、ギアを下げても、積極的に攻める気持ちを忘れないように」。
 坂上忠克は倉野の力量を計り間違えた。倉野が僅かに失速したかに見えた最終バックで、坂上は自ら仕掛けて脚力を消耗し、東口善朋に伸び負けした。
 「ミス、倉野が止まったように見えて…。ギアを上げてから強くなっている」


<5R>
鈴木謙太郎選手
鈴木謙太郎選手
   鈴木謙太郎(写真)が鮮やかに逃げ切った。番手を巡って渡邉晴智と芦澤大輔で競り。一時は両者が千切れて、鈴木は裸同然の逃げになったが、「2人のどちらかが追いついてくれないかなと、(最終ホームで)少し休んだ。渡邉さんが来て、そこから全開で踏んだ。2勝? 初日に菅田(壱道)マークじゃなかったら、この結果には…。全部9着で3日目に帰郷だったかも。ホントにサンサンは難しい。四百とか五百で戦いたい。次? 千葉記念です。間隔空くし、しっかりと準備します」。
 芦澤大輔は渡邉のテクと踏み出しに脱帽した。
 「悔しいですけど、今日は良い勉強に。もうちょっと頑張れるかなと思った。甘かった。ただ、一流の競りと戦えたのは収穫。最近成績が良くて、自分が好調だと勘違いもするとこでしたし」


<6R>
渡邉一成選手
渡邉一成選手
   渡邉一成(写真)が有言実行の白星ゲット。カマした海老根恵太を、後方からまくり、「最終日にやっと疲れが取れていたし、前でやり合って展開も楽になった。小岩君が何するか読めなかった。まあ、しっかりと良い位置を取れたのも勝因。簡単に良い位置を取られたら苦しくなるし、少しずつでもそういう競走を増やしたい。今後? 競技にも集中する感じに。エスエス入りは難しいから、ダービーの特選シード権を狙う」。
 海老根恵太は未勝利に終わった。渡邉と力勝負を演じて2着も、「今回は流れが悪かったというより、脚力が落ちてましたね。次は千葉記念? 直前にある地区プロを考えながら、しっかりと準備したい」。


<7R>
山田裕仁選手
山田裕仁選手
   山田裕仁(写真)がバックまくりで勝った。永井清史が叩けずじまいの流れに、自らタテ脚を使い「応援してくれるファンもいるし、悔いのない様に一戦、一戦へという気持ちで戦っている。脚力が落ちている実感があるから、どうすれば勝てるか方法を見つけたい。一車でも前にいるのが、まずは大事だよね。今回? 奈良のサンサンは、打鐘前でどこに位置しているかが重要だったね。常に勝利、良い走りが求められるエスエス。一戦、一戦を大事にしたい。来年のダービーは名古屋で。中部地区だしね、特選シード権を狙うぐらいのつもりで、結果的にエスエスへの賞金を上積みできれば良いね」。


<8R>
深谷知広選手
深谷知広選手
   深谷知広(写真)が堂々の逃げ切りでシリーズ3勝目。上原龍をあっさりと叩いて、「少し早めだったけど、あそこしかない、というタイミングで仕掛けられました。上原さんの出方も読めていたし、落ち着いてペースで。3.79ギアと体調がマッチしたし、収穫が多かった」。
 上原龍は叩かれた後でイン粘りを試みたが、ズルズルと後方へ追いやられ「やっぱり、深谷君は強かった。合わせられる勢いじゃなかったし。練習して出直してきます。常にこういう舞台で戦いたいし」。


<9R>

佐藤慎太郎選手
佐藤慎太郎選手
   佐藤慎太郎(写真)が佐藤友和に完璧マークを決めた。佐藤友和と共に、最終2センターで大きく煽られるピンチを凌いで、「山口(幸二)さんのブロックはホントに巧いよね。オレは余裕あって対応出来たけど、もうちょっと友和に迫れればだね。状態? お陰さまで足首とかは大丈夫。去年の冬場は痛みがあったから、今年は12月になったら冬季移動しようかなと。どこ? ハワイ。航空チケットが高くないし、子供も幼稚園に行ってないし。競走にはハワイと往復して。賞金? もちろん上積みしたいし、次の宇都宮でも集中して戦います」。


<10R>
坂本健太郎選手
坂本健太郎選手
   坂本健太郎(写真)が逃げ切った。「オレの実質逃げイチじゃん」と、公約通りに仕掛けた。シリーズ3度目の確定板行きに、「昨日は8レースを戦い、今日は10レース。気持ち的には、オレは勝ち上がったも同然と。逆に準決勝を戦った人は負け下がりだと気持ちを強くした。逃げ切り? ちょっとポイントが早くなったけど、ほぼ作戦通りに仕掛けられた。レースが見えて、体調の良さも噛み合った。これが続けば良いな」。
 村上義弘はまくり不発の市田佳寿浩と共倒れ。近畿地区ビッグで未勝利に、「今日は正直、作戦の立てようがなかったね。みんなが一瞬の隙を狙うレースで、こっちは難しかった。市田マーク? 良い勉強になりました。年末へ? 状態を上げようと、計画通りに練習しているけど、なかなかね、思うようには。練習すれば強くなれた昔と、体が変わっているね。まあ、観音寺記念は西谷(岳文)もいるし楽しみ。頑張りますよ」。


<11R>
山崎芳仁選手山崎芳仁選手
川村晃司選手川村晃司選手
   斉藤正剛は伏見を巧追走して2着に、「真後ろに園田君がいると分かっていたし、絶対に内だけは開けないようにと。まあ、展開が向いたね」。
 山崎芳仁(写真)は3着と末脚を欠いた。
 「2センターで伏見さんが差し込んできたのが見えました。思った以上に早い段階から踏みっぱなしになったし、失速したということ。伏見さんが賞金額でグランプリがかかっていたし、北日本ラインに貢献したマサさん(斉藤正剛)が4番手まで固めてくれたから、(新田は)あの仕掛けになったのかも」
 武田豊樹はバックまくりで前団に襲い掛かったが、伏見俊昭に合わされ、「全くペースが緩まず、仕掛けるポイントが無かった。それでも前に良いスピードで迫れたし、競輪祭やグランプリへ収穫があった。自力勝負での勘のズレも修正出来たしね」。
 川村晃司(写真)は後方で見せ場を作れずじまいに、「近畿の先輩達からアドバイスをもらい、番手勝負とか中団からかとか、色々と作戦を考えました。北日本が思い切り良く仕掛けるのも、少し考えてはいたんですけどね。仕掛けるタイミングが無かったです。ただ、今回は良い経験をさせてもらった。サンサンでも4回転で戦えると分かったし、今後に繋げたい」。
 園田匠は今日は間隙を突けなかった。
 「インから伏見さんの位置を狙おうとしたら、なかなかコースが開かず…。前がかかっていたし。内を開けないマサさん(斉藤)がうまかった。何とか確定板に入りたかったけど」

   
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情報提供:日刊プロスポーツ新聞社
写真撮影:日刊プロスポーツ新聞社 Takuto Nakamura
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