『第28回共同通信社杯(GII)レポート』 最終日編

配信日:4月30日
 第28回共同通信社杯(GII)は4月30日、4日間に渡る熱戦に幕を下ろした。激戦を勝ち抜いた9名による決勝戦が最終11レースで争われた。レースは残り2周半前に脇本雄太がまさかの落車。赤板から佐藤友和が主導権を握ると、最終2角から渡邉一成が番手まくり。後続を力強く振り切ってビッグ初制覇を果たした。渡邉は明日5月1日に発表されるロンドン五輪の代表の最有力候補だ。この優勝を手土産に世界の桧舞台へと飛び立つ。
決勝戦 レース経過
 号砲と同時に南修二、望月永悟の5枠両者が飛び出す。南、望月の順で誘導後位に続くと、それぞれがラインの選手を迎え入れ、脇本雄太―稲垣裕之―南―柴崎俊光、鈴木裕―望月、佐藤友和―渡邉一成―成田和也で周回を重ねる。
 残り2周半でアクシデントが起こる。別線の出方を警戒して後ろを確認した脇本が誘導員と接触して落車。そのまま誘導員も退避すると、目標を失った稲垣が隊列の先頭になる。まだ赤板前、ペースを上げるには早い稲垣は後ろの動きをうかがったまま仕掛けのタイミングを待つが、そこをすかさず佐藤が叩いて赤板過ぎから主導権を奪う。稲垣はやや車間が空いた4番手、南関ラインは7番手に置かれて打鐘、そして最終ホームを通過する。しきりに後方を見た渡邉は稲垣らの巻き返しを待たずに2コーナーから番手まくり。そのまま4コーナーを立ち直ると、成田の追撃を振り切ってビッグ初優勝を飾る。2着には成田、3着には稲垣の仕掛けに乗った南が中割り強襲した。


ゴール
ゴール
胴上げ
胴上げ
表彰式
表彰式
<3R>
藤木裕選手
藤木裕選手
 藤木裕(写真)が番手戦でシリーズ2勝目を飾った。目標の稲毛健太が打鐘過ぎの4コーナーからロングスパート。バックで前団を飲み込むと番手から鋭く追い込んだ。
 「稲毛君が頑張ってくれました。松岡さんが僕のところに飛び付いてきても、スピードが違うから大丈夫だろうと。しんどいレースだったけど勝てて良かった」

<4R>
志智俊夫選手
志智俊夫選手
 金子貴志のロングまくりに乗った志智俊夫(写真)が直線でズブリ。3日目からの補充で2連対と存在をアピールした。
 「金子が4倍のギアだったし、出切るまでがきつかったですね。何とか付いていけました。次が地元の大垣なので、こういう大きな舞台で弾みの付くレースができて良かったです」
 2着の金子貴志も表情は明るい。
 「前を取って引いて、いけるところから仕掛けました。1番(野田)に合わされる感じでしたが、2コーナーの下りでスピードに乗ったので乗り切れると思いました。出切ってからも上手く回せました。でも、志智さんは脚がありますね」

<5R>
阿竹智史選手
阿竹智史選手
 松川高大の先行を上原龍がまくり切ったが、さらにその上を阿竹智史(写真)がまくって2勝目をゲット。ビッグレースで持ち味を存分に発揮した。
 「ホームで内に詰まって厳しいかなって思ったんですが、そこから落ち着いて走れました。今回は単騎、番手戦、自力とひと通りやって、いい経験になりました。でも、ラインが長い方が戦いやすいし、もう少し積極的にこれから戦いたいですね」
 先まくりの上原龍はゴール前で末を欠いて4着。
 「要所、要所でしっかり動けました。かぶるのは嫌だったし、仕掛けるべきところで仕掛けられた。ブロックが来るのは分かっていたので、外、外を意識して踏みました」

<6R>
松岡健介選手
松岡健介選手
 松岡健介(写真)が後方からひとまり。後続を千切って圧勝した。
 「木暮君に合わされるのが怖かったんですけどね。内に詰まっていたし、展開が良かったです。4.08のギアは押さえ先行ができないので、戦法が限られてしまう。その辺りがこれからの課題ですね」
 先制した田中晴基の番手を回った小埜正義が2着に追い込んだ。
 「晴基が前で先行してくれて本当に嬉しかった。2人で何とか決めたかったんですけどね。1人だけスピードが違いました。しょうがないですね」

<7R>
柴崎淳選手
柴崎淳選手
 竹内雄作が強力な同型を相手に積極策に出ると、柴崎淳(写真)が4角番手の好展開をきっちりものにした。
 「竹内君が頑張ってくれました。もがき合いになると思っていたら意外にすんなりでしたね。番手で人気になっている以上はそれに応えなければという気持ちでした。調子はだいぶ良くなっています。昨日は兄弟で決勝に乗るチャンスだったんですけどね。兄弟でビッグの決勝に乗るのは選手になってからの目標の1つだし、いつかは叶えたいですね」

<8R>
井上昌己選手
井上昌己選手
 人気の小嶋敬二を井上昌己(写真)が快速まくりで仕留めた。これでシリーズ3勝目。完全復活をファンに印象づけた。
 「もうちょっとゴチャつくと思ったんですけどね。展開を読めていなかった。でも、仕掛けてからは車が出てくれた。調子はだいぶ戻ってきました。あと2段階ぐらい上積みが欲しいですけどね」
 完璧マークの友定祐己が2着に流れ込んだ。
 「気持ちいいぐらいのまくりだった。余裕はあったし、抜けると思ったんですけどね。踏み直しがすごかった。井上のデキがいいんでしょう」

<9R>
松岡貴久選手
松岡貴久選手
 松岡貴久が打鐘過ぎの2センターから一気のカマシ。これに乗った大塚健一郎が直線で余裕を持って追い込んだ。
 「貴久がいいレースをしてくれた。今日はそれだけですね。ワンツーが決まって良かった。今回は悪かったので、しっかり修正したい」
 松岡貴久(写真)は久しぶりに逃げの連がらみを果たした。
 「いいタイミングで仕掛けられたと思います。ダマシダマシで駆けて何とか残れました。大塚さんとワンツーが決まって良かったです。今回は調子が上向いてきていたし、久しぶりに競輪が楽しかった」

<10R>
吉田敏洋選手
吉田敏洋選手
 ゴール前は大接戦。五番手からまくり追い込んだ地元の吉田敏洋(写真)が大外を突き抜けた。
 「勝てたけど落車もあって後味は悪いですね。菊地君が斬るのは予想外。想定と違う展開になりました。落車で身体はきついんですが、最後は気持ちで踏みました。よく届いたと思います」

<11R>
成田和也選手
成田和也選手
稲垣裕之選手
稲垣裕之選手
 決勝戦は徹底先行の脇本雄太がレースが動き始める前にまさかの落車。これで完全に北日本勢のペースとなった。積極策に出た佐藤友和の後位から渡邉一成が番手まくりでビッグ初優勝。2着には成田和也(写真)が入り、北日本ワンツー決着となった。
 「友和が頑張ってくれました。まずはラインの仕事をしっかりして、抜きにいったけど、一成が強かったですね。ワンツーが決まって良かった」
 佐藤友和は北日本ラインの先頭で果敢に主導権を握った。
 「脇本が前を取った時点で突っ張ろうとしているのは分かったし、後ろばかり気にして危ないんじゃないかと思っていました。今日はラインもしっかりしているので早めに仕掛けました。やることはやったし、収穫のある開催でした」
 南修二が稲垣裕之の後位から3着に突っ込んだ。
 「脇本が落車したけど、稲垣さんは思っていたより落ち着いていましたね。ああなったら最後はいけるところまで突っ込むしかなかった」
 稲垣裕之(写真)もサバサバした表情でレースを振り返る。
 「脇本君の落車は残念でしたけど、気持ちを切り替えて、そのあとは冷静に走れました。ただ、友和君が来るのが早かったし、追いかけるのに脚を使いましたね」
 脇本雄太は大舞台で自らの不注意により、誘導員と接触して失格を喫した。
 「選手になって初の失格です。前を取って突っ張ろうと思っていたけど、後ろばかり気にしてしまい…。空回りしてしまった。申しわけありません」
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